東京高等裁判所 昭和60年(ラ)589号 決定
本訴及び別訴は、いずれも訴外会社の内整理に関連した係争事件であり、その争点もほぼ同一であることが推認されるから、別訴は事実上本訴に対する反訴の関係にあるところ、本件記録によれば、抗告人は、本訴において、本件契約の締結及びその履行についての立証活動として、少くとも訴外会社の内整理に関連する相手方との交渉経過及び本件契約締結の経緯等を明確にする必要があり、そのためには、訴外会社の代表取締役である抗告人本人のほか、本件契約当時の訴外会社及び相手方の担当役職員らを証人として尋問する必要があるものと予想されるところ、訴外会社は現在東京都新宿区内に本店があり、訴外会社の右関係証人は、いずれも川崎市ないし東京周辺に居住していることが窺われる。
以上のような事情、特に本訴における前示請求の事由及びこれに関する証拠調べ(人証)の必要性並びに京浜、阪神間の現今の交通事情等を参酌して、本訴が、原裁判所で審理されることにより相手方が被るべき訴訟追行上の不利益と大阪地方裁判所で審理されることにより抗告人が被るべき訴訟追行上の不利益とを比較考量するときは、原裁判所において本訴が審理されることによって、相手方が著しい損害を被り、かつ、本訴の審理が著しく遅滞するものとは認められない。
なお、仮に相手方の別訴提起が、専属的合意管轄に基づくものであるとしても、本訴における反訴の方式により容易に対処し得ることが予想されるのに、本訴提起後別訴として大阪地方裁判所に提起したことによって、当然に本訴を同裁判所に移送すべきいわれはない。
(中島 佐藤 塩谷)