東京高等裁判所 昭和60年(ラ)601号 決定 1985年11月29日
抗告人 宮部淳
主文
本件抗告を棄却する。
理由
一 抗告人は、本件不動産引渡命令に対し不服であり、その理由は、別紙「執行抗告の理由」記載のとおりであるとするものである。
二 そこで検討するに、本件記録によれば、中村孝一が本件競売申立会社の抵当権設定登記後で本件競売開始決定前である昭和五九年二月一〇日、本件不動産につき所有者木島良道との間で、一〇〇〇万円の債務を目的として抵当権設定契約を締結するのと同時に期間を三年とする賃貸借契約を締結し、同月二九日、その旨の抵当権設定登記及び賃貸借仮登記を経由したこと、したがって、中村の右賃借権は、本件不動産の使用、収益を目的とするものではなく金銭債権の担保を目的として設定されたものであること、その後、抗告人が中村から本件不動産を転借して現在これを占有していることを認めることができる。
しかして、金銭債権を担保する目的で設定された賃借権は、仮登記担保契約に関する法律二〇条、一六条一項により売却によって効力を失い、その賃借権に基づく不動産の占有者は、民事執行法八三条一項本文の占有者に準じて不動産引渡命令の相手方となるべきものと解するのが相当であり、したがって、右のような賃借権を基礎として設定された転借権に基づく占有者も当然不動産引渡命令の相手方となる。
三 よって、抗告人に対し本件不動産の引渡を命じた原決定は相当であって、本件抗告は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 吉野衛 裁判官 時岡泰 山﨑健二)
<以下省略>