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東京高等裁判所 昭和60年(行ケ)188号 判決

一 請求の原因一ないし三は当事者間に争いがない。

二 取消事由(1)及び(2)について

1 審決が本願発明と原出願発明の連結工法に関するA構成が一致する旨判断するのに対し、原告は右の一致点のうち前者の「連結用凹陥部」と後者の「連結用ボツクス」、前者の「連結用部材」と後者の「連結棒」はそれぞれ技術的意義を異にする旨主張するので、以下に判断する。

2 成立に争いのない甲第二号証の一ないし三(本願の特許願、明細書、図面)、第三号証の一、二(昭和五五年一二月二五日付、昭和五八年一二月二六日付各手続補正書)(本願明細書)、第四号証の一、二(原出願の特許公報、同補正の記載)によれば、本願発明の連結用凹陥部及び原出願発明中A構成の連結用ボツクスはいずれもカルバートの適宜の箇所に形成され(別紙図面(一)、(二)の両発明の各実施例によれば、いずれも端面から後退した内周面が交じわる内周四偶の部分に形成されている。)、両発明とも敷設しようとするカルバートを敷設済みのカルバートに隣接させ、連結用部材(本願発明)又は連結棒(原出願発明)を敷設済みのカルバートの連結用凹陥部(本願発明)又は連結用ボツクス(原出願発明)に取付け、次いで右連結用部材又は連結棒を敷設しようとするカルバートの連結用凹陥部又は連結用ボツクス内に仮取付けし(前記両発明の各実施例によれば、連結用部材又は連結棒はいずれもカルバートの端面に設けられた挿通孔を通して連結用凹陥部又は連結用ボツクスまで挿通される。)、しかる後連結用部材又は連結棒を緊張棒及び押圧具で引張し、敷設しようとするカルバートを敷設済みのカルバートに密着させて右仮取付を本取付に改めるカルバートの連結工法に関する技術であり、前記両発明の実施例によれば、右工法を実施するに当つて、連結の手間と経済性を考え敷設済みのカルバートと敷設しようとするカルバートとの間に連結用凹陥部を備えない中間カルバートを配置することがあることが認められる。

この事実によれば、連結用凹陥部(本願発明)も連結用ボツクス(原出願発明)も、ともにカルバート端面の挿通孔から挿通された連結用部材(本願発明)又は連結棒(原出願発明)の両端の取付箇所であり、また連結用部材も連結棒も、ともにその両端が隣接するカルバートの連結用凹陥部又は連結用ボツクスに取付けられたカルバート相互を連結する部材である点において、それぞれ同じ機能を有するものということができる。

3 前掲甲第三号証の一によれば、本願の昭和五五年一二月二五日付手続補正書には「カルバート1には内周面又は外周面に……適宜の個所に鉄製のボツクス5を埋設し又は埋設せずして連結用凹陥部5´を凹設し」と記載されていることが認められ(四頁四行ないし七行)、前掲甲第四号証の一によれば、原出願の特許公報には「内周四隅に連結用ボツクスを埋設したプレキヤスト・ボツクス・カルバートを用い」(二欄二二行ないし二三行)、「更に本発明連結用カルバート1には上記四隅1bに箱型の連結用ボツクス5を埋設して前孔4と連通する孔5をあける。この連結用ボツクス5は鋳鉄製からなり」(三欄九行ないし一三行)と記載されていることが認められる。

右記載により、本願発明の連結用凹陥部と原出願発明の連結用ボツクスを対比すると、連結用凹陥部とは単に陥没して形成した箇所を指すだけでなく、同箇所に鉄製のボツクスを埋設した場合をも含むものであるから、この点において両者は共通性を有するのであり、かつ前記2のように、両者はカルバートを連結する連結用部材(本願発明)又は連結棒(原出願発明)の取付箇所としての共通の機能を有するものである以上、両者の間に技術的差異は認められないから、両者を両発明の一致点とした審決の判断に誤りはない。

4 原出願発明の連結棒が鋼棒により作られていることは当事者に争いがなく、前掲甲第三号証の一によれば、本願の昭和五五年一二月二五日付手続補正書には「連結用部材6は鋼棒、鋼条杵、鋼線、ワイヤストランド等が使用され……」と記載されていることが認められる(四頁九行ないし一〇行)。

右事実により、本願発明の連結用部材と原出願発明の連結棒を対比すると、ともに鋼棒により作られている点で、両者は共通性を有するのであり、かつ前記2のように両者は隣接するカルバートの連結用凹陥部(本願発明)又は連結用ボツクス(原出願発明)に取付けられ、カルバート相互を連結するという共通の機能を有するものである以上、両者の間に技術的差異は認められないから、両者を両発明の一致点とした審決の判断に誤りはない。

5 このように、連結用凹陥部は連結用ボツクスを含み、連結用部材は連結棒を含む広い概念ではあるが、原告主張のように、かかる関係にある各両者が用語上の差異を理由に技術的に異なるとすれば、それは特許法が二重特許を禁じた趣旨に反し、不当なことは明らかであるから、この点に関する原告の主張はいずれも理由がない。

6 そうであれば、取消事由(1)及び(2)は理由がない。

三 取消事由(3)について

1 本願発明が原出願発明の繰返し工法に関するB構成を削除している点で両者が相違することは当事者間に争いがなく、原告は、右のように本願発明がくり返し工法を含まず連結工法のみを構成要件とするのに対し、原出願発明が連結工法と繰返し工法を構成要件とする点で両者は実質的にも相違する旨主張するので、以下に判断する。

2 原告の右主張によれば、本願発明は連結用凹陥部を有する二個のカルバートを連結する一回限りの工法に関する技術であるということになる。

しかし、当事者間に争いのない請求の原因二の本願発明の趣旨は連結される連結用凹陥部を有するカルバートの個数、連結回数についてなんら限定を付していない。また、前掲甲第三号証の一、二によれば、本願明細書に別紙(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の各記載があることが認められるところ、(イ)及び(ニ)の記載は本願発明の連結工法を繰返し施工した場合に関する記載であり、本願発明の実施例である別紙図面(一)の第3、第4、第7図は、連結用凹陥部のカルバートの端面側及び背面側の両面に連結用部材が取付けられた状態を示しており、このことは本願発明においても連結工法を繰返し施工することが予定されていることを意味するものということができる(二個のカルバートのみを連結するのであれば、連結用部材は各カルバートの向い合う側の連結用凹陥部のみに取付ければ足りるはずである。)。加えて、前掲甲第二号証の一ないし三、第三号証の一、二によれば、カルバートは通常その敷設場所の長さに応じ連結用凹陥部を備えるものと備えないものを適宜とりまぜ所要個数を連結して敷設されるのであり、右のように多数のカルバートを連結して敷設するところにその施工上の技術的意義があるものと認められる。

そうであれば、本願発明の特許請求の範囲には連結工法のみが記載され、繰返し工法に関する記載を欠如しているとはいえ、本願発明が繰返し工法を排斥するものではなく、むしろ当然同工法を予定したうえで連結工法を示しているものということができるから、両発明の前記のような特許請求の範囲における形式上の差異にもかかわらず、両発明は実質的に同一であると認めるのが相当である。

原告は、本願明細書に繰返し工法の効果である別紙(イ)及び(ニ)が記載されているのは、本願を原出願から分割する際、原出願明細書の図面を利用する関係上同工法について説明したにすぎない旨主張するが、右(イ)及び(ニ)の記載が本願発明の効果として記述されていることは本願明細書を一読すれば明らかであるから、原告の右主張は理由がない。

3 両発明の効果の差についての原告の主張は、本願発明が繰返し工法を含まないことを前提とするものであるが、前記のように本願発明が同工法を排斥するものでないと解する以上、前掲甲第四号証の一により認められる連結工法と繰返し工法を備えた原出願発明が奏する原告主張の効果は、本願発明についても同様生ずるはずであり、現に前記のように本願明細書には原告主張のような繰返し工法による効果が記載されているのである。また、原告が本願発明について主張する効果のうち(b)の効果は、本願発明と従来の連結工法との対比であつて原出願発明との対比ではなく、原出願発明においても奏せられるものであることは原告の自認するところである。次に、(a)の効果が仮に連結用凹陥部を有する二個のカルバートを一回限り連結する工法の効果であるとしても、前記のように、本願発明においては、右の二個のカルバート間に連結用凹陥部を備えない複数のカルバートを配する場合をも予定しており、更に繰返し工法を排斥しないのであるから、右の(a)の効果が本願発明において常に奏せられるとは限らないのである。このように、原告の効果に関する主張は両発明の実質的相違を理由づけるものではない。

更に、原告は追加特許、併合出願、利用発明の諸制度と対比して、分割出願である本願が不適法であるとはいえない旨主張する。しかし、原告の右主張は、前記諸制度で保護される場合と同様、原出願発明とこれから分割された本願発明が別発明であることを前提とするところ、両者が実質的に同一であることは前叙のとおりであるから、原告の右主張は前提を欠き、理由がないことが明らかである。また、原告の援用する判例はいずれも本件とは事案を異にし、原告の主張を支えるものではない。

4 このように取消事由(3)も理由がない。

四 以上のように、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、本願発明と原出願発明が実質的に同一であると認められる以上、本願は適法な分割出願であるということはできない。したがつて、本願の出願日は原出願の出願日(昭和四七年四月一八日)まで遡及せず、分割出願をした昭和五五年一一月二五日である。しかして、右出願前である昭和五五年一月二一日に頒布された特公昭五五―二四九八号に原出願発明が記載されていることは当事者間に争いがないから、これと実質的に同一である本願発明は、特許法二九条一項三号に該当し、特許を受けることはできないものというべきである。

五 よつて、審決の判断に誤りはなく、本訴請求を失当として棄却する。

〔編註〕 本願発明の特許請求の範囲は左のとおりである。

敷設しようとするカルバートにその敷設方向側の端面から連結用部材を挿入して敷設済みの隣位のカルバートの連結用凹陥部内に連結用部材の先端を取付け、該連結用部材の基端を敷設しようとするカルバートの連結用凹陥部内に仮取付けした後、該敷設しようとするカルバートの敷設方向側の端面から緊張棒を挿入し、緊張棒の先端を前記連結用凹陥部内で前記連結用部材の敷設方向側と連結子により連結すると共に、敷設しようとするカルバートの敷設方向側の端面と緊張棒の基部との間に押圧具を介在した後、押圧具を作動して前記両カルバートを密着させた後、前記仮取付けを本取付けに改め、然る後に緊張棒を抜去することを特徴とするプレキヤスト・ボツクス・カルバートの連結工法。

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