東京高等裁判所 昭和61年(う)1204号 判決
被告人 石村健治
〔抄 録〕
3 次に、所論(3)の点についてみるに、被告人は、司法警察員に対する昭和五八年九月三〇日付及び検察官に対する各供述調書において、本件車両は同五七年七月に越正規から買い受けたものであるが、その自動車検査証の有効期間が同五八年六月八日で、自賠責保険の保険期間が同年七月九日で切れていることを知りながら、右車両を運行の用に供したものである旨の自白をしており、原審公判廷においても、右事実を認めているところ、自賠責保険の契約が締結されていない旨の自白について、所論のように補強証拠が必要であるかどうかについては、議論の余地がないではないが、仮にこれを積極に解したとしても、本件の場合、所論も言及しているとおり、原判決が「証拠の標目」の項において挙示する司法巡査荒木邦夫ほか一名作成の捜査報告書、司法警察員作成の昭和五八年白交第五三〇号捜査関係事項照会書謄本、大東京火災海上保険株式会社札幌東支社長杉山昌孝作成の捜査関係事項照会回答書によれば、本件車両について、前所有者越正規が契約した大東京火災海上保険株式会社との自賠責保険の保険期間は、同五六年六月九日から同五八年七月九日までで、その後右保険を継続する旨の契約がなされていないことが認められるのであって、なるほど、自賠責保険は、その事業を営むいずれの保険会社とも契約を締結することができるとはいえ、保険期間が切れるに際しては、特段の事情がない限り、従前の保険会社と継続契約をするのが通常であり、右継続契約をしていない場合に、他の保険会社と自賠責保険の契約を締結していたものとするならば、その事実を主張すればよく、これを立証することも容易である筈であるにもかかわらず、その主張もない本件のような場合においては、自賠責保険契約が締結されていないことの合理的な推定が働くのであって、右の程度の証拠があれば、自白の真実性を担保する補強証拠として十分であるというべきである。
所論(3)の主張も、前提において採用するに由ないものといわなければならない。
(船田 半谷 龍岡)