東京高等裁判所 昭和61年(う)1772号 判決
1 所論は,要するに,原判決は,被告会社の貴石,絵画及び美術品の期末たな卸高について,「貴石等の期末たな卸金額は,特段の事情のない限り,原則として,仕入台帳に記載されている貴石等の取得価額(仕入台帳価額)によるべきである。」と判示し,被告会社の行った「ふみ分け」をまさしく利益調整という脱税目的で行われたものと断定しているが,これは法人税法等の解釈,適用を誤り,ひいては事実を誤認したものであって,その誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるというのである。
そこで,まず,法人のたな卸資産の売上原価等の計算及びその評価方法に関する法人税法上の各規定について通覧してみるに,法人が各事業年度の所得金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入する金額を算定する場合,その算定の基礎となる当該事業年度終了の時において有するたな卸資産の価額は,その法人がたな卸資産について選定した評価の方法により評価した金額とし,評価の方法を選定しなかった場合又は選定した評価の方法により評価しなかった場合には,評価の方法のうち政令で定める方法により評価した金額とするとされ(法人税法29条1項),その選定することができる評価の方法の種類として,原価法(個別法等8種類)と低価法とが定められており(同法施行令28条),そのいずれの方法によるかはたな卸資産の区分ごとに選定し,かつ,その選定した方法を書面で納税地の所轄税務署長に届け出なければならず(同施行令29条),この評価方法に代え当該評価方法以外の評価の方法により計算する場合には納税地の所轄国税局長の承認を受けることを要し〔同施行令(昭和53年政令第78号による改正前のもの)28条の2第1項〕,選定した評価方法を変更しようとするときは,納税地の所轄税務署長の承認を受けなければならない(同施行令30条)こと,更に,たな卸資産の評価額の計算の基礎となるたな卸資産の取得価額は,別段の定めがあるものを除き,本件貴石等のように,購入したたな卸資産については,当該資産の購入の代価(当該資産の購入のために要した費用がある場合には,その費用の額を加算した金額)と当該資産を消費し又は販売の用に供するために直接要した費用の額の合計額とされている(同施行令32条1項1号)こと,法人がその有する資産の評価換をしてその帳簿価額を減額した場合には,その減額した部分の金額は,所得金額の計算上,損金の額に算入されず,その資産につき災害による著しい損傷その他政令で定める事実(右事実のほか,当該資産が著しく陳腐化したこと,法人について会社更生法の規定により更生手続の開始決定又は商法の規定により整理開始の命令があったことにより当該資産につき評価換えをする必要が生じたこと及びこれらに準ずる特別の事実)が生じたことにより,当該資産の価額がその帳簿価額を下ることとなった場合にのみ損金の額に算入することができる(法人税法33条1,2項,同法施行令68条1号)ことがそれぞれ定められている。
そこで,被告会社としては,本件各事業年度の所得を計算するに当たり,右各規定の適用を排除すべき特段の事情が存しない以上,これらの各規定に従いたな卸資産の評価を行うべきであるところ,被告会社では,法人税法施行令28条1項に規定する評価の方法に代え他の評価方法により計算することにつき所轄国税局長の承認を受けておらず,また,評価方法を選定してその方法によるべき旨を所轄税務署長に届け出ていないので,本来ならば同施行令31条1項に定めるところにより,同法施行令28条1項1号トに規定する最終仕入原価法によってたな卸資産の評価を行うべきである。
ところが,関係各証拠によると,被告会社では,期中に仕入れた商品については,その仕入台帳を基にし,これに記載されている貴石のみならず,絵画や美術品についても実地にたな卸をして,当該商品が存在するか否かを確認する一方,期中に売り上げた商品については仕入台帳から抹消し,各期末に在庫する全商品を集計して当期末のたな卸表を作成していること,前期から繰り越されたたな卸商品については,これを期中に売り上げた場合,その商品を前期の期末たな卸表から抹消した上,当期末において在庫する商品を確認し,それのみを集計して当期末のたな卸表を作成していること,右たな卸表を作成するに当たり,社員が持ち出している貴石については搬入伝票により加工や委託販売に出している貴石についてはいずれも社員や相手先に問い合わせて,その存在を確認していること,このようにしてたな卸表を作成したが,その取得価額については仕入台帳に記載されている仕入価額をそのまま記入したこと,貴石をロットで仕入れた場合,その取得価額をカラット数で除して貴石1個当たりの取得価額を決め,これを右の仕入台帳に記載していること,右たな卸表を作成した後,被告人の個別的な指示に基づき,被告会社ではふみ分けと称する独特の評価を行い,右たな卸表に記載されている価格を大幅に減額して期末たな卸資産の評価額とし,これを集計して各期末における公表たな卸価額に計上していることが認められる。
しかしながら,被告会社の採用しているふみ分けと称するたな卸資産の評価方法は,前記各法条に照らし,法人税法上到底許容されるものではなく,また,評価損の計上できるような事実も存在せず,右ふみ分けは評価損の計上とも全く異なるものであるから,法人税法が右ふみ分けと称する独特の評価方法を是認しているものとは考えられない。結局,被告会社の行ったふみ分けは,期末たな卸額を減額することにより売上原価を増額させるものであって,期末たな卸額を除外したと同様の効果をもたらしている上,そのふみ分けが恣意的に行われていることに鑑み,被告会社の利益を調整し脱税を図る目的で行われたものと認めざるを得ない。
2 所論は,期末たな卸の評価方法につき,法人税法上,原価法のほか低価法も採用されており,したがって,期末たな卸時において,原価法により評価した価額と再調達価格を比較して,そのうちいずれか低い価額をもってその評価額とすることは一般に許されており,そして,右低価法が許容されるのは企業経営の保守・安全の原則に立つものであって,企業会計原則や商法においても広く認められているのであるから,ある時点では原価で,ある時点では時価で評価することは慣行的評価方法として実務界では広く支持されている旨主張する。
確かに,企業会計原則や商法においては勿論,法人税法においてもたな卸資産の評価に関し,低価法が採用されていることは所論指摘のとおりである。しかしながら,法人において,一旦その会計処理の原則や手続きを採用した以上,正当な理由がある場合を除き,これを濫りに変更してはならないのであって,法人税法施行令30条が一旦採用したたな卸資産の評価方法を変更する場合には納税地の所轄税務署長の承認を要するものとしたのもこのためである。したがって,低価法を採用しておきながら,ある時点においては原価法を採用し,ある時点においては低価法を採用することは,企業会計上要請される継続性の原則に反することとなるから,到底許されるものではなく,一旦低価法を採用した以上,これを継続して採用することを要するものというべきである。しかも,同施行令28条1項2号に規定されている低価法は,同条1項1号に掲げる方法のうちいずれかの方法により算出した取得価額による原価法により評価した価額と当該事業年度終了の時におけるその取得のために通常要する価額とのうちいずれか低い価額をもって評価額とする方法をいうのであり,かつ,購入したたな卸資産について低価法を適用する場合における時価は,当該事業年度終了の時においてそのたな卸資産の所在する場所でこれと種類等を同じくするたな卸資産について通常の方法により通常取引される数量を購入する場合の購入代価にその付随費用を加算した金額とされているのであって,被告会社で採用しているふみ分けの方法により評価された価額は右にいう時価とは著しく異なっているので,右ふみ分けが同法施行令にいう低価法によったものということは出来ない。
3 次に,所論は,原判決は,ロットで仕入れた貴石のたな卸評価方法につき,カラット数だけを基準とする方法を被告会社のみでなく業界において相当広く用いられているものと認め,一般的合理性を有する旨判示するが,右の方法が法人税法施行令28条に規定する個別法のみならず,最終仕入原価法その他の方法にも当たらない特別の方法であり,原判決のように,仕入時のカラット数を基準にして算出した仕入価格をそのまま維持するのではなく,むしろ期末たな卸時点において仲間卸の再調達価格等をもとに何らかの方法で実際価格に近い価格を算出し,それをもって期末たな卸価格とすることが貴石を販売する業界において相当広く用いられており,右業界内で通用する程度の一般的合理性を有するものというべきであり,そして,右のような業界の慣行は法定評価方法である最終仕入原価法や低価法の考え方にも合致し,企業会計の継続性のみでなく,保守・安全のため必要な方法というべきである旨主張する。
確かに,原判決は,所論が指摘するように判示しているけれども,しかし,法人税法施行令28条1項1号に規定する原価法は,当該事業年度終了の時において有するたな卸資産につき,同号に掲げるいずれかの方法によってその取得価額を算出し,その算出した取得価額をもって当該期末たな卸資産の評価額とする方法をいい,そのうちの個別法は,期末たな卸資産の全部について,その個々の取得価額をその取得価額とする方法をいうものであるところ,ロットで仕入れた貴石のたな卸方法につき,原判決が「ロット仕入をした場合に,個々の貴石の仕入価額の決定に当たって,カラット数だけを基準とする方法を採っているのは,被告会社ばかりでなく,右方法は貴石を販売する業界において相当広く用いられているものと認められ,右業界内で通用する程度の一般的な合理性は有しているものと認められる。」と判示しているのは,右にいう個別法そのものではないけれども,その一種に当たるとする趣旨と解され〔この点につき,所論は,個別法については,法人税基本通達(昭和54年10月改正前のもの。以下同じ。)5-2-1により商品が取得から販売に至るまでの過程を通じて具体的個品管理が行われる必要があるが,ロットで仕入れる場合は右要件を充足していないことが明らかであるという。しかし,貴石をロットで仕入れた場合,その取得についてこそ個品管理がなされているとはいえないが,被告会社では所得後直ちに個々の貴石の取得価額を決めてこれを仕入台帳に記載し以後販売に至るまで個別的に管理されているのであるから,右要件を充足しているものということが出来る。〕,これが特別の評価方法に当たることを判示したものではないというべく,したがって,所論はその前提を欠くものといわなければならない。なお,所論は,原審における証人倉田武俊の証言に依拠して,期末において仲間卸の再調達価格等をもとに実際価格を算出し,これを期末たな卸価格とすることが業界で広く採用されており,そして,その方法が同施行令28条にいう最終仕入原価法や低価法そのものではないけれども,それに合致し一般的合理性を有する旨主張する。確かに,宝石等の卸販売業を営む株式会社創美の代表取締役の地位にある同証人は,原審において,貴石のたな卸資産の評価につき,同業界で一種の低価法を採用している旨の証言をしているが,その方法が被告会社の採用しているふみ分けとは必ずしも一致せず,しかも,法人税法上認められている低価法とも異なるので,これをそのまま本件に採用することには疑問がある。仮に,被告会社において,所論のような方法を採用するというのであれば,たな卸資産につき特別の評価方法を採用することとなるので,納税地の所轄国税局長の承認を受けて行うべきであって,その手続きを履践せず,ふみ分けと称する恣意的な評価方法を採用することは法人税法の容認するところではないというべきである。また,所論は,原判決のように,仕入価額を単純にカラット数のみに応じて割り振り,それをそのまま期末たな卸評価額とすることは,実際よりも著しく高い評価を出すおそれがあり,「企業の財政に不当な影響を及ぼす可能性がある場合には,これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない」(企業会計原則第1-6-保守主義の原則)とする規定に違反する方式を強要するものといわなければならない旨主張するけれども,そうであるとすれば,それを回避するため法人としては最初から低価法を選定し,これを継続して採用すればよいのであって,それを採用することなく実際よりも著しく高い評価を出す恐れがあるということのみで,仕入価額を単純にカラット数のみに応じて割り振り,それをそのまま期末たな卸評価額とすることが企業会計原則に違反することにはならないというべきである。
4 更に,所論は,原判決は,被告会社における期末たな卸評価を期首たな卸金額,期中仕入金額,期中売上金額並びに見込粗利益率をもとに計算していることをもって,ふみ分けは貴石の客観的な適正な評価とは無関係にまさしく利益調整という脱税目的で行われていたことは明らかであると断定するが,しかし,期末におけるたな卸評価につき,右のように見込利益率を一つの計算要素として低価法における時価を計算することは法人税基本通達(通達5-2-13)においても認めているのであって,見込利益率を計算の1つの要素とすることは,それ自体では利益調整のための脱税目的を推定させるものではなく,被告会社の採用した見込利益率が合理的なものであったか否かが問題なのであり,実際の利益率より著しく低いものである場合にはじめて右の計算方法が脱税目的をもった利益調整ということが出来るのであって,被告会社の推定した見込利益率は著しく不当なものではなく,このことは期中に仕入れた貴石が期中に全部売却されたものの利益率を実際に確認してみれば明らかである旨主張する。
なるほど,所論の引用する法人税基本通達5-2-13は,低価法の時価につき,その但書において,「法人が継続して各事業年度終了の時において通常取引されるたな卸資産の販売価額から一般管理費,販売費および利益の額(利益の額を計算することが困難であるときは,その販売価額の5%相当額とする。)の見積額の合計額に相当する金額を控除した金額をそのたな卸資産の時価としているときは,これを認める。」とし,見込利益率を計算の1つの要素とすることを是認しているが,これは右通達自体からも明らかなように,製造等にかかるたな卸資産の時価に関するものであって,本件のような購入したたな卸資産の時価に関するものではない(本件の場合,同通達の5-2-12によるべきである。そして,それによれば,その時価は通常の取引方法により通常取引される場合の購入代価にその付随費用を加算した金額とされる。)から,見込利益率の当不当を問題にするまでもなく,所論はその前提を欠くものといわざるを得ない。
所論に鑑み,若干敷衍するが,被告人は,原審において,貴石をロットで仕入れているので,仕入台帳に記載する個々の貴石の仕入価額は,当該仕入価額をロットの総カラット数で除してカラット当たりの単価を出し,これを個々の貴石のカラット数に乗じて算出しているが,貴石の評価はカラットだけで決まるものではなく,カラット,クオリティ,カラー,カット等の要素を総合的に評価して決めるものであり,ロットで仕入れる場合,貴石の品質は一律でないので,カラット数だけを基準として決定された個々の貴石の仕入価額は,結果的に貴石の真実の価値を正確に反映していないこと,期末に在庫として残った貴石はロット中の品質劣悪なものばかりであるから,それらの貴石につき,カラット数だけを基準に算出された仕入価額は不当に高いものとなっていること,そのために仕入価額を取得価額としてたな卸資産である貴石を評価すると,実態から遊離した高い評価額を計上することとなるので,期末たな卸時において,ふみ分けによって適正な評価額に評価換えを行うものであり,ふみ分けはたな卸の評価方法としては正当なものである旨所論に副う供述をしている。
しかしながら,関係各証拠によると,被告会社では,被告人の指示に基づき,ふみ分けと称し,貴石ごとに仕入台帳に記載されている仕入価額を大幅に減額した金額をもって評価額としていること,昭和48年4月期末にふみ分けにより2000円と評価された貴石が36万円ないし46万円で,3000円と評価された貴石が15万5000円で,1万1000円と評価された貴石が34万円で,1万6000円と評価された貴石が48万円で,3万4000円ないし3万4100円と評価された貴石がいずれも75万円で,5万円と評価された貴石が99万円で,それぞれ昭和49年4月期末までの間に売却されるなど,実際の売価が最低でも評価額の約20倍以上になっており,そのほかにも評価額の10倍以上の価格で売却されているものが多数あること,被告人は,ふみ分けをするに当たり在庫する貴石を見ずに,期首たな卸額,期中仕入額,期中売上額を前提に粗利益率が大体20パーセントになるようにして期末たな卸の評価額を決定していること,宝石業界では,貴石をロットで仕入れた場合,個々の貴石の仕入価額を決定するに当たり,カラット数だけを基準とする方法が広く採用されており,一般的に合理性を有するものであることが認められる。
以上のようなふみ分けの実態や宝石業界における貴石の仕入価額の決定方法等に徴すると,被告会社で採用しているふみ分けと称する期末たな卸資産に関する評価方法は,期末たな卸資産の客観的に適正な価格を算出するための評価方法とは到底いえないのであって,期末たな卸額を著しく低く評価し,その結果,売上原価を大幅に増額させて利益の調整を図ったものであり,そのことは取りも直さずふみ分けが脱税の目的で行われたものといわざるを得ず,被告人の原審における前記供述はにわかに措信することが出来ない。
5 以上の次第であって,被告会社の期末たな卸に関する原審の判断は,貴石のみならず,絵画や美術品についても相当であって,その判断にたな卸資産の売上原価の計算及びその評価方法に関する法人税法の解釈,適用を誤ったことは勿論,事実の誤認も存しないというべきである。
第2関税法違反関係
1 所論は,要するに,関税法67条が申告を要求する「当該貨物の品名」としては,オイルペインティングなどの記載で十分であるし,「価格」も客観的なそれを意味するものではなく,課税標準となるべき価格に過ぎないのに,原判決は,「貨物の実体を偽るため,『当該貨物の品名』,『価格』につき,虚偽の事実を申告した以上,関税法113条の2の虚偽申告罪の構成要件に該当することはもちろんである。」と判示しているが,これは同法の解釈適用を誤ったものであって,その誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかであるというのである。
2 そこで,検討するに,関税法113条の2の立法趣旨は,従前虚偽申告に関する罰則が設けられていなかったところ,昭和26年に至り,戦後の特殊な外貨事情に基づき外国為替及び外国貿易の管理が強化されたにもかかわらず,輸出貨物や無税の輸入貨物等についても虚偽申告が増加し,関税行政の円滑な運営が著しく阻害されるに至ったので,輸出入の申告に際し,所定の義務規定を遵守させて関税行政上の秩序を維持し,特に輸出入貨物に対し他の法令の規定する最終的取締りの実を確保しようとするところにあり,そして,同法67条に「貨物を輸出し,又は,輸入しようとする者は,政令で定めるところにより,税関に申告し,貨物の検査を経て,その許可を受けなければならない。」と規定されていたものが,同41年に至り,そのうちの「税関に申告し,貨物の検査」とある部分を,「当該貨物の品名並びに数量及び価格(輸入貨物については,課税標準となるべき数量及び価格)その他必要な事項を税関長に申告し,貨物につき必要な検査」と改正され,しかも,同条は輸出入貨物の申告,検査及び許可という一連の通関手続きについて規定したものであるが,その手続きの際,関税法及び関税定率法に基づき関税の確定,納付,徴収等が行われ,その過程において,税関長は,貨物の輸出入に関する許可,承認等の確認などを行って,輸出入される貨物の実体に即し,その最終的な取締りを行う行政官庁としての責任を果さなければならないのであって,その実を上げるためには,輸出入の申告をするについて,輸出入しようとする貨物の品名をなるべく詳細に申告することを要し,関税法施行令58条及び59条において輸出入申告書の各記載事項を具体的に定めているのもこのためである。なお,「輸出統計品目表及び輸入統計品目表を定める件」と題する昭和50年大蔵省告示117号においても,出来るだけ輸出統計品目表の分類による品名により申告することが望ましいとされている。以上のような関税法113条の2の立法趣旨,同法67条の改正経過,同法施行令58条及び59条の規定された趣旨等に徴すると,被告会社がクローバー社から絵画を輸入し,あるいはゴールド・ライン社へ絵画を輸出するに当たり,右絵画が被告会社の従業員らによって有名画家の絵画を模写するなどして作製された全く商品価値のないものであるにもかかわらず,輸出入申告書の品名欄及び価格欄にそれぞれ虚偽の記載をして輸出入の申告した所為は,関税法113条の2の構成要件に該当するものというべく,当該貨物の品名として,単に「オイルペインティング」などと記載しただけでは十分とはいえず,また,価格も,輸出貨物中,貨物代金が有償で輸出される貨物については,原則として,当該貨物の現実の決済金額を基にして計算した価格とし,貨物代金が無償で輸出される貨物については,原則として,当該貨物が有償で取引されるものとした場合の本邦の輸出港における本船甲板渡し価格とし,輸入貨物については,税額決定の標準となる課税物件の価格,すなわち,当該貨物について輸入申告等の時に相互に独立した売手と買手との間で完全な競争条件の下において輸入取引がされるとした場合の輸入港における価格(関税定率法4条1項)を記載すべきであって,貨物を輸出入する者の一方的主観的な価格を記載することは許されないというべきである。してみると,被告人及び被告会社の各所為が関税法113条の2に当たるとした原審の判断は相当であって,原判決には所論のような法令の解釈適用の誤りはないから,論旨は理由がない。