大判例

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東京高等裁判所 昭和61年(ネ)3569号 判決

商法は、株主に対してその投下資本の回収の自由を確保するため、株式の譲渡の自由を保障しているところ(同法二〇四条一項本文)、株式を譲り渡すには、株券の交付を要するものとされているから(同法二〇五条)、株式会社は必ず株券を発行することを要するものと解される。

昭和二五年法律第一六七号をもって改正された商法二二六条一項も、株式会社はその成立後又は新株の払込期日後遅滞なく株券を発行することを要する旨明文をもって規定し、従来株券の発行が遅れたりあるいは全然発行されないまま放置されたりしていて株主の保護に欠けることがあったことに鑑み、その発行を促進して株式の譲渡などに支障なからしめようとしている。

したがって、株式会社が株券を発行しないときは、株主は株券の発行を請求することができ、会社が企業の平和の維持、会社乗取等の弊害の防止等の見地から株式の自由譲渡を禁止し、又は制限する手段として、株主との間に株券を発行しない旨の合意をしたとしても、かかる合意は商法が株主に対して強行的に保障する株式譲渡自由の原則に牴触する合意としておよそ効力を有しないものと解される。

もっとも、商法二二六条の二は、株主は記名株式について会社に対し株券の不所持の申出をすることができる旨規定しており、株主から株券の所持を欲しない旨の申出がなされたときは、会社は株券の発行をすることができないことになるが、この規定は、株式の流通よりもむしろ株式を安全に保持することを望むいわゆる安定株主ないし固定株主を株券の喪失の危険から保護するために設けられたものであるから(このことは、株券の所持を欲しない旨の申出をした株主がその後何時でも株券の発行を請求できることとされていること(同条四項)からも、明らかである。)、かかる規定の存在は、会社がもっぱらその利益のために株主の株券発行の請求を拒否しうるような合意の有効性を根拠づけるものとはなり得ない。なお、商法は、会社はその定款をもって株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨を定めることができることとしているが(同法二〇四条一項ただし書)、かかる制限規定を設けた会社も株式の譲渡そのものを拒否することはできないし、株式を譲渡するについても、株券の交付を要することに変りはないから、かかる規定の存在もまた、株券の不発行の合意の有効性を根拠づけるものとはなり得ないことはいうまでもない。

そうすると、仮に控訴人ら主張の各合意の事実が認められたとしても、かかる合意は、株式の譲渡自由の原則に照らしておよそ無効であるから、控訴人らは株券不発行の合意の存在をもって、被控訴人らの株券発行の請求を斥けることはできないというべきである。

(鈴木 時岡 宇佐見)

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