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東京高等裁判所 昭和61年(ネ)843号 判決

2 ところで、民法五〇四条の規定は、「民法五〇〇条ノ規定ニ依リテ代位ヲ為スヘキ者」(以下「法定代位権者」という。)がある場合において、債権者の故意又は懈怠による担保の喪失又は減少により法定代位権者が償還を受けられなくなり、その当時法定代位権者が有していた代位により得られるべき利益を害されることになったときに、償還を受けられなくなった限度でその責任を免れることとして法定代位権者を保護することを目的として設けられたものである。したがって、抵当不動産の所有権を取得した第三取得者は、取得前の債権者の担保権の喪失又は減少については、これにより何ら右のような利益を害されるものではないから、右規定に基づく免責を主張することはできないものと解すべきである(言い換えれば、債権者は、現に存在する法定代位権者のために担保の保存義務を負うものであるが、将来現われるであろう法定代位権者に対してまで担保の保存義務を負うものではない。)。

前記認定の事実によれば、控訴人は、被控訴人が渋谷物件の抵当権を放棄した後に共同担保の抵当不動産である品川物件の所有権を回復したものであるから、被控訴人に対し、前記規定による免責を主張することはできないものというべきである。

3 なお、控訴人は日本開発から物上保証人又はそれに準ずる地位を譲り受けた旨主張するが、前記1認定の事実によれば日本開発も物上保証人ではなく抵当不動産の所有権の第三取得者にすぎないものというべきであるから、右主張は失当である。

また、控訴人の右主張を日本開発から同社の有する第三取得者としての民法五〇四条の規定による免責を受ける利益を譲り受け又は品川物件の所有権の回復に伴い当然に右の免責の利益ないし効果を承継した旨の主張と解するとしても、≪証拠≫によれば控訴人は和解により日本開発から品川物件の所有権を回復したにとどまり日本開発の有する右規定による免責の利益を譲り受けたものとは認められないばかりでなく、そもそも、右規定による免責は、所定の要件のもとに法律上当然に現に法定代位権者たる地位にある者に対し付与されることになるものであり、その効果は、直接債権者に債務を負担しない抵当不動産の第三取得者の場合には、債権者との関係において、その財産が担保となっているために負担している当該第三取得者の責任を右規定の範囲内において免れさせるにとどまるものであって、性質上これを債権のように譲渡することができるものと解することはできないし(右規定による免責の利益ないし効果は、債権のように、第三取得者が債権者に対し一定の行為不行為を要求することができるという性質のものではないし、また債権者も第三取得者に何ら債務を負担するものではなくただ免責される部分について権利を行使することができないというにすぎない。)、また、抵当不動産の所有権の移転により当然に右規定による免責の利益ないし効果が随伴するものと解することもできないから、右主張も失当である。

(西山 越山 武藤)

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