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東京高等裁判所 昭和61年(ラ)128号 決定 1986年12月26日

抗告人 国

代理人 窪田守雄 菊地俊寛 ほか二名

相手方 更生会社大英写真工業株式会社

管財人 高知尾清治

主文

一  原決定中、本件更生計画において抗告人の債権のうち金三八九万四、三一〇円を免除する旨定めた部分を認可した部分を取消す。

二  本件更生計画について別紙(四)のとおり変更した上、これを認可する。

三  抗告人のその余の抗告を棄却する。

四  手続費用は原、当審を通じ相手方の負担とする。

理由

第一本件申立及び相手方の意見

本件申立の趣旨及び理由は、別紙(一)「即時抗告申立書」記載のとおりであり、これに対する相手方の意見は、相手方代理人作成の別紙(二)「昭和六一年四月一一日付上申書」記載のとおりである。

第二当裁判所の判断

一1  本件記録によれば、次のとおり認められる。

更生裁判所である東京地方裁判所八王子支部は、昭和六〇年四月三〇日付を以て抗告人(所管庁東京国税局長)に対し同年四月四日付更生計画案につき会社更生法一二二条一項に基づき同意を求めた。右更生計画案中、東京国税局に関係する部分は、第一章第四節「更生計画の基本方針」(3)ロにおいて、「租税債権については、更生計画開始決定前の延滞金加算金、延滞処分費等本税以外の債権は免除を受ける」とし、同更生計画案別表10―4「租税債権」の「番号10、債権者名 東京国税局」欄において「確定債権額一七四五万九二四〇円、免除額三八九万四三一〇円、弁済額一三五六万四九三〇円」とし、弁済額は一〇年間に分割して納付する旨定めたものであつた。抗告人は、昭和六〇年八月二八日付で、(一)更生手続開始決定日前の加算税、延滞税については該当法条がなく免除できない。(二)国税債権については、更生手続開始決定日から起算して一年を経過する日までの期間、及び更生計画認可の日から納付の日までの期間にかかる延滞税についてのみ免除できるだけである。(三)更生計画案では国税債権と社会保険税については別異の弁済方法をとつているが、両者は共に優先的更生債権であるからその弁済計画は同列に扱われるべきであり、国税債権の弁済計画は「昭和六〇年一一月末日を第一回とし毎年一回(一一月末日)を納付日と定め昭和六二年一一月末日までの三回に均等割して現金で納付する」と定めるべきである、旨の意見を付して更生計画案に対し不同意である、との意見を開陳した。しかるに、更生裁判所は、昭和六一年二月四日、前記更生計画案を一部修正したものの、抗告人に関係する部分は抗告人の右意見を顧慮することなく前記の原案通りとして更生計画認可決定をした。

2  会社更生法一二二条一項後段によれば、国税徴収法により徴収することのできる請求権について、減免又は三年をこえる期間の納税の猶予をするには徴収の権限を有する者の同意を得なければならないと定めている。本件において、更生裁判所は、国税の減免を内容とする更生計画案につき、徴収権者たる抗告人が書面により不同意の意見を開陳しているのにもかかわらず(もつとも、抗告人が不同意の理由として主張するところのうち、更生手続開始決定日前の加算税、延滞税等については該当法条がなく免除できない、とする点については、会社更生法一二二条三項の規定の存在を看過したものというべきである)、国税の減免及び三年を超える猶予を内容とする更生計画を認可したものであるから、本更生計画は、同法二三三条一項一号所定の「更生手続が法律の規定に合致していること」という認可要件を欠くものであつたのであり、この点において原決定は違法であるというほかはない。

3  相手方は、抗告人が右不同意の意見を開陳した后である昭和六〇年九月二六日、及び昭和六〇年一月二三日開催の相手方更生会社関係人集会における東京国税局職員の言動をとらえて、抗告人が先にした不同意の意見を撤回し、本更生計画案に同意するに至つたものである旨を主張し、仮にそうでないとすれば、抗告人の不同意は裁量権の逸脱である旨主張するけれども、本件記録にあらわれた本更生手続の経緯に照らして検討すると、いずれの主張事実も認めることができない。

4  ところで、抗告人の同意が得られなかつた場合であつても、同法二三三条二項の規定に基づき同条項所定の要件の存するときは、計画認可の決定をすることができるのであるが、原決定が右条項によつて認可決定をした旨を判文上認めることはできず、又、本件記録を検討しても同条項所定の要件が存することを認めるに足りない。

二1  抗告人は、当審において、別紙(三)3項のとおり、不同意の一部を撤回して同意するに至つた。そこで、本件計画のうち同意の得られた部分(本税の猶予期間)については違法は治癒されたことになる。

2  次に、別紙(三)1項前段のとおり、不同意の存する部分(延滞税・加算税の免除)については依然として違法が残つていることになる。そして、この点については同法二三三条二項を適用すべき場合であるとは認められないから、本件計画中のこの部分は削除されるべきであり、原決定中これを認可した部分は取消を免がれない。

3  そうすると、右金員は弁済されなければならないことになるがその期間については本件計画中に定めはない訳である。この点について抗告人は別紙(三)1項後段のとおり納付を猶予することに予め同意しており、その期間は妥当と認められるので、本件計画中関係部分を主文二項のとおり変更することとする。

4  右2及び3を超える抗告人の抗告は理由がないから棄却することとする。

5  主文四項につき、民訴法九六条八九条九二条適用。

(裁判官 武藤春光 菅本宣太郎 秋山賢三)

別紙(一)即時抗告申立書 <略>

別紙(二)「昭和六一年四月一一日付け上申書」 <略>

別紙(三) <略>

別紙(四)

1 本件更生計画第一章第四節更生計画の基本方針3ロの末尾に「(ただし、東京国税局分金三八九万四三一〇円(延滞税・加算税分)を除く。)」を加える。

2 同節中の債権総括表及び弁済計画の中の各

「54.402.432」を「58.296.712」と、各

「679.914.236」を「683.808.546」と、それぞれ訂正し、弁済計画の租税債権の弁済期間と内容欄及び第二章第三節(2)イの各末尾に、「たゞし、東京国税局分の金三八九万四三一〇円(延滞税・加算税分)については、昭和六一年より同六八年の八年間に均等に分割して納付する。」を加える。

3 本件更生計画別表10―4を次のように修正する。

別表10―4

租税債権

番号

債権者名

確定債権額

免除額

弁済額

第1年度

昭和60年

第2年度

昭和61年

第3年度

昭和62年

第4年度

昭和63年

第5年度

昭和64年

第6年度

昭和65年

第7年度

昭和66年

第8年度

昭和67年

第9年度

昭和68年

一括弁済

10

東京国税局

(17,459,240)

0

17,459,240

(543,180)

1,029,964

1,029,964

1,029,964

1,029,964

1,029,964

1,029,964

1,029,964

1,029,970

(8,676,342)

合計

(44,410,956)

2,888,810

41,522,146

(1,381,746)

1,868,452

1,868,452

1,868,452

1,868,452

1,868,452

1,868,452

1,868,452

1,868,458

(25,192,760)

(注) ( )内の数字は原決定認可どおりである。

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