大判例

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東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)279号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実及び本願発明の要旨、第一、第二引用例の記載事項、本願発明と第一引用例のものとの一致点と相違点が審決認定のとおりであることは当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決取消事由について判断する。

1 成立に争いのない甲第二、第三号証により認められる昭和五九年一一月一五日付手続補正書による補正後の本願明細書及び図面には、本願発明の優先権主張日前すでに、入射X線又はガンマ線を可視光に変換し増倍する装置は知られている旨が記載され、この装置につき「例えばこの装置は本質的にX線およびガンマ線を可視光に変換し、この可視光で可視光増倍器を駆動するようにした変換器から構成されているものと考えることができる。このような変換器の一つの具体例として現用の夜間観察用可視光増倍管のフエース・プレートと接触して希土類けい光体スクリーンを設け、これを周囲光に対して遮蔽する。その場合増倍管の光学系は取り外す。」(甲第二号証明細書一三頁五~一三行)と説明されていることが認められる。

この説明自体から明らかなように、本願発明の対象とする「放射線を可視光に変換する装置」において、「入力放射線を可視光に変換するための手段」により入力放射線が可視光に変換された後、この可視光で可視光増倍器を駆動するための変換器として、光学系の夜間観察用可視光増倍管が用いられることは、本願優先権主張日前当業者にとつて周知のことがらであつたことが認められる。

このことは、成立に争いのない乙第二号証により認められる昭和四七年八月五日発行の特許庁公報所載の日本特許分類の定義において、「赤外線、X線などの不可視輻射線を可視光線に変換する装置のうち、輻射線の衝撃によつて電子放出ターゲツトから発せられる電子像を、電子レンズ系によつて蛍光面上に結像させて可視像として映出する装置に関する事項」は九九C二の「電子望遠鏡」に分類されていること、この「電子望遠鏡」の分類には、「暗視管、像増強管」も含まれるものとされていることによつても裏付けられるところである。

そして、第一引用例が光増幅管を用いた暗視装置に関するものであり、第二引用例がガンマ線カメラの入口に使用される光伝導板の製造方法を対象とするものであることは前示当事者間に争いのない審決認定の第一、第二引用例の記載事項から明らかであるから、右周知の事実に照らせば、両者はその技術分野を共通にするものであり、したがつて、第一引用例に示される技術手段と第二引用例に示される技術手段を組み合わせることは、当業者が容易に想到できることと認められる。

原告が請求の原因四2で挙げる判決は本件に適切なものでなく、原告のこの点に関する主張は採用できない。

そうとすれば、相違点(1)につき、審決がその理由の要点5(一)において述べる第二引用例の構成(第二引用例にこの構成が開示されていることは当事者間に争いがない。)を第一引用例のものに適用して本願発明の構成を得ることは当業者が容易に想到できる程度のことと認めるのを相当とする。

また、相違点(2)につき、放射線源と画像観察部分が一体に結合された装置が通常一般の医療診断器等で周知であることは原告も争わないところであり、この周知の技術手段を第一引用例のものに適用し、相違点(2)に係る本願発明の構成を得ることに格別の発明力を要しないことは明らかである。

したがつて、本願発明は第一、第二引用例の記載に基づいて当業者が容易に案出できる程度のものとした審決の判断は相当である。

原告は、本願発明の目的、効果は第一、第二引用例のいずれにも開示ないし示唆されていない旨主張するが、発明の目的は発明者の主観的意図にすぎないから、これが第一、第二引用例に開示又は示唆されていないとしても、第一、第二引用例から本願発明を想到することの妨げとなるものではなく、原告主張の本願発明の効果は、第一、第二引用例から想到できる本願発明の構成から当然予測される効果を出ないことが明らかであり、予測できない格別の効果を有することは本件全証拠によつても認めることができないから、右原告主張の点は前叙判断を覆えす理由とはならない。

2 以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がなく、その他審決にこれを取り消すべき違法の点は見当たらない。

三 よつて、原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註〕 本願発明の特許請求の範囲第一項は左のとおりである。

入力放射線を可視光に変換するための手段と、マイクロチヤンネル・プレート増幅器を含む可視光増倍手段と、前記入力放射線を変換する手段および前記可視光増倍手段を光結合するための手段とを備える装置で前記装置が放射線源と機械的に結合されていて前記可視光増倍手段が真空領域内に収容され前記入力放射線を変換する手段は前記真空領域外に収容され更に前記放射線変換手段が前記可視光増倍手段に機械的に結合されている放射線を可視光に変換する装置。

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