東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)51号 判決
一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。
1 成立に争いのない甲第二号証ないし第五号証によれば、本願発明は、「プラスチツク又はエラストマーを押出機中で連続的に加工する装置に関し」(全文補正明細書第二頁第八行、第九行、昭和五八年一月一一日付手続補正書第二頁第六行、第七行)、「殊に架橋し得る材料を加工する際に使用される」(同明細書第二頁第一〇行、第一一行)もの(右にいう「架橋し得る材料」であるプラスチツク又はエラストマーが熱硬化性樹脂を意味することは、当事者間に争いがない。)であるが、ゴム又はプラスチツクを押出し加工する場合の通常の押出機では、それらの材料の「引込み」、「処理」及び「運搬」の作用が一つの帯域で行われ、次いで、その材料は計量帯域及び運搬帯域を経て成形工具へ送られる(同明細書第二頁第一二行ないし第三頁第九行)が、「公知方法では、使用される材料をその全横断面にわたつて均一かつまた一定不変に処理することは困難である。架橋し得る材料を押出加工する場合には、これらの材料を押出機の出口側の近くの特定個所において特定温度にし、一定時間の間正確にこの温度に維持することが重要である。この場合、これらの条件が材料横断面のすべての個所で得られることが重要である」(同明細書第四頁第七行ないし第一五行)との知見に基づき、右要件を簡単な主として機械的手段を用いて満足させ得る装置を提供することを技術的課題とし(同明細書第四頁第一六行ないし第一八行、前記手続補正書第二頁第一〇行、第一一行)、前記本願発明の要旨とする構成を採用し、これにより「消費される全熱エネルギーを、処理すべき材料に作用する機械的力によつて生ぜしめることができる」(同明細書第五頁第一四行ないし第一六行)、「処理範囲は他のすべての作用に左右されずに調節することができる。即ち、温度は所望の値に極めて正確に調節し、一定の時間維持することができる。処理すべき材料内の摩擦力(激しい剪断)により機械的エネルギーが熱エネルギーに変形することによつて温度上昇、特に架橋反応に重要な温度達成を時間的及び場所的に正確に確定することができる」(同明細書第九頁第六行ないし第一四行)、「処理に必要なエネルギーは押出機中で運搬される材料の量に左右されずに調達される」(同明細書第八頁第七行ないし第九行)、「本発明装置では、熱を外部から熱伝導によつて処理すべき材料に加える必要がないという事情は、架橋し得る材料においては、既に押出機内での架橋の危険を極めてわずかに保つことができるという大きな利点を有する」(同明細書第一〇頁第一三行ないし第一七行、前記手続補正書第三頁第一〇行、第一一行)という作用効果を奏するものと認められる。
2 原告は、審決は、引用例には、処理対象プラスチツク材料として熱硬化型のものを示唆する記載がないのにこれがあると誤認した結果、本願発明と引用例記載のものは処理対象プラスチツク材料を異にすることにおいて相違する点を看過し、かつ、両者の相違点(1)について、本願発明におけるように構成することは、当業者ならば容易になし得ることであると誤つて判断したものである旨主張する。
(一) まず、プラスチツク材料として熱硬化型のもの、すなわち熱硬化性樹脂の性質について検討すると、成立に争いのない乙第一号証(瀬戸正二監修「実用プラスチツク用語辞典」株式会社プラスチツクス・エージ昭和四二年一〇月二〇日初版発行、昭和五〇年一月二〇日第二版第四刷発行)によれば、「熱硬化性樹脂」の項に、「熱硬化性のある樹脂のことで、(中略)これらは硬化前には比較的低分子量物質(液状又は固状)からなり、室温で、あるいは加熱によつて流動性(可塑性ともいう)を示すが、硬化剤や触媒、あるいは熱の作用によつて化学反応(硬化反応)を起こし不溶不融性の硬化樹脂(中略)に変化する。したがつて、成形、接着、塗装などの加工操作はこれらの樹脂材料が流動性を失わない間に行なわれる。」(第三六九頁右欄第三九行ないし第三七〇頁左欄第六行)と記載されていることが認められ、また、成立に争いのない乙第二号証(高田重久著「熱硬化性材料成形加工編」綜合化学研究所昭和四六年二月二八日発行)によれば、「1 熱硬化性材料の成形工程とは」の項に、「プラスチツクの成形は、成形材料を加熱加圧して塑性変形(Plastic Deformation)させ所望の製品を得ることである。その成形過程を考えてみると、つぎのように区分することができる。」(第四頁第二行ないし第四行)と記載され、その成形過程の「第一段階、可塑化(Plastication)」(同頁第五行)として、「材料が加熱によつて溶融軟化して粘度が低下し、流動可能な状態になる段階である。このとき、熱硬化性材料では図1―1のように粘度は時間とともに変化する。」(同頁第六行ないし第八行)と記載され、図1―1(別紙(三)参照)をみると、熱硬化性材料は加熱時間の経過に伴い温度上昇による粘度低下と反応による粘度上昇とがあり、両者が総合されて、その粘度は、先ず低下して流動可能域に入り、次いでそれが上昇に転じてこの傾向を続け、やがてはその流動可能域を抜けて硬化していく性質を有することが示されているものと認められる。
右認定事実によれば、熱硬化性樹脂は、その硬化前には液体又は固状であり、加熱により流動性すなわち可塑性を示す性質を有するものであることが明らかである。
(二) ところで、成立に争いのない甲第六号証によれば、引用例は、プラスチツク材料の可塑化機械装置に関するものであつて、その発明の詳細な説明中には、実施例(第五欄第二三行ないし第一一欄第四〇行)として、円錐状粉砕頭部57と円筒部分を有する粉砕軸56、その粉砕軸56を取り囲む筒状粉砕ブロツク66と移送ブロツク51、及び円錐状粉砕頭部57と筒状粉砕ブロツク66との間に形成される円錐シート(環状通路)71にプラスチツクを送入するためのラム室38及びラム41を構成要素として含む可塑化装置12が開示されており、またこの装置の操作及び処理材料に対する作用等について、「粘状または粉状である可塑化すべき材料はホツパ46(「ホツペ」は、「ホツパ」の誤記と認める。)から供給開口42、43を通つてラム室38に供給される。(中略)したがつて材料は前記表面と円錐シート71間の通路72を介して加圧され、そこでこれらの間の相対回転によつて前記材料が成形されやすいようになるための摩擦加熱が起る。(中略)通路72の狭さおよび円錐頭部57の高速回転速度により材料が急速に加熱されかつ可塑化される。」(第九欄第三四行ないし第一〇欄第七行)と記載されていることが認められる。右認定事実によれば、引用例記載のものは、粘状又は粉状(これが固状であることは明らかである。)の可塑化すべき材料を加熱により可塑化させるものであることが明らかであるところ、前記認定のとおり熱硬化性樹脂は、その硬化前には液体又は固状であり、加熱により流動性(可塑性)を示す性質を有するものであるから、引用例記載のものにおいては、その処理対象プラスチツク材料として熱硬化性樹脂すなわち熱硬化型のものをも当然含んでいるというべきである。
引用例記載のものが処理対象プラスチツク材料として熱硬化型のものをも当然に含んでいるものとみるべきことは、前掲甲第六号証によれば、引用例には、(イ)「この発明はプラスチツク材料の可塑化機械装置に関する」(第一欄第三〇行、第三一行)と記載されているほか、引用例の全体にわたり、「プラスチツク」という用語が記載され、「プラスチツク」という場合、通常、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とが含まれること(このことは、前掲乙第一号証によれば、「プラスチツクは分子が三次元的に成長して架橋構造となり、ついには不溶不融の状態に達する熱硬化性樹脂と、線状分子(若干の枝分かれを含む)の集合体である熱可塑性樹脂とに大別される。」((第四五二頁右欄第三一行ないし第三四行))と記載されていることから認めることができる。)、(ロ)「熱可塑性型および熱硬化型の両方を含む射出成型に用いられるプラスチツク材料は高温にて許される温度範囲が広く変る」(第一欄第三六行ないし第三八行)、(ハ)「ある材料は別の状態に変化する前に制限された期間にのみ成形可能温度にて保持されることができることが知られている。このような材料は急速に硬化するかまたは分解して(中略)望ましからざる製品材料を作る。」(第二欄第一五行ないし第二〇行)、(ニ)「更に、ある材料は限られた期間だけ成形可能な温度に保持されるので中間蓄積室を使用すると、そうした材料は成形品に仕上がる前に早期硬化するか破損する。更に、そのような蓄積室は(中略)更に加熱する必要がある。この加熱により、(中略)材料の破壊または硬化が起る。」(第三欄第四行ないし第一二行)、(ホ)「成形に適するように材料を可塑化することができかつ特に急速であつてしかも機械の内部でわずかの劣化や硬化無しに敏感な材料を可塑化することの出来る可塑化機械を提供する」(同欄第一八行ないし第二一行)、(ヘ)「粘状または粉状である可塑化すべき材料は(中略)ラム室38に供給される。」(第九欄第三四行ないし第三六行)、(ト)「機械10が広い種類の材料に用いられるようにするためにその粉砕表面58と円錐形シート71間の直角距離は(中略)広い範囲にわたつて変化させられる。」(同欄第四五行ないし第一〇欄第四行)、(チ)「使用される材料の型により、円錐頭部57の回転軸線に対する傾斜または角度は(中略)範囲内にあればよい。」(同欄第二一行ないし第二三行)、(リ)「その機械10は(中略)前記各種の材料に用いられる。」(同欄第八行ないし第一〇行)と記載されていることが認められることからも裏付けられる。
原告は、右(イ)について、引用例記載のものは、プラスチツク材料の可塑化機械装置であつてプラスチツク材料の熱硬化機械装置ではないから、その処理対象プラスチツク材料は熱可塑性のものに限られることは明白であり、このことは、引用例に記載された処理対象プラスチツク材料はすべて熱可塑性プラスチツクであり、引用例にはこのプラスチツク材料を可塑化することが記載されていることからも裏付けられる旨主張する。
しかしながら、引用例記載のものは、プラスチツク材料を可塑化するまでの処理を行うものであつて、前掲甲第六号証によれば、前記実施例中に、「多くの変形装置が出口開口74から適当な利用手段ここでは射出鋳型へ可塑化材料を送るのに用いられる。ここで射出装置76(第2図)は出口開口74と適当な鋳型部分77間に配置される。」(第七欄第三四行ないし第三七行)と記載され、Fig2(別紙図面(二)参照)には、可塑化装置12の上方に射出装置76とこれに続く鋳型部分77が図示されていることが認められることから明らかなように、この可塑化処理に続く硬化の処理は、例えば右Fig2に図示された鋳型部分において別途行われるものである。前掲甲第六号証によれば、引用例には、「熱可塑性型および熱硬化型の両方を含む射出成型に用いられるプラスチツク材料は高温にて許される温度範囲が広く変る。他方多少の所望のプラスチツク材料、例えば無塑性ポリビニールクロライド、ポリオキシメチレンおよびアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体は特定の温度範囲において成形可能である。」(第一欄第三六行ないし第二欄第四行)と記載され、右に具体的に例示されたものはいずれも熱可塑性樹脂のタイプのものであることが認められるが、右記載は、これらを「特定の温度範囲において成形可能である」ものの例として挙げているにすぎないことは、その記載自体から明白であつて、これをもつて引用例記載のものの処理対象が熱可塑性のプラスチツク材料に限られるとはいえない。したがつて、原告の前記主張は理由がない。
また、原告は、前記(ロ)及び(ハ)の記載について、引用例記載のものとは無関係の一般論を述べたにすぎない旨主張するが、これらの記載は、その記載内容からみて、引用例記載のものに関する説明の一環として、その材料の温度と硬化等との関係を述べているものと認められるから、原告の右主張は理由がない。
また、原告は、前記(ニ)の記載は、熱硬化型のものについてなにも示唆しないのみか、この記載中の「蓄積室」は「可塑化機械に蓄積室を(中略)設けなければならず、その蓄積室は可塑化材料の受容器として使用され」(第二欄第三六行ないし第三欄第一行)るものであるから、「中間蓄積室を使用すると、そうした材料は成形品に仕上がる前に早期硬化するか破損する」における「そうした材料」が熱可塑性プラスチツク材料であることは疑問の余地がない旨主張する。
しかしながら、プラスチツク材料は、熱可塑性樹脂では加熱可塑化後、冷却することにより固化するが、熱硬化性樹脂では加熱可塑化後、さらに温度を上昇すると硬化が進むが、温度が降下しても(その速度は遅くなるにせよ)硬化が進むことは技術常識である(前掲乙第一号証によれば、「実用プラスチツク用語辞典」には、熱可塑性樹脂について、「加熱すると軟化して可塑性を示し、冷却すると固定するプラスチツクを総称していう。」((第三六八頁右欄第二九行、第三〇行))と記載され、また、熱硬化性樹脂について「硬化温度」の項に「熱硬化性樹脂を硬化させる温度、一般に硬化温度が高いほど硬化速度が速く、硬化度も高くなる」(第一六四頁第二〇行、第二一行)と記載され、また、前掲乙第二号証によれば、熱硬化性材料の成形工程の「第3段階、硬化」の項に、「一般に成形温度(金型温度)が高いほど急速に硬化が進み、加熱時間(硬化時間)が長いほど硬化度は高くなる。」((第五頁第一一行、第一二行))と記載されていることが認められ、右記載は前記事項が技術常識であることを示しているものである。)から、引用例の前記(ニ)の記載は熱硬化型のものにも適用される記載であり、「そうした材料」とは熱硬化性プラスチツク材料をも意味するというべきであつて、原告の前記主張は理由がない。
また、原告は、前記(ホ)及び(ヘ)の記載は、熱可塑性プラスチツク材料のみに関する記載である旨主張するが、前記(ホ)には「硬化無しに敏感な材料を可塑化する」と記載されているのであるから、これが熱硬化型のものを意味していることは明らかであり、また、熱硬化型のものは粘状又は粉状の原料を先ず加熱により可塑化して後成形するのが通常であること前述のとおりであるから、前記(ヘ)の記載は正にこのことを示しているものであつて、原告の右主張は理由がない。
さらに、原告は、前記(ト)、(チ)及び(リ)の記載はいずれも熱硬化型のものを示唆するものでないことは明らかである旨主張するが、前記(ト)の記載からみて、機械10は広い種類の材料に用いられるように変化されるものであり、この機械10は引用例記載のものの実施例として示されているのであるから、「広い種類の材料」は熱可塑性及び熱硬化性プラスチツク材料を意図しているものと認められ、(チ)及び(リ)の記載は(ト)の記載と同趣旨の記載であるから、これらの記載が熱硬化型のものをも示唆することは明らかであり、原告の右主張は理由がない。
以上の認定事実によれば、引用例記載のものは熱硬化型のプラスチツク材料をも処理対象とするものであり、本願発明と引用例記載のものとの間に差異はないから、この点において両者間に実質的な差異はないとした審決の認定、判断に誤りはない。
(三) 原告は、審決は、引用例に、処理対象プラスチツク材料として熱硬化型のものを示唆する記載があることを前提として、本願発明と引用例記載のものとの相違点(1)について可塑化された状態のものを直ちに取り出すような構成にすること、換言すれば、本願発明におけるように軸とケースとの間で形成される環状通路の間隔を一定にした状態で可塑化されたプラスチツクを取り出すように構成することは、当業者ならば容易になし得ることであると判断したが、右判断はその前提においてすでに誤つているから、この誤つた前提に基づく右判断もまた誤りである旨主張する。
しかしながら、引用例記載のものは、熱硬化型のプラスチツク材料をも処理対象とするものであり、引用例にはこのことを意味する記載があることは前述のとおりであるから、このことを前提として相違点(1)についてした審決の認定、判断には何らの誤りも存しないことは明らかである。
3(一) 次に、原告は、審決は引用例記載のものは可塑化処理すべき材料が間欠的に供給されるのに対し、本願発明は、円筒形軸3の作動を間欠的に停止させ、可塑化された材料を射出装置に間欠的に供給するものでない点において相違することを看過した旨主張する。
しかしながら、前掲甲第六号証によれば、引用例には、「この発明の可塑化装置が射出機械に使用されるときよりもむしろ押出ダイに供給するときに使用される場合に、送りラムすなわち第3図のラム41または第6図のラム41Cは連続的に作動するねじによつて置き替えられる。この目的のねじはラムであるより多少有効でない圧力生起装置であり、大抵の押出成形に十分有効である。」(第一六欄第三行ないし第九行)と記載されていることが認められるから、引用例記載のものはその一態様として押出成形用にも使用されるものであり、この場合、そのラムは連続的に作動するねじ、すなわちスクリユー(このねじがスクリユーを意味することは、原告の認めて争わないところである。)に置き換えられ、そして押出成形に用いられるスクリユーは成形用材料を通常連続的に押出す(成形条件が安定すれば無限連続的に成形を行うことを可能にする)ためのものであることは当業者であれば当然に認識している技術常識に属する事項であるから、引用例記載のものをこの態様において用いるときは、その材料はスクリユーにより連続的に、すなわち間欠的にではなく供給され、粉砕頭部57は連続的に回転されて可塑化処理が行われ、可塑化処理後適当な押出ダイに送られることが明らかである。
そして、引用例記載のものの右態様におけるスクリユーは本願発明における円筒形軸3に相当するから、両者間の装置の作動、作用上に実質的な相違はなく、本願発明は円筒形軸3の作動を間欠的に停止させ、可塑化された材料を射出装置に間欠的に供給するものでない点において引用例記載のものとの間に差異はないというべきである。
原告は、引用例中の第二欄第三三行ないし第三欄第一二行、第九欄第三四行ないし第一〇欄第一二行、同欄第三八行ないし第四〇行、第一一欄第五行ないし第九行、第五欄第二〇行ないし第二二行及び第一一欄第二四行ないし第二七行の記載を引用して引用例記載のものは可塑化処理すべき材料が間欠的に供給されるものである旨主張するが、引用例には、前述のとおり、これら原告の挙示する記載個所とは別途に可塑化処理すべき材料が連続的に供給される態様をも採り得ることが記載されているから、原告主張の理由をもつては、引用例記載のものは可塑化処理すべき材料が間欠的にではなく、連続的に供給される態様のものを含むことを否定することはできない。
したがつて、引用例記載のものは、原告の前記主張に係る構成において本願発明と同一であつて、審決は、この点に関する相違点を看過したものとはいえない。
(二) 原告は、審決は、引用例記載のものが本願発明の「押出機と剪断機の処理部とは互いに左右されずに作業し、剪断機の処理部は押出機の流動量に左右されずに調整することのできる回転数で運転することができる」構成を有しないことにおいて本願発明と相違することを看過した旨主張する。
しかしながら、前掲甲第六号証によれば、引用例に実施例として示された前記2(二)認定の装置は、ラム41と粉砕軸56とがそれぞれ往復動装置14と回転装置13とに連結されており、これら両装置はそれぞれ独立しているから、ラム41と粉砕軸56とは互いに左右されず作動するものであり、このことはラム41を前記3(一)認定のねじ、すなわちスクリユーに置き換えた態様においても同様であると認められるから、引用例記載のものにおいては、スクリユーで作動される押出部と粉砕軸56を通して作動される処理部(移送ブロツク51、円錐シート((環状通路))71、粉砕頭部57等から成る)とは互いに左右されずに作業するものである。そして、前掲甲第六号証によれば、引用例には、「その粉砕軸56の回転速度の典型的な範囲は五〇〇ないし二〇〇r・p・mであるが、勿論それより遅いかまたは速い速度も必要ならば選択されうる。」(第九欄第二七行ないし第三〇行)、「その機械10は更にラム41、92のラム圧力および軸56の回転速度を変化して前記各種の材料に用いられる。」(第一〇欄第八行ないし第一〇行)と記載されていることが認められるから、引用例記載のものは、本願発明と同様に、前記処理部が押出機の流動量に左右されずに調整することのできる回転数で運転することができるものというべきである。
したがつて、引用例記載のものは、原告の前記主張に係る構成において本願発明と同一であつて、審決は、この点に関する相違点を看過したものとはいえない。
原告は、本願発明は、前記主張に係る構成により請求の原因2(二)記載の作用及び効果を奏するが、引用例記載のものは本願発明とこの点に関する構成を異にし、本願発明の奏する右作用及び効果を奏し得ない旨主張する。
しかしながら、引用例記載のものは、熱硬化型のもの、すなわち架橋(網化)反応するものをも処理対象とし、本願発明と同様、「押出機と剪断機の処理部とは互いに左右されずに作業し、剪断機の処理部は押出機の流動量に左右されずに調整することのできる」構成を備えているものであること前述のとおりである以上、原告が主張する本願発明の右構成によつて奏し得る作用及び効果は、引用例記載のものにおいても当然に奏し得ることが明らかであるから、原告の前記主張は理由がない。
4 以上のとおりであるから、本願発明は引用例に記載された発明に基づき容易に発明をすることができたものとした審決の認定、判断は正当であつて、審決には原告の主張する違法はない。
三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却することとする。
〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。
剪断機の処理部が連続的に運搬する押出機に後接続している架橋し得るプラスチツク又はエラストマーを連続的に加工する装置において、押出機と剪断機の処理部とは互いに左右されずに作業し、剪断機の処理部は押出機の流動量に左右されずに調整することのできる回転数で運転することができ、処理すべき前記材料を取囲みかつ相互に相対的運動をする壁部分が、軸及び該軸を一定間隔で同軸に取囲むケースからなり、該軸及びケースは円筒形又は円錐形に構成されており、相対的運動は処理すべき材料を取囲む壁部分の回転及び/又は振動によつて行ない、機械的力の大きさは連続作業の間処理すべき材料を取囲む壁部分間の相対速度を変えることによつて変えることができ、その際処理すべき材料に作用する機械的力が少なくともこの材料を加工するのに必要な熱量の大部分を供給することを特徴とする、架橋し得るプラスチツク又はエラストマーを連続的に加工する装置。