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東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)57号 判決

(争いのない事実)

一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨及び本件審決理由の要点が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 本件審決は、以下に説示するとおり、先願発明の構成を誤認した結果、本願発明との対比判断を誤り、ひいて、本願発明は先願発明と実質的に同一であるとの誤つた結論を導いたものであるから、違法として取り消されるべきである。

前記本願発明の要旨に成立に争いのない甲第二号証(本願発明の特許願書並びに添付の明細書及び図面)、第三号証(昭和六〇年一月七日付手続補正書)及び第四号証(同年八月一七日付手続補正書)を総合すれば、本願発明は、携帯可能な給油量表示器を備えた給油装置に関するものであつて、従来の給油所に備えられたこの種装置は、地上に設置され、あるいは給油ノズルを天井から垂下させるものであるが、自動車の車体に遮られて給油者及び顧客が給油量表示器を充分に確認できない場合があり、また、給油者の便宜のため、給油ノズルに給油量を表示する手許カウンターを内蔵したものや給油ホースに手許カウンターを取り付けたものも用いられているが、このような手許カウンターは給油者しか見ることができないほか、給油ノズルや給油ホースと一体であるため、給油姿勢によつては給油者にも見づらいものとなつてしまう欠点があつたところ、本願発明は、右の問題点を解消することを発明の目的ないし課題とし、前記本願発明の要旨記載(明細書の特許請求の範囲第一項の記載に同じ。)のとおりの可搬手許表示器を設けたことにより、所期の目的を達し、手許表示器を給油ホース及び給油ノズルとは別個に設けた構成により給油ノズル及び給油ホースの構造を簡略化することができ、手許表示器を独立に持ち運び可能とした構成により、給油中においても、給油者あるいは顧客が車両内や給油地点など自由な位置で該表示器を手にとつて刻々給油量を確認することができ、また、可搬手許表示器が自動車車体への取付部を有する構成により、同表示器を自動車車体(特に窓ガラス)に取り付けることが可能となり、壁面の高所に設けられた給油量表示器が車内におる者の死角に入つても、手許表示器によつて刻々変化する給油量を知ることができ、かつ、車内におる者は右手許表示器を手に持つ必要はないから、給油者はこれを車内におる者に手渡す必要がなく、単に車体に取り付けるだけで事足り、給油作業を迅速に行い得る効果を奏することを認めることができる。一方、成立に争いのない甲第五号証(先願発明の公開特許公報。同公報が先願発明である昭和五〇年特願第七七六三四号の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「先願発明の明細書及び図面」という。)を示すものであること、並びに先願発明が本願発明の特許出願日前の出願に係るものであることは、原告の明らかに争わないところである。)によれば、先願発明の明細書及び図面には、小型給油量表示計をホースの途中へ着脱自在に設けた給油量表示装置(この記載が明細書及び図面に存することは、当事者間に争いがない。)が記載されており、その明細書の発明の詳細な説明の項によると、先願発明の目的は、従来の給油量表示装置のうち、ノズルバルブの附近に主表示計と別個に小型表示計を設けたものは、表示計をノズルバルブに組み込むか、又はホースに分離不能に取り付けられているため、表示計、ノズルバルブ又はホースのいずれかが故障又は破損した場合には単独に交換することができず不経済であり、また、取付工事の際に表示計がガラスであるため、他物が当たつて破損する等の不都合があつたところ、この欠点を克服することであり、その解決方法として、小型表示計1をホース2に着脱自在に設ける構成を採用したものであつて、右構成を採ることにより、ノズルバルブ3に近い位置のホース2へ、給油しつつ見やすい位置及び方向に表示面を置いて取り付け、これを主表示計4と連動させると、給油に際して表示面が見やすく、給油作業は容易となり、また、ホース2が破損した場合には、表示計1をホース2から取り外し、ホース2を交換したのち表示計1を再び取り付ければよいし、表示計1が破損したり、これを調整する必要がある場合には、これを取り外して交換すればよいという作用効果を奏し得るものであることを認めることができる。被告は、先願発明において、小型給油量表示計は、ホースとは明らかに別体のものであるから、本来ホースとは独立して取り扱うことができ、持ち運び可能のものであり、その明細書に記載された使用態様はあくまで一つの使用態様にすぎず、これをもつて右表示計が持ち運び可能でないとすることはできない旨主張するが、前認定の先願発明の目的、解決方法及び作用効果に徴すれば、先願発明の明細書及び図面に、小型給油量表示計を、ホース及びノズルバルブとは独立して持ち運び可能とし、かつ、ホース及びノズルバルブと離れて任意の場所で使用し得るとする本願発明の技術的思想が開示されているものとは到底認めることはできず、また、先願発明に開示された、表示計をホースに着脱自在とした技術的思想から表示計をホースから独立して取り扱うことが自明であるとみることもできないから、被告の叙上主張は、採用することができない。なお、被告は、ホースとは独立して小型給油量表示計を取り扱うことができるものは周知である旨主張し、この点の証拠として乙第一号証を挙示するが、成立に争いのない乙第一号証によれば、同号証には、主表示計と遠隔副表示計を有する給油機が示され、遠隔副表示計はホース及びノズルと離れた位置に存するものの、右副表示計が持ち運び可能であつて、自由な位置で使用する態様について記載されているものと認めることができないから、同号証は、被告の右主張を裏付けるものとはいい難いし、その他前認定を覆し、被告主張の事実を認めるに足りる証拠はない。

叙上認定説示したところによれば、本願発明においては、手許表示器が給油ホース及び給油ノズルとは独立に持ち運び可能な構成であることを必須の要件とするのに対して、先願発明がこの点についての技術的思想を欠くことは明らかであるから、その余の点につき判断を加えるまでもなく、本願発明をもつて先願発明と実質的に同一であるとすることはできず、したがつて、これと結論を異とする本件審決は、その認定判断を誤つたものというべきである。

(結語)

三 以上のとおりであるから、叙上の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、理由があるものということができる。よつて、これを認容することとする。

〔編註その一〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

基端が流量計に連通された給油ホースの先端に給油ノズルを接続した給油装置において、流量計によつて計測された流量に比例して信号を発する発信器と、該発信器よりの信号を受けて給油量を表示し、給油ホースと給油ノズルとは独立に持ち運び可能な自動車車体への取付部を有する可搬手許表示器とを設けたことを特徴とする給油装置。

(別紙図面(一)参照)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面(一)

<省略>

<省略>

<省略>

別紙図面(二)

<省略>

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