東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)66号 判決
一 請求の原因一ないし三、引用例の記載内容及び本願発明と引用例記載の発明との一致点が審決の理由の要点2及び3摘示のとおりであること、引用例記載の発明による活字ピツチの判別方法が請求の原因四、1のとおりであることは当事者間に争いがない。
二 審決が引用例記載の発明として摘示した本願発明の判別方法も当事者間に争いがないが、前記当事者間に争いのない本願発明の要旨及び成立に争いのない甲第一号証の一、二(本願明細書、同補正書)によれば、本願発明において活字搬送体の種類とは、文字種のほか活字ピツチ(圧縮ピツチか標準ピツチか)を含むものであること、右判別方法は本願発明の活字ピツチに関する実施例であり、別紙図面(一)に即していえば、先頭マーク4を検出後判別マーク7を検出するまで何個の活字マーク3(各活字マーク間の距離は一定である。)をカウントしたかによりピツチの種類を判別していることが認められる(別紙図面(一)(A)のピツチでは活字マーク二個をカウントし、同(B)のピツチでは同マーク一〇個をカウントしている。)。そして、前記本願発明の要旨によれば、ピツチの種類を判別するための判別マークの位置検出の方法については特段の限定はないから、本願発明における判別マークの位置検出の方法は右のような活字マークのカウントによる判別方法に限られるものでないといわなければならない。
三 前記当事者間に争いのない引用例記載の発明の活字ピツチの判別方法と成立に争いのない甲第三号証(引用例)の第10図、第11図、第31図及び「第31図は文字パルスと原位置パルスの波形と、第5図、第6図に表わされている回路のタイミング線図を表わす。文字パルスの波形は標準ピツチ・バンド、圧縮ピツチ・バンドのすべての文字についてサイン形状である。原位置パルスは標準ピツチに対しては実線で表わされ、圧縮ピツチ・バンドが使用されている場合は点線で表わされているような原位置パルスが追加される。該パルスは第一の原位置パルスの発生から約一ミリ秒後に発生される。トランジスタQ4、Q5の出力は原位置パルス・ラツチのタイミングとともに表わされている。標準または圧縮ピツチ検出器(すなわち、原位置トリガ・ワンシヨツト、圧縮ピツチ遅延ワンシヨツト、圧縮ピツチ・ワンシヨツト)の出力は第二の原位置パルスが発生した場合に、圧縮ピツチ・ラツチをセツトするよう刻時され、さもなければ、圧縮ピツチ・ラツチはリセツトのままに維持されて標準ピツチ・バンドの存在を表わす。」との記載(一七〇頁左下欄七行ないし右下欄五行)によれば、引用例記載の発明では、活字ピツチの種類にかかわらず設けられている第一の原位置マーク(本願発明の先頭マークに相当する。別紙図面(二)第10、第11図の202)検出後、第二の原位置マーク(本願発明の判別マークに相当する。別紙図面(二)第11図の203)が検出されればその活字ピツチは圧縮ピツチであり(別紙図面(二)第11図)、同マークが検出されなければその活字ピツチは標準ピツチ(別紙図面(二)第10図)であると判別されるが、活字搬送体がプリンタ上を走行する速度は活字ピツチの種類に関係なく一定であり、第二の原位置マークが存在する場合には、同マークは第一の原位置マーク検出後定められた時間(第31図の実施例によれば一・〇八ミリ秒)経過後に検出されるから、両マーク間の距離は一定であるということができる。
四 このように、引用例記載の発明において、第一の原位置マークと第二の原位置マークとの間の距離は一定であるから、第二の原位置マークの有無の検出は同マークの所定の位置における存否を検出することであるところ、それは本願発明の前記実施例において判別マークが何個目の活字マークのカウント後の位置にあるかを検出すること、即ち判別マークの所定の位置における存否を検出することと技術的意義において変わるところなく、本願発明における判別マークの位置の検出の一方法であるということができる。従つて、審決が両発明の相違点と摘示する活字ピツチ判別方法に実質上の差異を認めることはできない。
五 審決は、引用例記載の発明において原位置マークの数を判別すること(第一の原位置マーク検出後第二の原位置マークの有無を判別すること)は原位置マーク間の活字マーク(文字マーク)の数を判別することにほかならないとして、右発明と本願発明が実質的に同一である旨判断する。
なるほど、前掲甲第三号証によれば、引用例記載の発明では第一の原位置マーク及び第二の原位置マークの配列は各活字群の活字マークの配列と対応しており、実施例である第31図では原位置パルスを発生する第一の原位置マークは最初の活字パルスを発生する活字マークと同じ位置に設けられ、また、圧縮ピツチパルスを発生する第二の原位置マークは第三の活字パルスを発生する(最初の活字パルスから一・〇八ミリ秒後に発生する)位置で発生していることが認められる。しかし、引用例記載の発明においては、前記のように第一の原位置マークを検出してから一定時間(右実施例では一・〇八ミリ秒)経過後に第二の原位置マークを検出するか否かを知ることによりピツチの種類を判別しているのであり、審決が認定するように両原位置パルス間の文字パルスの数をカウントすることによりピツチの種類を判別しているのではない。したがつて、審決の前記判断は両発明の同一性の説示としては誤りといわざるを得ない。
しかしながら、両発明による右のようなピツチ判別方法の差異は実質的なものと認めがたいことは既に述べたとおりであるから、両発明を実質的に同一であるとした審決の結論には誤りがなく、右の差異を理由に両発明が実質的に相違するとする原告の主張は採用することができない。
六 前掲甲第一号証の一、二、第三号証によれば、本願発明及び引用例記載の発明においてその出願人及び発明者がいずれも同一でないことが認められる。
七 以上によれば、本願発明が特許法二九条の二により特許を受けることができないとした審決はその結論において正当である。よつて、本訴請求を失当として棄却する。
〔編註その一〕 本願発明の要旨は左のとおりである。
「交換可能な活字搬送体を有するプリンタにおいて、活字搬送体にその種類を示す判別マークを設け、該判別マークの位置を検出して活字搬送体の種類を判別することを特徴とした活字搬送体の種類判別方式。」(別紙図面(一)参照)
〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。
別紙図面(一)
<省略>
別紙図面(二)
<省略>
<省略>