東京高等裁判所 昭和61年(行コ)42号 判決 1988年3月24日
控訴人(原告) 医療法人社団亮正会
被控訴人(被告) 神奈川県地方労働委員会
補助参加人 総評全国一般労働組合神奈川地方連合川崎地域支部 外一名
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 控訴人は「原判決を取消す。被控訴人が神労委昭和五九年(不)第一七号不当労働行為救済申立事件について昭和六〇年三月一日付をもつてした命令を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とし、参加によつて生じた費用は第一、二審とも補助参加人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。
二 当事者双方の主張は、次のとおり附加するほかは原判決事実摘示と同一である(ただし、原判決八枚目裏末行の「分会」を「分会員」と改める。)から、これを引用する。
1 控訴人
(一) 総評全国一般労働組合神奈川地方連合川崎地域支部及び同支部高津中央病院分会は、川崎地域労働組合及び同支部高津中央病院分会が単に名称変更したものではなく、全く別個の組合である。即ち、総評全国一般労働組合は単一労働組合であつて個人加盟の組合であり、団体加盟の連合体ではなく、地方本部、地方連合、支部、分会というのはその下部組織である。川崎地域労働組合は独立の組合であるから、これが総評全国一般労働組合に団体加盟することはありえない。
(二) 命令書別表記載の二八名のうち本件救済申立事件の審問終結時に分会の組合員であつたものは井出幸子(旧姓関野)、橋本弥、関山進、菱田里美、豊田秀明、川田愛子、長谷川智、松岡延子の八名に過ぎず、富樫ひろ子は昭和五九年九月三〇日退職しており、他の一九名は分会に加盟しておらず、あるいは分会のいう名称変更の時点で脱退している。
2 補助参加人
控訴人の(一)の主張は争う。控訴人の(二)の主張のうち、富樫ひろ子の退職の事実は認め、その余は否認する。
三 証拠関係<省略>
理由
一 当裁判所は、控訴人の本訴請求は理由がなく棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり附加、訂正するほかは、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決一〇枚目裏三行目の「証人増元方の証言及び」を「原本の存在及びその成立に争いがない丙第二〇号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる丙第二四号証、弁論の全趣旨により原本の存在及びその成立の真正が認められる丙第二一号証、原本の存在及び添付文書の成立について争いがなく、弁論の全趣旨により陳述書本文の成立の真正が認められる丙第二二号証、原審証人増元方、当審証人磯部彰二の各証言並びに」と改め、同四行目の「でき、」の次に「右証人磯部彰二の証言中この認定に反する部分は採用し得ず、原本の存在及びその成立に争いのない甲第七及び第八号証の記載は前掲丙各号証に対比すると必ずしもこの認定に反するものとは解されず、他に」を加え、同一一枚目表一〇行目の「第四号証、」の次に「第五二号証、」を加え、同裏一行目の「第四四号証」の次に「(乙第一三号証から第四四号証までについては原本の存在も争いがない。)」を加え、同二行目の「証人増元方の証言」を「原審証人増元方、当審証人磯部彰二の各証言」と改め、同一八枚目裏二行目の「証人増元方」の次に「、同磯部彰二」を加え、同二〇枚目表八行目の「前掲乙第五号証」を「成立に争いのない乙第五号証」と改める。
2 原判決一一枚目表六行目の「結成された」を「結成された労働組合であるが、」と改め、同七行目の「下部組織であり、」を「下部組織でもあり、」と改め、同行の「伴い」の次に「昭和六〇年一月二八日規約を改正して」を加え、同九行目の「別表記載の二八名である。」を「別表記載のうち富樫ひろ子を除いた二七名である。(富樫ひろ子の退職の事実は控訴人と補助参加人間に争いがない。なおこの点に関し、富樫ひろ子が審問終結時に既に退職していて組合員でなかつたとしても、後記認定の本件各不当労働行為のなされた時点では組合員であつた者であるから、同人について金員の支払いを求める部分に関して、組合の本件救済の申立ての利益は審問終結時においても存在すると解され、したがつて、右退職の事実は、本件救済命令の主文に直ちに影響を及ぼすものではない。)」と改め、同九行目の次に行を変えて「(なお、本部が団体加盟を許さないものではないことは明らかであり、支部及び分会の社団性については、単一組織としての内部規約を有する上部団体に加盟することによりその下部組織となることと、従前どおりの地域別又は企業別の組織として独立した社団性を有し続けることは矛盾しないものというべきであり、本件救済申立人である川崎地域労働組合及び同高津中央病院支部と本件救済命令に申立人として表示された支部及び分会との同一性を疑うべき理由もない。)」を加え、同裏五行目の「支部」を「分会」と改め、同一六枚目表八行目の「同日」を「右七月二四日」と改める。
3 同一九枚目表四行目の「いうべく」を「いうべきである。なお、控訴人は、パートタイマー等に対する夏季一時金についての『控訴人において別途決定する』旨及び『現行契約通りとする』旨の前記回答をしたことをもつて、誠実に交渉したと主張するものの如くであるが、『控訴人において別途決定する』というのは、支給する額の決定基準を示していないばかりか、支給するか否かすらも示していないのであるから、分会の要求に対する回答の拒否に等しいものであり、また、原本の存在及びその成立に争いのない乙第四五及び第四六号証並びに前掲各証言によれば、控訴人がパートタイマーとの間に取り交す雇用契約書には、パートタイマー就業規則による旨のほか、夏季及び年末一時金についての定めはなく、パートタイマー就業規則には、その四六条に『社団の事業成績その他により、夏期(六月)および年末(一二月)に賞与を支給することがある。』と定められているのみで、支給の有無はその時々の控訴人の裁量にかかつているものであることが認められるので、『現行契約通り』というのも何らの回答にならないことが明らかであり、控訴人が誠実に交渉に応じたとは到底いい得ないのである。」を加える。
4 同二〇枚目裏末行の「から」の前に「ところ、成立に争いのない乙第四八及び第四九号証、前掲乙第五〇号証、弁論の全趣旨によれば、夏季一時金の支給遅延により分会及び分会員が経済的損失を被つたばかりでなく、控訴人の前示不当労働行為を不問に付するならば、昭和五九年度年末一時金及びその翌年以降の賃上げ、一時金等の交渉にあたつて控訴人の同種行為が反覆される蓋然性があり、それによつて組合員の脱退等分会の組織、運営に重大な影響を生ずる恐れがあるため、分会としては、控訴人の行為が不当労働行為に当たることを明確にする必要があるとして、本件申立を維持したものであることが認められ、一時金の支給完了によつて労使関係が正常化したとみるにはほど遠く、分会は、控訴人の不当労働行為によつてなお存する不利益を是正するについて、救済を求める利益を有することが明らかである」を加える。
二 よつて、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 野田宏 川波利明 米里秀也)