東京高等裁判所 昭和62年(ネ)257号 判決 1988年3月30日
控訴人(原告)
木村ミヨ子
被控訴人(被告)
国
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、金四〇〇四万四六一九円及びこれに対する昭和六〇年六月二八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 控訴の趣旨に対する答弁
主文と同旨
第二当事者の主張
当事者双方の主張は、原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。
第三証拠
証拠関係は、原審及び当審記録中の証拠に関する目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。
理由
一 当裁判所も、控訴人の本訴請求は、失当としてこれを棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり訂正、付加するほかは、原判決の理由説示と同じであるから、これをここに引用する。
1 原判決八枚目表五行目の「一一号証」の次に「(撮影者、撮影対象については当事者間に争いがない)」を加え、同五行目の「弁論の全趣旨」を「当審における控訴人本人尋問の結果」と改め、同七行目の「九号証」の次に「(撮影対象については当事者間に争いがない)」を、同一〇行目の「一〇号証、」の次に「当審における検証の結果(第一回)」を、同一一行目の「除く。)」の次に「、当審における証人大井康光の証言、当審における控訴人本人尋問の結果」をそれぞれ加える。
2 同八枚目裏九行目末尾に続けて「ただし、本件事故当時と同様に、車両の後部荷台に重さ約二〇〇〇キログラムの貨物を積載した状態におけるサイドガードの最低地上高は、前端部が三四・三センチメートル、後端部が四一・八センチメートル、中央部が四〇・二センチメートルである。」を加える。
3 同九枚目表一行目の「二八」を「二五・五」と、同九行目の「だけである。」を「だけで、その外側に鉄製のガードレールが設置されている。」とそれぞれ改め、同一〇枚目表四行目の「べく、」の次に「加害車の後部荷台に重量約二〇〇〇キログラムの訓練資材を積載し、」を、同五行目の「うえ、」の次に「加害車を運転して、」をそれぞれ加える。
4 同一二枚目表四、五行目の「証言するが、」を「証言し、さらに当審における控訴人本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一八、第一九号証、当審における検証の結果(第二回)及び右本人尋問の結果によれば、鳥海千枝子は昭和六〇年一〇月九日と同月二九日にも控訴人に対し同趣旨の供述をしていることが認められる。しかしながら、」と、同一二枚目裏八、九行目の「鳥海証人の右証言部分は」を「鳥海の右各供述部分はいずれも」とそれぞれ改める。
5 同一二枚目裏九行目末尾に続けて次のとおり加える。
「付言するに、鳥海は和夫が加害車の前、後輪で轢過されるのを目撃した旨供述するが、前記のとおり本件加害車は前輪が一軸、後輪が二軸で片側に合計三本のタイヤが装着されているから、仮に和夫が前、後輪で轢過されたとすれば、車輪が三回身体に乗り上げたことになるべきところ、鳥海は和夫の上に車輪が二回のぼつたことをしきりに強調しており、この点で供述に矛盾があること(なお、鳥海は原審において後輪がいくつあつたかわからない旨証言している)、当審における証人大井康光も、加害車の助手席に同乗中、後方に異常を感じて清水に停止を指示した直後、車両後部でやわらかい物体を踏んだ様な体感をとんとんと二度受けたので左側の二つの後輪が和夫を轢いたと思う旨供述しており、二度轢いたとの点は鳥海の供述と符合すること、仮に前、後輪の三つの車輪が和夫を轢過したとすれば、本件加害車の重量が積荷を含めて約九五〇〇キログラムであることや、車輪が人体を轢過したときタイヤと衣服、路面との摩擦により身体の位置が多少移動すること等からみて、身体の損傷部位は相当広範囲に及ぶべきものと推認されるところ、当審における証人中橋満の証言及びこれにより真正に成立したものと認められる甲第一五号証によれば、実際には、和夫の骨折部位は腰部と腹部に集中しており、それ以外の頭部、胸部、下肢などの部位は全く骨折していないことが認められるから、右骨折状況に照らすと、和夫は後輪だけによつて腰部と腹部を二回轢過されたものであると見るのがより自然であること、前掲乙第一、第一〇号証、当審における検証の結果(第一回)によれば、本件加害車の前輪と後輪第一軸とのタイヤの接地点間距離(ただし、荷物を積載しない状態におけるもの)は、三・二二メートルであり、後輪第一軸と第二軸とのタイヤの接地点間距離は約一・一五メートルであることが認められるが、前輪と後輪第一軸との間の空間が相当広く、後輪二軸間の距離も大きいため、この間に人が倒れ込み二つの後輪で轢過された場合、その状況は十分側方から目撃することが可能であり、前、後輪で二回轢かれたと錯覚する余地があることなどに前掲各証拠を総合すると、前輪が和夫に乗り上げた旨の鳥海の前記各供述はいずれもたやすく措信することができない。また、控訴人は、事故時和夫がかぶつていたヘルメツトの傷、事故車による路面の引きずり痕、事故現場の道路幅等をあげてその主張の根拠とするか、原審並びに当審における証拠調の結果によるも控訴人が挙げるような点を認めて前記認定を左右することはできない。」を加える。
二 よつて、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担について民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 田尾桃二 櫻井敏雄 市川賴明)