大判例

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東京高等裁判所 昭和62年(ラ)291号 決定

抗告人は、昭和五一年頃、勤務会社において設計課から営繕課に配置転換を受けたことに落胆し、酒で気を紛らすことが多くなり酒量が増加し、信販会社のクレジットカードを利用してバーやキャバレーなどで飲酒するようになり、昭和五六年頃には信販会社に対する返済に窮し他の信販会社や金融業者から借材して返済するという状態になり、昭和五九年三月頃、弁護士を代理人として一部債権者との間で債務の弁済契約を結んだが、自己の収入(月収手取約二五万円)ではその履行も儘ならず、再び金融業者等から借り入れてはその一部を返済に回し、残りを飲食遊興費に当てていた。抗告人は、さらに親族や知人からも借金をして、その債権者数は約六〇名、債務総額は約二二五八万円に達し、昭和六〇年四月頃には支払不能の状態になっていた。抗告人は、同年五月以降も自己が債務超過であり支払不能の状態にあるのにこれを秘して、数回にわたり、金融業者等に対し勤務会社の交際費を立替払いするなどと虚偽の申告をしたうえ金員を借り受けていた。また、抗告人は、自ら使用する意思がないのに信販会社のクレジットカードを使用して商品を購入し、購入したダイヤモンド、カメラ、テレビ、ビデオデッキなどの商品を買受け直後に換金して費消したり、昭和六〇年頃には自己の債務超過の事実の発覚を免れるためいわゆるサラ金の紹介屋からコンピューターを導入していない金融業者を紹介してもらい金融を受けていた。抗告人は、昭和六〇年一二月一七日浦和地方裁判所川越支部に自己破産の申立をし、同裁判所において昭和六一年四月二二日破産宣告が、同年一二月四日破産廃止の決定がなされた。同裁判所の破産手続における届出債権者数は二三名であり、確定破産債権額は金三〇二七万一三三三円(利息・損害金を含む。)であったが、同年七月七日抗告人所有の居宅(土地・建物)が競売により売却され、債権者日榮ファイナンス株式会社に対し債権額一八七四万九七五三円の内金一七〇三万五三六〇円が配当され、抗告人の残債務額は金一三二三万五九七三円になった。

以上の事実によれば、抗告人は、浪費(破産者の財産状態に対比して不相応な支出)をして過大の債務を負担し、破産宣告前一年内に破産原因たる事実(支払不能の状態)があるのに、その事実がないことを信じさせるため詐術(消極的な態度、不作為により相手方を誤信させる場合を含む。)を用いて信用取引により財産を取得したということができる。

したがって、抗告人には破産法三六六条ノ九第一号(同法三七五条一号)、第二号の免責不許可事由があるといわなければならない。≪中略≫

破産法三六六条ノ九所定の免責不許可事由がある場合でも、債権者に対する加害の程度と破産者の不誠実性が軽微であると認められる特段の事情があるときは、裁判所は裁量によって免責を許可することができるものと解するのが相当である。

これを本件についてみると、前認定の抗告人の債務額、債権者の数、借入れの動機、融資申込の態様、借財を重ねた期間、回数、借入金の使途、債務弁済の状況、購入商品の換金費消などの事実に鑑みれば、抗告人の債権者に対する加害の程度と不誠実性は軽微であるとは到底いえず、一件記録により認められる債権者の大半がサラ金業者と信販会社であってサラ金等の利用者の多くが支払困難な状態にあってこれを利用することを知悉していること、本件免責の申立につき正式に異議の申立をした債権者はいないこと、抗告人は購入して間もない自宅(土地・建物)を競売により失い、債権者から厳しい取立を受け勤務会社を退職せざるを得なくなり転職したこと、抗告人はこれを機会に更生を誓っていること及び免責制度の社会政策的機能などの諸事情を考慮しても、抗告人につき裁判所の裁量により免責を許可するのは相当でないといわなければならない。

(舘 牧山 小野)

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