東京高等裁判所 昭和62年(ラ)367号 決定
そこで検討するに、本件記録によれば、抗告人は、従前からの残債務六〇〇万円を負っていたが、昭和五三年五月から株式会社エス・ブイ・シーに入社したものの、その収入だけでは生活できず、そのためその間に新たに約八八〇万円の債務が累積したため、昭和五八年一二月二〇日勤務先から一五〇〇万円を借り入れ(利息年八・三パーセント、七年償還)、それらの債務を清算したが、そのため勤務先からの給料は実質手取り約一八万円になったこと、抗告人は、右のような状況のもとで、同年一〇月一九日株式会社住宅総合センターから、同会社が競落により取得した東京都八王子市散田町三丁目六六〇番五の宅地及びその地上の鉄骨造陸屋根三階建店舗共同住宅を、その一階で弁当惣菜販売店を営み、一階の残部及び二階を賃貸し、その収益によりローンを返済する予定のもとに、代金五〇〇〇万円(株式会社住宅ローンサービスから右不動産に抵当権を設定して代金の全額をローン借入れ、利息月〇・八一パーセント、二五年償還、返済額月約四七万円)で買い受けたが、右買受け後第三者が一、二階を占拠していることが判明し、その明渡しの交渉が難航し、昭和五九年一〇月四〇〇万円の立退料を支払うことによって漸くその明渡しを得たこと、これより先同年六月三〇日、抗告人は国民金融公庫から、右不動産に抵当権を設定して店舗設備及び開業資金として一五〇〇万円(利息年七・九ないし七・八五パーセント、八年八月償還、返済額月約二五万円)を借り受けたこと、抗告人は、同年六月ころから株式会社住宅ローンサービスに対する分割金の支払いができず、昭和六〇年二月一五日には同会社から右不動産につき抵当権実行による差押えを受けたこと、抗告人は昭和五九年一〇月から一階店舗部分等の工事を始め、更に、建物全体の改築資金等として同年一一月ころから昭和六〇年三月にかけて約一四〇〇万円(昭和五九年一二月一五日株式会社オリエント・ファイナンスから二五〇万円(利息年四六・二パーセント、五年償還)、昭和六〇年二月一三日株式会社大信販から三〇〇万円(利息年三六・六パーセント、五年償還)、同年三月二七日日立クレジット株式会社から三〇〇万円(利息年三九・三二パーセント、五年償還)のほか数次のサラリーマン金融からの借入れを含む。)の借入れ等をし、同月二七日店舗を開店したが、一か月七〇万円程度の売上げしかあがらず、約九五七四万円の債務を負担するに至り、同年六月一二日東京地方裁判所八王子支部に自己破産の申立てをし、同年一〇月八日破産宣告及び同時廃止の決定を受けたことが認められる。
本件記録によれば、抗告人につき浪費及び賭博行為があったことは窺われるが、それが著しく財産を減少し又は過大な債務を負担する原因となったことを認めるに足りる証拠はないので、破産法三六六条の九第一号、三七五条一号に該当する事由があるとはいえない。しかし、右認定の事実によれば、抗告人は、少なくとも、前記株式会社住宅ローンサービスの借入分割金の支払を停止した時点においてはもはや支払不能の状態にあったものというべきであり、抗告人の以後における右借入れは、その金額が高額であることやその放漫さに鑑みると、同法三六六条の九第二号に該当するものといわざるを得ない。
(丹野 加茂 河合)