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東京高等裁判所 昭和62年(ラ)439号 決定 1987年8月31日

抗告人 平井文郎

主文

本件抗告を却下する。

理由

一  本件抗告の趣旨は「原決定を取消し、金澤商事株式会社に対する売却を不許可とする。」との裁判を求めるというものであり、抗告の理由は「抗告人は本件不動産につき買受人が引き受けるべき短期賃借権を有するところ、執行裁判所は物件明細書に右賃借権を売却によりその効力を失わない権利として記載せず、右賃借権は正当なものとは認めない旨記載して本件不動産を売却したから、本件売却許可決定は物件明細書の作成又はこれらの手続に重大な誤りがあるにもかかわらずなされた違法なものであり、取り消されるべきである。」というものである。

しかし、売却許可決定に対しては、その決定により自己の権利を害されることを主張するときに限り執行抗告をすることができるものとされているところ、抗告人主張の賃借権が買受人において引き受けるべきものであれば、たとえ物件明細書にその旨の記載がなく、執行手続上は売却により消滅すべきものと取り扱われたとしても、実体上は売却によって消滅することはないから、抗告人は本件売却許可決定に対して執行抗告をする利益を有しないことは明らかである。

二  よって、本件執行抗告はその利益を欠くものとして不適法であるからこれを却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 鈴木弘 裁判官 時岡泰 宇佐見隆男)

<以下省略>

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