東京高等裁判所 昭和62年(行ケ)57号 判決
二 そこで、審決取消事由について判断する。
成立に争いのない甲第二号証(本願発明の特許公報)によれば、本願明細書の発明の詳細な説明の項には、本願発明の目的及び作用効果について、「ガラス容器において、その首部分に側壁面の少なくとも一部分より外側に突出しているねじ条を備えていると、ガラス容器を例えば受容物の詰め込み機械に導く場合などコンベアベルトで輸送する間に容器のねじ条同志が打ちつけ合つてガラス破損が発生し、その破片の一部が容器内に入り、しかも詰め込み前にその取り除きが不可能であることから廃棄しなければならないという充填包装作業上の不都合が繰り返し発生する。本発明の目的は、このようなガラス容器における破損の受け易さを減少させることにある。」(二欄一〇行~二一行)、「本発明によれば、前述した形式のガラス容器において、その突出ねじ条に対応して膨出部を設けることによつて上記の目的を達成するものである。」(三欄一行~四行)との記載があることが認められる。右記載によれば、本願発明は、原告主張のとおり、受容物の詰め込み過程におけるガラス容器のねじ条部分の破損防止を目的とし、本願発明の構成を採用することにより所期の目的を達成したものであることが認められる。
これに対し、引用例に記載のものは審決認定のとおりの構成を有し、本願発明とは相違点(1)、(2)の点で相違するにすぎないことは前記のとおり当事者間に争いがない。そして、容器の材料としてガラス、合成樹脂、金属等があること及び容器の受容物として食品を当てることは、本願発明の優先権主張日前周知、慣用であることは当事者間に争いがないから、前記相違点(1)、(2)に関し、前記審決認定の引用例記載のねじ条付きの容器の設計に際し、材料としてガラスを選定し(相違点(2))、その受容物として食品を当てる(相違点(1))ことは、慣用技術の単なる利用にしかすぎないことは明らかである。そして、引用例に記載の容器において、本願発明と材料及び用途について同じものを選定すれば、本願発明と同じ構成をもつことになり、本願発明と同じ目的を達成し、同じ作用効果を奏することは明らかである。
また、引用例は前示のとおり意匠公報であり、その記載は美的観点から図示の形状を創作したものであるのに対し、本願発明は、技術的観点から創作したものである点で本願発明と引用例に記載のものが相違することは原告主張のとおりであるが、両者は、いずれも容器という物品の形状に関する創作である点で軌を一にすることは前記のとおり当事者間に争いがないから、意匠に係る物品の通常の使用態様に即して引用例の意匠公報に掲載された図面をみ、そこに開示された物品の形状、構造からその技術思想を認識理解することができることはいうまでもない。
そうすると、審決の相違点(1)、(2)に対する判断は正当であり、原告の審決の取消事由の主張は採用できない。
三 以上のとおり、原告主張の審決取消事由は失当であり、審決にはこれを取消すべき違法な点はないから、原告の本訴請求を棄却する。
〔編註その一〕 本願発明の特許請求の範囲第一項は左のとおりである。
特に食用品の受容々器として用いられると共に胴部及びねじ蓋に嵌め合う外ねじ条を備えた円筒形首部分を具備したねじ条付きのガラス容器において、前記胴部は第一の対向壁部分と第二の対向壁部分とを有し、前記第一の対向壁部分の各外面間の差し渡し距離は前記外ねじ条の外径より小さくかつ該第一の対向壁部分の各外面には前記外ねじ条と等量以上、外側に突出した膨出部が形成され、前記第二の対向壁部分の各外面間の差し渡し距離は前記外ねじ条の外径より大きく形成された外形々状としたことを特徴とするねじ条付きのガラス容器(別紙図面(一)参照)
〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。
別紙図面(一)
<省略>
別紙図面(二)
<省略>