東京高等裁判所 昭和63年(う)1271号 判決
被告人 桑田祐幸
〔抄 録〕
記録及び関係証拠、特に当審において取り調べた検察官作成の電話聴取書によれば、原判決書には理由として刑訴法三三五条一項によって必要とされる罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用が記載されていること、原判決の宣告にあたり原審裁判長は、主文を朗読したうえ、引き続いて理由中、罪となるべき事実の部分を朗読し、証拠の標目の部分につき「罪となるべき事実は被告人らの当公判廷における供述ほか関係各証拠によって認める。」旨を、法令の適用の部分につき「相当法条適用のうえ、云々」との旨を告げていることが認められる。もとより、判決は公判廷において宣告によりこれを告知すべきものであり(刑訴法三四二条)、宣告された内容が判決の内容になるのであるが、判決の宣告をするには必ずしもその全文を朗読する必要はなく、主文の朗読と同時に理由の要旨を告げれば足りる(刑訴規則三五条二項)ところ、原審裁判長の右判決宣告は、原判決書に記載された判決の結論及びその根拠を明らかにし、ことに控訴権を有する者が控訴をするか否かの意思決定をするについて十分な程度に判決の内容を示しているのであるから、法規上必要とされる主文の朗読及び理由の要旨の告知としてなんら欠けるところはなく、原判決に判決の理由の重要部分の欠落があるということはできないから、所論は失当である。
(内藤 藤井 本吉)