大判例

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東京高等裁判所 昭和63年(ネ)3992号 判決

一 当裁判所も、被控訴人の本訴請求のうち、控訴人リヨービ株式会社に対する被告装置及び同装置を使用した写真植字機の製造販売の差止請求及び控訴人リヨービイマジクス株式会社に対する被告装置及び同装置を使用した写真植字機の販売の差止請求、並びに控訴人らに対する控訴人ら占有に係る被告装置及び写真植字機に使用されている被告装置の廃棄請求は、いずれも正当としてこれを認容すべきものと判断するものであるが、その理由は、次に掲げるほか、原判決理由説示と同一であるからここにこれを引用する。

1 原判決二六頁六行目の「右欠点を解消し、」の次に「電磁的なものの操作性と機械的なものの特徴とを合わせ有するようにするため、」と付加する。

2 原判決二七頁五行目の「ことが認められる。」の次に、次のとおり付加する。

「そして、前掲甲第二号証によれば、本件公報の発明の詳細な説明には、第2図による実施例と第5図による実施例の二つの実施例が開示されており、前者は、ラツク押え24は一端(先端)にラツク14、21に係合するナイフ部25を持ち、他端は駆動源27の回転軸26に固着される構成であつて、その動作は駆動源27を駆動すると、回転軸26はスプリング29の力に抗して回転し、ラツク押え24を時計方向に揺動させ、ナイフ部25とラツク14、21を係合させるものであり、後者は、ナイフ部25を持つたラツク押え24aは軸40に回転できるように止められ、その中間部にある取付部41が駆動源27に係合し、駆動源27の回転軸26には回転ローラー43の回転軸になる偏心輪42が取付られ、回転ローラー43は取付部41の長孔44に係合する構成であり、その動作は回転軸26が偏心輪42を回転させると、回転ローラー43は軸40を中心としてラツク押え24aを時計方向に揺動させ、ナイフ部25とラツク14、21を係合させるものであることが認められる。」

3 原判決二七頁九行目の「判断するに、」を「判断する。」と改め、これに続いて次のとおり付加し、同行の「被告装置は、」から三二頁三行目までを削除する。

「前掲甲第二号証によれば、本件発明の構成要件Bは、構成要件Aで規定した駆動源との関係においてラツク押えの取付手段を規定したものであつて、ラツク押えはローターの回転軸に揺動するように取付けられており、このラツク押えは、構成要件Cに規定したように、駆動源すなわちロータリーソレノイドによつて揺動するような動作をするものであることが認められる。そして、機械運動において、揺動とは、「所要の駆動源の付勢により軸(以下「揺動軸」という。)を支点として長手部材が揺れ動く」ことを意味することは技術常識であるところ、これを本件発明に即していえば、右所要の駆動源はロータリーソレノイドであり、長手部材はラツク押えであり、揺動軸は第2図の実施例においては回転軸26、第5図の実施例においては軸40がこれに該当することが明らかである。

右認定事実に基づいて、構成要件Bにおけるラツク押えをローターの回転軸に揺動するように取付けた点の技術的意義について検討すると、ラツク押えは揺動するものである以上、当然に揺動軸を支点として揺動するように構成されているものであつて、より具体的には、揺動軸は通常固定位置に取付けられ、かつ、ラツク押えを揺動可能に保持するように構成されているから、ラツク押えは揺動軸を介して右固定位置に揺動自在に取付けられているということができ、したがつて、揺動という表現の中にラツク押えの取付手段の技術内容が既に包含されているということができる。また、構成要件Bは、「ローターの回転軸に揺動するように取付けたラツク押え」と規定しているだけで、ローターの回転軸とラツク押えの間の機械的結合構造について具体的に規定していないが、前記認定の「電磁的なものの操作性と機械的なものの特徴とを合わせ有するようにした」という本件発明の目的、及び「オペレーターは、騒音に悩まされることなく、軽快に作業を進めることができ、しかも、文字枠固定操作により規定する位置は、経年変化を受けず、かつ、ラツク押え装置の影響を受けない正確なものであり、更に、ラツク押え装置の駆動源は、無接触で運動するから音を発したり故障が起きたりせず、動作する質量も少ないから高速作動が可能となる」という本件発明の作用効果は、ロータリーソレノイドを駆動源として写真植字機における文字枠固定装置に利用した本件発明において、ラツク押えがローターの回転軸の駆動によつて揺動されるように構成すれば達成できることが明らかであるから、構成要件Bは、ラツク押えが、その揺動軸を支点として揺動するようにローターの回転軸に取付けられていれば足りるもの、換言すれば、ラツク押えがその揺動軸を支点として揺動するように、機械的結合構造を介して又は介することなくローターの回転軸に取付けられていれば足りるものというべきである(右構造を介するものは、いわば間接的な取付けであり、右構造を介しないものは、いわば直接取付けである。)。そして、前記第2図の実施例記載のものは、ローターの回転軸26がラツク押え24の揺動軸を兼ねており、ラツク押え24は揺動軸に取付けられていると同時にローターの回転軸26にも取付けられているから、ラツク押えを、その揺動軸を支点として揺動するように機械的結合構造を介することなくローターの回転軸に取付けられているものということができ、また、第5図の実施例記載のものは、ラツク押え24aが揺動軸である軸40に取付けられるとともに、偏心輪42や回転ローラー43、それに長孔44等の機械的結合構造を介してローターの回転軸26に結合されているものであるから、ラツク押えを、その揺動軸を支点として揺動するように機械的結合構造を介してローターの回転軸に取付けられているもので、いずれも本件発明の構成要件Bを満たしているものである。

一方、別紙目録及び同図面によれば、被告装置は、ラツク固定爪10(本件発明の「ラツク押え」に相当する。)は、一端にラツク14に係合するナイフ部を持ち、他端が基板4に取付けた固定爪輪9に揺動自在に取付けられ、揺動杆2は、その一端が駆動源1の回転軸3(本件発明の「ローターの回転軸」に相当する。)に取付けられ、その他端には軸6を介してプルロツド7の一端が取付けられ、プルロツド7の他端はラツク固定爪10の中間部に取付られた構成のものであつて、駆動源1を駆動すると、回転軸3を揺動軸として揺動杆2が揺動し、その揺動によつてプルロツド7が上下に振動し、さらにプルロツド7に連結したラツク固定爪10が固定爪軸9を揺動軸として揺動するものであることが認められる。

右認定事実によれば、被告装置は、本件発明のラツク押えに相当するラツク固定爪10がその揺動軸を支点として揺動するように機械的結合構造を介して本件発明のローターの回転軸に相当する回転軸3に取付けられているものであつて、本件発明の構成要件Bを充足するものである。

控訴人らは、本件発明は、ラツク押えがローターの回転軸に直接取付けられているものに限られ、被告装置のようにラツク固定爪10とローター1Bの回転軸3との取付けは揺動杆2とプルロツド7を介して行われるものを含まない旨主張する。

しかしながら、本件発明の構成要件Bにおけるラツク押えをローターの回転軸に揺動するように取付けたことの技術的意義は前述のとおりであつて、本件発明は、ラツク押えがその揺動軸を支点として揺動するようにローターの回転軸に取付けられているものであれば、その取付けが機械的結合構造を介して行われているものも、機械的結合構造を介することなく行われているものも含むというべきであるから、被告装置が本件発明の構成要件Bを充足することは明らかであつて、控訴人らの右主張は理由がない。」

二 以上のとおりであつて、原判決は相当であり、控訴人らの本件各控訴はいずれも理由がないから、これを棄却することとする。

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