東京高等裁判所 昭和63年(ネ)451号・昭62年(ネ)1915号 判決
原本の存在と成立に争いのない甲第八号証、第一二号証、前掲甲第一三号証、成立に争いのない甲第三〇号証、原審証人小尾公造の証言によって真正に成立したものと認める乙第四号証、弁論の全趣旨によって原本の存在及びその成立の認められる乙第三三号証及び前掲乙第三四号証並びに前掲証人小尾及び山内の各証言によれば、職員の休暇の種類は、公休日、特別非番日(非休)、非番、代休、年次有給休暇(年休)があり、年休は一年間に二〇日与えられ、そのうち一二日を計画年休、八日を自由年休とし、計画年休は毎月一回所属長が計画的に付与することができるものとし、自由年休は本人の請求により与えるもので、その際業務の正常な運営をさまたげるおそれのあるときは、他の日に変更して与えることができるものであり、年休付与月は職員によって異なること、甲府駅では、昭和五七年四月に作成する五月の勤務割予定表から従来の個人別休暇申込簿による休暇申込みを認めず、日単位の休暇等申込簿によることとしたこと、小尾助役は、出札班の勤務割予定表の作成にあたり、右方針に従い、職員に休暇を与えることにしたが、五月は祝日が多く、その代休を入れることができたので、問題はなかったが、六月の勤務割では職員の希望とが必ずしも合致せず問題が生じた。そこで小尾助役は、同年七月の勤務割予定表作成にあたっては従来の個人別休暇申込簿による場合でも休暇申込みがなされたものと取り扱うこととしたこと、山内猛の年休付与月は七月であったところ、同人は申込み期限の前月(六月)二〇日までに従来の休暇申込簿により七日、一一日、一九日、二二日、二五日、二八日、二九日(但し、七日は「アケ休」と、他は単に「休」と記載している。)の七日間を申し込み、これに対し小尾助役は、合計一一日間の休暇を与え、自由年休として七日、一一日、二五日、二九日の四日を割り当てたこと、山内猛は六月二五日勤務割予定表が発表されてから小尾助役に七日の自由年休と八日の公休日を入れ替えた上、八日の自由年休を日勤に変更して欲しい旨申し入れたが、小尾助役はブラ日勤を作ることになるからという理由でこれを拒否し、山内猛も当初の勤務割予定表どおり休暇をとったこと、山内猛について七月の自由年休が四日入れられたことは数字から見ると多いけれども、一般的に六月、七月、八月は祝日がなく、したがってその代休も入らないことから従前より自由年休を多く入れる傾向にあり、他の職員と比べて特に多いともいえないものであること、その他、小尾助役が七月分勤務予定表に定めた山内猛に関する休暇割当てには特段不当とすべき点は存在しないこと、以上の事実を認めることができる。右認定に反する証拠はない。≪中略≫
本件非違行為の契機となったのは、山内職員の七月七日及び八日の休暇の取扱い問題であるが、これは、小尾助役が職責上本人の申出を斟酌して決めた勤務割予定表の休暇について、七日の年休を公休に、八日の公休を年休に変更した上八日を出勤日とすることを求めるものであるところ、小尾助役は、右要求に応じて取扱いを変更すると、職員が一方的に出勤していわゆるブラ日勤を起こす原因ともなりかねないので同要求を容れなかったものであって、もとより相当な措置というべく、同助役が右要求に応じないことには何らの非も認められない。殊に本件非違行為が行われたのは、山内職員が当初の勤務割予定表に従って休暇をとった約一か月後のことであって、行為当日においては、右の要求自体が既に不当であったというべきである。そして、非違行為の態様も、如何に自己の職務が閑散であったとしても、勤務時間中上司の許可なく濫りに職場を離れ、他の職員の職場に入り、小尾助役が執務中にも拘らず長時間に亘って執拗に同人に対し耳元で大声で叫び、つばをかけ、「嘘つき助役」とののしり、果ては足で蹴るという暴行までも加えた所為は、著しく職場の規律を乱すものであって、その違法性は極めて高いものといわざるを得ない。しかも、右行為は、偶発的に発生したものではなく、普段から直属の上司に対し前示4に掲記したような非違行為を繰り返していた被控訴人の勤務態度、性格、意識等のひとつの現れであって、その根は深いものといわざるを得ない。加えて、本件非違行為が行われた当時、控訴人が莫大な累積赤字を抱えその再建策が検討されていたが、控訴人自体の経営のあり方についても世間から批判を浴び、職場規律の確立が叫ばれており、控訴人自身においても厳しい世論の要請の下に従来の悪い慣習を是正し、正常な職場規律を確立すべく努力していた折でもあって、このような時期に行われた被控訴人の非違行為は悪質であると評せざるを得ない。以上の事情に鑑みると、控訴人が被控訴人をその所定の懲戒処分のうち最も重い免職処分(前掲乙第一号証によると、控訴人の就業規則には、懲戒処分として、免職、停職、減給、戒告が定められていることが認められる。)にしたことには正当な理由があり、解雇権の濫用であるということはできない。
(賀集 安國 安齋)