大判例

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東京高等裁判所 昭和63年(ラ)798号 決定

一件記録によれば、抗告人提出の訴状は余事の記載が多く理解に困難を伴うけれども、その内容としては、昭和六一年八月一一日午前九時一二分頃、千葉県夷隅郡大多喜町小谷松八四―一番地先で、抗告人運転の車輛が前方よりセンターラインを越えて蛇行しながら進行してきた被告田辺雅吉運転の乗用車と正面衝突したこと、右衝突により、抗告人が全身に衝撃を受けたこと、事故直後降車して路上に立とうとしたところ左横腰が「ゴクッとするような感じ」を受けてすぐには立てなかったこと、現在でも腰がふらつき痛みを覚えること、車の破損により代車を必要としたことの記載があることが認められる。確かに、右の記載事実だけでは二〇〇〇万円という具体的な金額(物的損害が、精神的損害かの点も含めて)は算定され得ないけれども、一人の者が一個の不法行為によって取得する損害賠償請求権は一個であるとみられる限り、本件訴状には被告の不法行為を特定し、抗告人はこれによって損害を被ったこと、本訴はこの損害の賠償を求めるものであることの記載はあるのであるから、これによって本件訴訟物たる権利を他と識別できる程度に記載しているものと認めることができ、法の要求する請求原因の記載としては充足されているものとみなければならない。原裁判所裁判官がその補正命令において明確にすべきものとした右事故による受傷の部位、程度、損害の内訳は、抗告人の請求を理由あらしめる事実として、随時口頭弁論において明らかにすれば足りるものであって、訴状に必須の記載事項とは解されない。

(安國 清水 伊藤)

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