大判例

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東京高等裁判所 昭和63年(行ケ)175号 判決

一 請求の原因一ないし三は当事者間に争いがない。

二 認定判断の誤り第1点について

1(一) 請求の原因四1(一)の(1)記載の、シヤツターについて「マグサ」と称した場合には、「シヤツタースラツトの呑み込み口をいい、シヤツタースラツトの最下端部に取り付けられる座板がシヤツター全開時に突き当たつて、シヤツターカーテンがこれ以上上昇することのない上限位置を決めるための部位」を意味するものであること及び本願考案の要旨における「マグサ」が右の意味のものであることは、当事者間に争いがない。

(二) 成立について当事者間に争いのない甲第六号証によれば、第一引用例には右の意味における「マグサ」の位置を明示する記載はないことが認められる。

他方、第一引用例(甲第六号証)の一頁2欄一一行から一三行までには、「上から降下してきたシヤツタースラツトは前記可動子に接当して補助レールに導かれ」との記載があり、第1図(本判決別紙第一引用例図面第1図)には、ガイドレール1と補助レール2の連接部(連設部。以下第一引用例の用語に従つて「連設部」という。)の上方にさらに垂直ガイドレール1が延びていることが示されていることは当事者間に争いがない。

また、本願考案の窓シヤツターは勿論のこと、第一引用例記載のシヤツターも、シヤツターカーテンを上限位置から引き降ろす場合、座板を両レールの連設部で振り分けて、垂直ガイドレールにガイドさせるか、傾斜ガイドレールにガイドさせるかのいずれかを選択することになることも当事者間に争いがない。したがつて、第一引用例記載のものにおいて分岐された補助レール側にシヤツターカーテンを引き降ろす場合に、シヤツターカーテン最下端の座板のみが分岐部において傾斜ガイドレール側に振り分けられて、補助レール2側に誘導されてしまえば、座板に続くシヤツタースラツトは座板に追従して傾斜ガイドレール側にそのまま誘導されることになる。

そうしてみると、前記の「上から降下してきたシヤツタースラツトは前記可動子に接当して補助レールに導かれ」との第一引用例の記載中の「シヤツタースラツト」は、座板つまり座板スラツトのことを指しているものと解釈すべきである。

前記甲第六号証によれば、第一引用例記載のものの可動子は、ガイドレールの上方部に連設された補助レールの連設部に設けられたものである(甲第六号証一頁1欄中、行数表示による二六行から三四行まで、同2欄中、実用新案登録請求の範囲の記載、同二頁第1図)ことが認められるから、前記の「シヤツタースラツトは前記可動子に接当して補助レールに導かれ」るという作用は、補助レールの連設部の作用の一つを説明するものと認められるが、座板スラツトは、その補助レールの連設部へ、「上から降下して」来るのであるから、座板が突き当たつてシヤツターカーテンの上限位置を決める「マグサ」の位置は、補助レールの連設部、即ちガイドレール1と補助レール2の連続部の位置にあるのではなく、少なくとも連設部よりも上方にあるものと認めることができる。

よつて、第一引用例記載のものの「ガイドレール1と補助レール2の連続部がマグサ位置にあると解され」る旨の本件審決の認定は、第一引用例の記載を誤認したものである。

(三) 本件審決は、右の第一引用例記載のものの「ガイドレール1と補助レール2の連続部がマグサ位置にあると解され」る旨の認定の後、本願考案の「垂直ガイドレール」「傾斜ガイドレール」は、それぞれ第一引用例記載のものの「ガイドレール1」「補助レール2」に相当するとした上、本願考案と第一引用例記載のものとの一致点として、「シヤツターカーテンを上下方向に案内する垂直ガイドレール上端部の内側案内溝辺と、屋外の傾斜方向に案内する傾斜ガイドレール上端部の外側案内溝辺とをマグサ部で対向状に突合せて、」と認定判断している。このことからすれば、右一致点の認定は、第一引用例記載のもののガイドレール1と補助レール2の連続部において、シヤツターカーテンを上下方向に案内する垂直ガイドレール上端部の内側案内溝辺と、屋外の傾斜方向に案内する傾斜ガイドレール上端部の外側案内溝辺とが対向状に突合せられており、その位置はマグサ部であるとの判断を前提としているものと認められる。

しかし、第一引用例記載のもののガイドレール1と補助レール2の連続部がマグサ位置にあると解される旨の本件審決の認定が誤りであることは前記のとおりであるから、第一引用例記載のものにおいては、「シヤツターカーテンを上下方向に案内する垂直ガイドレール上端部の内側案内溝辺と、屋外の傾斜方向に案内する傾斜ガイドレール上端部の外側案内溝辺とをマグサ部で対向状に突合せ」たものとはいえず、この点を本願考案と第一引用例記載のものとの一致点とした本件審決の認定判断は誤りである。

(四) 被告は、第一引用例記載のもののシヤツターケースは、少なくともガイドレール1と補助レール2の連続部を含む、これよりも上のどこかに設けられていることになる旨及び第一引用例記載のものの補助レールをどの位置に設けるかは、当業技術者の設計事項であるが、第一引用例記載のシヤツターは、ガイドレール1と補助レール2の連続部の上端部分にシヤツターケースの下端部を有するものも当然含まれるものであり、これに限定されるものではないが、このように構成する方がより一般的なことであり、その場合、シヤツターケース下端にあるシヤツタースラツトの呑み込み口であるマグサもこの部分に位置する旨主張する。

しかし、第一引用例記載のもののマグサ部が、補助レールの連設部、即ちガイドレール1と補助レール2の連続部より上方にあることは前記(二)に認定したとおりであり、右主張中、「ガイドレール1と補助レール2の連続部を含む」との部分及び「第一引用例記載のシヤツターは、ガイドレール1と補助レール2の連続部の上端部分にシヤツターケースの下端部を有するものも当然含まれる、このように構成する方がより一般的なことであり、その場合、シヤツターケース下端にあるシヤツタースラツトの呑み込み口であるマグサもこの部分に位置する」との部分は認められない。

また、被告は、開口部の上方にあるシヤツターケースからシヤツタースラツトが降りてくる場合の表現として、「上から降下してきたシヤツタースラツトは」と記載するのは当然の表現であり、このような表現があることを本件審決の認定が誤りであることの根拠にできない旨主張する。

しかし、前記の「上から降下してきたシヤツタースラツトは」はその後に「前記可動子に接当して補助レールに導かれ」と続くものであり、この記載中の「シヤツタースラツト」は、座板つまり座板スラツトのことを指しているものと解釈すべきであること及びその場合マグサの位置は、補助レールの連設部、即ちガイドレール1と補助レール2の連続部の位置にあるのではなく、少なくとも連接部よりも上方にあるものと認められることは、前記(二)のとおりであり、被告の右主張は認められない。

2(一) 本件審決は、第一引用例には、「シヤツタースラツトの両側に設けるガイドレール1を横断面コ字状として、前記スラツトの耳が係合して上下動出来るようにすると共に、このガイドレール1の上方部に、前方に向つて稍下方向に傾斜した補助レール2を連設したシヤツターの分岐部構造。」が記載されていると認定していることは、前記当事者間に争いがない請求の原因三2のとおりであり、前記甲第六号証によれば、第一引用例には、第一引用例記載のものの垂直のガイドレールと補助レールとの連設の態様について、右本件審決の認定の趣旨の記載があり、本判決別紙第一引用例図面のとおりの図面の記載はあるものの、それ以上に、第一引用例記載のもののシヤツターカーテンを上下方向に案内する垂直ガイドレール上端部の内側案内溝辺と、屋外の傾斜方向に案内する傾斜ガイドレール上端部の外側案内溝辺とを対向状に突合せた構成を示す記載はないことが認められる。

そして、右本件審決認定の記載事項から、第一引用例記載のものがシヤツターカーテンを上下方向に案内する垂直ガイドレール上端部の内側案内溝辺と、屋外の傾斜方向に案内する傾斜ガイドレール上端部の外側案内溝辺とを対向状に突合せた構成であるということはできず、また、第一引用例の第1図(本判決別紙第一引用例図面第1図)に図示された垂直のガイドレールと補助レールとの連設の態様は、「垂直ガイドレール上方の外側案内溝辺の途中に切り欠き形成された連設用溝の外側周縁部上部に補助レールの外側案内溝辺上端部の端面を、同連設用溝の外側周縁部下部に補助レール内側案内溝辺上端部の端面を、それぞれ外側から接当させることで連設組付けしたもの」であることは認められるが、これを垂直ガイドレール上端部の内側案内溝辺と、屋外の傾斜方向に案内する傾斜ガイドレール上端部の外側案内溝辺とを対向状に突合せた構成であるということはできない。

したがつて、「シヤツターカーテンを上下方向に案内する垂直ガイドレール上端部の内側案内溝辺と、屋外の傾斜方向に案内する傾斜ガイドレール上端部の外側案内溝辺とを対向状に突合せた第一引用例記載のものの補助レール上端部の外側案内溝辺は、本願考案のように垂直ガイドレール上端部の内側案内溝辺とをマグサ部で対向状に突合せ」た点を本願考案と第一引用例記載のものとの一致点とする本件審決の認定判断は、この点においても誤りである。

(二) 被告は、「第一引用例記載のものについて、両レールの連続部をみてみると、両レールは、各レールの上端部で連続しており案内溝辺の内外関係については、垂直ガイドレールの外側案内溝辺と補助レールの内側案内溝辺は直接接合し、垂直ガイドレール上端部の内側案内溝辺と補助レール上端部の外側案内溝辺とは、互いに接すること無く、相互に向かい合つて位置している(甲第六号証第1図参照)のであつて、このような位置関係は、「対向状に突合わされている」と言い得るものである。本願考案の実用新案登録請求の範囲には、両ガイドレールの連続部に関して、漠然とした表現を用いているだけであるから、第一引用例記載のものの構成をみた場合、右のように解釈し得るものである。」旨主張する。

しかし、第一引用例の第1図(甲第六号証第1図)に記載されたものは、「垂直ガイドレール上方の外側案内溝辺の途中に切り欠き形成された連設用溝の外側周縁部上部、下部に補助レールの外側案内溝辺上端部、下端部の端面を、それぞれ外側から接当させたもの」であつて、垂直ガイドレール上端部の内側案内溝辺と補助レール上端部の外側案内溝辺とが、相互に向かい合つて位置している、あるいは、対向状に突合わされている、ということは到底できず、被告の右主張は認められない。

3 以上のとおり、「シヤツターカーテンを上下方向に案内する垂直ガイドレール上端部の内側案内溝辺と、屋外の傾斜方向に案内する傾斜ガイドレール上端部の外側案内溝辺とを対向状に突合せた第一引用例記載のものの補助レール上端部の外側案内溝辺は、本願考案のように垂直ガイドレール上端部の内側案内溝辺とをマグサ部で対向状に突合せ」た点を本願考案と第一引用例記載のものとの一致点とする本件審決の認定判断は、両者の一致点でないことを一致点と認定し、相違点を看過したものである。

そして、本件審決は、両者の一致点でないことを一致点として判断の前提とし、両者の相違点を看過誤認し、その相違点について判断をしないままに、本願考案は第一引用例及び第二引用例の記載に基づいて、当業技術者がきわめて容易に考案をすることができたと判断を誤つたものである。

三 よつて、その主張の右の点に違法があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本件請求は、その余の点について判断するまでもなく正当であるから、これを認容することとする。

〔編注1〕本願考案の要旨は左のとおりである。

シヤツターカーテンを上下方向に案内する垂直ガイドレール上端部の内側案内溝辺と、屋外の傾斜方向に案内する傾斜ガイドレール上端部の外側案内溝辺とをマグサ部で対向状に突合わせて、マグサ直下ではシヤツターカーテンの垂直方向と傾斜方向との分岐部を形成し、マグサ直上ではシヤツターケース内にまで没入して上方末広がり状のシヤツターガイドを形成したことを特徴とする窓シヤツターの分岐部構造。(以下、本願考案につき、本判決別紙本願考案図面参照)

〔編注2〕本件における図面は左のとおりである。

別紙 本願考案図面

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別紙 第一引用例図面

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