東京高等裁判所 昭和63年(行ケ)229号 判決
一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)及び二(審決の理由の要点)の事実並びに引用商標の構成、指定商品、登録出願日及び登録日が審決の理由の要点2記載のとおりであることは、当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。
本願商標の構成を示すものであることについて当事者間に争いのない別紙(一)によれば、本願商標は、「LM GUIDE」の欧文字を「LM」と「GUIDE」との間に若干の間隔を設けたほかは等間隔に横書きしてなる比較的簡明な構成であり、かつこれを構成する欧文字は同一の書体及び同一の大きさをもつてなることが明らかである。そして、前半の「LM」なる構成は、アルフアベツトの「L」と「M」を組み合わせたものであるが、成立に争いのない甲第三一号証によれば、本件指定商品の分野においては、取引者、需要者の間で、「LM」の文字は英語の「Linear Motion」すなわち「直線運動」又は「直動」を意味する語の略称として通用し、また「GUIDE」の文字は英語で「案内」を意味する語として通用していることが認められ、本願商標は、この両者を結合した「直線運動案内」又は「直動案内」を意味する一連不可分の商標として極めて自然に「エルエムガイド」と称呼することができ、そのように称呼することが格別冗長の感じを与えるものではなく、簡易迅速を尊ぶ商取引においても「LM」と「GUIDE」とを分離して単に「ガイド」と称呼されるとはいえない。このことは、成立に争いのない甲第三四号証の一ないし二五一によれば、原告は、昭和四七年以降原告の製造販売に係り本件指定商品に属する「直線運動用ベアリング」に本願商標を使用しているが、取引者、需要者は、右商品に使用された本願商標を「エルエムガイド」と一連不可分に称呼し、取引していることが認められることからも明らかである。
この点に関し、審決は、「本願商標は、構成全体をもつて、特定の語義をもつて親しまれた成語を表したものとはみられないばかりでなく、ローマ字の二字は、商品の品番、規格、型式等を表示するための記号、符号として類型的に取引上一般に使用されているのが実情であるから、構成中の「LM」の文字部分は、それ自体独立しては自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない」と認定、判断し、被告もこれと同趣旨の主張をしている。
一般に、ローマ字の二字が商品の品番、規格、型式等を表示するための記号、符号として取引上使用されることがあることは、当事者間に争いがない。しかしながら、本願商標は、その構成全体をもつて「直線運動案内」又は「直動案内」という特定の語義を有し、一連不可分の商標として極めて自然に「エルエムガイド」と称呼されることは前述のとおりであるから、審決の前記認定、判断はその点において既に誤つているのみならず、本件指定商品の分野において、「LM」の文字が前記認定の「Linear Motion」の語義を有するほか、商品の品番、規格、型式等を表示するための記号、符号として取引者、需要者に使用されていることを認めるに足りる証拠はないから、本願商標の構成中の「LM」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものとは認めることができない。
一方、引用商標の構成を示すものであることについて当事者間に争いのない別紙(二)によると、引用商標は「GR」の欧文字と「ガイド」のカナ文字とを同一の書体、大きさ及び間隔で一連かつ一体に「GRガイド」と横書きして表したものであつて、「GR」が引用商標の指定商品の分野において取引者、需要者に特定の語義を有するものと認識されていることを認めるに足りる証拠はないが、これが審決認定のように商品の品番、規格、型式等を表示するための記号、符号として取引上使用されていることを認めるに足りる証拠もなく、引用商標の前記認定の構成に照らすと、引用商標は、一連不可分の商標として「ジーアールガイド」と称呼されるというべきである。
そうすると、本願商標の称呼は「エルエムガイド」のみであつて、引用商標の称呼である「ジーアールガイド」と類似するとはいえない。なお、引用商標が前記認定の欧文字とカナ文字とを組み合わせた商標であることからみて、引用商標から「ジーアール」又は「ガイド」の称呼が生ずるとしても、これが本願商標の称呼である「エルエムガイド」と類似していないことは明らかである。
以上のとおりであつて、審決は、本願商標から単に「ガイド」の称呼が生ずるものと誤認した結果、本願商標は引用商標と「ガイド」の称呼を共通する類似の商標であると誤つて判断したものであるから、違法として取消しを免れない。
三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は正当としてこれを認容する。
〔編注1〕本件における特許庁における手続の経緯および審決の理由の要点は左のとおりである。
一 訴外東邦精工株式会社は、昭和五三年二月三日、別紙(一)のとおり、「LM GUIDE」の欧文字を左横書きにしてなる商標(以下「本願商標」という。)につき、第九類「軸受けおよびその他本類に属する商品」を指定商品として商標登録出願(昭和五三年商標登録願第五五三九号)をしたところ、昭和五八年三月三日拒絶査定を受けたので、同年四月二五日審判を請求し、昭和五八年審判第八五七四号事件として審理された。原告は、昭和六〇年五月二九日訴外東邦精工株式会社を合併し、その地位を承継したが、昭和六三年八月一一日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は同年九月二一日原告に送達された。
二 審決の理由の要点
1 本願商標の構成、指定商品、登録出願の日は前項記載のとおりである。
2 これに対し、登録第一五三一六八二号商標(以下「引用商標」という。)は、別紙(二)のとおり「GRガイド」の文字を横書きしてなり、昭和五一年一一月一六日登録出願され、第九類「ベアリング、その他の機械要素、その他本類に属する商品」を指定商品として昭和五七年八月二七日に登録されたものである。
3 そこで判断するに、本願商標は、構成全体をもつて、特定の語義をもつて親しまれた成語を表したものとはみられないばかりでなく、ローマ字の二字は、商品の品番、規格、型式等を表示するための記号、符号として類型的に取引上一般に使用されているのが実情であるから、構成中の「LM」の文字部分は、それ自体独立しては自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
してみると、本願商標にあつて自他商品の識別標識としての機能を果たすのは、構成中の「GUIDE」の文字部分であるといわなければならないから、該文字部分に相応して、本願商標は単に「ガイド」の称呼が生ずるものであると認めざるを得ない。
一方、引用商標は、本願商標と同様の理由により構成中の「ガイド」の文字部分より「ガイド」の称呼が生ずるものである。
したがつて、本願商標は、引用商標と「ガイド」の称呼を共通にする類似の商標であり、かつ、その指定商品も同一のものと認定し得るものであるから、商標法第四条第一項第一一号に該当し、登録することができない
〔編注2〕本件における別紙は左のとおりである。
別紙(一)
<省略>
別紙(二)
<省略>