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東京高等裁判所 昭和64年(ネ)40号 判決 1989年7月27日

静岡県焼津市小浜一三九七番地

控訴人

株式会社海洋牧場

右代表者代表取締役

槻木政則

右訴訟代理人弁護士

古川祐士

静岡県静岡市昭和町九番地の五

被控訴人

日本エムジー薬業株式会社

右代表者代表取締役

米川博

右訴訟代理人弁護士

白井孝一

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

「原判決を取り消す。被控訴人は、被控訴人の製造する深海鮫エキス商品に「マリンゴールド」という表示を使用し、又は右表示を使用した同商品を販売してはならない。被控訴人は、被控訴人の製造する深海鮫エキス商品の包装容器及び包装用箱に「マリンゴールド」という表示を使用し、又は同包装容器及び包装用箱を使用した同商品を販売してはならない。被控訴人は、被控訴人の深海鮫エキスマリンゴールドの表示のある容器、包装用箱、包装用紙、説明書、パンフレツトを廃棄せよ。訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言

二  被控訴人

主文同旨の判決

第二  主張

当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

一  原判決七枚目表二行目の「紀文」を「国際健康薬品株式会社」に、同七行目の「カプレル」を「カプセル」に、一一枚目裏四行目、五行目及び一二枚目表九行目の「原告商品」を「原告製品」に、それぞれ改める。

二  原判決九枚目表三行目の「まで」の次に「、昭和六二年一一月二八日に同年一二月一日から昭和六三年一一月三〇日まで、昭和六三年一一月二八日に同年一二月一日から平成元年一一月三〇日まで」と付加し、一〇枚目表八行目の「その余」を「右各更新」と改める。

三  原判決一一枚目表六行目の「米川博に与えること」の次に、「、米川博は原告製品と同種の商品を控訴人以外の第三者から買い取り、販売しないこと等」と付加する。

四  原判決一一枚目裏四行目の「2(一) 米川博は、」の次に「1(一)(3)記載の契約によつて原告製品の商品名「マリンゴールド」について控訴人の権利ないし利益を侵害しないことはもちろん、深海鮫エキスの商品そのものを控訴人以外から仕入れない契約上の義務を負つているものである。また、米川博は、」と付加する。

五  原判決一二枚目表五行目の「商標権を取得することを企て」を「商標権を取得して控訴人を乗つ取ることを企て」と改める。

六  原判決一二枚目裏八行目の「これを実行」の次に「し、又は控訴人の本件商標使用の差止を企図」と付加する。

第三  証拠関係

証拠関係は、本件記録中の書証目録記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人の被控訴人に対する各請求は、いずれも失当としてこれを棄却すべきものと判断するものであるが、その理由は後記のとおり付加訂正するほか、原判決理由説示と同一であるから、ここにこれを引用する。

1  原判決一五枚目表一〇行目の「第二一号証」の次に「成立に争いのない甲第六八号証の当庁昭和六三年(ネ)第三一七五号仮処分異議控訴事件証人山梨忠男の証人調書」と、一五枚目裏六行目の「第三九号証、」の次に「第四〇号証」とそれぞれ付加する。

2  原判決一六枚目表四行目及び末行の「国際健康食品」を「国際健康薬品」に、一七枚目表一〇行目、末行の「四億円」を「約二億四〇〇〇万円」に、一八枚目裏六行目の「一七日」を「七日」に、一九枚目裏三行目の「一〇月頃」を「一二月頃」に、それぞれ改める。

3  原判決二二枚目裏一行目の「紀文」を「国際健康薬品」と改め、二三枚目表九行目の「第五四号証」の次に「弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第五八号証」と、同一〇行目の「二六日」の次に「、同六三年一一月二八日」と、同裏一〇行目の「前記」の次に「一」とそれぞれ付加し、同末行の「被告」を「原告」と改める。

4  原判決二六枚目表六行目の「は」を削除し、同裏七行目の「二月」を「三月」に改め、二七枚目裏三行目の「米川博」の前に「昭和五三年一〇月七日、」と付加し、二八枚目表五行目の「出願広告」を「出願公告」に改める。

5  原判決三〇枚目表八行目の「六八号証」を「五一号証」に改め、三一枚目表一行目の「これを実行」の次に「し、又は控訴人の本件商標使用の差止を企図」と、同七行目、八行目の「記載されているが、」の次に「そのことから直ちに被控訴人がその頃控訴人の本件商標使用の差止を企図していたとはいえない。また、右各陳述書には米川博又は被控訴人」とそれぞれ付加し、同八行目の「同人」を削除する。

6  原判決三三枚目表末行の次に、次のとおり付加する。

「(四) 控訴人は、昭和五三年一〇月七日控訴人と米川博との間で、東日本における原告製品の独占的卸売販売権を米川博に与える契約をした際、米川博は原告製品と同種の商品を控訴人以外の第三者から買い取り、販売しないことを約定したから、深海鮫エキスの商品そのものを控訴人以外から仕入れない契約上の義務を負つているものであり、また、両者間の契約関係等からみて、米川博及び同人が代表取締役を務める被控訴人は、控訴人が多年にわたつて築きあげた「マリンゴールド」の商標使用について有する利益を承認し、これをみだりに侵害しない信義則上の義務を負つているのに、「マリンゴールド」の商標権を取得して控訴人を乗つ取ることを企て、再抗弁2(二)記載の経過で本件商標使用権を取得しこれを行使することは権利の濫用として許されない旨主張する。

控訴人と米川博との昭和五三年一〇月七日付契約に控訴人主張の約定が存することは、当事者間に争いがなく、また、米川博が控訴人に秘して紀文との間で本件商標の使用に関する契約を締結したことは、前記(二)認定のとおりである。

しかしながら、米川博及び被控訴人が控訴人の乗つ取りを企図して本件商標の使用権を取得したことを認めるに足りる証拠はない(控訴人の援用する成立に争いのない乙第一二号証の一、前掲甲第六三号証により真正に成立したことが認められる甲第四五号証は、昭和五三年七月当時控訴人と日マリとの間に原告製品の販売等をめぐつて紛争があつたことを示すにとどまり、これをもつて控訴人の乗つ取りを策したものとは到底認めることができない。)。また、米川博が控訴人に秘して紀文との間で右契約を締結したからといつて、米川博が原告製品と同種の商品を控訴人以外の第三者から買い取つたことにも販売したことにもならないことは明白であり、米川博が昭和五三年一〇月七日付契約の存続中に右約定に反する行為をしたことを認めるに足りる証拠はない。さらに、米川博と紀文との契約締結の事情は前配(二)認定のとおりであつて、右事情のもとでは、米川博に控訴人との信頼関係を破壊した責任があるということはできない。しかも、被控訴人が独自に「マリンゴールド」の名称で深海鮫エキスの製造販売を開始したのは前記1(一)(9)(10)認定のとおり、控訴人が昭和五四年四月一四日付書面をもつて被控訴人との商品取引契約の解除通知をし、原告製品の供給を停止した後であるから、以上認定の本件商標使用権を取得した経緯及び「マリンゴールド」の商標を使用した製品の製造販売を開始した経緯に照らし、米川博及び被控訴人に控訴人との関係で契約及び信義則に反する行為があつたということはできない。

したがつて、控訴人の前記主張は理由がない。」

二  以上のとおりであつて、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第九五条、第八九条の各規定を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤井俊彦 裁判官 竹田稔 裁判官 岩田嘉彦)

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