東京高等裁判所 昭和64年(行ケ)2号 判決
一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)及び二(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。
二 本願意匠が、意匠に係る物品を「観光バス」とし、その形態は別紙第一のとおりであることは当事者間に争いがなく、先願意匠が、意匠に係る物品を本願意匠と一致するものとし、その形態が別紙第二のとおりであること、及び意匠に係る形態において、本願意匠は、車体の胴周側部に帯状の色模様(車体全体を白色で表し、その胴周側部に数本の赤色の細帯状ライン及び黒色の細帯状ラインと灰色の広幅帯状ラインをそれぞれ一本づつ運転室の両側部を除く部位に水平に表したもの、なお運転室の両側部のラインは斜め前下がりとする。)を表したものであるのに対し、先願意匠は車体全体が無模様であるという点において差異があるが、その余の点については、その全体形状をほぼ同一とするものであることは、原告も認めて争わないところである。
そこで、本願意匠と先願意匠との形態の唯一の差異点である、観光バスの胴周側に加飾された帯状模様について検討する。
本願意匠の帯状模様は、前記認定のとおり、車体の胴周側部に帯状のラインを水平に表し、運転室の両側部においては右ラインを斜め前下がりとしたものであるが、成立に争いのない乙第一号証の一ないし三(社団法人日本自動車工業振興会、昭和五五年一〇月二〇日発行、自動車ガイドブツク、一九八〇―八一、九二頁、二九三頁)によれば、乗合自動車、特に観光バス等にあつて、車体の胴周側部に右のような構成の帯状の模様を表したものは本件出願の日前に広く知られていたものであると認められる。またその色彩について、本願意匠は、車体全体を白色とし、帯状部分に赤色、黒色、灰色を配したものであるが、これらの色彩は色自体としてはごくありふれたものであり、観光バスとして加飾するに当たり、無彩色、特に黒色を使用している点についても、成立に争いのない乙第二号証の一ないし四(雑誌・世界のトラツク/バス別冊CAR GRAPHIC'80―'81、第二一三頁、第二一六頁、第二二〇頁)によれば、観光バスの胴周側部に黒色等の無彩色を使用して加飾することは本件出願の日前広く知られたものであることが認められ、本願意匠の色彩はこれら観光バス等の胴周側部に加飾された周知の色彩から適宜選択し得るものである。してみると、本願意匠の帯状模様の構成及びその色彩は、本件出願の日前に広く知られていた観光バス等の胴周側部に表された模様に比べて特に特徴あるものとはいえないありふれたものであるから、この点に看者の注意を強く惹く意匠の要素があるとは認め難い。
したがつて、車体胴周側部の帯状模様の有無は、意匠の類否判断を左右する要素としては微弱なものであるとした審決の認定に誤りはない。
なお、原告は、「審決の理由の要点」第4項掲記の刊行物所載の観光バスは本願意匠に係る観光バスそのものであるところ、該意匠の刊行物への掲載は意匠登録をうける権利を有する者である原告の行為に起因するものであり、本願意匠が意匠法第四条第二項の規定を受ける意匠登録出願として出願されている以上、右刊行物記載の意匠をもつて本願意匠と先願意匠との類否判断の資料とすることはできない、と主張する。
確かに、成立に争いのない甲第二号証、第五号証によれば、本願意匠は、昭和五六年九月一二日、本願意匠の出願人たる原告が本願意匠に係る観光バスを他に販売したことによつて日本国内において公然知られた意匠となつたので、意匠法第四条第二項の規定の適用を受ける意匠登録出願として同日より六月以内の昭和五七年三月一〇日に出願されたものであることが認められ、成立に争いのない甲第四号証の二、三によれば、原告主張の右刊行物は昭和五六年一〇月三〇日に発行されたもので、そこに所載の観光バスは本願意匠に係る観光バスと同一意匠のバスの写真であることが認められる。しかしながら、昭和五六年一〇月三〇日の右刊行物の発行について本願意匠の出願人たる原告が意匠法第四条第二項の適用を受ける出願として同条第三項所定の書面を提出した旨の主張立証はない。のみならず、これが本願意匠に係る観光バスの紹介として掲載されたものであるとしても、前記甲第四号証の三によれば、この観光バスの意匠を右刊行物に掲載して公表したのは社団法人自動車工業振興会であることが認められ、この公表が原告の行為に起因するものでないことは明らかであるから、原告の右主張は理由がない。
以上のとおりであつて、本願意匠と先願意匠とは、意匠に係る物品が一致し、形態においても、その全体形状をほぼ同一とし、唯一の差異点である胴周側部に加飾された帯状模様も意匠の類否判断を左右する要素としては、微弱なものと認められるから、両意匠は類似の意匠と言うべきであり、審決の認定、判断に誤りはなく、審決に原告主張の違法はない。
三 よつて、審決の取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却する。
〔編注〕本件における別紙は左のとおりである。
別紙第一
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