東京高等裁判所 昭和24(を)新2414 高裁判例
主 文
本件控訴はいずれもこれを棄却する。
理 由
各被告人の共同弁護人横尾義男、同林隆行、同山下卯吉、同川島英晃の各控訴趣
意は同人等共同作成名義の控訴趣意書と題する末尾添附の書面記載の通りである。
これに対し当裁判所は左の通り判断する。
第一点 (イ)論旨は原審がA他六名の司法警察員に対する論旨引用の各供述調
書並びにBの検察官に対する供述調書の証拠調を各原本でなくその謄本でしたのは
違法であるというにある。よつて原審記録並びに右引用の各謄本を調査するに被告
人並びに原審弁護人は検察官の右書類の証拠調請求に対し、その任意性について疑
があるからこれを証拠とすることについて異議を述べたが該書類の証拠調が謄本に
よつて行われることについては何の異議も述べておらないからその点については被
告人並びに弁護人は異議なかりしものと認め<要旨>なければならね。勿論この種の
証拠調は原本によつてこれを行う建前であることは所論の通りである。しかし</要
旨>原本の使用が滅失その他の事由により使用不能若くは困難な場合もある。またこ
の種供述書の記載事項中には時として当該事件に関連性許容性ない部分の含まれる
こともある。かかる場合には所論のように供述者の署名押印の存する当該書類原本
が存在し、原本が証拠能力あり且つその謄本が原本を正確に写録したものであると
きは、謄本又は抄本の使用を認めるのが相当である場合があるから、当事者に異議
がない限り刑事訴訟法第三百二十一条、同第三百二十二条は常に必ずしも供述者の
署名又は押印ある原本によらなければならぬとは解せられない。このことは同法第
三百二十七条の規定からも窺われるのである。(最高昭和二十四年(れ)第三六八
号同年九月一日判決参照)而して本件に於ては前述の通り被告人並びに弁護人に於
て謄本による証拠調については異議がなかつたものであり且つ原本に供述者の署名
押印があり又所論謄本は原本を正写したものと認められるから原判決には所論のよ
うな違法はない。論旨は理由ないものである。
(裁判長判事 吉田常次郎 判事 保持道信 判事 鈴木勇)