大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和24(を)新555 高裁判例

主 文

原判決を破棄する。

本件を新潟地方裁判所に移送する。

理 由

本件控訴の趣旨は末尾に添附してある弁護人小野謙三、同伴純共同作成名義の控

訴趣意書、同海野晋吉作成名義の控訴趣意書と各題する書面記載の通りである。こ

れに対し当裁判所は左の如く判断する。

弁護人小野謙三、同伴純の論旨第一点及び弁護人海野晋吉の論旨第二点、第一点

について。

法人税法第四十八条には「詐欺その他不正の行為により法人税を免れた場合にお

いて」と規定し右税を免れたというについて確定申告に不実の申告をなした場合は

問題はないが、概算申告に不実の申告があつた場合にもなお税を免れたといい得る

かについては所得税法第六十九条と異なり直接法文上これを窺知し得べきものはな

い。しかしながら概算申告は後日正確な確定申告のなされることを予想しているも

のであるから概算申告に不実の税額の記載があつたからというて直ちに税を免れた

とするのは行過で右所得税法第六十九条とは文詞は異なるが法意は同様であると解

するのが相当である、蓋し所得税法の予定申告というも法人税法の概算申告という

も終局的確定的申告にあらざる点は同一でいずれも他日確定申告を予定するもので

あり、所得税法の予定申告において不実の記載があつても、これを以て直に税を免

れたということができないとすれば法人税法の概算申告において不実の記載があつ

ても直に税を免れたといい得ないものというべきである。然らざれば法の均<要旨>

衡を失する、記録によると本件起訴状には被告人等が法人税の確定申告をなすに際

して法人税を免れる為不実</要旨>の申告をして法人税を逋脱したものであると訴え

ているが原判決は右申告の性格については何ら判定を与えていない。従つて被告人

等のなした申告が概算申告であるのか確定申告であるのか判文上判明しない。これ

では前記の理由によつて罪となるべき事実を示したということができないから、結

局判決に理由を附せなかつたことになり論旨はいずれも理由がある。原判決は破棄

を免れない。已にこの点において原判決を破棄する以上その余の論旨に対する判断

は不必要であるから、これを省略し刑事訴訟法第三七八条第四号第四〇〇条本文の

規定によつて主文の如く判決する。

(裁判長 吉田常次郎 判事 保持道信 判事 鈴木勇)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!