大判例

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東京高等裁判所 昭和47(う)1862 高裁判例

主 文

原判決を破棄する。

本件を東京地方裁判所に差し戻す。

理 由

本件控訴の趣意は、弁護人大平恵吾作成の控訴趣意書記載のとおりであるから、

これを引用する。

<要旨>弁護人の控訴の趣意は、原判決の量刑不当を主張するものであるが、右論

旨に対する判断に先立ち、職権を</要旨>もって調査するに、原審第一回公判調書に

は、裁判官として「A」と記載されていて、その調書の裁判官認印欄には、「B」

と刻した認印が押捺されており、第二回ないし第五回各公判調書には、裁判官とし

て「B」と記載され、裁判官認印欄には右第一回公判調書の裁判官認印欄に押捺さ

れたものと同一と認められる認印が押捺されている。そして、第二回公判調書によ

れば、同公判期日において、公判手続を更新した形跡はなく、また第一回公判調書

には裁判所書記官として「A」と記載されており、調書末尾には、裁判所書記官A

の署名押印があることに照らすと、右第一回公判調書の裁判官名の記載は誤りであ

つて、実際は裁判官Bによつて審理がなされたものであることが推認されないでも

ない。しかしながら、公判廷に列席した裁判官の氏名の記載が公判調書の記載要件

とされている(刑事訴訟規則四四条一項四号)のみならず、この列席裁判官が何ぴ

とであるかは、公判において最も重要な事項であり、また公判期日における訴訟手

続で公判調書に記載されたものは公判調書のみによつてこれを証明することができ

るとされていること(刑事訴訟法五二条)から考えると、本件のように公判調書の

列席裁判官の氏名の記載が誤つている場合においては、公判に列席した裁判官が何

ぴとであるか確定することができないことになるから、かかる公判調書は無効であ

ると解するのが相当である。そうだとすると、右公判期日においてなされた各手続

が適法に行なわれたこともまた証明するに由なく、原判決は右期日においてなされ

た証拠調その他の手続を基礎としていることが明らかであるから、結局右公判調書

の記載の誤りは、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反といわざ

るを得ず、原判決は、この点において破棄を免れない。

よって、弁護人の論旨に対する判断を省略し、刑事訴訟法三九七条一項、三七九

条により、原判決を破棄し、同法四〇〇条本文に従い、本件を東京地方裁判所に差

し戻すこととし、主文のとおり判決する。

(裁判長判事 堀義次 判事 平野太郎 判事 和田啓一)

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