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松山地方裁判所 平成14年(行ウ)12号 判決 2007年2月14日

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第1請求

1  被告が原告らに対し,平成12年1月27日付けでした平成▲年▲月▲日相続開始に係る相続税についての更正処分のうち,課税価格26億7472万3000円,納付税額14億0441万8100円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし,いずれも平成14年6月6日付け裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

第2事案の概要

本件事案は,原告らの父であるP1(以下「本件被相続人」という。)が平成▲年▲月▲日に死亡したことにより開始した相続(以下「本件相続」という。)に係る原告らの相続税に関し,被告が,原告らが本件相続により取得した取引相場のない株式の価額を算出する基礎となる当該株式の発行会社等が所有する船舶(以下「本件船舶」という。)の課税時期における価額を評価するに当たって,財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17国税庁長官通達(平成10年9月10日付け課評2-10,課資2-264による改正前のもの)。以下「評価通達」という。)136に定める方式以外の方式を採用した上で,上記相続税についての更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件更正処分等」という。)をしたため,原告らが,評価通達に定める方式以外の方式による評価は許されず,また,被告が行った税務調査は適正手続に反しているから本件更正処分等は違法であると主張して,その取消し(ただし,原告らの申告額を超え,かつ,裁決で取り消された部分を除く部分)を求めているというものである。

1  関係法令等の定め

(1)  相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの。以下「法」という。)

第3章に特別の定めのあるものを除くほか,相続により取得した財産の価額は,当該財産の取得の時における時価により評価される(22条)ところ,取引相場のない株式及び船舶の評価に関し,法第3章には特別の定めはない。

(2)  評価通達における評価方法

ア 取引相場のない株式の価額は,評価しようとするその株式の発行会社をその規模により大会社,中会社及び小会社に区分し,大会社の場合には類似業種比準方式,中会社の場合には類似業種比準方式と純資産価額方式とを併用した方式,小会社の場合には純資産価額方式によって評価することを原則とする(評価通達178,179)。

イ 総資産価額に占める株式及び出資の価額の合計額の割合が25%以上の大会社ないしはその割合が50%以上の中会社及び小会社(以下「株式保有特定会社」という。)の株式は,原則として純資産価額方式により評価する(評価通達189(1),189-2)。

ウ 直前期末及び直前々期末において類似要素(1株当たりの配当金額,1株当たりの利益金額及び株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額))のうち2要素以上が0の会社の株式は,原則として純資産価額方式等により評価する(評価通達189(3)ロ,189-3)。

エ 類似業種比準方式とは,事業内容が類似する複数の上場会社からなる類似業種の課税時期の属する月以前3か月の月間平均株価の最低値又は前年平均株価を基にして,評価しようとする会社の類似業種会社に対する1株当たりの配当金額,年利益金額及び簿価純資産価額の各割合の平均値でこれを修正したものに,70%を乗じて評価する方式をいう。

オ 純資産価額方式とは,評価しようとする会社の課税時期における各資産を相続税評価額により評価した価額の合計額から,同社の課税時期における各負債の金額の合計等を控除した金額を課税時期における発行済株式数で除して計算する方式(評価通達185)をいう。

カ 評価通達に評価方法の定めのない財産の価額は,評価通達に定める評価方法に準じて評価する(評価通達5)。

キ 船舶(漁船及びボート,ヨットその他の小舟を除く。)の価額は,原則として,調達価額に相当する価額によって評価する。ただし,調達価額が明らかでない船舶については,その船舶と同種同型の船舶(同種同型の船舶がない場合においては,その評価する船舶に最も類似する船舶とする。)を課税時期において新造する場合の価額から,その船舶の建造の時から課税時期までの期間に応ずる償却額の合計額を控除した価額によって評価する。この場合における償却方法は,定率法による(評価通達136)。

2  争いのない事実等

(1)  本件被相続人は,平成▲年▲月▲日当時,P2株式会社(以下「P2」という。),P3株式会社(以下「P3」という。),P4株式会社(以下「P4」という。),P5株式会社(以下「P5」という。),P6株式会社(以下「P6」という。),P7株式会社(以下「P7」という。)及びP8株式会社(以下「P8」という。)の7社(以下,これらをまとめて「評価会社」という。)の株式を所有していた。評価会社のうち,船舶の評価額が株式の評価額に影響を与える会社は,P5,P6,P7及びP8の4社である。

(2)  本件被相続人は,平成▲年▲月▲日に死亡し,同人の妻P9,長男P10(以下「原告P10」という。),次男P11(以下「原告P11」という。),長女P12が,その財産を相続した(以下,相続した4名を併せて「本件共同相続人」という。)。

(3)  本件共同相続人は,平成9年2月14日,被告に対し,本件相続開始に係る相続税の申告書を提出した。原告P10の申告内容は,課税価格14億2346万4000円,納付すべき税額7億3509万5500円であり,原告P11の申告内容は,課税価格12億5125万9000円,納付すべき税額6億6932万2600円であった。

(4)  被告は,平成9年9月16日から,原告らに対する本件相続に係る相続税の調査を開始し,平成12年1月27日付けで,相続財産中の評価会社の株式の評価に誤りがあることや外貨預金の申告漏れがあることなどを理由として,本件相続に係る相続税について,原告P10に対し,課税価格15億4589万7000円,納付すべき税額8億3032万3700円とする更正処分を行い,また原告P11に対し,課税価格13億0135万円,納付すべき税額7億1677万5700円とする更正処分を行った(以下「本件更正処分」という。)。また,被告は,同日付けで,原告P10に対し,過少申告加算税952万2000円を賦課する処分を行い,原告P11に対し,過少申告加算税474万5000円を賦課する処分を行った(以下「本件賦課決定処分」という。)。

(5)  原告らは,平成12年3月28日付けで,高松国税局長に対し,評価会社の株式の評価の前提となる評価会社の純資産価額の算定について,

ア P3の管理する外国会社が,租税特別措置法66条の6の適用対象となる特定外国子会社等であるとして,P3に対し,タックスヘイブン税制の適用による法人税の更正処分がされていたところ,この更正処分による増加所得を利益加算したこと

イ P5,P6,P7及びP8について,株式の発行もなく出資もしていない外国会社を租税特別措置法66条の6の適用対象となる特定外国子会社等であるとし,その外国会社の純資産価格を同社の株式であるとして,評価会社の株式勘定に加算したこと

ウ 評価会社ないしは評価会社の外国関係会社が保有する船舶の評価について,簿価をもって算定したこと

エ P5の所有する愛媛県今治市αに所在する7筆の土地について河川を隔てて面した道路を正面路線として土地の評価を行ったこと

に問題があると主張して,本件更正処分等の全部取消しを求めて異議申立てを行ったが,高松国税局長は,同年6月16日付けで,これを棄却した。

(6)  原告らは,平成12年7月16日付けで,国税不服審判所長に対し,原処分庁が行った取引相場のない株式の評価について,上記(5)のとおり,その評価方法及び評価対象に問題があると主張して,本件更正処分等の全部取消しを求めて審査請求を行った。また,原告らは,審査請求手続中の平成13年7月16日,高松国税不服審判所に対し,社団法人P13作成にかかる船価鑑定意見書(甲2。以下「鑑定意見書」という。)を提出した。 国税不服審判所長は,平成14年6月6日付けで,原告P10について,納付すべき税額のうち2325万9700円を,過少申告加算税のうち232万6000円を取り消し,原告P11について,納付すべき税額のうち1528万8900円を,過少申告加算税のうち152万9000円を取り消す裁決をした(以下「本件裁決」という。)。

国税不服審判所長は,本件裁決において,本件船舶につき,減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一に掲げる種類が「船舶」,構造又は用途が「その他のもの」の鋼船,細目が「その他のもの」に該当するとして,その耐用年数を12年とし,同省令の別表第九により定率法の償却率を0.175とした上で,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して本件船舶の評価額を算出した。

(7)  原告らは,平成14年9月15日,本件裁決になお不服があるとして,本件訴えを提起した。なお,原告らは,本件訴えにおいて,上記(5)のア,イ及びエについては,原処分庁の判断を争わないものである。

3  税額等に関する被告の主張(争いのない点は,その旨付記した。)

(1)  原告らが納付すべき相続税の額について

ア 相続財産の課税価額  65億5422万円

上記金額は,本件共同相続人が申告した本件相続に係る相続財産の課税価格63億0377万1000円に,以下の加算,減算を行った金額(ただし,国税通則法118条1項の規定に従い,千円未満の端数金額は切捨て)である。

(ア) P2の株式の評価額

P2は会社規模の判定で大会社に該当することから,類似業種比準方式によってその株式を評価すると,1株当たりの評価額は4194円であり,本件共同相続人が相続した同社の株式の評価額は39億6021万8052円となる。申告額との差額5759万9738円は,相続財産の価額から減算すべきである(争いがない。)。

(イ) P3の株式の評価額

P3は会社規模の判定で大会社に該当することから,類似業種比準方式によってその株式を評価すると,1株当たりの評価額は3万3899円となるが,この金額から評価通達184により課税時期に発生している配当期待権(1株当たりの現金配当金額125円)を控除して算定すると,1株当たりの評価額は3万3774円となり,本件共同相続人らが相続した同社の株式の評価額は3億2423万0400円となる。申告額との差額1億2464万6400円は,相続財産の価額に加算すべきである(争いがない。)。

(ウ) P4の株式の評価額

P4は会社規模の判定で大会社に該当することから,類似業種比準方式によってその株式を評価すると,1株当たりの評価額は6224円となり,本件共同相続人が相続した同社の株式の評価額は1億5560万円となる。申告額との差額362万5000円は,相続財産の価額に加算すべきである(争いがない。)。

(エ) P5の株式の評価額

P5は会社規模の判定で中会社に該当するが,類似業種比準方式による比準要素がいずれも0であるため,純資産価額方式によりその株式を評価することとなる(争いがない。)。

下記の資産を含む同社所有資産の評価額合計を基にその株式を評価すると,1株当たりの評価額は6718円となり,本件共同相続人が相続した同社の株式の評価額は6046万2000円となる。申告額との差額4720万5000円は,相続財産の価額に加算すべきである。

a P14の敷地の評価額

24億7811万0581円(争いがない。)

b P5が所有する株式会社P15の株式の評価額

3143万7920円(争いがない。)

c P5が所有する株式会社P16の株式の評価額

591万5000円(争いがない。)

d P5が所有するP4の株式の評価額

6億2240万円(争いがない。)

e P5が所有する船舶(a1)の評価額

別表1-1のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた2億9218万0022円

f P5が実質100%出資するP17(以下「P17社」という。)の有価証券の評価額

下記の資産を含むP17社所有資産の評価額合計を基にその株式を評価すると,31億2082万3000円となる。

(a) P17社が所有する船舶(a2)の評価額

別表1-2のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた19億1960万5525円

(b) P17社が所有する船舶(a3)の評価額

別表1-3のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた27億9775万3300円

(オ) P6の株式の評価額

P6は会社規模の判定で小会社に該当することから,純資産価額方式によってその株式を評価することとなる(争いがない。)。

下記の資産を含む同社所有資産の評価額合計を基にその株式を評価すると,1株当たりの評価額は6350円となり,本件共同相続人が相続した同社の株式の評価額は2540万円となる。申告額との差額2540万円は,相続財産の価額に加算すべきである。

a P18協同組合に対する出資の評価額

1264万6000円(争いがない。)

b P6が所有するP2の株式の評価額

1億0065万6000円(争いがない。)

c P6が実質100%出資するP19(以下「P19社」という。)の有価証券の評価額

下記の資産を含むP19社所有資産の評価額合計を基にその株式を評価すると12億1524万円となる。

(a) P19社が所有する船舶(a4)の評価額

別表1-4のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた9億4476万6917円

(b) P19社が所有する船舶(a5)の評価額

別表1-5のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた19億5979万6668円

d P6が実質100%出資するP20ほか5社(以下「P20社等」という。)の有価証券の評価額

下記の資産を含むP20社等所有資産の評価額合計を基にその株式を評価すると1億4956万3000円となる。

(a) P20社等が所有する船舶(a6)の評価額

別表1-6のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた5億7718万3449円

(b) P20社等が所有する船舶(a7・持分60%)の評価額

別表1-7のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた11億3739万1454円

(c) P20社等が所有する船舶(a8)の評価額

別表1-8のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた16億1230万7287円

(d) P20社等が所有する船舶(a9)の評価額

別表1-9のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた15億4804万9319円

(カ) P7の株式の評価額

P7は会社規模の判定で小会社に該当することから,純資産価額方式によってその株式を評価することとなる(争いがない。)。

下記の資産を含む同社所有資産の評価額合計を基にその株式を評価すると,1株当たりの評価額は21万3463円となり,本件共同相続人が相続した同社の株式の評価額は640万3890円となる。申告額との差額640万3890円は,相続財産の価額に加算すべきである。

a P18協同組合に対する出資の評価額

1264万6000円(争いがない。)

b P7が所有するP2の株式の評価額

6291万円(争いがない。)

c P7が所有するP21株式会社(以下「P21」という。)の株式の評価額

下記の資産を含むP21所有資産の評価額合計を基にその株式を評価すると6億4128万円となる。

(a) P21が所有する船舶(a10)の評価額

別表1-12のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた1979万2723円

(b) P21が所有する船舶(a11)の評価額

別表1-13のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた7266万6914円

(c) P21が実質100%出資するP22社の有価証券の評価額

P22社が所有する船舶の評価額(別表1-14ないし22のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めたもの)は,以下のとおりである。

a12       6億5279万6054円

a13      19億6456万2624円

a14      34億0779万7851円

a15      44億7694万7499円

a16      21億5027万9502円

a17       4億8027万4056円

a18       7億7384万1816円

a19       6億4891万3803円

a20      15億0311万6045円

d P7が実質100%出資するP23ほか3社(以下「P23社等」という。)の有価証券の評価額

下記の資産を含むP23社等所有資産の評価額合計を基にその株式を評価すると5億4767万7000円となる。

(a) P23社等が所有する船舶(a21)の評価額

別表1-10のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた1億7817万7260円

(b) P23社等が所有する船舶(a22)の評価額

別表1-11のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた2億1883万3565円

(キ) P8の株式の評価額

P8は会社規模の判定では大会社に該当するところ,同社の総資産価額のうちの株式等の価額の割合は25%以上となり,株式保有特定会社(評価通達189(1))に該当することとなるから,株式の評価方法は純資産価額を基にする株式保有特定会社の評価により計算を行うべきである(評価通達189-2。争いがない。)。

下記の資産を含む同社所有資産の評価額合計を基にその株式を評価すると,1株当たりの評価額は4万3295円となり,本件共同相続人が相続した同社の株式の評価額は8億7455万9000円となる。申告額との差額9766万7000円は,相続財産の価額に加算すべきである。

a P18協同組合に対する出資の評価額

1264万6000円(争いがない。)

b P8が所有するP2の株式の評価額

39億5773万5204円(争いがない。)

c P8が所有するP4の株式の評価額

6億2240万円(争いがない。)

d P8が所有するP5の株式の評価額

3億4460万円

e P8が所有するP7の株式の評価額

2億9926万5500円

f P8が所有するP24株式会社,P25株式会社,P26株式会社,P27株式会社,P28株式会社,P29株式会社,P30株式会社及びP31株式会社の株式の評価額総額

7億2311万2000円(争いがない。)

g P8の特定外国子会社等であるP32ほか8社(以下「P32社等」という。)の有価証券の評価額

下記の資産を含むP32社等所有資産の評価額合計を基にその株式を評価すると6億5009万6000円となる。

(a) P32社等が所有する船舶(a23)の評価額

別表1-23のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた3億6582万5412円

(b) P32社等が所有する船舶(a24)の評価額

別表1-24のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた1億8341万7971円

(c) P32社等が所有する船舶(a25)の評価額

別表1-25のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた1億8132万4876円

(d) P32社等が所有する船舶(a26)の評価額

別表1-26のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた7億9664万2102円

(e) P32社等が所有する船舶(a7・持分40%)の評価額

別表1-27のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた7億5662万9696円

(f) P32社等が所有する船舶(a27)の評価額

別表1-28のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた17億0450万7307円

(g) P32社等が所有する船舶(a28)の評価額

別表1-29のとおり,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除して求めた2億1235万7292円

(ク) 預貯金

本件被相続人名義の外貨預金53万9795円につき計上漏れがあったので,これを相続財産の価額に加算すべきである(争いがない。)。

(ケ) 3年以内の贈与の加算

平成5年12月29日及び平成7年10月12日に,それぞれ原告らほか1名に贈与されたP2の株式について,時価の再計算をしたところ,256万2000円を相続財産に加算される贈与財産価額に加算すべきである(争いがない。)。

イ 相続税の総額     37億0094万3000円

上記金額は,上記アの課税価格からその遺産に係る基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を求め,法16条に従って相続税の総額を計算したものである。

ウ 原告らの納付すべき税額

課税遺産総額を各相続人の課税価格に応じて算出したあん分割合は,原告P10が0.23,原告P11が0.20である。上記イの相続税の総額にあん分割合を乗じて相続税額を算出すると,原告P10が8億5121万6890円,原告P11が7億4018万8600円となる。

上記算出税額から,本件相続開始前3年以内に贈与があった場合の贈与税額等を控除し,国税通則法119条1項の規定に従い百円未満の端数を切り捨てると,原告P10が納付すべき税額は,8億0706万4000円,原告P11が納付すべき税額は,7億0148万6800円である。

(2)  本件賦課決定処分について

原告P10が納付すべき過少申告加算税額は,国税通則法65条1項により,上記(1)ウの納付すべき税額8億0706万4000円と相続税申告書記載の納付すべき税額7億3509万5500円との差額である7196万円(ただし,同法118条3項の規定に従い1万円未満の端数金額切捨て)に100分の10を乗じて計算した719万6000円である。

また,原告P11が納付すべき過少申告加算税額は,同条項により,上記(1)ウの納付すべき税額7億0148万6800円と原告P11提出の確定申告に係る納付すべき税額6億6932万2600円との差額である3216万円(ただし,国税通則法118条3項の規定に従い1万円未満の端数金額切捨て)に100分の10を乗じて計算した321万6000円である。

4  争点及び争点に関する当事者の主張

(1)  本件船舶の評価を評価通達136に定める方式以外の方式によって行うことの可否(争点1)

(被告の主張)

ア 法22条は,相続により取得した財産の価額は,特別の定めがあるものを除き,当該財産の取得の時における時価による旨規定しているところ,同条にいう「時価」とは,相続開始の時において,それぞれの財産の現況に応じ,不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額,すなわち客観的な交換価値をいうものと解されている。しかし,相続財産の客観的な交換価値は必ずしも一義的に確定されるものではないため,各種財産の客観的な交換価値を把握することは容易ではなく,また,これを個別に評価するとすれば,その評価方式,基礎資料の選択の仕方,評価者による判断等により異なった評価となることを避け難く,また,課税庁の事務負担が増大し,課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがある。そのため,納税者間の公平を確保することのほか,納税者の便宜を図り,さらに,徴税費用の節減という見地からも,あらかじめ定められた評価方法により画一的に評価することが合理的であるという理由から,相続財産の時価の具体的な算定については,国税庁長官が各国税局長あてに発した評価通達に基づいて行われている。

しかしながら,評価通達に定められた画一的な方式による評価を行う方法は,個別の財産ごとにそれぞれの市場性に係る多くの事情を考慮して評価することの意義を否定するものではないし,相続財産の評価に当たっては,税務行政上の要請と実質的な租税負担の公平との権衡を考慮する必要がある。したがって,相続財産の評価に当たっては,特別の定めがある場合を除き,評価通達に定める方式によるのが原則であるものの,評価通達によらないことが相当と認められるような特別な事情のある場合には,他の合理的な時価の評価方式によることが許されると解するのが相当である。そして,評価通達による評価方式によることができない事情がある場合には,評価通達の評価方式によらずに,他の合理的な評価方式によって評価することが許されるというべきである。

本件においては,① 大型船舶においては,課税時期における評価対象船舶と全く同じ状態の船舶の調達価額,すなわち再調達価格を求めることが極めて困難であること,② 原告らに対し,同人らの税務申告の代理人であるP33税理士を通じ,再三にわたり,本件船舶の建造年月日,船種,トン数,構造,仕様等に関する資料を提出するよう求めたものの,原告らがこれを提出しなかったため,同種同型の船舶又は類似する船舶を課税時期において建造する価額を確認するための基礎資料を把握するに至らなかったこと,③ 原告らが審査請求において提出した鑑定意見書は,記載された評価額の算定根拠及びそれを正当化する資料の添付がなく,その適否を検討することができなかったため,鑑定意見書に記載された評価額に基づいて本件船舶の評価額を算出することができなかったことという,評価通達に定める方式によることができない特別の事情があった。

イ(ア) これに対し,原告らは,評価通達は長年の間公開されており,行政先例法ともいうべきものであって,これに反する評価方法は許されないと主張する。

しかし,一般に通達が法規としての効力を持たないことは明らかであり,これが長年公開され,行政実務がこれによっているとしても,そのことから直ちに通達に法規としての効力を認めるべき理由はなく,評価通達についても同様である。したがって,評価通達が長年公開され,課税実務がこれによっていることをもって,財産評価に関する行政先例法が成立しているということはできない。

(イ) また,原告らは,評価会社又は造船会社に対し反面調査をしていれば,造船契約書や船舶の図面等の資料から,本件船舶の建造年月日,船種,トン数,構造,仕様等を把握することができたはずであるし,評価会社の法人税確定申告書等には,船名,船種,トン数,構造が記載されているから,これらに基づいて反面調査又は造船会社からの聴取を行うことにより,同種同型の船舶又は類似する船舶を課税時期において建造する価額を把握することも可能であったと主張する。

しかし,原告らが反面調査をすべきであったとする会社は,いずれも原告らからすれば容易に基礎資料を入手できる,いわば原告らの支配領域に位置する会社である。申告納税制度の下,納税者である原告らが容易に入手,提出できる資料を提出しない場合にまで,被告が,原告らが主張するような調査を行うべき法的義務を負うとは解されない。

また,原処分担当者及び異議調査担当者(以下,併せて「被告担当者」という。)は,評価会社の法人税確定申告書等から本件船舶の船種,船型等の把握に努めたものの,各船舶の取得時期,取得価額,各決算期末の帳簿上の残存価額,本件相続後に売却されたものについてはその売買年月日と売買金額が把握できたにとどまり,同種同型の船舶又は類似する船舶を課税時期において建造する価額を確認するための基礎資料を把握するには至らなかったのであり,反面調査又は造船業者からの聴取によって,本件船舶と同種同型の船舶又は類似する船舶を課税時期において建造する価額を算出することは不可能であった。

(ウ) さらに,原告らは,船名,船種,取得年月日,売買価額,新造船価,取得価格等を記載した一覧表(甲22。以下「船舶一覧表」という。)を作成し,これをP33税理士に交付したことを根拠として,被告担当者がP33税理士を通じて要求したものはすべて提出したと主張する。

しかし,船舶一覧表は,P33税理士が手渡したとする書式案とは記載項目が異なるから,原告らがこの書式案によって各評価会社から提出を受けるデータだけでは作成できないはずであり,船舶一覧表が,原告らが主張する経緯に従って作成されたかどうかは疑問である。また,船舶一覧表は,「H8新造船価」などとして,わずか5隻分の新造船価と一部の船舶が売却された旨の記載があるのみで,その他の船舶については調達価額の記載がないというように,それ自体不完全なものであって,被告に提出するに足りる資料とは評価できず,仮にこれを被告に提出しても受理されるとは考えられない。

したがって,船舶一覧表をもって,調査時に被告から要求された資料を提出したとする原告らの主張には理由がない。

(エ) 原告らは,本件船舶の適正な評価額は,鑑定意見書記載の鑑定評価額から減価償却費相当額を控除した金額であると主張するが,鑑定意見書の評価方法は,客観性,合理性及び信頼性に欠け,これに基づく鑑定評価額は信用することができない。

(オ) そのほか,原告らは,被告が評価通達6に該当する事情を主張,立証していないことを指摘するが,評価通達6は,あくまでも評価通達による評価が不可能とはいえない場合を前提とした規定であって,原告らの協力が得られなかったために評価通達による評価を行うことができず,やむを得ず評価通達に準じた合理的な評価方式によった本件には当てはまらない。仮に,本件の事情が評価通達6に当てはまるとしても,このような通達の定めがあるからといって,直ちに国税庁長官の指示の有無が本件更正処分の効力に影響を及ぼすものでないことは明らかである。

(原告らの主張)

ア 評価通達6には,評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は,国税庁長官の指示を受けて評価すると規定されているが,被告は,そのような事実の主張,立証をしていない。

また,評価通達は,長年の間公開され,行政先例法ともいうべきものであるから,納税者に対する課税の法的安定性及び平等原則の点からすれば,これに従わない評価方法を採ることは許されないというべきである。

イ 原告らは,被告担当者から,船舶評価のための資料を提出して欲しいとの要請を受けたことはない。また,平成11年夏ころ,P33税理士から原告P10に対し,被告に提出するために本件船舶の実勢価額を調べて報告してもらいたいという指示があり,船舶の明細表の書式案(甲23)を渡されたのに従って,原告P10が,各評価会社に船舶のデータ提出を依頼して取得の上,船舶一覧表を作成し,これをP33税理士に交付しており,被告担当者がP33税理士を通じて要求した資料はすべて提出している。

仮に,原告らが,被告担当者の調査に非協力的であった場合でも,被告担当者が,評価会社又は造船会社に対し反面調査をしていれば,造船契約書や船舶の図面等の資料から,同種同型の船舶又は類似する船舶を課税時期において建造する価額を確認するために必要となる本件船舶の建造年月日,船種,トン数,構造,仕様等を把握することができたはずである。また,評価会社の法人税確定申告書等には,船名,船種,トン数,構造が記載されているから,これらに基づいて反面調査又は造船会社からの聴取を行うことにより,本件船舶と同種同型の船舶又は類似する船舶を課税時期において建造する価額を把握することが可能であった。

ウ 原告らは,国税不服審判所における審査中に,鑑定意見書を提出したが,同意見書記載の鑑定評価額は,本件の課税時期である平成▲年▲月▲日時点において,本件船舶と同種同型の船舶を新造する場合の価額であり,本件船舶の価額は,上記鑑定評価額から減価償却費相当額を控除した金額(別表2の「評価額」欄に記載された金額)である。課税庁は,原告らが提出した上記鑑定意見書によって,本件船舶の評価額を把握することが可能であった。

また,仮に,原告らが提出した鑑定意見書に示された評価額に問題があるとすれば,課税庁自ら船価鑑定機関に依頼するなどして,本件船舶の客観的で信用性のある評価額を収集すべきであった。

(2)  本件裁決が採用した評価方法の合理性(争点2)

(被告の主張)

評価通達136は,相続財産の評価は当該財産の取得時における時価によるべきとする法22条の趣旨に基づき,船舶の客観的な交換価値を評価するという観点から定められたものである。

本件裁決の評価方法は,取得価額から取得時から課税時期までの期間に応じて減価償却費の合計額を控除した価額を各船舶の評価額とするものであるが,当該取得価額は,当事者の合意した価額であり,その売買時点における時価とも評価できるものであることからすると,取得価額を減価償却することによって相続時の価額に引き直すという本件裁決の評価方法は,法22条及び同条を受けて定められた評価通達136の趣旨に沿うものということができる。また,本件裁決が,減価償却につき定率法を用いた点も,評価通達136が財産の価値が一定の割合で減価していく定額法ではなく,取得時期からの価値の減少の大きい定率法を採用することにより評価の安全性を担保しようとしている趣旨にかなうものである。

したがって,本件裁決が採用した評価方法には,合理性がある。

(原告らの主張)

本件裁決が採用した評価方法は,評価通達に反するものであり,合理性を有していない。

(3)  税務調査手続の適法性(争点3)

(原告らの主張)

被告担当者が,P5,P6,P7,P8及びP2に対し反面調査を行えば,本件船舶の建造年月日,船種,トン数,構造,仕様等が把握できたはずである。それにもかかわらず,被告はあえて反面調査を行わないまま本件更正処分等を行っており,被告の税務調査手続は,適正手続に反し違法である。

(被告の主張)

税務調査の手続は,課税庁が課税要件の内容をなす具体的事実の存否を調査するための手続にすぎないから,その適法性自体が課税処分の要件となることはなく,税務調査の違法は当然には課税処分の違法事由にならない。ただ,調査を全く欠くなど違法性の程度が著しい場合に限り,課税処分が違法となると解すべきところ,本件においては前述のとおり,被告が反面調査をすべき義務はなく,被告が行った税務調査手続に違法はない。

第3当裁判所の判断

1  争点に対する判断

(1)  争点1(本件船舶の評価を評価通達136に定める方式以外の方式によって行うことの可否)について

ア 法22条にいう「時価」とは,相続開始時における当該財産の客観的交換価値をいい,交換価値とは,それぞれの財産の現況に応じ,不特定多数の当事者間において自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額であって,いわゆる市場価格と同義であると解するのが相当である。

もっとも,相続財産の客観的交換価値といっても,必ずしも一義的に確定されるものではないことから,課税実務においては,相続財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ,これに定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価するものとしている。これは,相続財産の客観的な交換価値を個別に評価する方法を採ると,その評価方式,基礎資料の選択の仕方,評価者による判断等により異なった評価額が生じることを避け難く,また,課税庁の事務負担が増大し,課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあることなどからして,あらかじめ定められた評価方法により画一的に評価する方が,納税者間の公平,納税者の便宜,徴税費用の節減という見地からみて合理的であるという理由に基づくものである。したがって,評価通達に規定された評価方式が合理的なものである限り,相続財産の価額は,原則として,評価通達に定められた評価方式によって画一的に評価するのが相当である。

しかしながら,評価通達に定められた評価方式によるべきであるとする趣旨が上記のようなものであることからすれば,評価通達に定められた評価方式によって当該財産の価額を評価することができず,この方式によって評価しようとした場合にはかえって課税事務の停滞を招き,納税者の便宜にも反するような特別の事情がある場合には,他の合理的な時価の評価方式によって当該財産を評価することも許されると解するのが相当である。

イ これを本件についてみるに,証拠(甲2,甲35ないし甲45,乙4,証人P34)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

(ア) 評価対象となる船舶と同種同型の船舶又は類似する船舶の新造船価を算出するためには,当該評価対象船舶の建造年月日,船種,トン数,構造,仕様の詳細等を示す資料が必要とされる。

(イ) 本件相続に係る相続税の原処分庁における税務調査を担当したP34(以下「担当者P34」という。)は,平成11年8月下旬から9月上旬までの間に,今治税務署において,P33税理士と面接し,評価会社の保有する株主名簿,土地の明細,海外子会社の保有資産に関する資料,評価会社等が所有する船舶の評価に必要な資料等の提出を依頼した。その後,P33税理士は,担当者P34に対し,株主名簿や貸借対照表等を随時提出したが,船舶についての資料は提出しなかった。そこで,担当者P34が,P33税理士に対し,このままでは株式の評価が困難であることを伝え,再度船舶に関する資料の提出を依頼したところ,P33税理士は,船舶の評価に精通しているP2社長のP35に船舶の評価を依頼し,これを提出すると回答した。

担当者P34は,平成11年11月末ころまで,本件相続に係る相続税の税務調査を継続したが,この間,P33税理士又は原告らから,P35による本件船舶に関する評価書は提出されず,また,本件船舶の構造,仕様の詳細等を明らかにする資料や船舶一覧表(甲22)も提出されなかった。

(ウ) P5が平成7年1月1日から同年12月31日までの事業年度における法人税確定申告書に添付した「定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」(甲35)には,a1の構造が,「鋼,貨物船」であること,取得価額が「21億1811万円」であることの記載があり,同社の「固定資産の増減内訳書」(甲36)には,同船舶の重量が「2万3249G/T(Gross Ton 総重量の略)」であることの記載があった。

(エ) P5が実質100%出資するP17社が,平成7年1月1日から同年12月31日までの事業年度における法人税確定申告書に添付した「定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」(甲41)には,a2の構造が「鋼,貨物船」であること,取得価額が「25億0750万円」であること,a3の構造が「鋼,チップ船」であること,取得価額が「30億1503万4707円」であることの記載があった。また,同社の「固定資産の増減内訳書」(甲42)には,a2の重量が「3万5874G/T」であること,a3の重量が「4万0328G/T」であることの記載があった。

(オ) P6が実質100%出資するP19社が,平成7年1月1日から同年12月31日までの事業年度における法人税確定申告書に添付した「定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」(甲45)には,a4の構造が「鋼船,貨物船」であること,取得価額が「18億1320万0082円」であること,a5の構造が「鋼船,貨物船」であること,取得価額が「25億6000万円」であることの記載があった。

(カ) P6が実質100%出資するP20社等が,平成7年1月1日から同年12月31日までの事業年度における法人税確定申告書に添付した「定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」(甲43)には,以下の記載があった。

船名

構造

取得価額

重量

a6

鋼船,貨物船

14億5000万円

3万6517G/T

a7

鋼船,油槽船

27億6885万2183円

5万2552G/T

a8

鋼船,冷凍船

25億5283万5430円

8520G/T

a9

鋼船,貨物船

21億1610万1275円

1万6712G/T

(キ) P21が実質100%出資するP22社が,平成6年10月1日から平成7年9月30日までの事業年度における法人税確定申告書に添付した「定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」(甲39)には,以下の記載があった。

船名

構造

取得価額

a18

鋼船,油槽船

38億1367万5198円

a19

鋼船,貨物船

23億2598万7537円

a20

鋼船,油槽船

43億8012万7319円

a12

鋼船,貨物船

11億0024万3750円

a13

鋼船,貨物船

28億1629万8593円

a14

鋼船,貨物船

48億1074万5640円

a15

鋼船,貨物船

54億6403万0255円

a16

鋼船,貨物船

24億3018万3000円

a17

鋼船,貨物船

5億4279万1690円

また,同社の「固定資産の増減内訳書」(甲40)には,以下の記載があった。

船名

重量

a18

万2764G/T

a19

1万6472G/T

a20

5万2500G/T

a12

2万7650G/T

a13

3万5886G/T

a14

4万7367G/T

a15

4万2855G/T

a16

1万6708G/T

a17

4万8566G/T

(ク) P7が実質100%出資するP23社等が,平成6年6月1日から平成7年5月31日までの事業年度における法人税確定申告書に添付した「定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」(甲37)には,a21の構造が「鋼船,コンテナ船」であること,取得価額が「14億2770万7095円」であること,a22の構造が「鋼船,自動車船」であること,取得価額が「9億5155万円」であることの記載があった。また,同社の「固定資産の増減内訳書」(甲38)には,a21の重量が「7466G/T」であること,a22の重量が「1万8382G/T」であることの記載があった。

(ケ) P8の特定外国子会社等であるP32社が,平成6年10月1日から平成7年9月30日までの事業年度における法人税確定申告書に添付した「定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」(甲44)には,以下の記載があった。

船名

構造

取得価額

重量

a23

鋼船,貨物船

35億3568万円

1万8896G/T

a24

鋼船,貨物船

14億1920万9331円

7601G/T

a25

鋼船,貨物船

11億5748万6428円

8416G/T

a26

鋼船,貨物船

42億5844万4124円

4万2304G/T

a7

鋼船,油槽船

18億4591万4795円

5万2552G/T

a27

鋼船,貨物船

20億1588万4460円

1万1788G/T

a28

鋼船,貨物船

2億4000万円

3991G/T

(コ) 原告らが高松国税不服審判所に提出した鑑定意見書には,船舶の要目及び鑑定額が記載されているのみであって,鑑定額の算定根拠が示されたり,算定に用いた客観的資料が添付されるなどしていなかった。

ウ 本件において,原告らは,本件船舶を評価通達136ただし書きに定める方式によって評価すべきであると主張しており,本件船舶の調達価額を把握することが困難であることについては争っていないとみることができるところ,上記認定事実からすれば,原処分庁は,本件船舶と同種同型の船舶又は類似する船舶の新造船価を算出するために必要な建造年月日,船種,トン数,構造,仕様の詳細等の情報を得ることができなかったというべきである。すなわち,原処分庁における税務調査の間,P33税理士又は原告らから,上記情報を明らかにする資料の提出がなく,また,法人税確定申告書に添付された書類等によっても,前示のとおり,船名,船舶の用途,取得価額,重量が判明したのみであって,これらの情報から本件船舶と同種同型の船舶又は類似する船舶の新造船価を把握することは困難であったというべきである。

これに対し,原告らは,原告らが,被告担当者から,船舶評価のための資料を提出して欲しいとの要請を受けたことはないし,平成11年夏ころ,P33税理士から原告P10に対し,被告に提出するために本件船舶の実勢価額を調べて報告してもらいたいという指示があり,船舶の明細表の書式案(甲23)を渡されたのに従って,原告P10が,各評価会社に船舶のデータ提出を依頼して取得の上,船舶一覧表を作成し,これをP33税理士に交付しており,被告担当者がP33税理士を通じて要求した資料はすべて提出していると主張する。

しかしながら,証拠(乙6,証人P34)によれば,被告担当者は,船舶一覧表やその他船舶の評価に関する資料の提出をP33税理士からも原告らからも全く受けなかったことが認められ,これを覆すに足りる証拠はない。

被告担当者が,船舶一覧表や船舶の評価に関する資料の提供を受けていたのであれば,被告としては,それをもとに船舶の評価を行うはずであり,あえて簿価を基準に評価することは考え難い。

また,原告らは,P13が発行した鑑定意見書記載の鑑定評価額が,平成▲年▲月▲日時点において本件船舶と同種同型の船舶を新造する場合の価額であり,この価額から減価償却費相当額を控除した金額が,本件船舶の適正な評価額であると主張し,同鑑定意見書を作成したP36証人も,鑑定意見書に記載された鑑定評価額が,平成▲年▲月▲日時点において,本件船舶と同じ船舶を新造する場合の価格であると供述する。

しかしながら,前記認定事実のとおり,鑑定意見書には,鑑定額の算定根拠が示されておらず,また,算定に用いた客観的資料も添付されていなかったというのであるから,国税不服審判所長が,同意見書の正確性を判断することができず,同意見書に記載された評価額に基づいて本件船舶を評価することができなかったのももっともである。

また,次に述べるように,上記鑑定意見書には,①評価方法の合理性,②基礎データの信用性,③他の評価額との相違といった問題点があることからすると,鑑定意見書における鑑定評価額が,平成▲年▲月▲日時点において本件船舶と同種同型の船舶を新造する場合の価額であると信用することはできない。

(ア) 評価方法の合理性について(①)

P36証人は,平成12年における本件船舶と同種同型船舶の新造船価及び本件船舶の実際の契約価格を基準として,それぞれ「新造船受注船価の推移」と題する表(甲3号証6枚目の表。以下「船価推移表」という。)に基づく年次調整を加え,2つの年次調整額が一致した場合にはこれを鑑定評価額とし,一致しなかった場合には,各年次調整額を平均した値を鑑定評価額とした旨供述し,かかる方法を採用した理由につき,評価対象となる船舶数が多いこと,同一船舶の2時点における評価を算定したことから,より系統的に評価額を算出する必要があったことを挙げている。しかしながら,P36証人は,他方で平成6年以後の受注船価の推移を調査するため,四国近辺の造船会社等から船価を聴取したというのであり,平成8年における本件船舶と同種同型船舶の新造船価を調査することも可能であったということができることからすると,P36証人が採った年次調整を加える評価方法は,その合理性に疑問がある。

また,P36証人は,2つの年次調整額を検討した結果,両者の金額がかけ離れている場合には,平成12年における新造船価を基に年次調整を加えた額を鑑定評価額として採用した旨供述し,その理由を,平成12年の価格は鑑定直近の価格であり,信用性が高いと判断した旨説明する。しかしながら,2つの年次調整額がどの程度離れていた場合に平成12年における新造船価を基に年次調整を加えた額を鑑定評価額としたかについて具体的な基準を示していないし,本件船舶の新造時期から鑑定時期である平成8年までの期間が,平成8年から平成12年までの4年間より短い場合においても,実際の契約価格からの年次調整額ではなく平成12年における新造船価を基に年次調整を加えた額を鑑定評価額として採用した場合もある理由が合理的に説明されていないというべきである。

(イ) 基礎データの信用性について(②)

P36証人は,造船所の担当者,船主等に対し,自動車専用船であれば1台当たり,コンテナ船であればTEU(TEUは,海上コンテナの単位であり,1TEUは,20 equipment unitのことである。)当たり,バルクキャリアであればD/W(Dead Weight 積載量の略)当たりの造船価格を口頭で聞き取る方法によって調査したこと,積載車両1台当たりの単価やTEU当たりの単価は,積載個数が多ければ安く,少なくなれば高くなるという経験に従い,積載個数に見合った単価を見積もったこと,このようにして見積もった単価に本件船舶の積載量や総トン数等を乗じて平成12年における新造船価として妥当な価額を算出した旨供述するが,現時点では,聞き取った事項を明らかにする資料等は残っておらず,聴取内容や単価の見積もりが平成12年における新造船価を算出する基礎として妥当であったかどうかを検証することはできない。

また,P36証人は,船価推移表の平成6年以後の部分を,造船所等から聞き取った価格に基づき自ら手書きしているが,P36証人の調査に基づく価格は,国土交通省海事局調査による新造船受注船価の推移(甲16号証の2)に示された平成6年以後の価格と異なっている。この点,P36証人は,全国ベースの船価と四国地区における船価との違いから,このような相違が生じたと供述するが,四国地区における船価が全国における船価と異なることを認めるに足りる客観的な資料は示されていない。

さらに,P36証人は,年次調整の基礎となった本件船舶の実際の契約価格につき,P2から口頭で聞き取っていると供述するが,証拠(甲6ないし甲15,甲30)によれば,a29,a18,a19,a20,a12,a13,a16,a9,a23,a17の10隻の船について,鑑定意見書に記載されている金額が契約書又は造船会社発行の新造船建造船価証明書記載の金額と相違していることが認められ,この相違につき,合理的説明がされていないことからすると,P36証人が年次調整の基礎とした本件船舶の実際の契約価格は,その正確性に問題があるといわざるを得ない。

(ウ) 他の評価額との相違について(③)

原告らは,財団法人P37が作成した鑑定書(甲4)を提出し,P36証人が算出した鑑定評価額は,他の有力鑑定人による鑑定とも大きな相違はなく信用できると主張する。

財団法人P37が作成した鑑定書による鑑定額とP36証人が算出した鑑定評価額を比較した場合,その開差が10%以下にとどまる船舶が10隻認められるものの,その開差が10%を超える船舶が18隻認められる(このうち,開差が30%を超えるものが5隻認められる。)のであり,P36証人が算出した鑑定評価額が,財団法人P37が作成した鑑定書における鑑定額と大きな相違はなく信用できるとする原告らの主張には,理由がない。

エ 以上の事実に加え,原処分庁における税務調査が,平成9年9月16日に開始して以後2年4か月以上が経過して長期間に及んでいたこと,原告らが高松国税不服審判所に対して鑑定意見書を提出したのは,審査請求申立てから1年が経過した時期であったことからすると,評価通達に定められた評価方式によって本件船舶を評価するためにさらに調査を継続することは,課税事務の停滞を招くこととなるということができる。

したがって,本件においては,評価通達に定められた評価方式によって本件船舶の価額を評価することができず,この方式によって評価しようとした場合にはかえって課税事務の停滞を招く特別事情があったということができ,評価通達に定められた評価方式以外の合理的な時価の評価方式によって本件船舶を評価することが許されるというべきである。

オ(ア) これに対し,原告らは,評価通達は長年の間公開されており,行政先例法ともいうべきものであって,これに反する評価方法は許されないと主張する。

しかしながら,通達は,上級行政機関がその権限に基づき下級行政機関ないしその職員に対し,法令の解釈や運用等に関して発する行政組織内部の命令にすぎず,国民の権利義務を直接に定める法規の性格を有するものではないと解されるところ,仮に,評価通達に従った取扱いが反復継続的に行われ,その取扱いに対して国民の一般的信頼が形成され,納税者間に定着するに至ったとしても,これによってその取扱いが法規としての効力を有することになるということはできない。また,本件においては,前記のとおり,評価通達によることができない事情があるといえるから,評価通達をそのまま適用しないからといって,それが評価通達に従った取扱いに対する国民の一般的信頼を裏切るものということもできない。

したがって,この点に関する原告らの主張は失当である。

(イ) また,原告らは,評価会社又は造船会社に対し反面調査をしていれば,造船契約書や船舶の図面等の資料から,本件船舶の建造年月日,船種,トン数,構造,仕様等を把握することができたはずであるし,評価会社の法人税確定申告書等には,船名,船種,トン数,構造が記載されているから,これらに基づいて反面調査又は造船会社からの聴取を行うことにより,同種同型の船舶又は類似する船舶を課税時期において建造する価額を把握することも可能であったと主張する。

しかしながら,前記認定事実のとおり,原告らの税務申告の代理人であったP33税理士は,担当者P34に対し,船舶評価に精通しているP35による本件船舶の評価を得て提出する旨を約束しているのであり,担当者P34が,P33税理士又は原告らが,原処分庁の行う税務調査に対して協力姿勢を示していることを信頼し,あえて反面調査を行わず,P33税理士から評価書ないし資料が提出されるのを待っていたこともやむを得なかったというべきである。

また,前記認定事実のとおり,評価会社の法人税確定申告書等からは,船名,船舶の用途,取得価額,重量が明らかになるのみであって,これらの情報を基に造船会社から本件船舶と同種同型の船舶又は類似する船舶の新造船価を聴取することは極めて困難であったというべきである。

さらに,原告らは,本件船舶と類似する船舶の新造船価及び仕様を示す資料(甲26の1ないし甲29の2)を提出し,被告担当者が反面調査をしていればこれらの資料を入手し得たと主張する。この点,甲26号証の1及び甲30号証の1によれば,建造番号X-XXXX番船は,a9と船体主要寸法,総トン数,載貨重量トン数,主機関がほぼ同一であり,その建造価格は20億5000万円であること,甲27号証の1,甲31号証の1及び甲32号証の1によれば,建造番号Y-YYYY番船は,a2及びa5と船体主要寸法,総トン数,載貨重量トン数,主機関がほぼ同一であり,その建造価格は27億5000万円であること,甲28号証の1,2及び甲33号証の1によれば,建造番号Z-ZZZZ番船は,a7と船体主要寸法,総トン数,載貨重量トン数がほぼ同一であり,その建造価格は42億円であること,甲29号証の1及び甲34号証の1によれば,建造番号x-xxxx番船は,a3と船体主要寸法,総トン数,載貨重量トン数,主機関がほぼ同一であり,その建造価格は30億5000万円であることが認められ,本件船舶と類似する船舶ということができるものの,これら4隻の建造年月日は,X-XXXX番船については平成8年4月3日と本件相続開始時に近接してはいるが,その他のY-YYYY番船,Z-ZZZZ番船及びx-xxxx番船についてはそれぞれ,平成8年10月1日,平成7年5月19日,平成8年11月18日と平成▲年▲月▲日の本件相続開始時とは時期がずれており,これらの船舶の建造価格から,課税時期において本件船舶と類似する船舶を建造する価額を把握するには不十分であったというべきである。また,上記a9他4隻以外の船舶については,証拠によっても,被告が反面調査を行った場合に,いかなる資料を入手できたか不明である。

したがって,この点に関する原告らの主張には理由がない。

(ウ) そのほか,原告らは,被告が評価通達6に該当する事情を主張,立証していないことを指摘する。

しかしながら,評価通達6によれば,評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は,国税庁長官の指示を受けて評価することとされているが,上記国税庁長官の指示は,国税庁内部における処理の準則を定めるものにすぎないというべきであり,指示の有無が更正処分の効力要件となっているものでないことは明らかである。

したがって,評価通達6に定める国税庁長官の指示がなかったからといって,本件更正処分が違法となることはないというべきであり,この点に関する原告らの主張は失当である。

(2)  争点2(本件裁決が採用した評価方法の合理性)について

前記のとおり,法22条にいう「時価」とは,相続開始時における当該財産の客観的交換価値をいい,交換価値とは,それぞれの財産の現況に応じ,不特定多数の当事者間において自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額であって,いわゆる市場価格と同義であると解するのが相当である。そして,評価通達136は,原則として,調達価額に相当する価額を当該船舶の時価と擬制し,調達価額が明らかでない船舶については,その船舶と同種同型の船舶又は,最も類似する船舶を課税時期において新造する場合の価額から,その船舶の建造の時から課税時期までの期間に応ずる償却額の合計額を控除した価額を当該船舶の時価といわば擬制するものである。

本件裁決の評価方法は,取得価額から取得時から課税時期までの期間に応じて減価償却費の合計額を控除した価額を各船舶の評価額とするものであるが,取得価額が,売買ないし建造時点において,自由な取引を行う当事者間で合意した価額であることからすると,調達価額又は同種同型若しくは類似する船舶の新造価額が不明である場合に,取得価額を基準として減価償却費の合計額を控除する方法を採用することも合理的であるというべきである。

また,本件裁決は,本件船舶につき,減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一に掲げる種類が「船舶」,構造又は用途が「その他のもの」の鋼船,細目が「その他のもの」に該当するとして,その耐用年数を12年とし,同省令の別表第九により定率法の償却率を0.175とした上で,取得価額から取得から本件相続開始までの期間の償却費を控除してその評価額を算出しているが,同省令が,通常考えられる維持,補修を加えることにより予定された通常の効用持続年数に,ある程度の一般的陳腐化を織り込んだ年数を示すものとされていること,また,評価通達136も定率法による減価償却を採用していることからすると合理的であるということができる。

したがって,本件裁決が採用した評価方法には,合理性がある。

(3)  争点3(税務調査手続の適法性)について

上記(1)イ(イ)において認定したとおり,原告らの税務申告の代理人であったP33税理士は,担当者P34に対し,船舶評価に精通しているP35による本件船舶の評価を得て提出する旨を約束しており,担当者P34が,P33税理士又は原告らが,原処分庁の行う税務調査に対して協力姿勢を示していることを信頼し,あえて反面調査を行わず,P33税理士から評価書ないし資料が提出されるのを待っていたこともやむを得なかったというべきである。

したがって,被告が行った税務調査手続には違法な点はないというべきである。

2  本件更正処分等の適法性

(1)  本件更正処分について

以上のとおり,本件船舶の課税時期における価額を評価するに当たり,本件船舶の取得価額から取得時から課税時期までの期間に応じて減価償却費の合計額を控除した価額をもって各船舶の評価額とすることは相当というべきである。

そして,本件船舶の取得価額から取得時から課税時期までの期間に応じて減価償却費の合計額を控除した価額は別表1のとおりであり,これにより計算すると,本件共同相続人が相続したP5の株式の評価額が6046万2000円であること,同P6の株式の評価額が2540万円であること,同P7の株式の評価額が640万3890円であること,同P8の株式の評価額が8億7455万9000円であることについては,原告らは明らかにこれを争わないから,自白したものとみなし,これらと,前記第2の3記載の争いのない金額を基にして本件相続に係る本件共同相続人の相続税を計算すると,課税価格65億5422万円,相続税の総額37億0094万3000円であり,このうち原告P10が納付すべき税額は8億0706万4000円,原告P11が納付すべき税額は7億0148万6800万円となる。

本件裁決によって取り消された後の本件更正処分に係る課税価格及び納付すべき税額はこれと同額であるから,本件更正処分は適法である。

(2)  本件賦課決定処分について

原告らは,本件相続に係る相続税の申告の際,課税価格及び納付すべき税額を過少に申告していたものであり,過少に申告したことについて国税通則法65条4項に規定する正当な理由は認められない。

したがって,原告らに対しては,国税通則法65条により過少申告加算税が賦課されるところ,同条1項,2項により,原告P10が納付すべき過少申告加算税額は,本件更正処分(ただし,本件裁決によって取り消された後のもの)によって同人が新たに納付すべきこととなった税額7196万円(ただし,同法118条3項の規定に従い1万円未満の端数金額切捨て)に100分の10を乗じて計算した719万6000円であり,原告P11が納付すべき過少申告加算税額は,本件更正処分(ただし,本件裁決によって取り消された後のもの)によって同人が新たに納付すべきこととなった税額3216万円(ただし,同法118条3項の規定に従い1万円未満の端数金額切捨て)に100分の10を乗じて計算した321万6000円となる。

本件裁決によって取り消された後の本件更正処分に係る過少申告加算税額は上記と同額であるから,本件賦課決定処分は適法である。

3  結論

以上のとおりであるから,原告らの請求についてはいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 澤野芳夫 裁判官 竹尾信道 裁判官 白石裕子)

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