松山地方裁判所 平成18年(わ)298号 判決 2007年8月23日
主文
被告人を懲役13年に処する。
未決勾留日数中270日をその刑に算入する。
松山地方検察庁で保管中の自動装てん式けん銃1丁並びに弾丸及び打ちがら薬きょう各8個を没収する。
訴訟費用はその2分の1を被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1 指定暴力団五代目a組b会c組若頭代行であった平成17年7月20日ころ,松山市d町e丁目f番地所在のビル内同c組事務所で事務所当番をしていた際,同ビル屋上において,同組組員である分離前相被告人甲が,
1 A(当時27歳)に対し,所携の金属バットでその額を突いた上,左腕部等を多数回殴打する暴行を加え
2 B(当時26歳)に対し,同金属バットでその左半身等を多数回殴打する暴行を加え,よって,同人に加療約4週間を要する全身打撲,左肩捻挫,頭部打撲傷及び右肘挫滅創等の傷害を負わせ
3 C(当時23歳)に対し,同金属バットでその左腕部等を多数回殴打する暴行を加え,よって,同人に全治約1週間を要する左肘,前腕打撲等の傷害を負わせ
4 D(当時25歳)に対し,同金属バットでその左腕部,背部等を多数回殴打する暴行を加え,よって,同人に全治約1週間を要する左背部,側胸部打撲等の傷害を負わせ
るに当たり,被告人が事務所当番として当時管理していた前記ビルにおいて,甲がAらに暴行を加えることを容認し,同ビルを甲に犯行場所として提供するとともに,甲が上記1ないし4の各暴行を加えている間,同ビル2階事務所内でその他の者を見張り,もって甲の上記各犯行を容易ならしめてこれを幇助した
第2 指定暴力団六代目a組b会c組若頭補佐であるが,かつての同組若頭補佐で,同組を破門,絶縁になり,同組関係者に対し敵対的行動をとるようになっていたE(当時36歳)を殺害しようと企て,氏名不詳者数名と共謀の上,平成18年6月24日午後2時15分ころ,松山市g町h番地i所在のE方に,玄関ドアの施錠を外して侵入し,そのころ,同室内において,同人に対し,殺意をもって,所携の自動装てん式けん銃で弾丸8発を発射して,そのうち1発の弾丸を同人の右大腿部に命中させたが,同人に加療約6週間を要する右大腿下端銃創,右膝蓋骨骨折の傷害を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げなかった
第3 氏名不詳者数名と共謀の上,法定の除外事由がないのに,前記第2の日時場所において,前記自動装てん式けん銃1丁を,これに適合するけん銃実包8発と共に携帯して所持したが,同月27日,松山南警察署に出頭した上,上記加重所持の事実を申告するとともに,けん銃の所在場所に警察官を案内し,けん銃を提出して自首した
ものである。
(証拠の標目)
省略
(事実認定の補足説明)
1 争点
判示第1の公訴事実に関し,検察官は,主位的訴因として,被告人が甲と共謀の上,A,B,C及びD(以下4名併せて「被害者ら」という。)に対し各暴行を加え,うち3名に傷害を負わせた旨の暴行,傷害の共同正犯を,予備的に甲が被害者らに暴行を加えるのを幇助した旨の暴行,傷害の幇助犯を主張し,他方,弁護人は,被告人と甲との間に共謀はなく,甲の犯行の幇助もしていないので無罪である旨主張し,被告人も弁護人の主張に沿う陳述をする。
この点に関する当裁判所の判断は,以下のとおりである。
2 証拠上明らかに認められる事実
(1) 被害者らは,c組組員であったFを通じるなどして甲と知り合い親しく付き合っていた。AとBは,Fの舎弟として可愛がられていたが,両名も含め,被害者らはいずれもc組の正式な組員ではなかった。そして,被告人については,以前c組事務所を訪れた際などに見かけたという程度で,親しく言葉を交わしたことはなかった。
(2) 平成17年7月17日,Fが死亡し,甲及び被害者らはFの葬儀に出席した。その席で,被害者らは,甲から,しばらくの間喪に服し,酒を飲むのを慎むよう指示されたが,被害者らは,これに反し,宇和島市内の飲食店で飲酒して騒いだ。甲は,そのことを聞きつけ,被害者らが自らの指示に従わなかったことに激怒し,被害者らに制裁を加えるため,同月20日(以下「当日」という。),被害者らをc組事務所に呼び出した。
(3) c組事務所は,松山市内の3階建てビル内にあり,2階部分を事務所,3階部分を休憩室として使用している。中に入るには,同ビル1階の出入口を利用することになるが,出入口には,インターホンと監視カメラが設置してあり,来訪者がインターホンを押すと,事務所当番が事務所内のテレビで監視カメラに映る出入口付近の映像を見て,来訪者を確認して当番席に設置してあるボタンを押して扉を開ける仕組みとなっていた。なお,事務所当番は,c組の直系組員が交代で担当することとなっており,甲は,組長代行の舎弟で,いわゆる「枝の組員」であることから当番を務めることはなく,当日は被告人が事務所当番をしていた。
(4) 被害者らは,当日午後,上記ビル内のc組事務所を訪れ,その後,甲も同事務所を訪れた。甲は,まず,A及びBをビル屋上に連れ出し,同人らに判示第1の1及び2の各暴行を加え,次に,C及びDを同様に屋上に連れ出し,判示第1の3及び4の各暴行を加えた。これにより,B,C及びDが判示の各傷害を負った。
(5) そのころ,ビル屋上で人が殴られているとの通報があり,警察官が現場に臨場したところ,被害者らは既に同ビルを退出しており,警察官の職務質問に対し,自分達は事件には関係ない旨述べた。そして,警察官が事件のことを聞くため同ビル1階のインターホンを押したところ,被告人が外に出てきてこれに応対した。
3 被告人の犯行への関与の有無について
(1) 以上のとおり,被害者らに対する暴行は専ら甲が一人で行っており,被告人はこれに一切加わっていないのであるから,被告人がその共犯となるか否かを考える上では,甲との間の事前の意思連絡の有無や,当日の被告人の行動を確定する必要がある。
(2) この点に関し,B,C及びDは,公判廷において,Aは,捜査官に対し,大要,次のような事実を述べている。
ア 被害者らがビル2階の事務所に来たときは,事務所内には被告人しかおらず,被告人は,被害者らに対し,甲が来るまで待つように,甲は相当怒っているなどと言った。
イ 甲が,金属バットを手にして事務所に入ってきて,ただで帰れると思うな,などと怒鳴り,AとBに対し,屋上に上がるよう命じたが,被告人はその場にいながらこれを制止しなかった。
ウ AとBがビルの屋上で甲から暴行を受けている間,被告人は,CとDと一緒に事務所内にいたが,途中,屋上の方に様子を見に行った。
エ Aらに対する暴行が終わり,甲がCとDに対し屋上に上がるよう命じたが,被告人は,その場にいながらこれを制止しなかった。
オ 甲がCらに暴行を加えている間,AとBは甲に命じられて事務所内で正座していたが,被告人は,その間,事務所内におり,Bらに話しかけるなどした。
カ 被害者ら全員に対する暴行が終了後,甲は,事務所内で,被害者らに対し,「自分についてくるか。」などと暗に自分の舎弟になるよう求めたが,その際,被告人は,甲が被害者らのことを思って(暴行を)したなどと述べた。
これらの内容は具体的かつ詳細で,変遷も窺われず(なお,捜査初期の段階での被害者らの供述調書には,被告人の言動についてあまり触れられていないが,これは,被害者らが受けた暴行を中心に取調べが行われ,その点を重点的に録取されたことに由来するもので,これをもって被害者らの供述に変遷があるとみるべきではない。),互いの供述にさしたる矛盾点も見当たらない。
弁護人は,被害者らの供述が時間が経つほど詳細な内容となっており,口裏を合わせて供述内容を追加しているとしか思えず不自然である旨主張するが,前記のとおり,被害者らと被告人との間にはほとんど面識がなく,利害関係を窺わせる事情もないにもかかわらず,あえて口裏合わせをしてまで被告人に不利な虚偽供述をするとは考え難く,むしろ,虚偽供述をすることで被害者らが受ける不利益を考えると,公判廷において,被告人が在席する中でなされたBら3名の供述は,とりわけ信用性が高いとみるべきである。
以上からすれば,被害者らの供述には,高い信用性を認めることができる。
(3) これに対し,甲及び被告人は,公判廷において,甲は被告人に被害者らに対し暴行を加えることを告げておらず,被告人もこれを知らなかったなどと供述する。
しかしながら,前記認定の組事務所の管理状況等を前提とすれば,甲が,制裁を加えるため被害者らを事務所に呼び出したことを,当日の事務所当番である被告人に一切知らせなかったというのも極めて不自然であるし,事務所当番に気付かれないよう施錠を開けて被害者らを事務所内に導き入れ,その全員を順次金属バットで殴るということはほとんど不可能に近いといわなければならない。
また,その供述は,被告人の関与を明確に述べた上記被害者らの供述に真っ向から反するものである上,被告人は,当日,被害者らが事務所を訪れた際に自らが応対したか否かについて,捜査段階においては概ねこれを認めていたが,公判廷では覚えていないと述べるなど,被告人らの供述には,看過し難い変遷もある。
さらに,当日,通報を受けて駆けつけた警察官Gは,公判廷において,被告人に対し,ビル内への立ち入りを許可するよう求めたところ,被告人から,「内間(内部)のことですけん,事件ごとではない。」,「出来の悪い若い衆のしつけをしよった。」などと言われたと述べているところ,同供述についてはその信用性を疑わせる事情は見当たらない。そして,その発言は,被告人が当日の甲の被害者らに対する暴行が行われたことを知っていたことを窺わせるものである。
以上の事情に照らせば,被告人の関与を否定する甲及び被告人の供述は信用することができないというべきである。
(4) 以上からすれば,当日,事務所内における被告人の言動は,信用性の高い被害者らが述べる前記アないしカのとおりであったと認められる。また,その言動に照らすと,被告人は,甲が被害者らに対し制裁を加えることについては,被害者らが組事務所を訪れる前にあらかじめ甲から聞くなどして知っており,被害者らを事務所内に入れ,その後甲が暴行を加えるのを容認していたものと認められる。
4 検討
(1) 以上の事実関係を前提に,被告人について共同正犯ないし幇助犯としての責任を問い得るかについて検討する。
(2) まず,動機についてみるに,本件犯行は,前記のとおり,被害者らがFの葬儀後に甲の指示に反して飲酒して騒いだことを知り,甲が激怒し,制裁を加えたものである。上記認定のとおり,被告人は,甲から事前にこの話を聞いていたのであるが,被告人は被害者らとはほとんど面識はなく,甲やFと同じ組に所属する者として甲の怒りに共感を覚えることはあったであろうが,自らも甲と同じように被害者らに激しい怒りを覚えたとは想像し難く,これを窺わせる証拠もない。
また,甲の言動をみると,この機会にあわよくば被害者らを自らの舎弟とすることも目論んでいたことが窺えるところ,検察官は,被害者らが甲の舎弟となればc組の勢力拡大になるのであるから,同組幹部である被告人にとってもメリットがあったというのであるが,甲は「枝の組員」に過ぎず,被告人とも特に親しい間柄というわけでもないのであるから,関係証拠から窺える被告人のc組に対する忠誠心や帰属心の強さを踏まえても,甲が舎弟を増やすことを被告人が積極的に望んでいたとまでは認められず,この点を本件犯行への関与の動機とみることはできない。
(3) 次に,被告人が果たした役割についてみるに,前記アないしカに認定のとおり,被告人は,自らが事務所当番であった際に,甲が被害者らに暴行を加えようとしていることを知りながら,被害者らに対し,甲が来るまで待つように告げた上で,甲がビル屋上で被害者らに暴行を加えようとするのを制止することなくこれを容認し,更に甲が屋上で暴行を加えている間,2階事務所で他の者と同室している。前者は,甲が被害者らに暴行を加える場所を提供し,その犯行を容易にしたものであるし,後者も,甲の意を受けて,被害者らが甲の目の届かない隙に逃げ出したり,警察に通報したりすることを事実上妨げる見張りをしていたものと評価でき,いずれも相応に重要な行為であり,これらが甲の犯行を容易にしたことは明らかである。しかしながら,これらの行為が,甲が被害者らに暴行を加える上で必要不可欠であったとまでは認め難い。
(4) 上記のほか,犯行後の被告人の警察官に対する対応など,証拠から認められる諸事情を勘案しても,被告人自身が被害者らに対する直接的な暴行に及んでいない本件事案においては,被告人に,被害者らに対する暴行,傷害を自己の犯罪として行う意思があったとは認められず,共同正犯は成立せず,上記被告人の行為につき,判示第1のとおりの幇助犯としての罪責を負うに止まるというべきである。
(法令の適用)
被告人の判示第1の所為のうち暴行幇助の点は刑法62条1項,208条に,傷害幇助の点は被害者ごとに同法62条1項,204条に,判示第2の所為のうち,住居侵入の点は同法60条,130条前段に,殺人未遂の点は同法60条,203条,199条に,判示第3の所為は同法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,1項,3条1項にそれぞれ該当するところ,判示第1の所為は,1個の行為(被告人の幇助行為としては,判示のとおり,犯行場所の提供行為と見張り行為が挙げられるが,これらは同時ないし連続的に行われており,社会的に一体のものとして捉えるべきである)が4個。の罪名に触れる場合であるから,刑法54条1項前段,10条により1罪として刑及び犯情の最も重いBに対する傷害幇助の罪の刑で処断し,判示第2の住居侵入と殺人未遂との間には手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により1罪として重い殺人未遂罪の刑で処断し,判示第1の罪について所定刑中懲役刑を,判示第2の罪について所定刑中有期懲役刑をそれぞれ選択し,判示第1の罪は従犯であるから同法63条,68条3号により,また判示第3の罪について被告人はその所持に係るけん銃を提出して自首したものであるから銃砲刀剣類所持等取締法31条の5,刑法68条3号によりそれぞれ法律上の減軽をし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い判示第2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役13年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中270日をその刑に算入し,松山地方検察庁で保管中の自動装てん式けん銃1丁並びに弾丸及び打ちがら薬きょう各8個は判示第3の犯罪行為を組成した物で被告人以外の者に属しないから,同法19条1項1号,2項本文を適用してこれらを没収し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項本文によりその2分の1を被告人に負担させることとする。
(量刑の理由)
1 本件は,(1)甲が4名に対して暴行を加え,うち3名に傷害を負わせた際,犯行場所を提供し,見張りをするなどしてその犯行を容易にした暴行幇助,傷害幇助(判示第1),(2)元c組組員であったEに対し,数名共謀の上,同人方に侵入し,けん銃で8回発砲して1発を同人に命中させ傷害を負わせたが,殺害の目的は遂げなかった住居侵入,殺人未遂(判示第2),(3)判示第2の犯行の際,けん銃とこれに適合する実包8発を携帯して所持した銃砲刀剣類所持等取締法違反(けん銃加重所持,判示第3)の各事案である。
2 まず,(2)の事案についてみるに,その経緯は,Eがc組から破門となり,そのことをめぐりEと同組舎弟頭Hとの間で感情的なしこりが残り,両者の間で関係者を通じるなどして互いの車両を損壊するなどの争いが繰り返され,遂にはEが上記Hを襲って傷害を負わせ,同人の覚せい剤使用を警察に通報して同人を警察に逮捕させるなどの挙に及んだことなどから,同組幹部である被告人において,Eを殺害することを決意し,犯行に及んだものである。このように,本件は,暴力団員同士の怨恨や対立を背景に,暴力団関係者特有の行動原理に基づいて決意,敢行されたものであって,動機や経過に酌量すべき事情はない。
犯行前にマンションの下見を行い,居室やエレベーター,非常階段の位置を確認した上で,当日は,凶器のけん銃のほか,施錠がしてある場合に備えて扉をこじ開ける工具を準備し,人相が分からないようタオル様のもので顔を覆うなどして複数名で現場に赴き,犯行後は直ちに駐車場に待機していた車両で現場から逃走するなど,その犯行は周到に計画された組織的なものである。
侵入の態様は,工具を用いてドアの施錠を強引に破壊するという手荒いものであり,殺人未遂の態様は,殺傷能力の極めて高いけん銃(トカレフ)を使用して室内にいるE目がけて8発の銃弾を発射するというもので,Eが室内に身を隠すなどしたため,右足に1発被弾して傷害を負うに止まったものの,生命に対する危険の極めて高い凶悪なものである。
Eの傷害は加療約6週間を要する右膝蓋骨骨折等であり,ギブスをはめ,松葉杖での生活も余儀なくされるなど,生じた結果自体も重く,被害感情は厳しい。
本件は,白昼堂々マンション居室内で実行されたもので,近隣住民に与えた恐怖や不安感は大きく,社会的影響は多大である。
3 次に(3)の事案についてみるに,本件けん銃は,上記のとおり,殺傷能力が極めて高く,これを適合実包8発とともに携帯して多数人の居住するマンション内で所持したこと自体,反社会性の極めて強い危険な行為といえる。
被告人の供述によると,同けん銃は犯行の約1年前に抗争などの際にc組に貢献するため入手し,隠し持っていたというのであるが,これも暴力団関係者特有の身勝手な発想というほかなく,けん銃使用による殺傷事件の頻発が大きな社会問題となっている昨今,その行為は一層厳しい非難に値する。
4 次に(1)の事案についてみるに,正犯者である甲の犯行は,世話になった組員の葬儀後に酒を飲んで騒いだ被害者らに対して制裁を加えるため組事務所まで呼び出し,次々と金属バットで殴る熾烈な暴力を加え,3名に全治1週間ないし加療4週間の傷害を負わせたというもので,理不尽で,危険かつ悪質である。被告人は,甲が被害者らに対し暴行を加えることを認識した上,組事務所を犯行場所として提供し,さらに,暴行の間,他の者の見張りをするなどしてその犯行を容易にしており,その果たした役割も軽視できない。また,通報で駆けつけた警察官に対し,事務所内への立ち入りを拒むなどしたことで本件の発覚,捜査が遅れたという面もあって,この点も非難に値する。
5 以上のとおり,上記各犯行は,いずれも被告人が暴力団組員であることが背景にあり,又は原因となって惹起されたものであるが,被告人は,捜査,公判を通じ,暴力団活動を続ける旨明言して脱退の意向は示していない。加えて,(1)の事案については関与を全面的に否定し,(2)の事案については共犯者について一切語ろうとしないなど,その供述態度からは真摯な反省の意思をくみ取ることはできない。
以上の事情からすれば,被告人の刑事責任は重大である。
6 他方,被告人は,(2)の犯行の3日後に警察署へ出頭し,Eを殺害しようとしたのは自分であると申告した上でけん銃の所在場所に案内するなど,(2)及び(3)の各事案についていずれも自首((3)についてはけん銃を提出しての自首)が認められること,(2)については,犯行前の被害者側の言動に犯行を誘発する側面もあったこと,(1)については,正犯者である甲と比較すると,その責任は相当低いこと,被告人にはこれまで処罰歴がないことなどの事情も認められる。
7 以上の事情を総合考慮し,被告人を主文の刑に処するのが相当である。
(求刑・懲役22年,自動装てん式けん銃1丁並びに弾丸及び打ちがら薬きょう各8個の没収)
(裁判長裁判官 村越一浩 裁判官 西前征志 裁判官 渡辺健一)