大判例

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松山地方裁判所 昭和27年(行)3号 判決

原告 池末直

被告 宇和島税務署長

一、主  文

原告の訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は被告は、原告に対し、昭和二十五年十月十日被告のなした原告の昭和二十三年分所得金額を百六万九千三百八十二円、所得税額六十一万九千三百八十円、昭和二十四年分所得金額百十万一千六百九十一円、所得税額六十三万七千六百五十円とする追加決定を取消すべし、訴訟費用は被告の負担とする。との判決を求めその請求原因として、原告は昭和二十三年分所得金額を金十七万五千四百五十六円、昭和二十四年分所得金額を三十四万三千七円と申告していたところ、被告は昭和二十五年十月十日附で、昭和二十三年分所得金額を百六万九千三百八十二円、同税額を六十一万九千三百八十円に、昭和二十四年分所得金額を百十万一千六百九十一円、同税額を六十三万七千六百五十円に追加決定し、その旨原告に通知してきたので、原告は、所定期間内に被告を経由して高松国税局長に対し審査の請求をなしたところ、高松国税局長は昭和二十六年十一月九日付で、審査の請求は理由を認め難いとして、これを却下しその旨昭和二十六年十二月中旬原告に通知してきた。もつとも原告は審査請求後精細に所得を調査したところ、昭和二十三年分所得金額は五十一万四百四円五十二銭、昭和二十四年分所得金額は六十九万四千百二十四円十二銭であることが判明し原告当初の申告よりは増額しているけれど、両年度の原告の所得は右金額以上はないのであるから、被告の両年度の追加決定額は余りにも事実に反し違法であるから、その取消を求めるため本訴に及んだと述べ、被告の本案前の抗弁に対しては、原告は高松国税局長の審査決定の通知は昭和二十六年十二月中旬受領したのであるから、本件訴は出訴期間内の提起である。仮りに右通知の受領日が被告主張のようであつたとしても、原告は出訴期間内である昭和二十七年二月二十九日に松山地方裁判所え訴状を提出したのであるから、該訴状は不備のため返戻されたけれども、右日時に訴の提起があつたというべきである。また仮りに右が訴の提起とみられないとしても行政訴訟について出訴期間が定められている理由は、公権力の発動に対して私人の側ら何時までもその効力を争いうることとしては行政の運用上支障を生ずるからであつて、前記の如く出訴期間内に、不備ながら訴状を提出して裁判所に対して行政処分を争う意思表示がなされた以上は何等かの事情で出訴が遅れたとしても、これに対し救済の途を与えても立法の趣旨に反しないから、救済されるべきであると述べた。(立証省略)

被告指定代理人等は本案前の抗弁として、主文同旨の判決を求め、その理由として、本訴は原告主張の如く、原告の昭和二十三年分及び昭和二十四年分の所得税の確定申告に対する被告の昭和二十五年十月十日付更正決定処分につき、原告が高松国税局長に対し審査の請求をなしこれが裁決を経て提起されたものであるから、これについては昭和二十五年三月三十一日法律第七十一号所得税法の一部を改正する法律附則第十一項により同法律に依り改正せられた所得税法第五十一条第二項が適用されるところ、右審査の裁決は、原告主張の如く昭和二十六年十一月九日付でなされたが、その通知は、高松国税局長から被告を経由してなされたもので被告は同年十一月二十八日これを発送したから、遅くとも同月末日頃までには、原告に到達した筈であつて、本訴は、右条項所定の出訴期間三月を経過後の出訴にかかり、右期間は不変期間であるから、本件訴は不適法として、却下されるべきである。と述べ、本案については原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、答弁として、原告の請求原因事実中原告が被告に対しその主張の如く、昭和二十三年分及び昭和二十四年分所得税の確定申告をしたこと、これにつき被告が昭和二十五年十月十日付で原告主張の如き更正決定をしたこと、原告が高松国税局長に対して適法な審査の請求をしたこと、これにつき高松国税局長が昭和二十六年十一月九日付で裁決をなし、昭和二十三年分については、原告の請求が理由がないとしてこれを棄却する処分をしたことは認める。然しながら原告の審査請求中昭和二十四年度分については、原告の請求の一部を認容し、原処分を訂正して、原告の所得額を百二万三千九百五十六円と変更したものである。また原告の昭和二十三年度分の所得額が五十一万四百四円五十二銭昭和二十四年度分のそれが六十九万四千百二十四円十二銭であるとの主張は争う、被告は原告の両年度の所得を夫々前記更正決定処分及び審査の裁決の通り、百六万九千三百八十二円及び百二万三千九百五十六円と主張するものである。と述べた。(立証省略)

三、理  由

本件訴の適否につき判断するに、公文書にして真正に成立したと推定すべき乙第一号証及び成立につき争のない乙第五号証、甲第一号証の二によれば原告は本件審査決定の通知書を昭和二十六年十二月一日、受取つたことが認められる。而して本訴が昭和二十七年三月十二日提起されたことは記録上明らかであるから、本訴は所得税法第五十一条第二項の規定に照らし出訴期間を徒過したものと言うべきものである。原告は出訴期間内である昭和二十七年二月二十九日松山地方裁判所へ訴状を提出したのであるから該訴状は不備のため返戻されたけれども、右日時に訴の提起があつたと見るべきであると主張し、成立に争ない甲第一号証の一、二、によれば原告主張のごとく出訴期間内に訴状は提出返戻されたことが認められるけれども、右事実をもつて訴の提起と見るべきか否かの判断はしばらくおき仮に訴の提起と見ても甲第一号証の二によると、右の訴状は高松国税局長を被告として審査決定の取消しを求めるため提出されたものであることが認められるから、これをもつて宇和島税務署長を被告として更正決定の取消しを求める本件訴であると見るべき余地はないし、又原告はいやしくも出訴期間内に裁判所に対して前記訴状によつて行政処分を争う意思が表示された以上は何らかの事情で訴の提起がおくれたとしても、これに対し救済の道を与えても立法の趣旨に反しないから救済せらるべきであると主張するけれども、前記訴状には訴訟手続としては、高松国税局長を被告として審査決定の行政処分を争う意思が表示されているに過ぎないし、その中に間接に本件更正決定を争う意思が包含されていると考えても、これを以て本件訴の提起とみられないことは前に認定した通りであつて、行政事件訴訟特例法第五条、所得税法第五十一条第二項の規定からみて、審査の請求の目的となる処分を争う訴は審査の決定の通知を受けた以上、その日から三ケ月以内にこれを提起しなければならず、正当な事由によつて出訴が出来なかつたとしても、後に説示する場合を除いては出訴期間に例外を認められないものと解すべく、本件訴が審査決定の通知をうけた日から三月経過後の提起にかかることは前に認定した通りであるから、本件訴につき出訴期間徒過に正当な事由があつたとしても、右期間経過は宥恕されないし、また所得税法第五十一条第四項によればこの期間は不変期間とせられているのであるから、民事訴訟法第百五十九条によつて、訴訟行為の追完をなしうると解せられるけれども、原告が右期間内に宇和島税務署長を被告として、更正決定処分の取消を求める本件訴を提起することが出来なかつたことにつき原告の責に帰すべからざる事由があつたことを認めるべき証拠もないから本件出訴期間の徒過を法律上救済すべき余地はないといわねばならない。

如上説示の如くであるから、本訴は不適法として却下すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 加藤謙二 橘盛行 荻田健次郎)

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