松山地方裁判所 昭和41年(ワ)504号・昭42年(ワ)77号 判決
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〔判決理由〕(一) 被告笠屋の責任について
<証拠略>によれば、本件事故は、朴鐘声が無免許かつ運転未熟であるのに、本件事故現場付近に進行するに際し、助手席がガタガタするのに気をとられて、前方を見ずに右手でハンドル操作をし、左手で助手席を直そうとして運転した一方的過失によつて発生したことが明らかであり、右認定を左右する証拠はない。
しかして、事故発生当時被告笠屋が被告会社に雇傭されて被告車の運転を委ねられ、これを保管中、朴鐘声からの求めに応じて、一時貸与したことは、被告笠屋の自認するところである。(もつとも、その後、同被告は右貸与の点を争うが、<証拠判断略>右貸与の事実を否定するに足る的確な証拠とはみとめられない。)また、<証拠略>によれば、朴は被告車の運転免許を有していないこと、本件事故発生前にも二、三回被告笠屋から被告車の貸与をうけて練習に使用したことが認められ<証拠判断略>右認定事実と本件弁論の全趣旨に照らせば、被告笠屋は朴が被告車を運転する資格を有するかどうかを十分調査せずに、貸与していたものであることが認められ、被告笠屋本人の供述中右認定に反する部分は措信しない。
してみれば、被告笠屋は朴が被告車を運転しうる資格を有するかどうかを調査せずにこれを朴に貸与した過失があり、その結果、朴が運転未熟と前方不注視の過失により、本件事故を惹起したものである以上、朴とともに不法行為責任を負うものといわなければならない。
(二) 被告会社の責任について
被告会社が被告車を所有し、これを営業用に使用していたこと、被告会社は事故当時被告車の運転をその被用者である被告笠屋に委ねていたことは、被告会社の認めるところであり、また事故当時被告笠屋が朴に被告車を一時貸与したことは、被告会社の自認するところである(もつとも被告会社はその後右貸与の点を争うが、右貸与の事実の存することについては、さきに認定したとおりである。)。
ところで、被告会社は、本件事故は被告笠屋が昼食のため被告車を運転して帰宅した折、朴より被告車の貸与を求められてこれを容認したところ、本件事故を惹起したものであるから、被告会社に責はないと主張する。
しかしながら、被告会社の従業員たる被告笠屋が私用を弁ずるため被告車を運転しても、被告会社が事実上その運行を支配している以上、その責を免れえないことは、自賠法第三条の立法の趣旨に照らして多言を要しないところである。また、証人朴鐘声の証言によれば、朴が被告笠屋から被告車を借りうけたのは、同被告との知人関係に基くものであり、かつ被告笠屋が谷口洋服店において服の仮縫をする間の短時間に限られていたことが認められるから(右認定に反する被告笠屋本人および被告会社代表者本人の各供述は措信しない。)、被告会社の被告車に対する運行支配は、依然継続していたというべく、したがつて、その間に、本件事故が発生した以上、被告会社は自賠法第三条の規定に基づき、被告車の運行供用者として、本件事故によつて生じた損害を賠償すべき義務があるといわなければならない。(糟谷忠男)