松山家庭裁判所 昭和39年(家)526号 審判 1967年3月06日
申立人 東条サエ(仮名) 外十名
相手方 百田則幸(仮名) 外十二名
主文
(1) 被相続人亡川上テルの遺産を別紙取得額表のとおりそれぞれ申立人らおよび相手方らに分割する。
(2) 審判(調停)費用の負担を審判(調停)費用分担表のとおり定め同表のとおりの支払いを命ずる。
理由
(申立の要旨)
申立人代理人木原主計は、申立の趣旨として、「被相続人川上テルの遺産を相続人たる申立人一一名(相続分約六五分の五〇弱)と被申立人一三名(相続分六五分の一五強)に対し、法定の相続分に応じて分割されたい。なお、申立人全員に対しては一括して分割していただいきたい。」との審判を求め、その実情として、「被相続人川上テルは昭和三九年二月一八日死亡し、その相続人は上記申立人らと被申立人らであるところ、被相続人の遺産の総ては被申立人高田昇一郎が管理し、かつ、自己のために使用しているので、申立人らは同人に対し遺産の分割を請求したが、これに応じないので、本申立てに及んだ次第である。」と述べた。
(事件の経過)
本件は、当初申立人らから相手方に対する昭和三九年(家)第五二六号遺産分割審判申立事件として昭和三九年七月一七日当裁判所に係属し、同年同月二二日から当庁家庭裁判所調査官伊藤忠康に調査を命じ調査中のところ、同年一一月一九日申立人代理人木原主計から本件を調停に付してほしい旨の申出があつたので、同年同月三〇日本件を調停に付し、かつ、調停終了に至るまで審判手続を中止する旨の審判をなした。その後同年一二月一〇日から昭和四〇年四月二八日まで調停手続が行なわれたが、当事者間に合意の成立する見込みがないため、昭和四〇年四月二八日調停が不成立となり、再び審判手続を開始したものである。
(相続人および相続分)
本件記録添付の戸籍謄本によれば、被相続人川上テルが昭和三九年二月一八日死亡し、その相続人が本件申立人および相手方らであり、かつ、被相続人川上テルと上記当事者との身分関係が別紙身分関係図のとおりであることが認められる。したがつて、相続人たる各当事者の各法定相続分は別紙相続分計算書のとおりであることが明らかである。しかして、各相続人が被相続人から生前、特別受益をうけたことを認めるに足る資料は存しないから、各相続人の相続分は法定相続分どおりである(本件申立書中、相続分について、別紙相続分計算書と異なる部分は、申立人らの計算違いであると認める。)。
(遺産の範囲および換価の経過)
被相続人の遺産は、別紙遺産目録左欄記載のとおりであつた。しかして、当裁判所は、当事者の意向を徴し、かつまた本件遺産分割の難易等諸般の事情を考慮して、本件遺産分割については、遺産管理者を選任して、遺産の管理に当らせるとともに、遺産中、株券、不動産については、これを適正価格で換価したうえ、これを分配するのが最も適切な分割方法であると判断した。
そこで、弁護士白石隆を遺産管理者および換価人に選任し、かつ、遺産目縁中一、二の各株券と五、六の各不動産の換価を同人になさしめた(なお、不動産については、鑑定人大倉晃をして、最低価格等について評価をなさしめた。)
その結果、換価代金および遺産から生じた利子等の果実を含めたものから、同目録中欄(換価の経過等)掲記の必要経費を控除した残額は、同目録右欄掲記のとおりとなり、現存する遺産は、総額金三、三〇万七、八四七円となつた。なお、これから、換価人に対する報酬金一五万円(この報酬額については、当裁判所において、参与員石丸友二郎、同川本作一の意見を聴いたうえ定めたものである。)を差引くと、本件遺産分割の対象となる遺産は、結局三、一五万七、八四七円となる。
(還産の分割および分割にあたつて斟酌すべき事項)
よつて、これを相続人たる当事者に分配することとするが、相手方高田曻一郎は、被相続人の死亡に至るまで長年同人と生活をともにし、本件遺産中の家屋に生活の本拠をおいていたところ、本件遺産分割により、居住の利益を失うこととなつたのであるが、その失う居住利益は、本件遺産中の家屋の空家としての現金売買価格から、使用貸借中の居住者がいる場合の現金売買価格の差額に等しいものと評価するのが相当と考えられるところ、その差額は、鑑定人大倉晃の鑑定の結果によると、金二一万円であることが認められる。よつて相手方高田曻一郎には、遺産中より、金二一万円を別に分配するのが相当である。
(各自の取得額)
したがつて、前記金三、一五万七、八四七円から金二一万円を控除した金二、九四万七、八四七円を別紙相続分計算書掲記の各相続分に応じて分配額を算定し、かつ相手方高田曻一郎については、これに前記金二一万円を加えて各当事者の取得額を算定すると、別紙取得額表記載のとおりとなる。よつて、申立人および相手方に対し、別紙取得額表のとおり取得させる。
(審判費用の負担)
審判(調停)費用は、別紙審判(調停)費用計算書のとおりであり、その費用は、遺産分割事件の性質に鑑み、当事者各自平等に負担させるのが相当であると考えられるから、家事審判法第七条、非訟事件手続法第二八条、第二六条、第二七条を適用して、その費用総額金六、六一〇円を当事者一人あたり、金二七五円ずつ負担させることとし、その支払関係を精算して、各当事者間で支払うべき金額を別紙審判(調停)費用負担表のとおり確定する。
よつて、主文のとおり審判する。
(家事審判官 糟谷忠男)
(別紙)
取得額表
相続人
取得額
東条サエ
四五万三、五一五円
杉浦清治
四五万三、五一五円
浅川ヤス
四五万三、五一五円
寺本恭子
五〇万六、八七〇円
杉浦照子
五万三、三五五円
吉田悦子
五万三、三五五円
箱田光
五万三、三五五円
大森伸子
五万三、三五五円
杉浦仁
五万三、三五五円
杉浦進
五万三、三五五円
百田エイ子
九、〇七〇円
谷田レイ子
二七万二、一〇九円
安本悦子
五万三、三五五円
百田則幸
四万五、三五一円
桜田妙子
四万五、三五一円
高田昇一郎
二二万五、一一七円
松本ユリ子
一万五、一一七円
高田治
一万五、一一七円
百田定一
九、〇七〇円
柳田恵子
九、〇七〇円
百田和子
九、〇七〇円
百田純江
九、〇七〇円
谷田雄吉
二二万六、七五八円
神山良平
二万六、六七七円
(別紙)
審判(調停)費用負担表
負担者
負担額
既支出額
精算後の負担額
1
東条サエ
二七五円
一一七円
一五八円
2
杉浦清治
二七五円
一一七円
一五八円
3
浅川ヤス
二七五円
一一七円
一五八円
4
寺本恭子
二七五円
一一七円
一五八円
5
杉浦照子
二七五円
一一七円
一五八円
6
吉田悦子
二七五円
一一七円
一五八円
7
箱田光
二七五円
一一七円
一五八円
8
大森伸子
二七五円
一一七円
一五八円
9
杉浦仁
二七五円
一一七円
一五八円
10
杉浦進
二七五円
一一七円
一五八円
上記(1)ないし(10)記載の各負担者は右欄記載の金員を(23)記載の相手方谷田雄吉に対し支払え。
11
安本悦子
二七五円
一一七円
一五八円
上記(11)記載の負担者は右欄記載の金員のうち金九五円を(23)記載の相手方谷田雄吉に対し、残額金六三円を国庫に対しそれぞれ支払え。
12
百田則幸
二七五円
なし
二七五円
13
桜田伸子
二七五円
なし
二七五円
14
高田昇一郎
二七五円
なし
二七五円
15
松本ユリ子
二七五円
なし
二七五円
16
高田治
二七五円
なし
二七五円
17
百田定一
二七五円
なし
二七五円
18
柳田恵子
二七五円
なし
二七五円
19
百田和子
二七五円
なし
二七五円
20
百田純江
二七五円
なし
二七五円
21
百田エイ子
二七五円
なし
二七五円
22
谷田レイ子
二七五円
なし
二七五円
23
谷田雄吉
二七五円
一、九五〇円
なし
(超過分一、六七五円)
24
神山良平
二七五円
なし
二七五円
上記(12)ないし(22)および(14)記載の各負担者は、右欄記載の金員をそれぞれ国庫に対し支払え。