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松江地方裁判所 平成15年(ワ)28号 判決 2004年3月31日

原告

X

同訴訟代理人弁護士

豊田愛祥

小野寺眞美

被告

Y運輸株式会社

同代表者代表取締役

甲野一郎

同訴訟代理人弁護士

藤原和男

主文

1  被告は,原告に対し,金6301万8833円及びこれに対する平成9年2月22日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。

2  原告のその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用はこれを20分し,その3を原告の,その余の部分を被告の負担とする。

4  この判決は,主文第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  請求の趣旨

(1)  被告は,原告に対し,金7367万3093円及びこれに対する平成9年2月22日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。

(2)  訴訟費用は被告の負担とする。

(3)  仮執行宣言

2  請求の趣旨に対する答弁

(1)  原告の請求を棄却する。

(2)  訴訟費用は原告の負担とする。

第2  当事者の主張

1  請求原因

(1)  交通事故の発生

以下の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

ア 日時 平成9年2月21日午後3時10分ころ

イ 場所 島根県簸川郡斐川町大字中洲<番地略>

ウ 被害車両及び運転者 普通乗用自動車(島根57て****)

原告

エ 加害車両及び運転者 普通貨物自動車(島根11い****)

乙山二郎(以下「乙山」という。)

オ 態様 乙山は,平成9年2月21日午後3時10分ころ,島根県簸川郡斐川町大字中洲<番地略>付近道路(以下「本件道路」という。)を斐川町大字学頭方面から平田市方面に向けて加害車両を運転し,進行するに当たり,進路前方約104.6メートルの交差点右側交差道路から丙川三郎(以下「丙川」という。)運転の軽四貨物自動車(以下「丙川車」という。)が自車進路上に右折進入するのを認めていたのであるから,丙川車の動静を注視し,進路の安全を確認しつつ進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,助手席から床に落ちた伝票を拾おうとその方に脇見したまま,自車を時速約50キロメートルからエンジンブレーキで若干減速させつつも漫然脇見のまま進行した過失により,丙川車が道路左側に停止しているのを進路前方約22.5メートルの地点に発見したため,追突の危険を感じて軽めのブレーキをかけた後,右に転把して自車を対向車線に進出させ,折から対向してきた被害車両を前方約25.2メートルに認め,急制動の措置を講ずるとともに左に転把したが及ばず,被害車両前部に加害車両右前部を衝突させた。

(2)  責任原因

被告は加害車両の保有者であり,かつ,乙山を雇用している者であるから,自動車損害賠償保障法3条及び民法715条に基づき,原告が被った後記(5)記載の損害を賠償する責任がある。

(3)  傷害の内容及び治療経過

ア 傷病名

原告は,本件事故によって,硬膜下血腫,脳挫傷,びまん性軸索損傷等の傷害を受けた。

イ 治療状況

(ア) 島根県立中央病院

入院 平成9年2月21日〜同年9月5日

通院 平成9年9月〜平成11年12月

(イ) 国立精神神経センター

入院 平成9年9月12日〜平成10年3月16日

通院 平成10年3月17日〜同年6月

(ウ) 吉備高原医療リハビリテーションセンター

入院 平成10年6月23日〜平成11年3月30日

通院 平成11年4月1日〜平成13年2月21日

(エ) 杏鈴堂鍼灸リハビリ

通院 平成11年8月26日〜平成12年11月27日

(オ) 廣戸道場

通院 平成12年4月6日〜同年11月28日

(4)  後遺症の程度,等級

平成11年4月7日,原告の症状は固定したが,原告には,頭部打撲,右動眼神経麻痺,右側同名半盲,頭部外傷後遺症,右不全麻痺,軽度高次脳機能障害(失語症等)等の後遺障害が残った。

(5)  損害 7367万3093円

ア 傷害損害分 3902万7024円

(ア) 症状固定前の治療費 1653万9653円

(内訳)

① 島根県立中央病院 1516万2203円

② 国立精神神経センター 49万8350円

③ 吉備高原医療リハビリテーションセンター

87万9100円

(イ) 付添費 4万2000円

1日当たり6000円として平成9年2月22日から同年2月28日までの7日分

(ウ) 入院雑費 86万3200円

1日当たり1300円として入院期間合計664日分

(エ) 装具関係費用(ギプス代) 13万3330円

(オ) 通院交通費 21万4200円

吉備高原医療リハビリテーションセンター通院分

(カ) 両親の交通費及び宿泊費等 746万8347円

(内訳)

① 往復航空運賃・宿泊費等 685万0275円

平成9年2月22日〜平成10年11月1日

② レンタカー代 61万8072円

ⅰ ニッポンレンタカー中国(平成9年5月3日〜同年7月5日) 24万4020円

ⅱ 株式会社トヨタリース島根(平成9年8月18日〜平成10年3月6日) 14万0700円

ⅲ 株式会社トヨタリース岡山(平成9年11月20日〜平成10年11月1日) 23万3352円

(キ) 休業損害 670万7894円

① 原告は,本件事故当時,島根県立○○高等学校において理科教諭として勤務する地方公務員であった。本件事故により,失語症,記銘力低下等の高次脳機能障害等の後遺障害が残ったため,平成13年4月1日付けで島根県立××高等学校に異動となった。

② 原告は,平成14年までの昇級遅れによる通常支給額との給料差額及び給料不支給期間(平成12年3月〜平成13年1月)の休業損害として,以下のとおり,合計670万7894円の損害を被った。

(内訳)

ⅰ 平成9年分 14万9309円

ⅱ 平成10年分 60万8873円

ⅲ 平成11年分 75万1869円

ⅳ 平成12年分 439万0728円

ⅴ 平成13年分 63万5704円

ⅵ 平成14年分 17万1411円

(ク) 慰藉料 385万5000円

原告は,島根大学を卒業後,島根県立○○高等学校に教師として採用され,理科教諭として教鞭をとる一方,サッカー部の顧問を勤めるなど,幅広く活動し,勤務態度も非常に良好な将来を嘱望される優秀な教師であった。しかるに,本件事故により,重い傷害を負い,4年余りに亘って教壇に立つことができなかったばかりでなく,平成13年4月1日付けで教師への復職がかなったとは言え,高次脳機能障害等の後遺症のため,いつ教鞭をとれなくなるかもしれない不安に怯えている。本件事故当時,原告は27歳の独身男性であり,本件事故によって被った精神的苦痛は計り知れない。

本件事故による傷害に対する慰藉料は385万5000円とするのが相当である。

(ケ) 弁護士費用 308万7000円

(コ) その他の損害 11万6400円

島根県立中央病院退院時(平成11年4月5日)の交通費

(内訳)

① レンタカー代 2万円

② 有料道路代 3000円

③ 両親交通費(往復2名) 9万3400円

イ 後遺障害損害分 7758万7399円

(ア) 逸失利益 5740万6839円

原告の後遺障害は,実体的に見て5級2号(神経系統の機能または精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの。労働能力喪失率79パーセント)と7級4号(神経系統の機能または精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの。労働能力喪失率56パーセント)にそれぞれ該当する。両者を併合し,労働能力喪失率は70パーセントとすべきである。具体的には,平成15年1月1日を起算日とし,同日以降の損害を逸失利益とし,上記起算日の原告の年齢33歳から67歳までの労働能力喪失率を70パーセントとして算定すべきである。

原告の本件事故前年の年収は419万4015円であるから,新ホフマン係数19.554で計算した逸失利益は5740万6839円となる。

(イ) 慰藉料 1670万円

(ウ) 症状固定後の治療費 65万6640円

(内訳)

① 吉備高原医療リハビリテーションセンター

6万1640円

② 杏鈴堂鍼灸リハビリ 40万円

③ 廣戸道場 19万5000円

(エ) 通院交通費 142万5820円

(内訳)

① 吉備高原医療リハビリテーションセンター

127万8400円

② 杏鈴堂鍼灸リハビリ 12万4800円

③ 廣戸道場 2万2620円

(オ) その他交通費 139万8100円

(内訳)

① 復職のために島根大学で科目履修生として受講した際の受講費用及び交通費等 21万円

② 原告帰省費用 4万7000円

③ 両親の関係先(勤務先高校,教育委員会等)訪問のための松江訪問費 32万9000円

④ 吉備高原医療リハビリテーションセンターへの定期検診交通費 81万2100円

ウ 被害車両損害等 21万6690円

(ア) 車両損害 9万円

(イ) 事故車レッカー費用 12万6690円

エ 以上合計 1億1683万1113円

オ 損益相殺

(ア) 原告は損害の填補として4315万8020円(自賠責保険からの填補分1889万円,被告からの填補分2426万8020円)の支払いを受けた。

(イ) よって,損益相殺後の損害額は7367万3093円となる。

(6)  まとめ

よって,原告は,被告に対し,自動車損害賠償保障法3条及び民法715条に基づく損害賠償として,金7367万3093円及びこれに対する本件事故の翌日である平成9年2月22日から支払済みに至るまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

2  請求原因に対する認否

(1)  請求原因(1)ないし請求原因(4)の事実は認める。

(2)ア(ア) 請求原因(5)ア(ア)ないし(エ)の事実は認める。

(イ) 請求原因(5)ア(オ)及び(カ)の事実は知らない。

(ウ)① 請求原因(5)ア(キ)①の事実は認める。

② 請求原因(5)ア(キ)②の事実は知らない。

(エ) 請求原因(5)ア(ク)の事実は認める。

(オ) 請求原因(5)ア(ケ)及び(コ)の事実は争う。

イ 請求原因(5)イの事実は知らない。

ウ 請求原因(5)ウの事実は認める。

エ(ア) 請求原因(5)エ(ア)の事実は認める。

(イ) 請求原因(5)エ(イ)の事実は争う。

3  抗弁(過失相殺)

本件事故が発生した時刻は午後3時10分ころである。原告が搭乗予定の飛行機が出雲空港を出発する時刻は午後3時25分であった。本件事故発生時,原告は時速70キロメートルないし80キロメートルの高速度で走行していたものと推測される。本件事故現場付近の法定速度は時速50キロメートルである。原告が法定速度を遵守し,かつ,前方を注視していたならば,十分に加害車両との衝突を回避できた筈である。

これらの事情を考慮すると,原告の過失は3割を下ることはない。

4  抗弁に対する認否

抗弁事実は争う。

本件事故発生時,原告が時速70キロメートルないし80キロメートルの高速度で走行していたというのは単なる憶測にしか過ぎない。北海道自動車短期大学助教授林一元作成の鑑定書(甲21)に記載してあるとおり,本件事故発生当時の被害車両の速度は時速53キロメートルないし64キロメートルであったと考えられる。本件事故の発生につき,原告には何らの落ち度もない。

第3  証拠関係は,本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから,これを引用する。

理由

1  請求原因(1)ないし請求原因(4)の事実は当事者間に争いがない。

2  損害(請求原因(5))について 6301万8833円

(1)  傷害損害分(請求原因(5)ア)

3894万0024円

ア  症状固定前の治療費(請求原因(5)ア(ア))

1653万9653円

原告が症状固定前の治療費として,合計1653万9653円の損害を被ったことは当事者間に争いがない。

イ  付添費(請求原因(5)ア(イ)) 4万2000円

原告が付添費として,4万2000円の損害を被ったことは当事者間に争いがない。

ウ  入院雑費(請求原因(5)ア(ウ)) 86万3200円

原告が入院雑費として,86万3200円の損害を被ったことは当事者間に争いがない。

エ  装具関係費用(ギプス代)(請求原因(5)ア(エ))

13万3330円

原告が装具関係費用(ギプス代)として,13万3330円の損害を被ったことは当事者間に争いがない。

オ  通院交通費(請求原因(5)ア(オ)) 21万4200円

証拠(甲6,甲30,甲31,証人A,証人B)によれば,原告は吉備高原医療リハビリテーションセンター通院分として21万4200円の損害を被ったことが認められる。

カ  両親の交通費及び宿泊費等(請求原因(5)ア(カ))

746万8347円

証拠(甲11,甲30,甲31,証人A,証人B)によれば,原告は,両親(父A,母B)の交通費及び宿泊費等として,合計746万8347円の損害を被ったことが認められる。

キ  休業損害(請求原因(5)ア(キ)) 670万7894円

(ア) 原告は,本件事故当時,島根県立○○高等学校において理科教諭として勤務する地方公務員であったこと,原告は,本件事故により,失語症,記銘力低下等の高次脳機能障害等の後遺障害が残ったこと,原告は,平成13年2月1日付けで復職したものの,同年4月1日付けで島根県立××高等学校に異動となったことの各事実は当事者間に争いがない。

(イ) 前記当事者間に争いがない事実及び証拠(甲13,甲14,甲16,甲17の1ないし4,甲28)によれば,原告は,平成14年までの昇級遅れによる通常支給額との給料差額及び給料不支給期間(平成12年3月〜平成13年1月)の休業損害として,670万7894円の損害を被ったことが認められる。

ク  慰藉料(請求原因(5)ア(ク)) 385万5000円

原告が本件事故による慰藉料(傷害分)として385万5000円の損害を被ったことは当事者間に争いがない。

ケ  弁護士費用 300万円

被告が負担すべき弁護士費用は300万円とするのが相当である。

コ  その他の損害(請求原因(5)ア(コ))

11万6400円

証拠(甲6の2,証人A)によれば,原告は,平成11年4月5日の退院時の諸経費として,11万6400円(内訳 レンタカー代,有料道路代,両親交通費(往復2名))の損害を被ったことが認められる。

(2)  後遺障害損害分(請求原因(5)イ)

6702万0139円

ア  逸失利益(請求原因(5)イ(ア)) 4753万9579円

前記当事者間に争いがない事実,前記認定の事実及び証拠(甲7の1ないし10,甲8,甲9)によれば,本件事故により,原告は70パーセントの労働能力を喪失したと認めるのが相当である。証拠(甲16)によれば,平成8年分の原告の年収は419万4015円であったことが認められる。平成15年1月1日当時,原告は33歳であった。

そうすると,以下の計算式のとおり,平成15年1月1日から原告が67歳に達するまでの逸失利益は,4753万9579円となる。

(計算式)

34年に対応するライプニッツ係数…16.193

419万4015円×16.193×0.7=4753万9579円(1円未満切り捨て,以下同じ。)

イ  慰藉料(請求原因(5)イ(イ)) 1600万円

前記当事者間に争いがない事実,前記認定の事実及び証拠(甲29,甲34,原告本人)によれば,原告は,島根大学を卒業後,島根県立○○高等学校に教師として採用され,理科教諭として教鞭をとる一方,サッカー部の顧問を勤めるなど,幅広く活動し,勤務態度も良好であったこと,原告は,本件事故後1か月間,意識が戻らず,生死をさまよった上,重い傷害を負い,4年余りに亘って教壇に立つことができなかったこと,平成13年4月1日付けで島根県立××高等学校に異動となり,再び教壇に立つことが可能になったが,高次脳機能障害等の後遺症のため,いつ教鞭をとれなくなるかもしれないという不安な状態であることの各事実を認めることができる。

上記認定の事実及び諸般の事情を総合勘案すると,原告が本件事故によって被った精神的苦痛に対する慰藉料(後遺障害分)は1600万円とするのが相当である。

ウ  症状固定後の治療費(請求原因(5)イ(ウ))

65万6640円

証拠(甲6,甲30,甲31,証人A,証人B,原告本人)によれば,原告は,症状固定後の治療費として,65万6640円(内訳 吉備高原医療リハビリテーションセンター分6万1640円,杏鈴堂鍼灸リハビリ分40万円,廣戸道場分19万5000円)の損害を被ったことが認められる。

エ  通院交通費(請求原因(5)イ(エ))

142万5820円

証拠(甲6,甲30,甲31,証人A,証人B,原告本人)によれば,原告は,通院交通費として,142万5820円(内訳 吉備高原医療リハビリテーションセンター分127万8400円,杏鈴堂鍼灸リハビリ分12万4800円,廣戸道場分2万2620円)の損害を被ったことが認められる。

オ  その他交通費(請求原因(5)イ(オ))

139万8100円

証拠(甲6,甲30,甲31,証人A,証人B,原告本人)によれば,原告は,復職のために島根大学で科目履修生として受講した際の受講費用及び交通費等として21万円,原告が帰省するための費用として4万7000円,原告の両親が関係先(勤務先高校,教育委員会等)を訪問するために交通費として32万9000円,吉備高原医療リハビリテーションセンターへの定期検診交通費として81万2100円,合計139万8100円の損害を被ったことが認められる。

(3)  被害車両損害等(請求原因(5)ウ)

21万6690円

本件事故により,原告が,被害車両に関し,21万6690円(内訳 車両損害分9万円,レッカー費用12万6690円)の損害を被ったことは当事者間に争いがない。

(4)  上記(1)ないし(3)の損害額を合計すると,1億0617万6853円となる。

(5)  過失相殺(抗弁)

ア  被告は,本件事故発生時,原告は時速70キロメートルないし80キロメートルの高速度で走行していたものと推測される等として,過失相殺割合は3割を下ることはないと主張するが,本件事故発生時,原告が70キロメートルないし80キロメートルで走行していたことを裏付けるに足りる証拠はない。かえって,北海道自動車短期大学助教授林一元作成の「鑑定書」(甲21)によれば,本件事故発生当時の被害車両の速度は時速53キロメートルないし64キロメートルであったと推認される。前述のとおり,乙山は,前方不注視の過失により,進路前方約22.5メートルの地点に停止中の丙川車を発見し,追突の危険を感じて軽めのブレーキをかけた後,右に転把して自車を対向車線に進出させ,折から対向してきた被害車両を前方約25.2メートルに認め,急制動の措置を講ずるとともに左に転把したが及ばず,被害車両前部に加害車両右前部を衝突させたのであり,本件事故の発生の直前,原告には,加害車両が対向車線から進出してくることを予測し,これに対して回避行動を取ることなど,およそ不可能であったと言うべきである。原告が制限速度(時速50キロメートル)を若干超える速度で走行していたと推認されることを考慮に入れても,過失相殺をすべき程の過失であるとは認められない。

イ  本件全証拠を詳細に検討しても,本件事故によって原告が被った損害につき,過失相殺すべき事情は窺われない。

ウ  よって,抗弁には理由がない。

(6)  損益相殺(請求原因(5)オ)

ア  原告が損害の填補として4315万8020円(自賠責保険からの填補分1889万円,被告からの填補分2426万8020円)の支払いを受けたことは当事者間に争いがない。

イ  よって,損益相殺後の損害額は6301万8833円(=1億0617万6853円−4315万8020円)となる。

3  結論

よって,原告の本訴請求のうち,自動車損害賠償保障法3条及び民法715条に基づく損害賠償として,被告に対し,金6301万8833円及びこれに対する本件事故発生の日の翌日である平成9年2月22日から支払済みに至るまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める部分については理由があるからこれを認容し,その余の部分は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条本文を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。

(裁判官・上寺誠)

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