松江地方裁判所 昭和24年(ワ)57号 判決
原告 矢田恒夫
被告 株式会社オーエム紡機製作所 出雲工場従業員組合 右代表者組合長
被告 米山千万太
一、主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、請求の趣旨
昭和二十四年五月三十日大和紡績株式会社宍道工場従業員組合が原告に対してなした除名処分は無効であることを確認する。被告等は各自原告に対し昭和二十四年六月七日から百八十日間まで一日について金五十一円八十九銭その翌日から原告就職の日まで一日について金百二十円八十九銭の割合による金員を支払え、訴訟費用は被告等の負担とするとの判決並びに金員支払請求の部分について保証を条件とする仮執行の宣言を求める。
三、事 実
原告等訴訟代理人は請求原因として、
被告株式会社オーエム紡機製作所出雲工場従業員組合は訴外株式会社オーエム紡機製作所出雲工場の従業員を以て組織する労働組合である。被告組合はもと訴外大和紡績株式会社宍道工場の従業員を以て組織し、昭和二十四年七月頃までは大和紡績株式会社宍道工場従業員組合と称し、右日時に右会社から訴外大和機械工業株式会社が分離独立するに及び同会社宍道工場の従業員を以て組織し、大和機械工業株式会社宍道工場従業員組合と称していたもので、昭和二十五年一月十日にその名称を現在のように変更したものであつてその間組合の同一性に変更はない。原告は前示大和紡績株式会社宍道工場の従業員であり被告組合の組合員であつた者であり、被告米山千万太は原告が右組合員であつた当時の被告組合の組合長である。
ところが被告組合は前記大和紡績株式会社宍道工場従業員組合と称していた当時原告が昭和二十四年三月頃前記大和紡績株式会社宍道工場が労働基準法に違反しているという事実を公表したことを理由にして、同年五月二十六日に開催した幹事会の決議によつて同月三十日に原告を被告組合から除名した。然しながら右組合の規約には組合員に対する制裁について、「第二十六条本組合員にして左の各項の一に該当するものは幹事会三分の二以上の決議により処分することあるべし。一、本組合の体面を汚し本組合員として不徳行為ありたるとき、二、本組合の規約及び決議に違背したるとき」と規定してあるのに徴すると、原告の前記行為は右規定の第一、二号の何れにも該当しないものであるから原告に対する右除名処分は規約に違反する無効のものである。仮にそうでないとしても、前記規定によると組合員を制裁するには幹事会に出席した幹事三分の二以上の決議によることを要するのであるが、前記幹事会においては幹事二十二名が出席し、原告を制裁するか、否かについて無記名投票をした結果制裁すべしとするものが十八票に達したので続いて如何なる制裁をするかについて、無記名投票をなし、その結果は除名すべしとするもの十票、譴責すべしとするもの八票、制裁すべからずとするもの一票及び白票二票であつた。従つて右幹事会の原告を除名すべしとする決議は右規定に定められた定足数に達していないから何等効力を生じなかつたものである。然るに、被告組合は同年五月三十日、前記大和紡績株式会社に対し原告を組合から除名した旨通告した。
右会社と被告組合間の労働協約中、その第一条に、会社は組合が会社において、常時使用せられる従業員の全員を以て組織する労働組合であることを確認する旨並びに第二条に、会社に常時使用せられる従業員は、所謂会社の利益代表者及び臨時に雇傭した者、試の使用期間中の者等を除いて入社と共に組合員となる旨規定し、所謂ユニオンシヨツプ制を採用している。従つて右第二条の除外例に該当しない従業員はすべて組合員でなければならない。故に組合員である従業員が組合から除名された場合は、従業員たる資格をも亦失うに至るから会社においては組合から除名された従業員はこれを解雇すべき義務があるところから、右会社は原告が被告組合から除名されたことに基いて、同年六月六日原告を解雇した。
原告は右の解雇により、離職したために、同月七日以降百八十日後までは、一日につき原告が右会社の従業員であつた当時の平均賃金百二十円八十九銭から離職によつて得た失業保険金六十九円を控除した金五十一円八十九銭、その後原告の就職の日までは、一日につき右平均賃金百二十円八十九銭に相当する解雇せられなかつたならば得たであろうところの利益を失い、右同額の損害を被つたものである。そして、原告の前記除名決議が無効であるのにかかわらず被告組合がこれを有効なものとして原告の除名処分を為し、これを右会社に通告して原告を解雇せしめ、前示の如き損害を被らしめたのは明らかに不法行為を構成するものであり、又被告米山千万太は被告組合の組合長として、故意又は過失によつて被告組合の右不法行為に関与したものであつて、原告の被つた右損害につき、賠償の責を負うべきものである。
そこで原告は、右除名処分が無効であることの確認並びに被告等各自に対し被告等の不法行為によつて、原告の被つた前示損害の賠償として、前示金員の支払を求むるため本訴に及んだ次第である。
次に、原告訴訟代理人は被告等の答弁に対し、次の通り述べた。
被告等主張事実中、原告が被告等主張の如きビラを被告組合にはからないで工場門外で組合員に配布したこと及び被告等主張の如き細則第五条の規定の存することは認めるが、その他の事実はすべて否認する。原告は被告等のいうように所謂非能率者ではなかつた。原告に対する前記除名処分と解雇との間に因果関係が存することはさきに述べたとおりであるが、仮に右の因果関係がないとしても、労働組合から除名された事実は、就職その他に有形無形の不利益があるのは極めて明白であるから、訴によつて前示除名処分の無効確認を求める法律上の利益がある。
被告等訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め、事実に対する答弁として、次の通り述べた。
原告主張事実中、被告株式会社オーエム紡機製作所出雲工場従業員組合が、訴外株式会社オーエム紡機製作所の出雲工場の従業員を以て組織する労働組合で、原告主張の経緯によつて、訴外大和紡績株式会社の宍道工場の従業員を以て組織した当時は大和紡績株式会社宍道工場従業員組合と称し、訴外大和機械工業株式会社の宍道工場の従業員を以て組織した当時は大和機械工業株式会社宍道工場従業員組合と称していたが、その間組合の同一性に変更のないこと、原告がその主張の会社の従業員であり、被告組合の組合員であつたこと、被告米山千万太が、原告が右組合員であつた当時被告組合の組合長であつたこと、原告主張の日に、被告組合が原告を除名したこと、原告主張の日に、原告が前記大和紡績株式会社出雲工場の労働基準法違反の事実を公表したこと、被告組合の規約に原告主張の通りの規定の存すること、昭和二十四年五月二十六日に開催した被告組合の幹事会における出席した幹事の数および無記名投票の結果がそれぞれ原告主張のとおりであること、原告主張の日に、原告が前記大和紡績株式会社から解雇されたこと、右会社と被告組合間に原告主張の如き労働協約の規定が存すること、並びに原告の右会社従業員当時の平均賃金が原告主張のとおりであることは何れもこれを認めるが、その余の事実はすべてこれを否認する。
原告が被告組合の組合員であつた当時、被告組合は大和紡績株式会社宍道工場従業員組合と称していたが、原告は日頃から右組合及び組合幹部を誹謗し、又前記大和紡績株式会社宍道工場において、労働基準法に違反して、年少従業員をして、重労働に服させたという事実を記載した甲第四号証と同文、同形式のビラを、昭和二十四年三月頃被告組合にはからないで右会社工場門外で多数の組合員に配布した。そこで同年五月二十六日に開催した被告組合の幹事会においては、原告の右の行為は組合の健全な運営を阻害するものと認め、被告組合の規約第二十六条並びに細則中その第五条第一号の組合の健全なる運営を阻害するが如き言動及び素行があつたときは右規約第二十六条の組合員を制裁すべき事由に該当する旨の規定に照して、原告に対し制裁を課することを決議したのである。而して右会社の労働基準法違反の事実については、右組合においては、会社側と交渉して当該年少工員の配置転換を計り、できるだけその解雇を避ける等、組合としてその善後措置を構ずべき事柄であるのに、原告が組合と無関係にこれを指摘し、公表したことは組合の統制を乱し、その健全な運営を阻害するものといえるから右幹事会において、原告に対し制裁を課することを決議したものであつて、右決議は何等組合規約に違反するものではない。
次いで右幹事会において、無記名投票の結果、原告を除名すべしとするものは組合規約に定められた三分の二の数に達しなかつたけれども、処分の方法についての決議は右無記名投票によつて確定し、終了したものではなく、この点について更に議事を続行し、右無記名投票の結果除名すべしとするものが最も多数であつたので、組合長において除名すべきかどうかを議場にはかつたところ、出席した幹事の三分の二以上にあたる十八名が除名に賛成して決議が成立したものであるから、この点においても右除名決議は組合規約に違反するところはない。
訴外大和紡績株式会社が原告を解雇したのは、原告が被告組合から除名されたこととは関係なく、右会社は人事権に基いて原告が当時所属した同会社宍道工場鋳物工場における熔解工として、作業上の重要度、技能度、責任感、融和性及び勤怠等を勘案して、原告を非能率者と認めて解雇したものである。従つて右解雇と被告組合のなした除名処分との間に因果関係がない。すなわち、右会社の従業員は、従業員たる資格を失えば同時に組合員たる資格をも失うのであるが、従業員が組合から除名されても、その従業員たる資格には変動なく、会社との雇傭関係は継続する。組合を除名された従業員を解雇するか否かは全く会社固有の人事権の問題であり、組合員としての適格と従業員としての適格とは別個の問題である。もつともこの点について原告は、右の会社、組合間の労働協約上、会社は組合から除名された従業員はこれを解雇すべき義務を負担すると主張するけれども、労働者の有する退職の自由に対応するものとして使用者は被傭者に対する人事権を有するのが原則である。従つて労働協約によつて人事権に制限を加えるのはその例外に属する事柄であるから、その制限は直接且つ具体的に定められるべきものであるが、原告の引用する右協約第一条及び第二条の規定はこの点について直接且つ具体的に何等の制限も定めておらず、かえつて右協約の第三条には従業員の採用、解雇、転勤、賞罰等の人事は会社がこれを行うも、基本方針に関しては予め組合の意見を徴し、これを尊重して定める旨規定し、更に右会社、被告組合間の経営協議会規約の第三条に会社の人事に関する事項は会社は組合に対し説明すべき事項とするに止まり、協議の上決定すべき事項としていない点からすれば、右協約は所謂ユニオンシヨツプ制を採用するものであるとはいえず、会社は組合員たるの資格を失つた従業員の雇傭を継続するか否かについて自由な決定権を有し、原告のいうように組合から除名された従業員を解雇すべき義務を負担するものではない。
仮りに前記除名処分が無効であるとしても、以上述べたように前記会社のなした解雇は、右の除名処分に基くものではないから、従業員たるの資格が当然に復活するものではない。而して組合員たるには従業員であることを要するのは、原告主張のとおりであるから、除名処分が無効である結果として当然に従業員たるの資格が復活するのでなければ、組合員たるの資格も亦復活し得ない。従つて前記除名処分の無効確認の請求は法律上確認の利益、すなわち所謂権利保護要件を欠き失当である。
更に仮りに、前記会社のなした原告に対する解雇と被告組合のなした前記除名処分との間に因果関係が認められるとしても、原告は昭和二十四年六月六日に右会社から解雇されるに際して、解雇を了承して右会社から、何れも所得税を控除した未払日給、地域手当等千七百二十一円、退職手当九十日分九千五百四十円、退職慰労金千七百八十六円並びに貯金二百二十八円八十七銭合計金一万三千二百七十五円八十七銭の支給を受けてこれを受領しているから、右の解雇による損害は発生していない。
又仮りに右の主張が認められないとしても右会社から分離独立した前記大和機械工業株式会社は昭和二十四年八月十五日に事業縮少のため同会社宍道工場の従業員二百九十六名を解雇したのであり、その従業員整理に際しては、前に述べたように非能率者である原告は到底解雇を免れ得なかつたものであることは明らかであるから、右日時以降の原告の損失は、前記除名処分に因るものだとはいえない。
(立証省略)
四、理 由
被告株式会社オーエム紡機製作所出雲工場従業員組合は、訴外株式会社オーエム紡機製作所出雲工場の従業員を以て組織する労働組合であること、被告組合は昭和二十四年七月頃までは訴外大和紡績株式会社宍道工場の従業員を以て組織し、大和紡績株式会社宍道工場従業員組合と称し、右日時に右会社から訴外大和機械工業株式会社が分離独立するに及び同会社宍道工場の従業員を以て組織するに至つてからは大和績械工業株式会社宍道工場従業員組合と称していたもので、昭和二十五年一月十日に、更にその名称を現在のように変更したものであり、その間組合の同一性に変更のないこと、原告は大和紡績株式会社宍道工場の従業員であり被告組合の組合員であつたこと、被告米山千万太は、原告が右組合員であつた当時の被告組合の組合長であること並びに昭和二十四年五月三十日、当時大和紡績株式会社宍道工場従業員組合と称していた被告組合が、原告を組合から除名し次いで、原告が同年六月六日右会社より解雇せられたことは当事者間に争いがない。
そこで右の除名処分が有効であるかどうかについて判断する。先ず、右組合規約の第二十六条に組合員が組合の規約及び決議に違背した場合は、幹事会に出席した幹事三分の二以上の決議により制裁されることがある旨の規定の存すること、右組合においては、昭和二十四年五月二十六日に開催した幹事会において、原告に対する制裁について原告を制裁すべきか否かを審議し制裁すべしとするものが出席した二十二名の幹事の三分の二以上であつたこと、原告は同年三月頃前記大和紡績株式会社出雲工場が労働基準法に違反して年少従業員をして重労働に服させた事実を記載した甲第四号証と同文、同形式のビラを組合にはからないで同会社工場門外で組合員に配布したこと、並びに右組合規約に基く細則の第五条第一号に組合の健全なる運営を阻害するが如き言動並びに素行があつたときは組合員を制裁すべき事例に該当する旨の規定があることは何れも当事者間に争がない。
成立に争のない乙第五号証並びに証人平田保則、同多々納儀雄、同山本久喜、同山本千代市、同馬庭省三、同遠藤良造及び同水間嘉包の各証言(右山本千代市、馬庭省三及び水間嘉包の各証言中後記信用しない部分を除く)によると、原告に対する制裁について審議した前記幹事会においては、原告が前記工場の労働基準法違反の事実を公表した前示ビラを配布した行為を以て組合の統制を乱すものであるとして、右は前記組合規約第二十六条及び細則第五条第一号に定める組合員を制裁すべき事由に該当すると判断した事実が認められる。被告等は右幹事会においては原告の右行為の外原告が右組合員当時、日頃から右組合及び組合幹部を誹謗した事実をも制裁の事由にしたというけれども、前記乙第五号証並びに証人山本久喜、同平田保則及び同多々納儀雄の各証言によればその事実は認められない、右認定に反する証人山本千代市、同馬庭省三及び同水間嘉包の各証言は信用できない。そこで右幹事会のなした前記判断の当、否について考えるのに、成立に争のない甲第四号証、乙第六号証、証人多々納儀雄、内田美雄(第一囘)、遠藤良造、水間嘉包の各証言を綜合すれば、前示工場の労働基準法違反の事実については、被告組合を通じて経営者側と交渉を為し当該年少工員の配置転換を計り、その解雇を避ける等の手段を講ずるのが妥当であるのに、原告が単独行為により、前示ビラを配布して右違反の事実を公表し、会社側をして当該年少工員八名を速かに解雇するの余儀なきに至らしめたことは、被告組合の健全なる運営を阻害するおそれがあるものと認められるのみならず原告の配布した甲第四号証のビラの文言は、極めて挑発的、煽動的であつて無用に労、資の対立を刺激し、尖鋭化させるものであると認められるのであるが、労、資間の鬪争或は協調について如何なる態度を以て臨むかは、その時々の情勢に応じて労働組合においてこれを決定すべきものであつて、組合員はその決定に従うべきものであるといわねばならないから、原告の右行為は、たとえ被告組合の幹事及び組合員の経営者に対する妥協的な行為を不満としてその反省を求める趣旨で為されたものであるとしても、被告組合の統制を無視したという非難は到底免れないもので、組合の統制ある行動を乱し、ひいては組合の健全な運営を阻害するおそれがないとは必ずしもいえない。従つて前記幹事会に於て原告の右行為を規約第二十六条及び細則第五条第一号に該当するものと判断し、原告に対し制裁を加える決議を為したのは相当であるといわねばならない。
次いで、右幹事会においては原告に対し如何なる制裁を加えるかについて、出席した幹事二十二名が無記名投票をした結果、除名すべしとするもの十票、譴責すべしとするもの八票、制裁すべからずとするもの一票及び白票二票であつたことは当事者間に争がない。そこで、原告は右によつて原告に対する制裁方法についての決議は終了したと主張するのに対し、被告等は右無記名投票の後、更に議事を続行した結果、出席した幹事中十八名が原告を除名することに賛成して除名の決議が成立したと争うのであるが、前記乙第五号証ならびに証人多々納儀雄、同山本久喜、同山本千代市、同馬庭省三、同遠藤良造及び同水間嘉包の各証言を綜合すれば、前記無記名投票の結果原告を除名すべしとするものが最も多数であつたところから、組合長米山千万太において原告を除名すべきかどうかを更に議場にはかつたのに、幹事十八名は除名することに賛成した事実が認められる。而して、証人平田保則、同多々納儀雄及び同遠藤良造の各証言並びに前記乙第五号証を綜合すると、右除名に賛成した十八名の幹事中には遠藤良造の如く組合員を制裁するには出席した幹事の三分の二以上の所謂特別決議を要することを失念して、右会議に臨み、しかも右会議中この点についての説明乃至注意がなされなかつたので単に所謂多数決で足りるものだと考えていた者もあつて、これ等の者の中には若し所謂特別決議を要するものであることを知つていたならば前示の如く原告を除名することに賛成しなかつたであろうと思われる者も居たことを認めることができる。しかし、右幹事の意思表示に、たとえ錯誤があつたとしても、それは単に動機の錯誤に止まり、除名の決議そのものの効力には何等の影響を及ぼさないものであつて、かえつて組合員を制裁するには所謂特別決議を要することを失念して前示決議に参加した幹事の怠慢こそ非難せらるべきものである。もつとも、組合長として右会議に臨んだ被告米山千万太が、この点についての説明乃至注意を怠つた情理をつくさない態度には、遺憾の点が多分にあるといわなければならないけれども、とも角前示の通り幹事十八名により原告を除名すべしとの意思表示はなされたのであるから、前記除名決議は前示規約に定められた出席した幹事三分の二以上の決議によるものであつて、組合規約に違反するものではない。なお、原告の除名の理由が前記認定の通り、右ビラの配布行為に止まるものとすれば、それは規約違反行為として大して重大なものとは思われないから、その制裁として原告を除名するが如きは、いささか苛酷に失するとの感を免れないが、いやしくも組合員に制裁に該当する規約違反行為があつた場合、これに如何なる制裁を課するかは、組合が自主的に決定すべき事柄であり、前示組合規約により幹事会の裁量に任せられているのであるから、前示幹事会が規約所定の手続に従い原告の除名決議を為した以上、それが、社会通念上著しく妥当性を欠くものと認められない限り、右決議が当然無効となるわけはないのである。而して右除名決議は、社会通念に照し著しく妥当性を欠くものとは認められないから、その有効であることは明白であり、右決議に基き為した原告の除名処分が有効であることは勿論である。
よつて、原告の本訴請求中、前記除名処分が無効であることの確認を求める部分はその理由がないし、右処分が無効であることを前提として被告等に対し損害賠償の請求を求める部分も亦、その理由を欠くに帰するから、其の余の点について判断するまでもなく失当であることは明白であり、原告の本訴請求はこれを棄却すべきものである。そこで訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用して、主文の通り判決する。
(裁判官 松木冬樹 組原政男 長谷川茂治)