松江地方裁判所浜田支部 昭和45年(ワ)13号 中間判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔主文〕当裁判所は、本件につき管轄権を有する。
〔判決理由〕当裁判所は本件を管轄の点について弁論を制限したうえ、審案する。
一、被告が被告と訴外加藤栄間の鳥取地方裁判所米子支部昭和四一年(ヨ)第三八号仮処分事件につき、昭和四一年一二月一六日別紙目録記載の店舗について、右訴外加藤栄の占有を解いて執行官の保管に移す旨の仮処分決定を得て、同年一二月一八日松江地方裁判所執行官佐々木薫をして右店舗に対し仮処分執行をなさしめたことは当事者間に争がないところ、原告の主張によると本訴は原告が右店舗の所有権者であるを理由として被告に対し右仮処分執行の排除を求めること(いわゆる第三者異義の訴)、原告が被告に対し被告が右店舗に仮処分にかかる有体動産を保管し、右店舗を占有しているとして、右店舗の所有権にもとづき右有体動産の撤去と右店舗の明渡を求めること、原告が被告に対し右店舗についてなした前記仮処分執行が不法であるとして、それにもとづく損害賠償を求めることを内容とするものであることが明らかである。
ところで仮処分執行についても民事訴訟法第七五六条、第七四八条により同法第五四九条の規定が準用されるものと解されるので、仮処分目的物につき、仮処分債権者に対抗し得る権利を有する第三者が右仮処分執行によりその権利を侵害されるときは第三者異議の訴をもつてその執行の排除を求め得る。そして、この訴は民事訴訟法第五四九条第三項、第五六三条により執行裁判所に専属するものと定められているのであるが、仮処分執行の場合には右執行裁判所は同法第七五六条、第七四八条、第五四三条第二項により仮処分執行の行われた土地を管轄する地方裁判所を指すものと解せられる(但し民事訴訟法第七五〇条第二項、第七五一条第二項の準用される場合、すなわち債権および不動産の仮差押執行に準ずる場合は仮処分命令を発した裁判所が執行裁判所となる)。
そこで本件においてこれをみるに、前記事実によると被告のなした前記仮処分執行は債権および不動産の仮差押執行に準ずべきものではないから仮処分執行の行われた土地を管轄する地方裁判所すなわち別紙目録記載の店舗の所在地を管轄する当裁判所に本件訴の管轄権があることになる。
二、ところで裁判所は訴訟の全部又は一部がその管轄に属するか否かを職権で調査し、もしその管轄に属さないと認めたときは職権で管轄裁判所に移送する決定をなすべきものであり、当事者は管轄違の主張をして移送についての裁判所の職権の発動を促すことができるけれども、管轄違を理由とする移送の申立権を有するものではない。このことは民事訴訟法第三〇条第一項の規定により明らかである。そうすると裁判所は当事者から管轄違を理由に移送の裁判を求める旨の陳述があつてもその訴訟につき管轄権を有すると認めたときはそのまま審理を続行して終局判決の理由中にその判断を掲げれば足り、終局判決前に特にその判断を明らかにするのを相当とするときは民事訴訟法第一八四条により中間判決をもつて裁判所が管轄権を有することを明らかにするほかない(東京高等裁判所昭和四四年一月二二日決定、判例タイムズ二三五号二三〇頁参照)。
本件において当事者双方の抗争態度をみると当裁判所が本件につき管轄権を有することを終局判決の理由中で判断するよりも、中間判決により現段階においてその判断を明らかにする方が訴訟の進行上相当であると認め、民事訴訟法第一八四条により主文のとおり中間判決する。
(長谷喜仁)