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松江家庭裁判所 昭和58年(家)72号・昭58年(家)73号

主文

1  被相続人井原健司及び被相続人井原信子の各遺産を次のとおり分割する。

(1)  別紙遺産目録(1)(編略)の1ないし3記載の各土地及び4記載の建物は、いずれも相手方井原光宏、相手方井原忠和の共有取得とし、その持分はそれぞれ相手方井原光宏5分の4、相手方井原忠和5分の1とする。

(2)  別紙遺産目録(1)の5記載の土地及び6記載の各建物は、いずれも申立人井原明博、申立人井原由利子の共有取得とし、その持分はそれぞれ各2分の1とする。

(3)  別紙遺産目録(2)(編略)の6及び7記載の預金は申立人井原明博の取得とし、同目録(2)の1ないし5及び8記載の各預金並びに9記載の現金は申立人井原由利子の取得とし、同目録(2)の10及び11記載の代償金及び切手・収入印紙は相手方井原光宏の取得とする。

(4)  相手方井原光宏は、上記遺産取得の代償として、

<1>  申立人井原明博に対し、金16,596,206円を、

<2>  申立人井原由利子に対し、金17,036,090円を、

<3>  相手方山田知子に対し、金248,235円を、

<4>  相手方山本哲に対し、金4,939,803円を

いずれも本審判確定の日から4か月以内に支払え。

(5)  相手方井原忠和は、上記遺産取得の代償として、

<1>  申立人井原明博に対し、金4,000,000円を、

<2>  申立人井原由利子に対し、金4,000,000円を、

<3>  相手方山田知子に対し、金4,455,882円を

いずれも本審判確定の日から4か月以内に支払え。

(6)  相手方井原光宏と相手方井原忠和は、各々、

<1>  申立人井原明博に対し、上記(4)の<1>と(5)の<1>の支払を担保するため、別紙遺産目録(1)の1ないし4記載の土地建物の各共有持分につき順位1番の抵当権を設定し、

<2>  申立人井原由利子に対し、上記(4)の<2>と(5)の<2>の支払を担保するため、別紙遺産目録(1)の1ないし4記載の土地建物の各共有持分につき順位2番の抵当権を設定し、

それぞれその旨の抵当権設定登記手続をせよ。

(7)  相手方井原光宏は、相手方山本哲に対し、上記(4)の<4>の支払を担保するため、別紙遺産目録(1)の1ないし4記載の土地建物の共有持分につき順位3番の抵当権を設定し、その旨の抵当権設定登記手続をせよ。

2  本件手続費用中、鑑定人草津昌夫に支給した鑑定費用金61,800円はこれを16分し、その4ずつを申立人井原明博、申立人井原由利子の負担とし、その5を相手方井原光宏の負担とし、その1ずつを相手方井原忠和、相手方山田知子、相手方山本哲の負担とし、その余の手続費用は各自の負担とする。

理由

本件各申立ての要旨は、被相続人井原健司の遺産及び被相続人井原信子の遺産について、共同相続人の間で分割の協議が整わないので、法律上適正な審判を求めるというにあるが、本件記録に基づく当裁判所の事実認定及び法律判断は、以下のとおりである。

1  相続の開始、相続人及び法定相続分

(1)  被相続人井原健司(本籍及び住所 島根県松江市○町×××番地、昭和46年7月27日死亡、以下「被相続人健司」という。)関係

相続人 法定相続分

<1>  井原信子(後妻-被相続人信子)81分の27

<2>  申立人井原明博(養子)81分の12

<3>  申立人井原由利子(養子)81分の12

<4>  相手方井原光宏(養子・先妻亡ヒサとの間の長女京子〔昭和54年11月25日死亡〕の夫)81分の16

<5>  相手方井原忠和(先妻亡ヒサとの間の長女京子〔昭和54年11月25日死亡〕の長男)81分の4

<6>  相手方山田知子(先妻亡ヒサとの間の長女京子〔昭和54年11月25日死亡〕の長女)81分の4

<7>  相手方山本哲(認知された非嫡出子)81分の6

(2)  被相続人井原信子(本籍及び住所 島根県松江市○町×××番地、昭和55年9月3日死亡、以下「被相続人信子」という。)関係

相続人 法定相続分

<1>  申立人井原明博(養子)3分の1

<2>  申立人井原由利子(養子)3分の1

<3>  相手方井原光宏(養子)3分の1

2  遺産の範囲及び価額

(1)  被相続人健司の遺産

本件審判時に現存する被相続人健司の遺産は、別紙遺産目録(1)の1ないし3記載の各土地及び4記載建物(以下「本件店舗・居宅」という。)と同目録(1)の5記載の土地及び6記載建物(以下(本件居宅」という。)であるが、これらの相続開始時の価額は、同目録の「相続開始時価額」欄記載のとおりであり、分割時の価額は、同目録の「分割時価額」欄記載のとおりである(鑑定人草津昌夫の上記各遺産についての鑑定評価の結果については、各相続人において格別の異論はなく、分割時の時価を同鑑定人の平成元年10月25日付け鑑定書による評価額とすることについても異議がなく、概ね妥当な鑑定であると認められるので、同鑑定人の評価額をそのまま採用する。)。

ちなみに、被相続人健司は、昭和5年ころ別紙遺産目録(1)の1ないし3記載の各土地を売買により取得し、そのころその地上に本件店舗・居宅を建築し、昭和34年7月ころ同目録(1)の5記載の土地を取得し、その地上に申立人ら夫婦を住まわせるため本件居宅を新築したものと認められる。

なお、相手方井原光宏(以下「相手方光宏」といい、その余の申立人、相手方についてもこれと同様の略称を用いる。)は、被相続人健司の遺産として、別表1(編略)記載のような預貯金等があるので、これらを遺産分割の対象とすべきである旨主張するが、上記のような遺産が現存することについては相続人間に争いがあり(上記預貯金等の可分債権を分割の対象とすることについての合意もない。)、これを認めるに足りる資料がないから、相手方光宏の上記主張は採用することができない。なお、仮に、被相続人健司の相続開始時に相手方光宏主張のような預貯金等が存在していたとしても、本件においては、相続人全員の暗黙の合意により、被相続人健司が経営していた造花店の営業等を同人の妻である被相続人信子に事実上引き継がせ、上記預貯金等をその営業費用や被相続人健司の遺産(上記認定の各不動産)の維持及び管理費用等に充てるものとし、後にその営業等による収益を分割清算することは考えていなかったものと認められるので、遺産分割の対象とすることはできないものといわなければならない。

(2)  被相続人信子の遺産(代償財産を含む)

被相続人信子の遺産としては、後記の被相続人健司の遺産の相続分のほか、別紙遺産目録(2)の1ないし11記載の預金、現金、代償金及び切手・収入印紙が現存しているものと認められる(これらはいずれも可分債権であり、各共同相続人がその相続分に応じて当然に分割取得するものであると解されるが、本件においては、当事者間において遺産分割の手続の中で清算することについての合意があるので遺産分割の対象とするが、申立人ら及び相手方光宏主張のその余の預貯金等については、その存在について当事者間に争いがあり、それらを認めるに足りる客観的資料が存在せず、遺産分割の手続で清算することについての合意があるともいえないので、遺産分割の対象としない。)。そして、その価額は同目録の「元利金」欄記載のとおりであり、合計金2,570,913円である(相続開始後の利息についても、判明している限りにおいて、これを遺産分割の手続で清算する旨の暗黙の合意があると認められるので、本件遺産分割の対象とする。なお、相続開始時及び分割時の価額は記録上判明する最終の時点における金額によるものとする。また、被相続人信子の死亡後、同人が営んでいた造花店等の営業費用に使用されたり、第一回目の本件鑑定費用(36万円)や同人の銀行借入金に対する利息(20,574円)の支払に充てられたものは、相続人全員の暗黙の合意により費消されたものと認められ、かつ、現存していないから遺産分割の対象としない。)。

(3)  なお、被相続人健司及び被相続人信子所有にかかるその余の動産類(家具、什器、備品等)は、その価値に重きを置かない記念品ともいうべきものであるとの理由で、当事者間において形見分けとして審判外で別途適宜の分配をする旨の合意が成立しているので、無価値に等しいものと認め、遺産分割の対象とはしない。

3  特別受益

(1)  相手方山本哲は、昭和20年12月26日に生計の資本として、被相続人健司から松江市○町××番×の宅地(47m220)とその地上の家屋番号374番木造瓦葺2階建居宅(1階31m214、2階17m285)の贈与を受けたが、草津昌夫の鑑定の結果によれば、この物件の相続開始時の価額は686,000円であると認められる。

(2)  相手方光宏は、「被相続人信子は被相続人健司から昭和37年7月26日に生計の資本として、松江市○○町○○○○×××番の宅地(289m285)とその地上建物(127m220)の贈与を受けた(登記簿上は被相続人信子が売買により取得したことになっているが、実質は被相続人健司が購入したものであるから、贈与に当たる。)」旨主張するが、上記主張事実を認めるに足りる的確な資料はない。なお、仮に、相手方光宏主張のように贈与に当たるとしても、本件においては、被相続人信子が妻として長年にわたり被相続人健司の造花店経営等を助け、主たる働き手として協力した労に報いるために贈与されたものであると認められるから、持戻しを必要としないものというべきである。

(3)  なお、相手方光宏は、「松江市○○○町字○○××××番×××の宅地(265m244)とその地上の木造スレー卜葺平家建居宅(93m293)〔○○台の土地建物〕が、被相続人信子から申立人らの子である原田賢三に贈与されているが、それは申立人らの特別受益を免れる便法であり、申立人らの特別受益に当たる。」旨主張するが、これを認めるに足りる資料は見当たらない。

(4)  申立人らは、「相手方光宏は被相続人健司及び被相続人信子からその同居中に生活費等の援助を受けているから、相当の特別受益がある。」旨主張し、逆に、相手方光宏は、「申立人らは度々生活費等の援助を受けているから、それ相応の特別受益がある。」旨主張するが、親族間の通常の扶助及び協力の範囲を超える生活費等の援助があったことを認めるに足りる資料はなく、上記主張はいずれも失当というほかない。

4  寄与分

(1)  相手方光宏は、「昭和34年以降被相続人健司と同居して同人の造花店経営を手伝い(造花の配達、手配、段取り等)、同人に給料全部を渡して同人夫婦の生活費をすべて賄う等の援助をしてきたから、これらを寄与分として考慮すべきである。」旨主張するが、親族間の通常の扶助及び協力の範囲を超えてなされたことを認めるに足りる資料はなく、被相続人健司及び被相続人信子の遺産の維持形成に特別の寄与があったものとも認められないから、上記主張は採用することができない。なお、申立人らが被相続人信子の造花店等の経営に協力したことは周囲の者も認めるところであるが、親族間の通常の扶助及び協力の範囲を超えてなされたことを認めるに足りる資料がないから、被相続人信子の遺産の維持形成に特別の寄与があったとはいえない。

(2)  また、相手方光宏は、「被相続人健司の遺産である本件店舗・居宅については、相続開始後である昭和58年ころに相手方光宏、同忠和が多額の自己資金を同建物に投じて増改築しているので、これによる評価額増加分は相手方らの寄与分として考慮すべきである。」旨主張するが、本件においては、相続開始後における相手方光宏らの本件店舗・居宅の無償使用(ちなみに、相続開始前は被相続人健司により親族間の通常の扶助及び協力としてその無償使用が許諾されていた。)は、相続人全員の暗黙の合意によるものであると認めるのが相当であり、したがって、その維持管理等に要する費用一切(使用者の一存で行う増改築費、公租公課、火災保険料等)もまた当然相手方光宏らの負担とする旨の暗黙の合意があったものというべきであるから、増改築による評価額増加分があるとしても、それを寄与分として考慮することは相当でない。なお、申立人らも、相続開始後も本件居宅に居住していたが(相続開始前は被相続人健司により親族間の通常の扶助及び協力としてその無償使用が許諾されていた。)、昭和62年7、8月ころ本件居宅に相当の資金を投じて増改築したことが認められるけれども、上記と同様の理由により、それを寄与分とてし考慮することはできない。

5  相続財産の管理費用等

(1)  申立人らは、「別紙遺産目録(1)記載の各不動産についての昭和56年以降(被相続人信子死亡後)の固定資産税を立替え支払っているが、これは共同相続人らが負担すべきものであり、分割手続の中で清算されるべきである。」旨主張するけれども、前記認定のように、上記各不動産は申立人らと相手方光宏、同忠和とに無償使用が許され、その維持・管理等に要する費用一切(公租公課等)もまた当然使用者が負担する旨の暗黙の合意が当事者間にあったものと認められるから、申立人ら主張の固定資産税立替え分は、本件遺産分割手続外で申立人らと相手方光宏、同忠和との間において、別途各不動産に対する固定資産税額を明確にした上、清算・解決すべきものである。

(2)  また、申立人らは、「被相続人信子の葬儀費・法要費として金1,061,000円を支払っているが、これも共同相続人らが負担すべきものであり、分割手続の中で清算されるべきものである。」旨主張するけれども、葬儀費・法要費は、原則として、その主宰者が負担すべきものと解するのが相当であり、本件においては、葬儀費の大部分は香典等によって賄われたものと推認でき、相続人らにおいて後に葬儀費について清算分割することは考えていなかったものと認められるから、申立人らの上記主張は失当というほかない。

(3)  さらに、申立人らは、「被相続人信子の生存中の医療費として金870,240円を支払ったが、これも共同相続人らが負担すべきものであり、分割手続の中で清算されるべきである。」旨主張するけれども、相続開始後に申立人らが被相続人信子の医療債務の正当な弁済としその金員の支払をしたことを認めるに足りる資料はないから、申立人らの上記主張もまた失当というほかない。

6  具体的相続分(被相続人健司関係)

(1)  みなし相続財産の価額

被相続人健司の遺産の相続開始時(昭和46年7月27日)における価額は、前記認定のとおりであり、その合計額は、30,191,000円となる。これに前記認定の特別受益財産の相続開始時における価額686,000円を加えたみなし相続財産の価額は、30,877,000円となる。

(2)  相続開始時における相続分

<1>  被相続人信子10,292,333円

30,877,000円×27/81 = 10,292,333円(円未満四捨五入)

<2>  申立人明博4,574,370円

30,877,000円×12/8l = 4,574,370円

<3>  申立人由利子4,574,370円

30,877,000円×12/81 = 4,574,370円

<4>  相手方光宏6,099,160円

30,877,000円×16/81 = 6,099,160円

<5>  相手方忠和1,524,790円

30,877,000円×4/81 = 1,524,790円

<6>  相手方知子1,524,790円

30,877,000円×4/81 = 1,524,790円

<7>  相手方哲1,601,185円

30,877,000円×6/81 = 2,287,185円

2,287,185円-686,000円=1,601,185円

(3)  遺産分割時における相続分

被相続人健司の遺産の分割時における価額の合計は、93,142,000円である。これに上記(2)の相続開始時における相続分の割合(分母は、各相続人の相続分を合計した30,190,998円とする。)を乗じて、遺産分割時における各相続人の相続分を算定すると、次のとおりである。なお、被相続人信子が生存していたならば取得したであろう相続分は、後に、同人の遺産として改めて分割する扱いをすることとなる。

<1>  被相続人信子31,752,792円

計算式 93,142,000円×10,292,333円/30,190,998円

<2>  申立人明博14,112,351円

93,142,000円×4,574,370円/30,190,998円

<3>  申立人由利子14,112,351円

93,142,000円×4,574,370円/30,190,998円

<4>  相手方光宏18,816,468円

93,142,000円×6,099,160円/30,190,998円

<5>  相手方忠和4,704,117円

93,142,000円×1,524,790円/30,190,998円

<6>  相手方知子4,704,117円

93,142,000円×1,524,790円/30,190,998円

<7>  相手方哲4,939,803円

93,142,000円×1,601,185円/30,190,998円

7  具体的相続分(被相続人信子関係)

(1)  前記認定のとおり、被相続人信子の相続関係では、特別受益及び考慮すべき寄与分は存在しないから、相続人である申立人明博、申立人由利子及び相手方光宏の相続開始時における相続分はそれぞれ3分の1ずつである。

(2)  遺産分割時における相続分

被相続人信子の遺産の分割時における価額は、被相続人健司の遺産の相続分については上記6の(3)の<1>の31,752,792円であり、別紙遺産目録(2)記載の遺産については、その「元利金」欄記載のとおり、合計2,570,913円であると認めるのが相当であり、合計すると、34,323,705円となり、各相続人の遺産分割時における相続分は、次のとおりである。

<1>  申立人明博11,441,235円

計算式 34,323,705円×1/3 = 11,441,235円

<2>  申立人由利子11,441,235円

計算式 34,323,705円×1/3 = 11,441,235円

<3>  相手方光宏11441235円

計算式 34,323,705円×1/3 = 11,441,235円

8  各相続人の生活状況及び遺産分割についての意見等

(1)  申立人明博(昭和2年4月21日生)

現在無職。地方公務員共済の年金(月額約23万円)を受け、申立人由利子と暮らしている。昭和31年6月30日申立人由利子と結婚し、その際、被相続人健司・信子夫婦の養子となる。昭和63年3月31日まで島根県職員として働き、同63年9月まで○○○○○○○○○学院に嘱託として勤務。結婚した後昭和35年7月ころまで本件店舗・居宅で被相続人健司らと同居していたが、そのころ被相続人健司が新築した本件居宅に転居し、以来同所を生活の本拠としている。子供2人は既に独立。分割については、本件居宅(その敷地)の優先的取得を希望し、本件店舗・居宅(その敷地)については、最終的には金銭分割でもよいとの意思を表明している。相続分超過についての調整金は申立人由利子と合わせて合計3000万円程度の負担能力がある。

(2)  申立人由利子(昭和8年8月4日生)

申立人明博との二人暮らし。生後間もない昭和9年3月14日被相続人健司・信子夫婦の養子となり、高等学校を卒業した後昭和58年3月まで島根県職員として働き、現在年額200万円余の年金収入がある。分割についての意見は申立人明博とほぼ同旨であるが、当初は本件店舗・居宅の共有取得を強く希望していた。

(3)  相手方光宏(大正9年10月7日生)

現在無職。月額約25万円の年金収入がある。昭和63年3月に持病が悪化し、頸椎縦靱帯骨化症で入院手術を受け、右手右足運動神経まひによる身体障害者(2級)。高等学校を卒業した後○○商事株式会社に入社し、終戦後被相続人健司に請われて同人の長女京子と昭和21年5月17日結婚し、その際、被相続人健司・信子夫婦の養子となり、以後本件店舗・居宅で被相続人健司・信子夫婦と同居していた(教員であった京子の転動の関係で昭和27年から同34年ころまでは○△市内に居住)。商事会社、クリーニング業などの事業をした後、マット・モップ等のレンタル業を昭和62年2月までしていた。分割については、本件店舗・居宅(その敷地)の取得を強く希望し、長男で同居中の相手方忠和との共有取得でもよいとし、相続分超過の調整金は相手方忠和の協力を得て調達することができると述べている。昭和30年代に買い入れた○○○町及び△△町にある土地2筆(時価約4000万円相当)を所有し、昭和54年ころに妻の亡京子が購入した土地もあるので、相手方忠和の協力を得れば、4000万円前後の調整金を負担する能力はあるものと認められる。

(4)  相手方忠和(昭和25年4月9日生)

被相続人健司の長女亡京子の長男で、被相続人健司の遺産である本件店舗・居宅で父の相手方光宏(身体障害者)と同居し、妻と子供4名とともに同所を生活の本拠にしている。○○電工株式会社△△営業所に勤務し、年収約1000万円弱の収入を得ている。分割については、本件店舗・居宅(その敷地)について相手方光宏との共有取得を強く望み、相手方光宏の調整金の調達に協力する旨の意思を表明している。相手方忠和自身においても勤務先から相当の借入れ(少なくとも1500万円前後)が可能であると認められる。

(5)  相手方山田知子(昭和22年6月20日生)

小学校の教員をしている。夫と子供4名の家族があり、東京の方で永住の予定。遺産分割については、相手方光宏らに一任する旨の意思表明をしている。

(6)  相手方山本哲(大正6年11月19日生)

もと警察官。法定相続分どおりの分割を希望し、格別の意見はないが、金銭分割を望む旨の意思を表明している。

9  分割の方法

(1)  各相続人の具体的相続分の合計額

前記6及び7において説示した各相続人の遺産分割時における相続分を合計して整理すると、次のようになる。

<1>  申立人明博25,553,586円

14,112,351円+11,441,235円 = 25,553,586円

<2>  申立人由利子25,553,586円

14,112,351円+11,441,235円 = 25,553,586円

<3>  相手方光宏30,257,703円

18,816,468円+11,441,235円 = 30,257,703円

<4>  相手方忠和4,704,117円

<5>  相手方光知子4,704,117円

<6>  相手方哲4,939,803円

(2)  前記8記載のとおり、本件遺産分割に当たって、当事者は現物による分割あるいは金銭分割を希望している。そこで、各当事者の居住地、職業及び生活状況、遺産の使用・保管状況、遺産分割調整金の負担能力及びその意思の有無、その他各相続人の取得希望等一切の事情を考慮すると、次のとおり分割するのが各当事者にとって平等かつ公平であると考えられる。すなわち、

<1>  別紙遺産目録(1)の1ないし3記載の各土地及び4記載の建物(本件店舗・居宅)は、いずれも相手方光宏、相手方忠和の共有取得とし、その持分はそれぞれ相手方光宏5分の4、相手方忠和5分の1とする。

<2>  別紙遺産目録(1)の5の土地及び6記載の建物(本件居宅)は、いずれも申立人明博、申立人由利子の共有取得とし、その持分はそれぞれ各2分の1とする。

<3>  別紙遺産目録(2)の6及び7記載の名預金は申立人明博の取得とし、同目録(2)の1ないし5及び8記載の各預金並びに9記載の現金は申立人由利子の取得とし、同目録(2)の10及び11記載の代償金及び切手・収入印紙は相手方光宏の取得とする。

(3)  以上によると、各相続人の取得額は、

<1>  申立人明博  4,957,380円(不足分20,596,206円)

<2>  申立人由利子 4,517,496円(不足分21,036,090円)

<3>  相手方光宏 69,078,037円(超過分38,820,334円)

<4>  相手方忠和 17,160,000円(超過分12,455,883円)

<5>  相手方知子          0円(不足分4,704,117円)

<6>  相手方哲           0円(不足分4,939,803円)

となるから、その過不足は遺産分割調整金をもって調整するのが相当である。

(4)  よって、相手方光宏及び相手方忠和は、上記遺産取得の代償として、

<1>  相手方光宏は、

ア 申立人明博に対し、金16,596,206円を

イ 申立人由利子に対し、金17,036,090円を

ウ 相手方知子に対し、金248,235円を

エ 相手方哲に対し、金4,939,803円を

<2>  相手方忠和は、

ア 申立人明博に対し、金4,000,000円を

イ 申立人由利子に対し、金4,000,000円を

ウ 相手方知子に対し、金4,455,882円を

それぞれ支払うべきである。そして、その支払時期については、その支払金額等を考慮し、いずれも本審判確定の日から4か月以内とするのが相当である。

なお、相手方光宏及び相手方忠和が申立人明博、申立人由利子及び相手方哲に支払うべき金額は高額であり、その支払確保の必要があるものと認められるから、その支払を担保するため、相手方光宏と相手方忠和が共有取得する別紙遺産目録(1)の1ないし4記載の土地建物の各共有持分について、申立人明博、申立人由利子及び相手方哲のためにそれぞれ抵当権を設定させることとする(なお、相手方知子に対する関係では、相手方忠和と相手方知子が姉弟の関係にあるなどの事情に徴すると、抵当権の設定は不要と認める。)。

10  結び

以上の次第で、被相続人健司及び被相続人信子の各遺産について、各当事者の取得分等を主文1項の(1)ないし(7)のとおり定めることとし、本件手続費用については、家事審判法7条、非訟事件手続法27条、29条、民訴法93条に則り、主文のとおり審判する。

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