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横浜地方裁判所 平成10年(ヨ)688号 決定 1998年11月16日

債権者 A野住販株式会社

右代表者代表取締役 B山太郎

右代理人弁護士 岡部光平

同 飯田直久

同 三浦修

同 阿部雅彦

債務者 C川松夫

<他5名>

右六名代理人弁護士 井上幸夫

同 滝沢香

主文

一  本件申立てをいずれも却下する。

二  申立費用は債権者の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  債権者

1  債務者らは、この決定送達の日から直ちに、別紙物件目録一記載の土地(別紙地図表示の赤色斜線で塗りつぶした部分)周辺地域(別紙地図表示の紫色線で囲んだ範囲内)に存する、別表記載の掲示物その他債権者の信用を毀損する、あるいは建設妨害を目的とする文言を用いた掲示物を撤去せよ。

2  債務者らが、右期間内に右掲示物を撤去しないときには、横浜地方裁判所執行官は、債権者の申出により、債務者らの費用で、右掲示物を撤去することができる。

3  債務者らは、別紙地図表示の黒色円で囲んだ部分(別紙物件目録一記載の土地の一角を中心とする半径二〇〇メートル以内)において、債権者の信用を毀損する、あるいは建設妨害を目的とする文言を用いた文書を配布したり、掲示その他不特定多数の者の目に触れさせるような一切の行為をしてはならず、また、第三者をして配布、掲示させてはならない。

4  債務者らが自ら前項の地域内において債権者の信用を毀損する、あるいは建設妨害を目的とする文書を用いた掲示物を貼付した場合においては、横浜地方裁判所執行官は、債権者の申出により、債務者らの費用で、これを撤去することができる。

二  債務者ら

本件申立てを却下する。

第二事案の概要

一  本件は、債権者が販売中のマンションの建築に反対する周辺住民が、マンション建築予定地の周辺において建築反対等と記載された看板やのぼりを設置し、モデルルーム付近でビラを配布する等したため、債権者が、周辺住民を債務者として、法人の人格権(名誉権及び営業権)に基づき、看板等の撤去とビラ配布等の禁止を求めた事案である。

二  争いのない事実及び確実な書証により明らかに認められる事実

1  債権者は、土地・建物の売買等を目的とする株式会社である。

2  申立外神和建物株式会社(以下「神和建物」という。)は、別紙物件目録一記載の土地(以下「本件土地」という。)上に同目録二記載の建物(以下「本件建物」という。)を建築することを計画し、横浜市長に対して本件土地の開発行為許可申請をしたところ、平成九年六月一三日、開発行為の許可処分がなされた。

3  本件土地は、第一種低層住居専用地域に所在し、建築物の高さは一〇メートル、容積率は八〇パーセントに制限されている。神和建物は、横浜市建築主事に対し、本件建物の建築確認申請をし、同年一一月七日、建築確認処分がなされた。

4  債務者らは、本件土地の周辺に居住する者であるが、本件建物の建築に反対して「第一種低層住専の環境を守る会」を結成し、本件土地の周辺に別表記載の掲示物を設置するなどして、建築反対運動をしている。債務者らは、本件土地の開発行為が都市計画法三三条の開発基準で定める接続道路の要件をみたすか否か、及び、本件土地の開発行為が規制を免れる目的で開発区域の不自然な区分を行ったものか否かを主要な争点として、同年八月二五日、横浜市開発審査会に対し、横浜市長がした右開発行為許可処分の取消を求める審査請求をしたが、横浜市開発審査会は、平成一〇年一月二七日付けで、審査請求を棄却する決定をしたため、債務者らは、開発行為許可処分の取消を求める行政訴訟を横浜地方裁判所に提起した。

また、債務者らは、平成九年一二月二四日、横浜市建築審査会に対し、横浜市建築主事がした右建築確認処分の取消を求める審査請求をした。右審査請求における主要な争点は、第一に建築基準法五二条二項(住宅の地階に係る容積率不算入措置)が本件建物に適用されるか否か、第二に本件建物の高さ算定の基準となる地盤面及び地階算定の基準となる地盤面がどこか、である。

5  債権者は、平成一〇年四月三〇日、神和建物から本件土地を建築確認付きで買い受けた。

6  本件建物に関する紛争は、新聞やテレビで報道された。

7  債権者は、同年七月一一日、本件土地の近隣にモデルルームを開設し、本件建物の販売を開始した。債務者らは、同日、モデルルーム付近の公道上で本件建物の建築に反対するプラカードを持ち、モデルルームを訪れた人に対して建築反対と記載されたビラを配布した。債権者は、平成一〇年七月一八日到達の内容証明郵便で、債務者らに対し、モデルルーム付近でプラカードを持ち、ビラを配布することをやめるよう求めた。

三  争点及び争点についての当事者の主張

1  争点1

債務者らが本件土地の周辺地域に別表記載の掲示物を設置した行為、及び、モデルルーム付近の公道上で本件建物の建築に反対するプラカードを持ち、ビラを配布した行為が、債権者の人格権を侵害するか、否か。

(一) 債権者の主張

債権者は、土地・建物の販売等を目的とした営利法人であり、その品性、信用は、営業活動の上で不可欠の要素であるから、人格権としての名誉権を有し、また、自由に営業活動をなす権利(営業権)として本件建物を販売する権利を有している。よって、債権者の名誉権や営業権を侵害する者に対しては、これらの権利を被保全権利として、現に行われている侵害行為を排除するため、また、将来の侵害を予防するため、現在から将来に至る侵害行為の差し止めを請求することができる。

もっとも、債権者の人格権に対する侵害が表現行為によるものである場合には、表現の自由との調整が必要となるところ、本件において、債務者らの設置した別表記載の掲示物の大半は、明らかに侮蔑的な表現で債権者が販売している本件建物を誹謗中傷したり、明らかに虚偽の事実を述べて、本件建物の購入希望者の購入申込みを躊躇させる内容であって、虚偽の事実を述べているとまではいえない掲示物についても、いたずらに購入希望者に不安感を与え、購入を控えさせるような内容となっており、債権者の名誉権及び営業権を侵害するものである。また、右掲示物は、債権者と住民側との交渉が煮詰まった後である平成一〇年六月以降に急増したものであり、同年七月一一日からのマンション販売を妨害する意図で設置されたものである。そして、右掲示物は、本件建物の周りを取り囲むようにして連続して設置されており、虚偽の事実を述べているとまではいえないものも含め、全体として、債権者の信用を害し、営業活動に対して不当な支障を来すものであるから、すべて撤去する必要がある。

モデルルーム付近の公道上で本件建物の建築に反対するプラカードを持ち、モデルルームを訪れた購入希望者に対して建築反対と記載されたビラを配布することも、右掲示物と同様、購入希望者に不安感を与えて本件建物の販売を妨害することを目的とし、債権者の名誉権及び営業権を侵害するものである。

(二) 債務者らの主張

債権者の右主張を争う。

債務者らが設置した掲示物は、本件建物の建築に反対する主張やその理由を記載し、又は、訴訟(審査請求)中であることや看板が持ち去られたことなどの客観的事実を記載しているものであり、債権者を誹謗中傷する内容ではない。債権者は、債務者らの主張そのものを「虚偽の事実」とすり替えたり、本件建物が批判されれば債権者の名誉が侵害されると主張したり、客観的事実が記載された掲示物でも全体として許されないなどと暴論を述べている。また、本件建物の建築に反対する掲示物は、債務者らが開発行為許可処分に対する審査請求をした平成九年八月末から本件土地周辺の公道上及び債務者ら自宅敷地に設置していたものであり、平成一〇年六月以降掲示物を急増させたことはなく、債権者が本件建物を販売することを妨害する意図はない。

よって、本件では、被保全権利が存在しない。

2  争点2

保全の必要性

(一) 債権者の主張

本件建物の購入希望者は、モデルルームを内覧した後、建築予定地を訪れて本件建物の立地状況等を自ら確認するのが一般的であるところ、モデルルーム付近で債務者らが配布した建築反対と記載されたビラは、必然的に購入希望者の目に触れることになり、建築予定地を訪れた購入希望者は、建築反対と記載された看板やのぼり等の掲示物を目にすることになる。このようなことから、購入希望者の相当多数が契約締結を思いとどまることが予想され、実際にも、本件建物の適法性を不安に思っている旨の問い合わせが債権者になされている。また、契約申込みの段階に入った後に解約する事態がすでに二件発生しており、一戸あたりの売却代金が平均約三五〇〇万円であることからすると、これまでに生じた損害だけでも約七〇〇〇万円にのぼることになる。

本案の勝訴判決まで、債務者らの右のような行為を放置しておいたのでは、これによって債権者が被る分譲遅延による支障は計り知れないものがある。

(二) 債務者の主張

債権者の右主張を争う。

文書の掲示やビラの配布は、適法な言論、表現行為であるが、債務者らは、債権者との無用のトラブルを避けるために、あえてモデルルーム付近での言論、表現行為を差し控えることにしたから、モデルルーム付近におけるビラの配布については、保全の必要性も存在しない。

第三当裁判所の判断

一  本件疎明資料によれば、次の事実が一応認められる。

1  本件建物は、建築確認通知書上は、地上三階、地下四階とされる共同住宅であり、予定されている分譲戸数は五一戸であって、そのうち二〇戸が右にいう地上一階ないし三階に、三一戸が地下一階ないし四階にある。債権者は、本件建物の分譲用パンフレットの建築・設備概要欄において、本件建物が「七階建(建築基準法上地下四階地上三階建)」であると記載し、本件建物の地下四階に当たる部分を一階、地上三階に当たる部分を七階と称している。

2  本件建物は、全戸とも南東向きとなっており、南東側にテラス(債権者が一階と称する部分)又はバルコニー(その余の階)が設置されることとなっている。また、その反対側には吹抜又はドライエリアが設けられており、債権者は、分譲用パンフレットにおいて「全戸南東向きで、爽やかな風とたっぷりの陽射しを取り入れます」として、「緑・光・風」を販売のキャッチフレーズとしている。なお、債務者らの自宅は、いずれも本件建物の南東側に位置している。

3  債務者らは、平成一〇年七月一一日の朝、本件土地周辺の公道上及び自宅敷地に設置していた建築反対の掲示物が一斉に盗まれていることに気付いた。債務者らの届出を受けた戸塚警察署は、窃盗事件として捜査している。

4  債務者らは、モデルルーム周辺でプラカードを持ち、ビラを配布するのをやめることを求める通知書が債権者から来た以降、ビラの配布はしていない。

二  争点1について

1  一般に、名誉又は営業活動を違法に侵害された者は、人格権としての名誉権又は営業権に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除するため、侵害行為の差止を求めることができるものと解するのが相当である。

しかしながら、他方、右侵害が言論その他の表現行為によってもたらされるものである場合には、人格権としての名誉権又は営業権の保護と、表現の自由の保障とが衝突し、その調整を要することとなる。

2  債権者は、別表記載の掲示物の大半が明らかに侮蔑的な表現で本件建物を誹謗中傷したり、明らかに虚偽の事実を述べて、本件建物の販売を妨害するものであり、債権者の名誉権及び営業権を侵害すると主張する。

(一) 裁判(審査請求)中であるとの掲示物(①ないし③、⑤、⑮)について

債務者らが開発行為許可処分の取消を求める訴訟を横浜地方裁判所に提起し、係属していること、右裁判における主要な争点は、本件土地の開発行為が都市計画法三三条の開発基準で定める接続道路の要件を満たすか否か、及び、本件土地の開発行為が規制を免れる目的で開発区域の不自然な区分を行ったものか否かであること、債務者らが建築確認処分の取消を求める審査請求を横浜市建築審査会にし、現在審査中であること、右審査請求における主要な争点は、建築基準法五二条二項(住宅の地階に係る容積率不算入措置)が本件建物に適用されるか否か、及び、本件建物の高さ算定の基準となる地盤面及び地階算定の基準となる地盤面がどこかであることは、いずれも争いのない事実であるから、①ないし③、⑤、⑮の掲示物は、いずれも客観的事実を記載したものに過ぎない。のみならず、本件建物を分譲する債権者としては、顧客に対し、重要事項として裁判手続等が進行中であることを告知すべき義務を負うものと解されるから、いずれにせよ顧客には右手続進行の事実が知らされるのであり、右各掲示物は、債権者の名誉権を侵害したり、本件建物の販売を妨害するものではない。

債権者は、債務者らが裁判での主張を記載した掲示物を設置することにより、債権者が裁判にかけられるような問題物件を取り扱う悪徳業者であるとの印象を購入希望者に与えようとしていると主張するが、右掲示物の記載からそのような印象を与えられるということはできない。

(二) 第一種低層住居専用地域に関する掲示物(⑭、⑯、⑳)について

本件土地が第一種低層住居専用地域にあること、第一種低層住居専用地域では建築物の高さは一〇メートル、容積率は八〇パーセントに制限されていること、債務者らが本件建物は高さの制限及び容積率の制限に違反していると主張して、横浜市建築審査会に審査請求を申し立てていることは、いずれも当事者間に争いがないから、「第一種低住専用地域に七階建ては建てられない」「第一種低住専用地域には一〇mまでの建物しか建てられません」「第一種低層住居専用地域の最大の主旨は、低層住居の良好な環境の保護にあります」との記載は、客観的な事実に過ぎない。

また、⑳「法律の主旨に反する高層マンションは反対です!」というのも、審査請求における争点に対する債務者らの主張を記載したものであって、虚偽の事実を述べたものではない。

(三) 本件建物が大規模高層マンション、七階建マンションであるとの掲示物(④、⑧、⑩、⑯ないし⑳)について

債権者が本件建物を分譲戸数五一戸の七階建てマンションであるとパンフレットで紹介していることは、前記一に認定したとおりであるから、「七階建マンション」「七階建ての高さ」との表現は、債権者作成のパンフレットの記載を前提とすれば、客観的な事実ということになる。また、本件土地を含む周辺地域は第一種低層住居専用地域にあるため、周辺住民の住居は一戸建てか三階建てまでの共同住宅であることからすれば、本件建物は大規模なマンションということができるから、「大規模マンション」「大規模高層マンション」の表現は、客観的な事実であるというべきである。

(四) 規制緩和利用との掲示物(⑧、⑪)について

債権者は、平成六年の建築基準法改正で地下室の一部が容積率算入の対象外とされたことにより、同法の改正前には不可能であった地上三階地下四階の本件建物を建築、販売することができるようになったから、「規制緩和利用」との表現は客観的な事実である。

(五) 地下室との表現(⑥、⑦、⑨、⑫)について

本件建物は、地上階数三階、地階の階数四階として建築確認処分がなされ、債権者も、パンフレットに「建築基準法上地下四階地上三階建」と記載しているのであるから、「地下室しかも四階もの深さ」「地下室マンション」「地下四階のマンション」という表現も、建築確認書及びパンフレットの記載を前提とすれば、客観的な事実というべきである。

なお、債権者は、前記(三)において摘示した表現と右各表現のいずれもが虚偽の記載であるかのような主張をするが、本件建物が客観的に見て「七階建」であるのか「地上三階地下四階建」であるのかを明らかにしないので、ある事実を前提として書く表現が客観的な事実であるかどうかを判断するしかない。

(六) 住民のプライバシーが無視されるとの表現(④)について

本件建物は、分譲予定の五一戸全室が南東向きであり、本件建物の南東に位置する債務者らの自宅は、本件建物の各部屋から見ることができる位置にあることに鑑みれば、「住民のプライバシーがまるで無視される」との表現が虚偽の事実を記載したものとまでいうことはできない。

(七) 看板持ち去りに関する掲示物(⑬)について

債務者らは、平成一〇年七月一一日の朝、本件土地の周辺に設置した看板が何者かに持ち去られたことに気付いたこと、戸塚署が窃盗事件として捜査中であることは前記一に認定したとおりであり、看板を持ち去ることは、窃盗罪として明らかな犯罪行為であるから、看板持ち去りに関する掲示物は、何ら虚偽の事実を記載したものではない。

(八) 建設反対との記載(④、⑥ないし⑫、⑰ないし)について

債務者らが、開発許可処分の取消を求めて裁判を提起し、建築確認処分の取消を求めて審査請求をして、本件建物の建築に反対していることは争いがない事実であるから、「マンション建設反対」「断固阻止」「絶対ダメ」等の表現は、裁判や審査請求における債務者らの主張を記載したものであって、虚偽の事実を記載したり、本件建物を誹謗中傷するものではない。

債権者は、債務者らの主張が本来認められないものであり、実際に行政訴訟でも認められなかったと主張するが、行政訴訟で債務者らの主張が認められなかったとの事実は、これを認めるに足りる疎明がない。

3  また、債務者らがモデルルーム来訪者に配布したビラも、客観的な事実を記載したものに過ぎず、債権者の名誉権を侵害したり、本件建物の販売を妨害するものではない。しかも、債務者らは、平成一〇年七月一一日以降、債権者から通知書が来たこともあり、ビラの配布を行わないことにし、現にビラの配布は行われていない。

4  なお、債務者は、虚偽の事実を述べているとまではいえない掲示物でも、いたずらに購入希望者に不安感を与え、購入を控えさせるような内容となっており、債権者の名誉権及び営業権を侵害し、現に購入希望者のうち二名が申込み後に解約したと主張するが、仮に購入希望者二名が申込み後に解約した事実があったとしても、それは本件土地の開発行為許可処分の取消を求める訴訟や本件建物の建築確認処分の審査請求が係属中であり、右各処分が取り消される可能性が全くないとはいえないという客観的事実によるものとも考えられ、債務者らが別表記載の掲示物を設置したことやビラを配布したことによるものと認めるに足りる疎明はない。

また、債務者らが本件仮処分申立ての係争中において「地下に人は住めない! モグラマンションは誰も買わない」「違法かつ超不当な大規模マンション建設絶対反対」等の表現を用いた掲示物を取り外したことは当事者間に争いがないところ、債権者は、このような掲示物と相まって読めば、本件の掲示物も販売妨害の目的に出ていることは明らかであると主張する。しかし、債権者は、名誉権ないしは営業権に基づいて本件建物の販売の妨害の禁止を求めているのであるから、現在における掲示物の内容に基づき、客観的に掲示物が債権者主張のような妨害をしているかどうかにより、債務者らに対して掲示物の撤去等を求め得るかどうかを判断すべきであり、その判断は前示のとおりであるから、債権者の右主張にも理由がない。

5  ところで、債権者は、将来における債務者らの文書配布や掲示の禁止も求めているが、債務者らが現在違法な内容の掲示物を設置していないのであるから、債務者らが違法な内容の文書を配布したり、掲示物を設置するおそれがあるということができない。したがって、債権者には、将来における妨害予防の請求権が存しない。

三  したがって、争点2について判断するまでもなく、本件申立ては理由がない。

第四結論

よって、本件申立ては却下することとし、申立費用の負担について民事保全法七条、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 南敏文 裁判官 森髙重久 永井綾子)

<以下省略>

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