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横浜地方裁判所 平成10年(行ウ)49号 判決 1999年4月26日

横浜市旭区今宿町二六七六―九三

原告

德永一好

横浜市保土ヶ谷区帷子町二―六四

被告

保土ヶ谷税務署長 小林武廣

右指定代理人

岩田光生

木上律子

森口英昭

久保寺勝

銭谷覺

畑山茂樹

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一原告の申立て

「被告が原告に対し平成九年六月一六日付けをもってした原告の平成八年分の所得税に係る無申告加算税賦課決定処分を取り消す。」との判決

第二双方の主張

一  原告の請求原因

1  当事者と処分

原告は平成九年三月一〇日昼ころ、確定申告について電話で「できれば申告期限内に行きたいが、仕事が忙しく行けない場合、どういう罰則があるのか。」と被告職員に尋ねたところ、延滞税の説明はあったが、無申告加算税の説明はなかった。

ところが、被告は、請求の趣旨記載のとおり無申告加算税賦課決定処分(以下「本件決定」という。)をした。

2  本件決定の違法

このように加算税について適切な説明をしないのは、国家公務員としての責務を正確に遂行していない。

よって、本件決定は違法であり、その取消しを求める。

二  請求原因に対する被告の認否及び主張

1  被告が本件決定をしたことは認め、その余は不知ないし争う。

2  原告は、平成八年分の所得税の確定申告を平成九年五月一日にした。平成八年分の所得税の確定申告は平成九年二月一六日から同年三月一五日までにしなければならないから、被告は、国税通則法六六条一項及び三項に基づき、本件確定申告の提出により納付すべき税額二三万円(同法一一八条三項の規定により一万円未満の端数を切り捨てたもの。)に一〇〇分の五を乗じて算出した無申告加算税を賦課する旨の本件決定をした。

3  原告が主張する電話による問い合わせがあったとの事実を確認することができないが、課税処分に関して信義誠実の原則を適用すべき事情があるとは考えられない。また、仮に原告主張の電話による回答の問題があっても、それだけで申告が遅れたことにつき、正当事由があるということもできない。

第三争点に関する当裁判所の判断

一  原告主張のような電話のやりとりがあったかどうかは被告において確認することができなかったということであり、また原告においてそのようなやりとりがあったことを証明することのできる証拠を持ち合せているものでもなく、その提出はない。

このように事実関係は不明ではあるが、仮に原告主張のような電話によるやりとりがあったとした場合にどうなるかを念のために検討しておく。

無申告加算税は、申告納税制度を維持するために行政上の制裁として課されるものであり、納税者が無申告加算税について説明を受けたかどうか、それを課されることを知っていたかどうかで賦課されたりされなかったりするものではない。

しかも、「仕事が忙しくて申告期限までに提出できなかった場合でも無申告加算税が賦課されないか」と尋ねたにもかかわらず、「賦課されない」という積極的に誤った回答があったということではない。

このような無申告加算税の制度の趣旨と原告主張の電話のやりとりとを前提とすると、本件決定に取り消すべき違法があるとは認められない。原告も、「法廷で被告の責任者に説明して貰えれば、本件無申告加算税を支払う。」旨を述べるところであるから、原告の訴えの主なポイントは、電話によるやりとりに処分の違法事由があるとまでいうよりも、行政のサービスの充実を今後の課題として要望しているのではないかとも思われるところである。

いずれにしろ、本件決定が違法ということはできない。

二  結論

以上のとおりであり、本件決定の取消しを求める本件請求は、理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用を原告の負担として、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡光民雄 裁判官 近藤壽邦 裁判官近藤裕之は転任につき、署名押印することができない。裁判長裁判官 岡光民雄)

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