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横浜地方裁判所 平成12年(ワ)282号 判決 2001年5月31日

甲事件、丙事件及び丁事件被告、乙事件原告 オタギ株式会社(旧有限会社オタギ) (以下「原告」という。)

上記代表者代表取締役 小田切弘文

上記訴訟代理人弁護士 髙田昌男 他2名

乙事件被告・丙事件原告 友光テキスタイルこと 酒井義友(以下「被告酒井」のように「姓」又は株式会社等を除いた「会社名」で略称する。)

上記訴訟代理人弁護士 和田徹

甲事件原告・乙事件被告 有限会社 カネコ

上記代表者取締役 金子晋也

他6名

上記七名訴訟代理人弁護士 市川博久

乙事件被告 ヤマメン株式会社

上記代表者代表取締役 山崎勝右

他1名

上記二名訴訟代理人弁護士 三尾美枝子

乙事件被告 佐藤芳基

乙事件被告・丁事件原告 有限会社 レゾン

上記代表者取締役 岡部洋治

上記二名訴訟代理人弁護士 小西輝子

(略称)

一 被告らのうち、被告酒井以外の者をまとめて「被告加盟店ら」と略称する。

二 被告カネコ、同畠中、同ブライダルラーゴビワ、同河田、同高須、同上稲及び同井上をまとめて「被告カネコら七名」と略称する。

三 被告ヤマメン及び同フレッシュダンをまとめて「被告ヤマメンら二名」と略称する。

四 被告佐藤及び同レゾンをまとめて「被告佐藤ら二名」と略称する。

主文

一  被告らは、原告に対し、連帯して、九一六六万九二九〇円及びこれに対する平成一〇年二月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  被告カネコら七名及び被告レゾンの各請求をいずれも棄却する。

四  被告酒井と原告との間の当庁平成一〇年(手ワ)第四三号約束手形金請求事件について、当裁判所が平成一〇年七月三一日に言い渡した手形判決を取り消す。

五  前項の事件について、被告酒井の請求をいずれも棄却する。

六  訴訟費用は、全事件を通じこれを二分し、その一を原告の、その余を被告らの負担とする。

七  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求の趣旨

(甲事件)

一  原告は、被告カネコに対し、九七一万六〇〇〇円及びこれに対する平成九年一二月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告は、被告畠中に対し、九五四万五〇〇〇円及びこれに対する平成九年一二月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告は、被告ブライダルラーゴビワに対し、三五五万五四〇〇円及びこれに対する平成九年一二月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告は、被告河田に対し、五六四万五六〇〇円及びこれに対する平成九年一二月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  原告は、被告高須に対し、三三七万〇八〇〇円及びこれに対する平成九年一二月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

六  原告は、被告上稲に対し、六九五万〇〇六六円及びこれに対する平成九年一二月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

七  原告は、被告井上に対し、四三三万九七三二円及びこれに対する平成九年一二月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(乙事件)

一  第一次的請求(共同不法行為)

被告らは、原告に対し、連帯して、一億七二一九万二三三一円及びこれに対する平成一〇年二月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  第二次的請求(債務不履行)

(一) 被告酒井は、原告に対し、九五七七万五六三六円及びこれに対する平成一〇年二月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(二) 被告カネコは、原告に対し、三五〇万七九九六円及び内金七〇万五七〇五円に対する年一割八分、内金二八〇万二二九一円に対する年五分の各割合による金員を、平成一〇年二月一三日から支払済みまで支払え。

(三) 被告畠中は、原告に対し、九九二万五二五一円及び内金二四七万五六九三円に対する年一割八分、内金七四四万九五五八円に対する年五分の各割合による金員を、平成一〇年二月一三日から支払済みまで支払え。

(四) 被告ブライダルラーゴビワは、原告に対し、五〇〇万〇三四二円及び内金一八五万〇四七八円に対する年一割八分、内金三一四万九八六四円に対する年五分の各割合による金員を、平成一〇年二月一三日から支払済みまで支払え。

(五) 被告河田は、原告に対し、四二六万五六五〇円及び内金二五万二〇〇〇円に対する年一割八分、内金四〇一万三六五〇円に対する年五分の各割合による金員を、平成一〇年二月一三日から支払済みまで支払え。

(六) 被告高須は、原告に対し、二四二万四九九六円及び内金一二万六〇〇〇円に対する年一割八分、内金二二九万八九九六円に対する年五分の各割合による金員を、平成一〇年二月一三日から支払済みまで支払え。

(七) 被告上稲は、原告に対し、七九九万三七二二円及び内金二二七万九七一二円に対する年一割八分、内金五七一万四〇一〇円に対する年五分の各割合による金員を、平成一〇年二月一三日から支払済みまで支払え。

(八) 被告井上は、原告に対し、五二六万八三一八円及び内金三一万六六八〇円に対する年一割八分、内金四九五万一六三八円に対する年五分の各割合による金員を、平成一〇年二月一三日から支払済みまで支払え。

(九) 被告ヤマメンは、原告に対し、一〇二七万四九二四円及び内金二九四万〇八三五円に対する年一割八分、内金七三三万四〇八九円に対する年五分の各割合による金員を、平成一〇年二月一三日から支払済みまで支払え。

(一〇) 被告フレッシュダンは、原告に対し、八一〇万三〇五〇円及び内金四六四万一七四〇円に対する年一割八分、内金三四六万一三一〇円に対する年五分の各割合による金員を、平成一〇年二月一三日から支払済みまで支払え。

(一一) 被告佐藤は、原告に対し、九八五万二九一二円及び内金二〇二万九四八二円に対する年一割八分、内金七八二万三四三〇円に対する年五分の各割合による金員を、平成一〇年二月一三日から支払済みまで支払え。

(一二) 被告レゾンは、原告に対し、九七九万九五三四円及び内金六二万〇五八一円に対する年一割八分、内金九一七万八九五三円に対する年五分の各割合による金員を、平成一〇年二月一三日から支払済みまで支払え。

(丙事件)

被告酒井と原告との間の当庁平成一〇年(手ワ)第四三号約束手形金請求事件について、当裁判所が平成一〇年七月三一日に言い渡した手形判決(原告は、被告酒井に対し、二九三万九二九五円及びこれに対する平成一〇年五月二九日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。)を認可する。

(丁事件)

原告は、被告レゾンに対し、一二七八万四〇〇〇円及びこれに対する平成一二年二月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  事案の概要

(一)  甲事件は、原告のフランチャイズチェーンに加盟していた被告カネコら七名が、原告に対し、勧誘時の原告の説明に虚偽があり、これによりフランチャイズ契約を締結したとして、不法行為、不当利得(詐欺により契約を取り消したとして)及び契約締結上の過失に基づいて、既払加盟料及びロイヤルティ相当額の損害賠償を求めた。

(二)  乙事件は、原告が、原告に商品を供給していた被告酒井及び被告加盟店らに対し、被告らは共謀してそれぞれ原告との契約上の義務に違反し、被告酒井は、原告から注文があっても商品を納入せず、これを被告加盟店らに直接供給し、一方、被告加盟店らは、原告に集中的に商品を注文して原告の債務不履行を誘発し、商品代金及びロイヤルティの支払を拒否するなどして、事実上原告のフランチャイズチェーンを破壊したとして、第一次的には共同不法行為に基づいて、未払商品代金及びロイヤルティ並びに逸失利益のほか、フランチャイズシステム構築費、慰謝料等の損害賠償を求め、第二次的には被告酒井の不法行為及び債務不履行並びに被告加盟店らの債務不履行に基づいて、被告加盟店らには未払商品代金及びロイヤルティ並びに逸失利益の損害賠償を、被告酒井にはその他の損害賠償をそれぞれ求めた。

被告加盟店らは、これを争うとともに、原告の契約勧誘時の説明に虚偽があったこと及び原告が契約上の義務を履行しなかったこと等を理由に、既払加盟料及びロイヤルティ返還請求権との相殺、ロイヤルティ支払義務の不存在等を主張している。

(三)  丙事件は、被告酒井が、原告に対し、原告が平成九年一一月分の商品代金支払のために振り出した別紙手形目録記載の約束手形(以下「本件各手形」という。)の手形金合計二九三万九二九五円及びこれに対する支払呈示の日の翌日から支払済みまでの法定利息の支払を求めた。

原告は、乙事件の原告の被告酒井に対する損害賠償請求権と対当額での相殺を主張している。

(四)  丁事件は、被告レゾンが、原告に対し、契約勧誘時の原告の説明に虚偽があり、また、原告が契約上の義務を履行しなかったとして、不法行為、債務不履行に基づき、既払加盟料及びロイヤルティ相当額の損害賠償を求めた。

二  争いのない事実

(一)  当事者

① 原告は、昭和五五年一二月に、制服の製造等を目的とした有限会社として設立され、平成一三年二月には、株式会社となった。

② 被告酒井は、友光テキスタイルという名称で繊維製品を製造し販売することを業とし、原告に対し、平成九年一〇月ころまで原告商品を継続的に製作、供給していた。

③ 被告加盟店らは、原告のフランチャイズチェーンに加盟していた元加盟店である。

(二)  原告のフランチャイズ事業展開

原告は、平成四年夏ころから、ブライダル市場への進出を計画し、平成六年五月から、「ブライダルオタギチェーン」の名称で、結婚披露宴用のナプキン、テーブルクロスの販売等を行うフランチャイズ事業展開を開始した。

(三)  被告加盟店らの原告のフランチャイズチェーンへの加盟

被告加盟店らは、別紙1「契約日」欄記載の日に、同「地域」欄記載の地域を営業エリアとして、原告との間で、別紙2の内容の加盟店契約(以下「本件契約」という。)を締結し、原告に対して別紙3「加盟料」欄のとおり加盟料を支払った(なお、被告畠中については、原告は、加盟料を免除したと主張し、被告畠中は、原告と契約を締結し、加盟料を支払った丸山勝夫(以下「丸山」という。)の契約上の地位を承継したと主張している。)。

被告加盟店らは、それぞれ上記の営業エリアで原告のフランチャイジーとして営業し、原告に対し、別紙3「ロイヤルティ」欄記載のとおりロイヤルティを支払い(なお、被告カネコについては、既払ロイヤルティ額に争いがある。)、かつ、原告から別紙4のとおり商品を購入した。

(四)  ブライダルナプキンと実用新案

原告商品のうち、ブライダルナプキン(ナプキンに色彩及びデザインを加え、これに列席者及び挙式者の氏名、式の日付、図案等をプリント等で表示することにより、席札を兼ね、さらに列席者が記念品として持ち帰ることができるように工夫した商品)に用いられた考案については、平成五年四月二〇日、実用新案登録の出願がなされ、平成九年一一月一四日、実用新案として登録された(以下「本件実用新案」という。)。

(五)  被告加盟店らの商品代金、ロイヤルティ未払

被告加盟店らは、原告に対し、別紙1「延滞商品代金額」及び「延滞ロイヤルティ額」欄記載のとおり商品代金及びロイヤルティの支払を遅滞している(なお、被告カネコ、同ブライダルラーゴビワ、同上稲、同井上及び同佐藤については、未払商品代金額に争いがある。)。

(六)  原告による本件契約解除の意思表示

① 原告は、別紙1「解除通知到達日」欄記載の日に、被告レゾンを除く被告加盟店らに対し、未払の商品代金及びロイヤルティの支払を催告するとともに、別紙1「契約終了日」欄記載の日までに支払わなかったときは、本件契約を解除する旨の意思表示をした。

② 原告は、平成一〇年二月一二日、被告レゾンに対し、競合他社商品の取扱いを中止すると約したのにこれに違反したこと、本件実用新案に関する虚偽の風説を流布したことを謝罪し同じようなことを繰り返した場合即時解除されても異議がない旨約したのにこれに違反したこと等を理由に、本件契約を解除する旨の意思表示をした。

(七)  原告のフランチャイズ事業の終了

原告のフランチャイズチェーンには、被告加盟店らを含むのべ四六の加盟店が加盟した《証拠省略》が、平成一二年四月時点での加盟店は四名のみであり、原告は、同時点で、残った加盟店からのロイヤルティ徴収を止め、原告のフランチャイズ事業は終了した。

(八)  原告の営業実績

原告の、平成四年一一月一日から平成一一年一〇月三一日までの営業実績は、別紙5のとおりである。

(九)  丙事件請求原因

① 原告は、本件各手形を振り出した。

② 本件各手形は、平成一〇年五月二八日、支払のため呈示されたが、支払を拒絶された。

③ 被告酒井は、平成一〇年五月二九日、本件各手形の最終裏書人に対し各手形金を支払い、本件各手形を受け戻し、これを所持している。

(一〇)  相殺の意思表示(丙事件抗弁)

原告は、平成一〇年七月二八日の丙事件第一回口頭弁論期日において、被告酒井に対し、原告の被告酒井に対する損害賠償請求権(乙事件請求債権)を自働債権とし、被告酒井の丙事件請求債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をした。

三  争点

(一)  原告の被告加盟店らに対する契約勧誘時の説明は、詐欺(不法行為)又は契約締結上の過失による責任を構成するか。また、原告の被告加盟店らに対する契約締結後の研修及び指導に、債務不履行があったといえるか(争点1)。

(二)  被告らによる共同不法行為ないし債務不履行の有無(争点2)

第三争点に関する当事者の主張

一  争点1について

(被告カネコら七名の主張)(甲事件請求原因)

(一)  原告の契約締結時の虚偽説明

原告は、被告カネコら七名(ただし、被告畠中については、契約上の地位の譲渡前は丸山)と本件契約を締結するに当たり、以下の事項について虚偽の説明をして勧誘し、被告カネコら七名は、原告代表者及び原告専務小田切常子(以下「原告代表者ら」という。)の説明を真実と信じて本件契約を締結し、別紙3記載のとおり、加盟料、ロイヤルティを支払った。

① 本件実用新案について

原告代表者らは、被告カネコら七名を勧誘した当時、本件実用新案の登録には時間がかかること、登録されるにしても、補正により範囲が限定される可能性があることを認識していたにもかかわらず、被告カネコら七名に対し、ブライダルナプキンは実用新案登録を出願中であり、近い将来登録されることが確実であること、そのため加盟店は競合他社を排除してこれを独占的に販売することができる旨強調して説明した。

特に、原告代表者らは、遅くとも平成七年春ころには、阿部一商事株式会社(以下「阿部一商事」という。)から同一の出願がなされていることを知り、本件実用新案が登録されない可能性や、登録されるにしてもかなりの補正を要する可能性を十分認識していながら、これを加盟店となろうとするものには秘匿していた。

しかし、実際に本件実用新案が登録されたのは、出願から四年半も経過してからであり、補正を繰り返したため、実用新案登録請求の範囲は限定的なものでしかなく、ブライダルナプキンの製法が少しでも違えば、他社において製造販売できるものでしかなかった。

② ブライダルナプキンの市場における優位性について

原告代表者らは、フランチャイズ事業展開前の原告の直販実績から、ブライダルナプキンの市場性がほとんどないことを認識していたにもかかわらず、被告カネコら七名に対し、ブライダルナプキンが紹介された新聞記事や著名なホテルや結婚式場が記載されている取引先のリスト等を示しながら、「ブライダルナプキンはヒット商品である」「これからの披露宴の席札はほとんどブライダルナプキンになる」「ブライダルナプキンを三〇社のホテルに営業をかければ採用しないホテルは一、二だけ」など、ブライダルナプキンが今後ブライダル市場において主流となり、そのため注文が殺到するような優位な商品である旨の説明をした。

③ ホテル等との取引、注文の確実性について

原告代表者らは、ホテルや結婚式場との直接契約はほとんどなく、実際はその大半が個々の挙式者に商品を売却し、ホテルや結婚式場は挙式者の使用を承諾しているにすぎなかったにもかかわらず、被告カネコら七名に対しその差異を説明せず、前記新聞やリスト等を示しながら、既に全国の多数の有名ホテルや結婚式場と直接取引があり、これらからの注文を加盟店は受けることができるので、確実に注文が入る旨の説明をした。

また、原告代表者らは、個々の挙式者と契約をしても、その後ホテルや結婚式場との直接契約に直結するのは定かでないのはもちろん、その後の当該ホテルを利用する挙式予定者から注文が来るか否かさえ定かではないのにも関わらず、被告カネコら七名に対し、ブライダルフェアに来た挙式予定者一組でも原告の商品を注文すれば、それが即ホテル・式場との直接契約になり、なおかつこの一件さえ取れれば、ホテル・式場がリピーターとなってその後も仕事が入ってくる旨の説明をした。

④ 予想売上げ、予想収益について

原告代表者らは、フランチャイズ事業展開前の原告の直販実績から、ホテルや結婚式場から継続的かつ一定の注文が見込めないことを認識しながら、これを見込めることを前提して「原価支出予算集計表」を作成し、被告カネコら七名に対し、これを示して予想売上高や予想収益の説明をした。

特に、原告代表者らは、被告井上に対し、「原価支出予算集計表」に基づく説明をしただけでなく、「当初開業目標 月収五〇万円(一~三か月)」等と記載された書面(以下「売上げシュミレーション」という。)に基づき、一組当たり一〇〇人出席者の結婚式一五組の注文を受けるだけで「オーナーの収入五〇・五万円/月」、単発の注文しかないAホテル一つだけでも年間のオーナーの利益は三〇七・三五万円、「既に組み込み」のBホテルならば、そこだけで年間のオーナーの利益は三四七五・四万円等と説明した。

⑤ 加盟後の事業活動上の指導等について

(ア) 原告代表者らは、被告カネコら七名に対し、加盟後の加盟店の事業活動について、原告が本部として研修や技術指導、全国的な販売活動等の強力なバックアップをするので、ブライダル産業につき素人でも大丈夫である、加盟すればきちんとしたマニュアルを渡すと説明した。

しかし、加盟後営業開始前に行うとされていた「製造・販売上の研修・技術指導」(四条一項)は、実際は製造についての簡単な実演というのがその実体であって、販売上の研修は皆無であった。また、営業上のマニュアルはそもそも作成されたこともなかったので、被告カネコら七名に配布されたこともなかった。

また、営業開始後の原告社員が出張しての指導・技術援助(四条二項)については、エリア内の一、二か所のホテル等を一緒に回る程度のものにすぎず、直接契約のあるホテル等の引継ぎを受けるというようなこともなかった。その後は原告からは何の営業上の指導や助言もなく、経営に切羽詰まった被告カネコら七名が相談を持ちかけても、原告からは努力が足りないだけなどと言われて、冷たく突き放されるのみであった。

(イ) 全国的な宣伝・広告は原告が行うこととされている(五条二項)が、そのような効果的な宣伝の実例を被告カネコら七名はまったく知らない。

(ウ) また、原告代表者らは、被告カネコら七名に対し、加盟店は在庫の必要はまったくなく、在庫は原告が抱えるので、被告カネコら七名はホテルから注文が入った時点で注文すればよい、原告は、自社の縫製工場を持っているなどと説明したが、これらも虚偽であり、被告カネコら七名は、原告の一方的な廃盤等の理由により在庫を抱えざるを得なかった。

(二)  責任原因

① 不法行為

原告は、自ら開発したブライダルナプキンを自ら販売しても、商品に市場性もないために慢性的な赤字に苦しんでいたところ、僅かばかりのマスコミや業界紙が報道してくれたことを奇貨として、何らの販売実績もないに等しいブライダルナプキンのフランチャイズ事業展開を図ることとし、転職雑誌や独立フェアにおいて、いかにもブライダルナプキンが魅力的で市場性のある商品であるかのように宣伝し、なおかつその販売が近々登録される実用新案によって独占できることを目玉として謳い、ブライダル業界の内情をまったく知らない素人である被告カネコら七名に対し、過大な売上げ見込みをシュミレーションして見せ、開業後は原告が強力なフォロー・バックアップをするといって安心させて、高額な加盟料やロイヤルティを簒奪し、契約締結後はいかに各加盟店が赤字に悩み悲鳴を上げても何もせずに放置した、というのが原告のフランチャイズの実体である。

このような原告の被告カネコら七名に対する勧誘は詐欺そのものであり、原告は、原告代表者らの説明を信じて本件契約を締結した被告カネコら七名に対し、本件契約を締結したことにより生じた損害を賠償する責任がある。

被告畠中に関しては、丸山から本件契約上の地位の譲渡を受け、これに包含される不法行為に基づく損害賠償請求権の譲渡も受けた。

② 不当利得

原告代表者らは、上記(一)のとおり、被告カネコら七名に対し、虚偽の説明をして、被告カネコら七名をしてその旨誤信させて本件契約を締結させたのであるから、原告の勧誘は詐欺に当たる。

被告カネコら七名は、平成九年一二月一一日到達の内容証明郵便で、原告に対し、詐欺を理由として本件契約を取り消す旨の意思表示をした。

③ 契約締結上の過失

フランチャイズシステムは、素人であり資金力も十分でないフランチャイジーが、プロであるフランチャイザーの有する知識や情報に対して金銭を支払い、これを利用して事業を成功させていくシステムであり、両当事者には、当該事業についての知識や情報について圧倒的な格差が存在するから、フランチャイザーは、フランチャイジーになろうとする者に対し、信義則上、虚偽の情報を提供しないという消極的義務は当然のこと、さらに進んで、契約上重要な情報を開示する義務を負っている。

原告はフランチャイザーであり、被告カネコら七名はいずれもブライダル業界については素人であるフランチャイジーであるから、原告は、被告カネコら七名に対し、上記義務を負っているところ、原告が提供した情報は上記のとおりであるから、仮に、原告代表者らに詐欺の故意が認められなくても、過失により上記の保護義務ないし情報開示義務に違反したことは明らかである。

(四)  損害

被告カネコら七名は、原告代表者らの説明を信じて本件契約を締結したことにより、既払加盟料及びロイヤルティ相当額の損害を被った(他にも開業のための初期投資その他の出費の損害もあるが、本件では既払加盟料及びロイヤルティをとりあえず主張する。)。

(被告ヤマメンら二名の主張)

(一)  原告の契約締結時の虚偽説明

原告代表者らは、被告ヤマメンら二名と本件契約を締結するに当たり、以下の事項について虚偽の説明をして勧誘し、被告ヤマメンら二名は、原告代表者らの説明を真実と信じて原告とそれぞれ本件契約を締結し、別紙3記載のとおり加盟料及びロイヤルティをそれぞれ支払った。

① 売上げについて

原告代表者らは、フランチャイズ事業展開前の原告の直販実績から、ブライダルナプキンでは利益を得ることができないことを熟知していたにもかかわらず、被告ヤマメンら二名に対し、ブライダルナプキンが紹介された新聞記事等を示し、実際全国からどんどん注文が来て、自社だけでは対応できないので、フランチャイズ展開したなどと述べて、フランチャイズシステムに加入するよう勧誘した。

また、原告代表者らは、被告ヤマメンら二名に対し、「原価支出予算集計表」を示して、これほどまでに利益が上がる旨の説明をした。

② 経費について

原告代表者らは、フランチャイズ事業展開前の原告の直販実績から、ブライダルナプキンに関する必要経費が、実際には、売上高の二〇〇パーセント(平成六年の時点)以上かかっており、営業利益が赤字であったことを熟知していたにもかかわらず、被告ヤマメンら二名に対し、前記「原価支出予算集計表」を示して、売上高の七〇パーセントしかかからない旨説明した。

③ 本件実用新案について

原告代表者らは、実用新案登録出願中であることは何らの排他的効力もないことを熟知していたにもかかわらず、被告ヤマメンら二名に対し、本件実用新案はすぐにでも登録できる。たとえ出願中の期間でも、出願中であることを同業他社に対して警告すれば、同業他社は営業を止めるので、排他的に名前入りナプキン市場を独占できるなどと述べ、本件実用新案の登録が確実かつ間近であることを強調し、原告のフランチャイズシステムに加盟しなければ、名前入りナプキンを販売できない旨強調して勧誘した。

また、実用新案制度は、被告ヤマメンら二名が原告と契約した以前である平成六年一月一日に改正され、効力が弱まったことから、原告には、被告ヤマメンら二名に対し、改正法の内容を説明すべき義務があったにもかかわらず、その内容を一切説明しなかった。

④ ホテル等との取引、注文の確実性について

原告代表者らは、ホテルや結婚式場との直接契約はほとんどなく、実際はその大半が個々の挙式者に商品を売却し、ホテルや結婚式場は挙式者の使用を承諾しているにすぎなかったにもかかわらず、被告ヤマメンら二名に対し、著名なホテル名が記載された取引先リストを示し、一度でも挙式者が利用すれば、ホテルとの直接取引として説明していた。

また、原告代表者らは、個々の挙式者と契約をしても、その後その挙式者が利用したホテルが発注する保証はないことが明らかであったのに、被告ヤマメンら二名に対し、一度取引ができると、後は当該ホテルでの結婚式において、自然に受注できる旨の説明をした。

⑤ 加盟後の指導、研修等について

原告代表者らは、被告ヤマメンら二名に対し、「ブライダルオタギチェーン契約のあらまし」を示して、原告が、①ノウハウの提供、②営業開始前後の研修、指導、③営業宣伝企画手配等十分な指導や研修を行うので、ブライダル産業、フランチャイズ自体にまったく素人でも、十分営業することが可能である旨説明したが、実際には、何ら効果的な援助、指導がなされなかった。

(二)  責任原因

① 不法行為

被告カネコら七名の不法行為に関する主張((二)①)を援用する。

したがって、原告の被告ヤマメンら二名に対する勧誘は詐欺そのものであり、原告には、被告ヤマメンら二名が本件契約を締結したことによって生じた損害を賠償する責任がある。

② 契約締結上の過失

被告カネコら七名の契約締結上の過失に関する主張((二)②)を援用する。

したがって、原告は、被告ヤマメンら二名に対し、情報提供義務を負っているところ、原告が被告ヤマメンら二名に提供した情報は、上記のとおりであった。

さらに、実用新案制度は平成六年一月一日に改正され、存続期間が短くなるなどその効力が弱まったことから、原告は、被告ヤマメンら二名に対し、改正法の内容を説明すべき義務があったにもかかわらず、改正法施行後もその内容を一切説明せず、「同業他社に対し、警告をすれば相手はすぐ名前入りナプキンの使用を止め、独占的に販売できる」などと従来通りの説明しかしなかった。

上記事実からすれば、仮に、原告に積極的な故意がなかったとしても、少なくとも過失により上記義務に違反したことは明らかである。

③ 債務不履行

仮に、本件契約が有効に成立していたとしても、原告は、被告ヤマメンら二名に対し、本件契約による加盟金及びロイヤルティの対価として、①ノウハウの提供、②営業開始前後の研修、指導、③営業宣伝企画手配等十分な指導や研修を行う債務を負っているが、その履行をしていない。

また、同業他社の存在は、加盟店にとって営業上極めて重要な事実であり、それにより営業戦略を大きく変えざるを得ないから、原告は、同業他社の存在を知らせる義務及び同業他社が存在する場合に、営業戦略の変更を指導する義務を負っていた。

しかし、原告は、平成六年八月ころには、株式会社プルシアン(以下「プルシアン」という。)やヨリフジ株式会社等の同業他社の存在を知り、また、阿部一商事が実用新案登録の出願をしていた事実を知りながら、それを被告ヤマメンら二名に報告せず、またそれに対して何らの措置も講じなかった。

(三)  損害

被告ヤマメンら二名は、原告代表者らの説明を信じて本件契約を締結したことにより、被告ヤマメンは既払加盟料、ロイヤルティ及び営業損失(平成六年度六六五万〇九七〇円)、平成七年度一三八五万〇九八〇円、平成八年度六五〇万九一二九円以上合計二七〇一万一〇七九円)相当額の、被告フレッシュダンは既払加盟料及びロイヤルティ相当額の各損害を被った。

(被告佐藤ら二名の主張)(被告レゾンについては丁事件請求原因)

(一)  契約時における虚偽の情報提供

被告佐藤は、就職情報誌「ビーイング」平成七年七月一三日号(以下「ビーイング平成七年七月号」という。)に掲載された原告の加盟店募集記事及び原告代表者らの説明に基づき、被告レゾンは、ビーイング平成六年一一月二日号に掲載された原告の加盟店募集記事及び原告代表者らの説明に基づき、それぞれ原告と本件契約を締結したが、原告から提供された情報は、以下のとおり虚偽のものであった。

① ブライダルナプキンの市場性について

上記ビーイング及び被告佐藤ら二名に対する原告代表者らの説明によれば、原告のフランチャイズはブライダルナプキンを主たる商品としており、その収益は、原告に支払う加盟料、ロイヤルティを差し引いても十分生活できる、儲かって儲かって仕方がない商売とのことであった。

しかし、実際にはブライダルナプキンの市場性はなく、顧客からは「名前が入っているので後に使えない。」などの理由から購入を拒絶された。原告は、直販している地域でさえ売上げ構成比数パーセントであることを十分知りながら、被告佐藤らに虚偽の情報を提供したものであった。

② 本件実用新案について

原告代表者らは、被告佐藤ら二名に対し、「ブライダルナプキンは実用新案を申請しているので、他者はブライダルナプキンを制作できない、ブライダルオタギチェーンが独占的に販売することができる」と説明していた。

しかし、平成九年一一月一四日ようやく登録された本件実用新案は、単に使用者の名前を電子的に転写印刷する方法で作成するだけのことであり、業界では既に名前入りナプキンは他の方法(例えば、刺繍)で作成され販売されており、登録後も原告のフランチャイズが独占できるものではなかった。

③ 売上げ等について

(ア) ビーイング平成七年七月号には、埼玉県エリアの加盟店は、母娘二人の営業で、一県で、一年間に一五〇〇万円もの純利益を上げている旨の実績表が記載され、これは、被告佐藤に、加盟を希望する岩手県においても数年でこれに近づくことができるものと思わせる内容であったが、実際にはそのような加盟店は実在しなかった。

(イ) 原告代表者らは、被告レゾンに勧めた埼玉県・千葉県について、直営での営業実績から、その地域のほとんどのホテル・式場がブライダルナプキンを取り扱う意思がないことを熟知していたにもかかわらず、岡部に対し、同エリアはブライダルナプキンの市場性が高い、既に数か所の有名ホテル・式場の固定の取引先があるので、労せずして商売できるなどと説明した。

さらに、同エリア内のベルヴィ武蔵野という結婚式場について、組み込みが決まることになっており、年間三〇〇〇万円の純利益が出るなどと説明したが、岡部はその担当者に会うことすらできなかった。

④ 研修・指導について

原告代表者らは、被告佐藤ら二名に対し、ノウハウの提供、研修、指導、商品の提供等を行う旨説明したが、以下のとおり、まったく行われていない。

(ア) 原告には、フランチャイジーに提供するノウハウがない。

原告には、市場性のないブライダルナプキン以外にユニークな商品がなく、また、ブライダル商品の販売に関する特別なノウハウを持たない。

(イ) 研修、指導がまったく行われない。

ア 原告は、被告佐藤に対し、契約締結日とその翌日に研修と称して、ブライダルナプキンのプリントの仕方、カラーコピー機の使用方法を示したが、これ以外の店舗運営に関する研修等は一切なかった。

そして、平成七年九月四日から三日間、原告営業部長杉浦正和(以下「杉浦」という。)が岩手県内のホテル・式場周りに同行したが、パンフレットを示す程度のことしかしなかった。

以後、原告は、被告佐藤に対し、何ら指導・研修を行わず、被告佐藤にとって、原告は単なる仕入先にすぎなかった。

イ 原告は、被告レゾンに対し、開店に当たり二日間の研修を行ったが、そこでの研修の内容はブライダルナプキンのプリントの仕方、カラーコピー機の使用方法だけであった。

営業開始後の同行営業は、得意先の引継ぎにすぎず、契約解除の時以外に原告の担当者が被告レゾンを訪ねてくることはまったくなく、原告からの連絡は事務連絡のみであった。

被告レゾンは、開業三か月にしてブライダルナプキンが非常に受け入れられにくい商品であることを思い知らされ、平成七年三月中旬ころ、原告に脱退を申し入れたが、原告からは何ら営業に関する具体的な指導・助言はなかった。

(ウ) 商品の貧弱と欠品

ア 原告が開発したとする「ローズガーデン」は、市販のデザインであり、原告のオジリナルではなかった。また、「ツイギー」「コードレイン」「南洋花柄ナプキン」は、ブライダル商品としてのイメージに合わなかった。

むしろ、同業他社が取り扱う商品の方がはるかに豊富であった。

イ 被告佐藤ら二名が加盟店になった当初から、原告の欠品は半ば恒常化しており、平成九年に入ってからは欠品や製造中止がさらにひどくなった。

被告佐藤は、原告の度重なる欠品と商品の貧弱の改善を求めたが、原告の誠意ある対応は見られず、ついに書面(質問状)で回答を求めたが、これに対しても、原告は、これを放置し、一方的に解除を通知してきた。

また、原告は、被告レゾンに対しては、自ら欠品を起こしながら、自己のオリジナル商品以外の商品を他社から仕入れることを禁じた。

被告レゾンは、顧客の要望により、やむなく原告の扱っていない商品を仕入れ取り扱ったことがあったが、原告は、加盟店である被告レゾンの要望にまったく耳を傾けず、一方的に契約を解除した。

ウ 原告は、商品の品質(ナプキンの生地)を一方的に落としたため、ユーザーから苦情が続出した。しかし、原告は、これに対して何らの対応もしなかった。

(二)  責任原因

① 契約締結時における原告の保護義務違反、情報提供義務違反

一般に、フランチャイズシステムにおいては、経営の知識や経験に乏しく金力も十分でない者がフランチャイジーとなることが多く、専門的知識を有するフランチャイザーがフランチャイジーを指導・援助することが予定されており、フランチャイザーは、指導・援助に当たり客観的かつ的確な情報を提供すべき信義則上の保護義務がある。

そして、フランチャイジーにとって最大の関心事は、通常、加盟後どの程度の収益を得ることができるかどうかであるから、上記に関する情報については、なお一層フランチャイザーは客観的かつ的確な情報を提供する義務があるというべきである(中小小売商業振興法一一条、大阪地裁平成八年二月一九日判決)。

② 債務不履行

また、原告が被告佐藤ら二名に対して契約上の義務を履行しなかったことは、上記のとおりである。

(三)  損害

被告佐藤ら二名は、原告代表者らの説明を信じて本件契約を締結したことにより、既払加盟料及びロイヤルティ相当額の損害を被った。

(被告カネコら七名の主張に対する原告の認否、反論)

(一)  被告カネコら七名の主張(一)①は否認する。

① 原告代表者らは、被告カネコら七名に対し、本件実用新案について、「特許庁が結論を出すまでには四、五年はかかる」「それまでの間、実用新案出願中であることをアピールして営業し、早期にホテルの出入り業者としての取引口座を取ることが大切である」などと説明した。

② 原告代表者らは、被告カネコら七名に対し、出願書類等を示して登録請求の範囲について説明したことはなく、後記熱転写方式による方法を指導していただけなのであるから、被告カネコら七名の主張は、事後的に作り上げたものである。

原告が本件契約に基づき被告カネコら七名に提供していたブライダルナプキンは、本件実用新案の登録の範囲内であり、登録範囲の変更によって被告カネコら七名に何ら不利益は生じていない。

(二)  被告カネコら七名の主張(一)②は否認する。

原告代表者らは、被告加盟店らに対し、ブライダルナプキン以外にも商品を説明し、ブライダルナプキンが主力商品であるなどと説明したことはない。

また、原告のブライダルビジネスが慢性的な赤字に苦しんでいたのでないことは、別紙5のとおりである。

(三)  被告カネコら七名の主張(一)③は否認する。

原告代表者らは、被告カネコら七名に対し、ホテルと直接取引があるなどとは説明しておらず、原告が発する請求書や領収証はホテルの会計を通して授受されており、具体的な商品の納入の指示もホテルからあったため、ホテルと取引があったものと理解しており、被告カネコら七名に対してもそのように説明していた。

(四)  被告カネコら七名の主張(一)④は否認する。

原告代表者らは、被告カネコら七名に対し、いわゆる予想売上げ、予想収益といえるような情報を提供したことはない。

原告代表者らが説明に用いた「原価支出予算集計表」は、単に一定の売上げがあったことを仮定し、その支出を例示してその場合の粗利益を示したものにすぎない。

(五)  被告カネコら七名の主張(一)⑤は否認する。

原告は、被告カネコら七名に対し、本件契約に規定された製造・販売上の研修・技術指導(契約書四条一項、二項)を行っており、宣伝・広告(同五条二項)も行っていた。

原告の欠品は、遅くとも約二週間前に最終的注文がなされるブライダル事業の性質上起こり得ず、原告が一方的に廃盤とした商品もなかった。

(六)  被告カネコら七名の主張(二)は争う。

仮に、原告が被告カネコら七名の主張するような情報を提供したとしても、それは抽象的に売上げが多く見込まれることを説明しただけのセールストークであり、具体的数値を示さない以上、少なくとも契約結締上の過失において問題とされる予想売上げ、予想収益の提示とはいえない。

(七)  被告カネコら七名の主張(三)は否認又は争う。

① 加盟料は、本件契約上、いかなる理由があっても返還しない約定になっている(八条三項。)

また、加盟料は、本件契約書(八条)及び「ブライダルオタギチェーン契約のあらまし」の文言並びにロイヤルティとの論理的整合性を基にすれば、契約時に一時に開示又は提供するノウハウその他役務の対価といえるところ、原告は、被告カネコら七名に対しこれらを提供したのであるから、被告カネコら七名に損害が生じたとはいえない。

② 被告カネコの既払ロイヤルティ額は、三七一万三〇〇〇円である。

ロイヤルティは、本件契約継続の利益の対価であるところ(一〇条)、原告は、被告カネコら七名に対し、本件契約の継続中、「オタギ」の商号の使用を許諾し、ブライダルオタギチェーンのノウハウ、システムで営業させ、必要に応じて指導、援助をし、諸連絡や宣伝、広告もしており、被告カネコら七名は、本件契約継続の利益を得ていたのであるから、被告加盟店らに損害が生じたとはいえない。

(被告ヤマメンら二名の主張に対する原告の認否、反論)

(一)  被告ヤマメンら二名の主張(一)①は否認する。

被告カネコら七名の主張に対する原告の認否、反論を援用する。

(二)  被告ヤマメンら二名の主張(一)②は否認する。

平成六年時に多額の販管費がかかっているのは、原告のフランチャイズチェーンを維持・発展させるために多額の投資を行ったためである。

(三)  被告ヤマメンら二名の主張(一)③は否認する。

① 被告カネコら七名の主張に対する原告の認否、反論を援用する。

② 原告には、実用新案法の改正の細部を説明すべき義務はない。

なお、本件実用新案には、特許法等の一部を改正する法律(平成五年法律第二六号)附則第四条により旧法が適用され、原告は、出願公開後、実用新案権の設定の登録前に業として出願にかかる考案を実施した者に対し、事前に警告をすることを条件に、実施料相当額の補償金の支払を請求することができた(旧法一三条の三)。

(四)  被告ヤマメンら二名の主張(一)④⑤は否認する。

被告カネコら七名の主張に対する原告の認否、反論を援用する。

(五)  被告ヤマメンら二名の主張(二)は争う。

① ② 契約締結上の過失について

被告らは、少なくとも本件契約締結当時、有限会社である原告より、売上げ・従業員数・資本等においても規模の大きい株式会社であり、被告ヤマメンに至っては、本件契約締結の際、契約の内容について大幅な修正をさせており、企業としての実力はむしろ被告らの方が上であり、その事業内容も、被告ヤマメンは織物業、衣料品の縫製加工及び販売、被告フレッシュダンは紳士服生地の販売等とナプキンの製造・販売と近接し、これに進出することが容易な経験を有していること等を考慮すれば、販売の領域がたとえ結婚式場又は挙式者であったとしても、被告らの主張する「フランチャイズシステムの内容となる事業にまったく素人で、経験もない事業者」とは異なるものである。

② ③ 債務不履行について

被告ヤマメンから原告に対し、ブライダルナプキンの同業他社の存在により「激烈な競争にさらされている」などという報告又は苦情若しくは援助要請が来たことはない。

(六)  被告ヤマメンら二名の主張(三)は争う。

被告カネコら七名の主張に対する原告の認否、反論を援用する。

また、営業損失は、被告ヤマメンが適正な営業を行っていれば生じなかった損失である。

(被告佐藤ら二名の主張に対する原告の認否、反論)

(一)  被告佐藤ら二名の主張(一)①②③は否認する。

① 被告カネコら七名の主張に対する原告の認否、反論を援用する。

② ビーイング平成七年七月号の埼玉県加盟店の実績は、実際には茨城県、栃木県及び福島県加盟店の株式会社ヒロ・サクシードのものであったが、その内容自体に虚偽はない。

③ 原告代表者は、岡部に対し、ベルヴィ武蔵野について、組み込みが決まれば大きな利益が出たが、これを逃したという話をしたにすぎない。

(二)  被告佐藤ら二名の主張(一)④は否認する。

① 被告カネコら七名の主張に対する原告の認否、反論を援用する。

② また、原告商品は、ブライダルナプキン以外にも各種オリジナル柄やカラーのナプキン・テーブルクロス等多数ある。

(三)  被告佐藤ら二名の主張(二)(三)は争う。

被告カネコら七名の主張に対する原告の認否、反論を援用する。

二  争点2について

(原告の主張)(乙事件請求原因)

(一)  被告らの原告に対する契約上の義務

① 被告酒井は、原告に対し、原告にのみ原告商品を供給する契約上の義務、少なくとも被告加盟店らに対して原告商品を直接供給してはならない契約上の義務を負っていた。

② 被告加盟店らは、原告に対し、原告商品及び原告商品を製造するための材料を原告以外から購入してはならない契約上の義務を負っていた(六条、一一条)。

(二)  被告酒井及び同カネコの煽動

① 被告酒井は、被告カネコが原告の加盟店となって以降、被告カネコに対し、原告商品を原告を介さずに直接供給し、被告カネコは、これを被告加盟店らに直接販売していた。

また、被告酒井は、少なくとも平成九年九月ころから、それまで被告酒井が扱っていなかった原告商品「ローズガーデン」の製造を始め、被告カネコを通じて被告加盟店らに供給した。

② 被告酒井及び同カネコ代表者金子稔(以下「金子」という。)は、原告商品の売上げがよいことから、被告加盟店らを原告のフランチャイズチェーンから離脱させ、直接原告商品を販売しようと考え、原告商品のうち話題性が高いブライダルナプキンの実用新案登録が未了であることを利用して、被告加盟店らに対し、原告のフランチャイズチェーンから脱退するよう煽動した。

(ア) 平成七年一〇月八日岡山県での会合

被告酒井及び金子は、平成七年一〇月八日、岡山県で西日本地域の加盟店の会合を開き、加盟店主に対し、「本件実用新案と同一の出願が阿部一商事からなされているので、本件実用新案は登録されず、これが登録されると説明している原告は詐欺になる」と説いて、関西方面では被告カネコを中心に、関東方面では被告レゾンを中心に、被告加盟店らを含む加盟店に原告のフランチャイズチェーンから離脱するよう働きかけた。

上記会合には、被告加盟店らのうち、被告畠中、同ブライダルラーゴビワ代表者村上直道(以下「村上」という。)、同河田の夫である河田稔彦(以下「稔彦」という。)、同高須、同上稲、同井上、同ヤマメン専務取締役国井隆行(以下「国井」という。)及び同フレッシュダン専務取締役岡崎巧(以下「岡崎」という。)が出席した。

(イ) 平成七年一二月二日埼玉県での会合

被告レゾン代表者岡部洋治(以下「岡部」という。)は、上記会合の結果を受けて、本件実用新案には同様の出願が先に出されているので、その出願は受理できないという通知が特許庁から出されている旨の「オタギ実用新案についての流れ」と題する書面(以下「本件怪文書」という。)を作成し、平成七年一二月二日、東日本地域の加盟店に連絡を取り、埼玉県にある井坂(長野県加盟店)宅で会合を開いた。

上記会合には、被告加盟店らのうち、被告佐藤が出席したほか、駒形誠(宮城県の加盟店、以下「駒形」という。)、後上隆之(新潟県の加盟店、以下「後上」という。)らを含む約一〇名の加盟店が出席した。

岡部は、その内容が虚偽であることを知りながら、本件怪文書を出席した加盟店に配布し、虚偽の風説を流布した。

(ウ) 平成七年一二月一〇日滋賀県での会合及び駒形と後上の動き

ア 被告佐藤を除く被告らは、平成七年一二月一〇日、滋賀県で会合を開き(稔彦が御膳立てをした)、ここでも岡部は、本件怪文書を出席者に配布した。

イ 本件怪文書を見た駒形と後上は、同日、原告本部を訪れ、原告代表者に対し、「ブライダルナプキンは実用新案出願中であり、原告以外は販売できないものであると嘘を言っていた。本件実用新案は登録できないものであることが分かったので、詐欺で警察や公正取引委員会に訴える。加盟料で払い込んだロイヤルティを返せ。」と言ったが、原告代表者はこれを拒否した。

そして、原告代表者は、本件実用新案の問題について正しい事実関係を説明した書面を全加盟店に送付し、岡部が、虚偽の資料である本件怪文書を配布したことを謝罪する始末書を書き、「同じようなことを再び繰り返した場合は本件契約を即日解除されても異議がない」旨の約束をして、ひとまず事態は沈静化した。

ところが、その後、駒形と後上は、被告らと連携を取りながら、原告との契約を詐欺により取り消したとして、平成八年六月、原告に対し、加盟料等の返還請求訴訟を提起した。この訴訟は、原告が提起した売買代金等反訴請求とともに審理され、平成一一年三月一七日、原告全面勝訴の判決が言い渡された。

(エ) 被告らの共謀

ア 被告酒井及び金子は、平成九年初旬、被告加盟店らに対し、以下の事項を申し向けて原告のフランチャイズチェーンからの離脱を煽動した。

(a) 被告酒井は、原告からの商品の注文に応じない。

(b) 被告加盟店らが、これに呼応して、原告に対し、一斉かつ集中的に商品を注文し、さらに、納品された商品の代金及び同時期のロイヤルティを原告の詐欺又は債務不履行を理由にして支払わない。

(c) 被告加盟店らは、原告が注文に応じられない場合、フランチャイズ本部として対応する力がないとか、役目を果たせてないなどと騒ぎ立てる。

(d) 被告加盟店らが今後必要な商品については、原告の商品と同様のカラーナプキンとカラーテーブルクロスは被告酒井が被告カネコを通じて、カラーハンカチーフは後上らが、それぞれ原告より安い価格で販売する。

(e) 以上により、裁判をすることなく原告をつぶし、早く片づけてしまう。

イ 被告加盟店らは、原告商品が現在より安い価格で購入できること、原告にロイヤルティを支払う必要がなくなることから、被告酒井及び金子の煽動に同意した。

(オ) 被告酒井の在庫調整と被告加盟店らの大量発注及び支払停止

ア 被告酒井は、平成九年九月半ばころから、原告との連絡を絶ってその注文に応じず、在庫について虚偽の回答をするなどして原告への商品の供給を調整して激減させた。

原告商品のうち、コードレインナプキンについては以下のとおりである。

(a) 被告酒井は、平成九年八月三一日当時、コードレインナプキンの在庫として、ピンク一八〇〇枚と二〇反(一反から約一八〇枚のナプキンが製造できる)、ブルー二五九四枚と二六反、イエロー二五二六枚と四七反を有していたことになるが、同月二二日に色が不明のナプキン二〇〇枚を原告に納品していたので、正確には三色合計で六七二〇枚と九三反を有していた。

そして、被告酒井は、平成九年九月三日にブルー七反及びイエロー九反を、同月五日にはピンク一〇反をそれぞれ使って四六八〇枚のナプキンを製造しており、同日九日には、商品化されたナプキンの在庫は一万一四〇〇枚となっているはずである。

これに対して、被告酒井が九月一日から一〇日までに原告に出荷した枚数は、三色合計七三六六枚である。

したがって、九月一〇日に原告が在庫を問い合わせた際、被告酒井は、原告の注文に十分対応できる体制であったにもかかわらず、原告の問い合わせに対し、製品数は〇で、仕掛品(製造途中の商品)が合計四〇〇〇枚にすぎないという虚偽の回答をした。

(b) 被告酒井は、原告がコードレインナプキンを継続的に注文していた九月一日から九月一〇日までの間に、同ナプキンの生地一三反分を被告カネコに横流しし、一〇日の在庫確認に対して、原告に対し、一三反分を減らした数を回答した。

(c) 被告酒井は、九月一〇日、原告が、ブルー七反、イエロー二七反について、製品化次第納品してほしい旨の注文をしたにもかかわらず、まったく納入しなかった。

原告は、同日、被告酒井に対し、コードレインナプキンの生地を各色三〇反ずつ注文し、在庫以外にも大至急製造して納品してほしい旨依頼したが、被告酒井はまったくこれに応じなかった。

イ 被告高須を除く被告加盟店らは、原告に対し、平成八年八月から平成九年七月分までは、別紙4記載のとおりの商品購入額しか商品を購入しなかったにもかかわらず、同年八月分から一〇月分にかけて、別紙1「延滞商品代金額」欄記載の金額(被告河田は同年九月分一九万一一〇〇円、一〇月分二四九万四三〇六円)の商品を一斉かつ大量に注文して購入した。

特に、被告フレッシュダンは、コードレインナプキンが品不足であることを知り、かつ、自らは必要ではないにもかかわらず、原告に対し発注を繰り返し、その後同商品を大量に返品した。

岡崎は、平成七年一二月ころから原告に協力するふりをしながら原告の情報を集め、これを被告らに流していた。

ウ そして、被告レゾンを除く被告加盟店らは、別紙3のとおり、共謀して、同時期から原告に対する商品代金及びロイヤルティの支払を停止した。

(カ) 平成一〇年四月二六日滋賀県での会合

ア 被告らは、平成一〇年四月二六日、滋賀県で会合を開いた(村上が御膳立てをした)。

上記会合には、被告酒井の他、村上、被告加盟店らのうち、金子、稔彦及び被告佐藤が出席し、被告上稲、同井上、国井、岡崎、岡部も出席予定であった。

上記会合では、被告酒井と同カネコが中心となって、現・元加盟店に対する商品の売込みが行われたほか、共同して原告対策を図ることが確認された。

イ その後も、被告酒井は、「ブライダル会議」なる名称で会合の開催を呼びかけ、平成一〇年一二月ころ、名古屋で上記会合と同様の会合が開かれた。

(三)  結論

① 被告酒井は、原告に対し、少なくとも被告加盟店らに対して原告商品を直接供給してはならない契約上の義務を負い、かつ、原告が、原告商品を被告加盟店らを含む加盟店に供給することを知っていたのにもかかわらず、上記②のとおり煽動するのに併せて、原告への商品の供給を突然停止し、これを直接被告加盟店らに供給して、被告加盟店らの本件契約上の義務違反を促したものである。

② 被告加盟店らは、原告商品を原告以外から購入してはならない契約上の義務を負っていたのにもかかわらず、被告酒井及び金子の煽動に呼応して、原告商品を被告酒井から購入するだけでなく、原告に対し、同時期に、不必要な注文を大量に集中させることによって原告の債務不履行を誘発し、さらに商品代金及びロイヤルティの支払を拒否することにより、事実上ブライダルオタギチェーンを離脱したものである。

③ 被告らのこれらの行為は、契約の自由を著しく逸脱するものであり、原告はこれらの行為により本件契約の解除を余儀なくされたことからすると、被告らには債権(契約関係)侵害による共同不法行為が成立し、仮にそうでなくとも債務不履行に該当するというべきである。

(四)  損害

① 未払商品代金及びロイヤルティ 合計一八二三万八九〇六円

② 逸失利益

うち

ロイヤルティ 二一七八万三〇〇〇円

商品販売から得べかりし利益 三六三九万四七八九円

③ フランチャイズシステム構築費 五〇一二万一七八八円

④ 慰謝料 三〇〇〇万円

⑤ 弁護士費用 一五六五万三八四八円

(被告酒井の認否、反論)

(一)  原告の主張(一)は否認ないし争う。

被告酒井は、文書、口頭を問わず、原告との間で、原告に販売したものと同様の商品を被告加盟店らを含む第三者に販売してはならない旨合意したことはない。

(二)  原告の主張(二)①は否認する。

① 被告酒井が、被告カネコに対し、原告商品を直接売り渡したのは、平成九年九月以降になってからである。

② 被告酒井は、被告カネコに対し、平成九年一一月中旬以降、ローズ柄のナプキン等を販売したことはあるが、原告商品の「ローズガーデン」と同一ではない。

(三)  原告の主張(二)②は否認又は不知

① 被告酒井は、平成一〇年四月二四日の会合を除き、原告主張の会合に出席していない。

また、会合は、被告加盟店らの本件契約終了後のことであり、何ら煽動や共謀とは関係がない。

② (オ) 被告酒井の在庫調整と被告加盟店らの大量発注及び支払停止について

(ア) 被告酒井は、平成九年九月以降も、原告の注文に応じて原告商品を納入しており、その額は、九月においては合計金九五七万一四五四円相当に、一〇月においは合計八〇三万二三三一円相当に、一一月においては合計二九三万九二九五円相当にそれぞれ上る。

そして、被告酒井は、原告から、上記各代金の支払を受けている。もっとも、一一月分について原告が被告酒井に振り出した約束手形三通(本件各手形)については、原告が支払をせず不渡異議申立てを行ったため、被告酒井において手形訴訟を提起し、仮執行宣言付判決を得て、強制執行により回収している。

(イ) コードレインナプキンについて

ア コードレインナプキンについては、被告酒井は、平成九年七月二五日、原告から同年九月ないし一一月の売買見込量合計一万二〇〇〇枚を手配するよう指示され、これに対し同年九月一日から同年一〇月一五日までの間に、指示された量を上回る合計一万三四四二枚を納入している。

さらに、原告の注文が上記指示に基づく予想に反して急ピッチかつ大量であり、被告酒井の資金繰り面も含めた意味での製品供給能力の限界を超えたため、原告との合意の上で、生地合計八五反(ナプキン約一万五〇〇〇枚相当)を納入し、原告において別の縫製業者に加工させたのである。

原告は、「作ったらどんどんオタギに入れてください。」、「大至急納品してください。」という原告の「注文」に対し、被告酒井が応じなかったと主張するが、これらの異常な「注文」に対して、上記のとおり製品供給能力の関係上応じることができなかったのであり、故意又は過失による製品の供給調整又は供給義務違反とは到底いえない。

イ 原告の主張(二)②(オ)ア(a)は否認する。

平成九年九月三日及び五日に生地の商品化を指示しても、一〇日までには完成しない。原告が商品化したと主張しているものは、被告酒井が一〇日に仕掛品として回答している四〇〇〇枚のことであり、虚偽の回答はしていない。

ウ 原告の主張(二)②(オ)ア(b)は否認する。

被告酒井は、平成九年九月九日までに原告から電話で注文を受け、原告に生地合計一三反を納入している。

エ 原告の主張(二)②(オ)ア(c)は否認する。

(a) 原告のブルー七反、イエロー二七反についての指示は、商品化するようにというものにすぎず、実際に注文があったのは二五反についてのみであり、これについては原告に納入している。

(b) また、各色三〇反合計九〇反の「注文」は、他の生地合計二〇〇反の「注文」と同時になされているところ、それまでの原告と被告酒井との取引の経過からして、被告酒井において、注文と受け止めず、以後の製品加工の希望であると了解したことは当然である。したがって、上記九〇反については注文がなされたとはいえず、仮にこれが注文に当たるとしても、被告酒井が直ちにこれに応じなかったことに帰責性は認められない。

(四)  原告の主張(三)は争う。

(五)  原告の主張(四)は否認ないし争う。

仮に、被告酒井が原告以外の第三者に対して原告商品を販売してはならないとの義務を負担しており、したがって、平成九年九月以降被告カネコに原告商品を販売したことが同義務違反になるとしても、本件においては、原告のフランチャイズチェーン全体が破壊された訳ではなく、したがって、原告主張の損害が発生しているとはいえない。また、被告加盟店らの離脱により一部損害が生じたと仮定しても、それは被告加盟店らがそれぞれが主張している理由による解約に基づくものであって、被告酒井の上記義務違反との間に何らの因果関係も認められない。

(被告カネコら七名の認否、反論)

(一)  原告の主張(一)は争う。

本件契約上、原告に対し、原告以外から購入してはならない義務を負う原告商品には、何らのデザインもないようなもの(例えば、無地のテーブルクロス)は含まれない。

(二)  原告の主張(二)①は否認する。

① 被告カネコが被告酒井から原告商品を購入するようになった時期は、平成九年九月ころからである。また、その理由は、原告が被告加盟店らからの商品の発注に対応しきれず、取引先への納品不能や納入遅れ等により困った被告カネコを除く被告カネコら七名から何とか仕入れることはできないかとの相談があったため、やむなくこれに応じて被告酒井に発注したものであり、そもそも原告が全ての加盟店の受注に応じられるような満足な在庫を持たなかったことに原因がある。

② 被告酒井が製造したローズ柄のナプキンは、原告商品の「ローズガーデン」とは異なる。

(三)  原告の主張(二)②は否認ないし争う。

① (ア) 平成七年一〇月八日岡山県での会合について

(ア) 上記会合には、原告主張の出席者のうち、被告酒井及び同畠中は出席していない。

(イ) 上記会合の目的は、加盟店相互において情報交換しようとしたものにすぎない。すなわち、被告加盟店らは、経営が成り立たないため、他の加盟店がどのように営業しているかなどの情報を欲していたが、再三の要求にもかかわらず原告が会合を開催してくれないために、加盟店が自主的に参集したものである。

会合の席上において、阿部一商事の話は一切なく(当時参加者の誰もが先願のことは知らなかった)、ましてや原告から離脱するように煽動するなどということもなかった。

② (ウ) 平成七年一二月一〇日滋賀県での会合について

(ア) 上記会合には、原告主張の出席者のうち、被告酒井及び同畠中は出席していない。

(イ) この会合の目的も、平成七年一〇月八日の会合と同様、各加盟店間の情報交換であった。

席上、岡部から本件怪文書が出席者に配布され、これにより先願者の存在を初めて知った被告加盟店ら参加者は、ブライダルナプキンの実用新案登録について多大の不安を抱くに至った。そのため参加者は、この点に関する原告への確認や、実用新案が登録されない場合の対策、原告に対する改善要求事項等については話し合ったが、これらは原告のフランチャイズチェーンを継続することを前提とするものであり、それからの離脱を誰かが煽動したなどという事実はまったくなかった。

(四)  原告の主張(三)は争う。

(五)  原告の主張(四)は否認ないし争う。

① ① 未払商品代金及びロイヤルティについて

(ア) 弁済等の抗弁

ア 被告カネコは、平成九年八月二八日、原告に対し、代金二万八五一八円分の商品を返品した。

イ 被告ブライダルラーゴビワは、平成九年一二月一三日、原告に対し、代金三万三六七七円分の商品を返品した。

ウ 被告上稲は、平成九年一〇月三一日、原告に対し、商品代金として四万二〇〇〇円を支払った。

エ 被告井上は、平成九年一二月二日、原告に対し、九月分の商品代金として六万四〇五〇円を支払った。

(イ) ロイヤルティの支払義務について

原告は、ロイヤルティの対価であるノウハウの提供・研修・指導をまったく行っていないので、被告カネコら七名は、ロイヤルティの支払義務を負わない。

② ② 逸失利益について

本件契約は中途解約が可能であるから、逸失利益は法的に成り立たない。

③ 相殺の抗弁

仮に、原告の請求に理由があるとしても、被告カネコら七名は、上記のとおり、原告に対して損害賠償請求権を有しているところ、平成一〇年七月一七日乙事件第一回口頭弁論期日において、原告に対し、上記債権を自働債権として、原告の乙事件請求債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をした。

(被告ヤマメンら二名の認否、反論)

(一)  原告の主張(一)は争う。

被告カネコら七名の主張を援用する。

(二)  原告の主張(二)①は否認する。

(三)  原告の主張(二)②は否認する。

① 原告主張の会合((ア)(イ)(ウ)(カ))について

上記各会合出席者及び内容は、被告カネコら七名の主張のとおりである。

② (オ) 被告酒井の在庫調整と被告加盟店らの大量発注及び支払停止について

(ア) 被告ヤマメンは、秋のブライダルシーズンに備えて、商品の在庫確保のため、例年より早めに原告に対して注文を出したことはあるが、同社の一か月の平均発注額は、別紙4のとおり一一六万五六七〇円であり、平成九年八月及び同年九月の発注額は合計二四九万九八三五円であるから被告ヤマメンの同時期の発注は大量集中発注に当たらない。

なお、被告ヤマメンは、平成九年九月三〇日付け通知により本件契約の無効又は解除を主張しているが、契約上解除には三か月の予告期間が必要であったため、この時期に通知したものであり、これをもって支払意思がなかったことの裏付けとはならない。

(イ)ア 被告フレッシュダンは、今まで何回となく挙式者から現実に注文を受けた後、原告に在庫がなかったため、結局注文を断られるという目に遭ってきたことや、営業戦略として、秋の結婚シーズンに向けて多めに発注して自ら在庫を保有し、当該シーズンに在庫をさばくべく営業努力をする意図であった。

しかしながら、ブライダルナプキン自体の競争力不足、割高感のため、思うように営業が伸びず、やむなく在庫を返品したものであり、原告に損害を被らせる目的、原告のフランチャイズシステムを破壊する目的で発注、返品したものではない。

イ 岡崎は、スパイ行為をしていない。

平成九年一二月二六日、岡崎が小俣に電話をしたことは事実であるが、原告からの情報提供の申入れがあったことを遠回しに伝えただけである。

逆に、岡崎は、平成九年一一月ころ、原告から「平成一〇年以降のロイヤルティを半年分免除するので、被告加盟店らの情報を教えてほしい」と要請された。

(四)  原告の主張(三)は争う。

(五)  原告の主張(四)は否認ないし争う。

① ロイヤルティの支払義務について

被告カネコら七名の主張を援用する。

② 相殺の抗弁

仮に、原告の請求に理由があるとしても、被告ヤマメンら二名は、上記のとおり、原告に対して損害賠償請求権を有しているところ、平成一〇年五月一四日乙事件第四回弁論準備期日において、原告に対し、上記債権を自働債権として、原告の乙事件請求債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をした。

(被告佐藤ら二名の認否、反論)

(一)  原告の主張(一)は争う。

被告カネコら七名の主張を援用する。

(二)  原告の主張(二)①は否認する。

(三)  原告の主張(二)②は否認する。

① (イ) 平成七年一二月二日埼玉県での会合について

(ア) 上記会合には、被告佐藤は参加していない。

(イ) 上記会合は、原告が、被告レゾンを関東・東北方面の加盟店の窓口的役割をするよう指示したことが契機となったものであり、この会合では、一切脱退の話はなされていない。

岡部が本件怪文書を配布した趣旨は、会合において加盟店がお互いに情報提供し合う中で、本件実用新案に先願者がいること等が明らかになり、加盟店間に次第にブライダルナプキンが原告独占の商品なのか疑問が広がっていた状況下で、仲間である加盟店に現状を認識してもらうというものであり、脱退工作を企図したものではない。

② (ウ) 平成七年一二月一〇日滋賀県での会合について

上記会合において岡部が配布した本件怪文書は、原告主張のものではなく、同書面を事実に則して訂正した書面である。配布の趣旨は、前記会合の時と同様である。

(四)  原告の主張(三)は争う。

(五)  原告の主張(四)は否認ないし争う。

① 未払商品代金及びロイヤルティについて

(ア) 原告は、被告佐藤に対し、一一月分の商品不足分(二〇六〇円分)を送ってくるという約束であったが、実際には送られてこなかった。

(イ) ロイヤルティの支払義務については、被告カネコら七名の主張を援用する。

② 相殺の抗弁

(ア) 加盟料返還請求権との相殺

加盟料は、契約全期間中にわたり原告から提供される利益に対する対価であるところ、被告佐藤ら二名は、原告の一方的な本件契約の解除により、残期間分の加盟料(被告佐藤は、二年七か月分に相当する一〇四万八八三三円、被告レゾンは、一〇か月分に相当する一四〇万円)に相当する本件契約上の利益を喪失した。

したがって、被告佐藤ら二名は、原告に対し、それぞれ加盟料返還請求権を有しているところ、平成一二年二月二一日乙事件第八回弁論準備期日において、原告に対し、上記債権を自働債権として、原告の商品代金債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をした。

(イ) 損害賠償請求権との相殺

仮に、原告の請求に理由があるとしても、被告佐藤ら二名は、上記のとおり、原告に対して損害賠償請求権を有しているところ、平成一二年二月二一日乙事件第八回弁論準備期日において、原告に対し、上記債権を自働債権として、原告の乙事件請求債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をした。

第三争点に対する判断

一  前提となる事実関係

(一)  争いのない事実と《証拠省略》によれば、以下の事実が認められる。

① 原告(前身である有限会社オタギ)は、昭和五五年一二月に設立され、当初は主として制服(ブラウス)の製造工場をしていたが、平成四年夏ころからブライダル市場への進出を計画し、まず、挙式者の手書きのオリジナル柄をプリントしたティシャツ・ポロシャツを引出物にすることを考え、同年一〇月ころから株式会社クラボウテキスタイル(以下「クラボウ」という。)からティシャツ・ポロシャツを購入して営業を始めたが、思ったような成果が上がらなかったため、平成五年一月撤退した。クラボウの営業担当者が、被告酒井であった。

原告は、次に、ブライダルナプキンを取り上げた。これは、原告独自の考案によるものであり、従来結婚式場等の宴席において使用されるテーブルクロスやナプキンは白無地で備え付けのものが一般的であったが、色は、ピンク、ブルー、クリーム、イエロー等のパステルカラーの布地を用い、これに列席者の氏名を転写プリント又はラベルで表示し、さらに図柄や、結婚式場でいえば、挙式者名、日付等を表示し、列席者が持ち帰れるようにしたものであった。つまり、式場で用意する白一色のテーブルクロス、ナプキンを豊富な色彩、デザインにして、特にナプキンについては、席札を兼ねさせることによって席札代わりとなり、演出に一役買い、かつ、記念品の役割をも兼ねるという多機能的なものに変えた点が画期的であった。

原告は、御膳箸についても、席札を兼ねたブライダル用席札御膳箸を考案し、前者については平成五年四月、後者については同年一〇月、実用新案登録の出願をした。

平成六年二月、日本経済新聞にブライダルナプキンの記事が掲載されたことから、原告のブライダルナプキンが全国的に知られるようになり、その後も新聞、雑誌に記事が掲載され、反響が大きかったため、原告は、関東地方を中心に直販する一方、これをフランチャイズ化することを企図し、同年四月、社団法人日本フランチャイズチェーン協会に研究会員として加入し、同年五月ころからフランチャイズ事業を展開した。

② 平成六年五月、被告酒井は、友人である金子と被告ヤマメン代表者山崎勝右(以下「山崎」という。)を同行して原告本社を訪れ、原告のフランチャイズシステムの説明を求めた。原告代表者は、三名に対し、原告がフランチャイズチェーン協会の研究会員となったこと等を説明し、ブライダルナプキンの新聞、雑誌記事のコピーを渡し、ブライダルナプキンは平成五年四月に実用新案登録の出願をしたこと、特許庁が審査査定をするまで四、五年はかかるので、それまでの間、実用新案登録出願中であることをアピールしながら営業し、ホテルの取引口座を取ることが一番大切であることを話した。

原告代表者は、加盟店希望者に対しては、必ず以下の事項を順を追って説明した。第一に、店舗が必要ないこと、第二に、店舗が必要ないので商品を飾る必要がないこと、第三に、各加盟店では、沢山の商品在庫リスクを負わず、同リスクは原告本部が引き受けること、第四に、電話、ワープロ、ファックス、カラーコピー、プレス機が設置できる場所であれば自宅でもできること、第五に、原告がブライダル市場に進出した当初はほとんど相手にされず苦労したこと、ブライダルグッズのカラー化は、首都圏ではようやく認知され始めたが、地方ではまだまだ遅れていること、ブライダルナプキンはこれからの商品であり、現在事業規模は小さいが、グループとして全国にアピールしていくこと、加盟するに当たっては営業が一番重要であり、とりわけ地域密着型が良いこと、都心にいて顔をろくろく見せず、電話応対での営業ではどんなに良い商品でも取引先に喜ばれないこと、ブライダルは半期半期の商売であり、ホテル、式場は、秋冬の婚礼は夏のブライダルフェアにて、春夏の婚礼は冬のブライダルフェアにて顧客を取り込むこと、したがって、開業当初六か月間は開拓期間であり、経営は苦しいこと。

原告代表者は、加盟店希望者に対し、必ず、「フランチャイズ契約のあらまし」、パンフレット、ナプキンと御膳箸の受注から納品までの資料一式、加盟料一覧表、ロイヤルティ一覧表等を交付した。

原告代表者は、加盟店希望者に対し、原価支出予算集計表を示して売上げに対する利益率を説明したが、ブライダル事業の新規性及び地域性から、売上高の予測及び売上保証はしなかった。

被告井上が資料として交付を受けた売上シュミレーションは、リクルートが作成したものである。

③ 被告ヤマメンは、平成六年五月三一日、大阪府、兵庫県を営業エリアとして、被告カネコは、同年八月一日、岐阜県、三重県を営業エリアとして、それぞれ原告との間で本件契約を締結した。

加盟店の募集は、新聞、雑誌記事、ビーイングの募集記事、リクルートが主催した東京、大阪、福岡会場でのイベント等で行われ、以後、別紙1のとおり、その余の被告加盟店らが加盟店となり、原告の加盟店は、平成九年九月時点では二六名(地域にして三四都府県)に達した。しかしながら、その後平成一〇年にかけて離脱が相次ぎ、平成一二年四月には僅か四名となり、原告は、同月をもってフランチャイズ事業を終息させた。

④ 本件契約書には、加盟店は、原告商品を製造するについては、原告が指定し原告から購入した材料等を用い、原告から提供されたデザインを使用しなければならず、原告商品以外の製造販売をしてはならない旨定められている(六条、一一条)。

⑤ 原告は、平成五年七月以降、被告酒井を窓口としてクラボウからナプキンの生地等を購入するようになったが、そのころ、被告酒井から自己が経営する友光テキスタイルから生地等を購入するよう勧められてこれに応じ、平成六年四月以降は、専ら友光テキスタイルから生地等を購入するようになった。

原告と被告酒井との間の取引については、契約書は作成されなかったが、被告酒井は、同年五月以降原告がフランチャイズ事業を展開したことを知っており、原告商品及びその材料を原告以外の第三者や加盟店に販売しないことが取引条件となっていた。しかるに、被告酒井は、友人の金子に原告商品及びその材料を横流しし、金子がその商品を原告の加盟店(例えば、後上)へ販売することを承知の上で金子への販売を継続した。

⑥ 原告は、平成六年八月、岡崎の指摘により、プルシアンがブライダルナプキンと同種の商品を販売している事実を知った。原告は、同社が、原告の加盟店になることを検討するとして、説明を聞き、パンフレットを持ち帰ったものの、結局加盟店とならなかった経緯があったことから、物真似をされたと認識したが、本件実用新案が未だ登録されていなかったことから、不正競争防止法違反を理由に同社を相手取り、製造販売停止等を求める訴えを提起した。

原告は、平成七年七月一一日、プルシアンとの間で、①原告は、プルシアンに対し、解決金として四〇〇万円を支払う、②プルシアンは、原告に対し、爾後、ブライダルナプキンと同種の商品を製造・販売しない、③プルシアンは、原告に対し、既に製造した在庫等を引き渡す旨の和解をしたが、原告代表者は、これを実質勝訴の和解と認識し、同年八月一日、原告本部を訪れた後上に対し、その旨説明した。

⑦ 前記第二、二、争点2について(原告の主張)(二)②(ア)ないし(カ)記載の各事実

⑧ 被告酒井は、平成九年九月以降、原告商品の一つである「ローズガーデン」を製造して金子に供給し、同年一一月中旬以降、「ローズガーデン」に類似したローズ柄のナプキンを製造してこれを金子に販売した。

⑨ 原告に対し、被告カネコは平成九年九月五日付けで、被告井上は同月一八日付けで、被告ヤマメンは同月三〇日付けで、本件契約を詐欺により取り消す、又は本件契約は錯誤により無効であることを理由に加盟料及び既払のロイヤルティの返還を求める同旨の書面が相次いで送付された。これに対し、原告は、加盟店らの動向に異常を感じ取り、同年一〇月中旬、杉浦を表敬訪問の形で、被告畠中、同ブライダルラーゴビワ、同河田、同高須、同上稲、同井上、同佐藤及び同レゾンの下へ派遣したが、まともな会話は成立しなかった。

原告に対し、同年一一月九日、被告河田から加盟料及び既払ロイヤルティの返還を求める書面が、同年一二月一〇日、被告カネコら七名から内容証明郵便が、同月一一日、被告ブライダルラーゴビワから「忍者部隊オタギ様」と題する原告を揶揄し、かつ、非難する書面がそれぞれ送付され、被告佐藤からは質問状が執拗にファックスされてきた。

そして、原告代表者は、同年一二月、原告の元加盟店である小俣から「原告の加盟店が結束を図り、本部をつぶそうと図っているようですから、注意した方がよい」旨の電話を受け、同月二六日には、小俣と岡崎との会話の内容を録音したテープが送付されてきた。

原告代表者は、平成一〇年二月二日、小俣から「(金子からの話として)集中的に大量に原告に発注し、原告に支払った加盟料とロイヤルティ分は買い込んで、理由を付けて支払わないことにする。被告酒井は親しい友人なので、原告から注文があっても商品を出さないことになっており、原告が加盟店の注文に対応できなくなったら、フランチャイズ本部としての責任を追及する。そして、原告のフランチャイズチェーンを破滅させる。原告をつぶしてしまえば裁判をすることもない。今後は自分(金子)に注文してくれれば、原告と同じものが安く提供できる。ハンカチーフについては後上が扱っている。原告商品以外の商品の注文については被告レゾンが扱っている。被告酒井から、『金子さんに儲けさせてあげるので、原告の加盟店を集めて金子さんが売るようにしなさい。』と言われて計画した。」旨の電話を受け、金子から送られた商品の価格表が送付されてきた。

⑩ ビーイング平成七年七月号には、埼玉県加盟店の平成六年六月から平成七年五月までの売上実績と純利益が掲載されているが、埼玉県加盟店というのは誤りであり、正しくは、茨城県、栃木県、福島県を営業エリアとする株式会社ヒロ・サクシードのそれであった。

⑪(ア) 原告のブライダルナプキンの製法は、カラーコピーで転写紙に文字等を転写し、これをプレス機で加圧加熱することにより、ナプキンに印刷するもの(以下「熱転写方式」という。)である。ただし、当初の出願では、ナプキンへの文字等の表示方法は限定されていなかった。

(イ) 特許庁は、平成八年一二月三日、原告に対し、原告の本件実用新案登録の出願に関して、阿部一商事による同一の考案が先に出願されているとの理由で拒絶する旨の拒絶理由通知書を送付した。

これに対して、原告は、平成九年一月三〇日、特許庁に対し、手続補正の申立てをした。この補正では、ナプキンへの文字等の表示方法について、熱転写方式であることが明示された。

原告の出願は、平成九年一一月一四日、実用新案として登録査定された。これに対し、阿部一商事の出願は、登録されないことに確定した。

(ウ) 原告代表者は、前記プルシアンとの訴訟の係属中、阿部一商事からも特許庁に対してナプキンに関する実用新案登録の出願が出されていることを知っていたが、原告の弁理士から、阿部一商事の出願は、印刷によるものが含まれているものの、それについての具体的な記述はなく、主として刺繍による名前や図案であって引出物の一部であるのに対し、原告の出願は、熱転写方式によるものであり、席札を兼ね記念品として持ち帰っていただくものであるから、両者は抵触するようなものではないとの説明を受け、その旨信じていた。

原告代表者は、被告加盟店らに対し、阿部一商事による出願について告知しなかったが、これは、原告代表者が上記のとおり信じていたため、及び被告加盟店らに無用の不安を与えないためであった。

(エ) 実用新案制度は、平成六年一月一日、特許法等の一部を改正する法律(平成五年法律第二六号)により改正され、その効力が弱まったが、本件実用新案には、同附則第四条により旧法が適用され、原告は、出願公開後、実用新案権の設定の登録前に業として出願にかかる考案を実施した者に対し、事前に警告をすることを条件に、実施料相当額の補償金の支払を請求することができた(旧法一三条の三)。

⑫ 原告は、本件契約を締結した加盟店となった者に対し、原則として三日間、原告本部でブライダルナプキンの製造等の研修を行い、各加盟店の営業エリアに原告社員を派遣して営業研修及び指導を行い、さらに必要に応じて原告社員を派遣して営業助成を行っていた。

原告は、自己及び被告加盟店らのために、雑誌等に広告を掲載した。

⑬ 原告の平成四年一一月一日から平成一一年一〇月三一日までの経常損益等の推移は、別紙5のとおりであり、原告は、平成九年から平成一〇年にかけて、被告加盟店らが相次いで離脱したため、一時的に倒産の危機に直面したが、平成一一年一〇月三一日期には立ち直り、平成一二年一〇月三一日期には、売上額はこれまでで最高の三億五〇〇〇万円超に達した。

⑭ 被告加盟店らの個別事情

被告カネコについて

(ア) 金子は、昭和五〇年一月から愛知県で、「金子商店」の屋号で綿・合繊・織物の卸業、制服・事務服・作業服の製造、販売、卸、縫製業等を営んでいた。

被告酒井は、金子商店の仕入先であるクラボウの担当社員であり、昭和五五年ころからの知り合いであった。

(イ) 金子は、前記のような経緯で、平成六年八月一日、三重県、岐阜県を営業エリアとして本件契約を締結し、同時に被告カネコを設立した。

(ウ) 原告は、平成六年八月上旬、金子の妻及び娘に対し、三日間の研修を行った。研修後の営業同行については、金子が希望しなかったため行わず、その代わりに商品見本とパンフレットを幾分多めに送った。

(エ) 被告カネコは、平成六年一〇月から平成七年一月まで、原告から商品をまったく購入せず、平成七年の一年間には合計二五万〇八七四円、平成八年一年間には合計六七万〇六五一円分の商品しか購入しなかった。

原告は、営業助成のため、平成六年一一月及び平成七年三月には原告社員梅田一秀(以下「梅田」という。)を、平成八年三月七日及び同年一〇月には杉浦を派遣したが、平成八年一〇月の派遣時には、金子の原告に対する反感が強く、援助を拒否された。

(オ) 原告は、平成九年一一月二八日到達の内容証明郵便により、未払代金の支払を催告した上で本件契約を解除した。

被告カネコは、本件契約終了後も同種の営業を続け、原告と同種の商品を被告加盟店らを含む原告の現・元加盟店に販売している。

丸山及び被告畠中について

(ア) 丸山は、平成七年一月一七日の阪神淡路大震災により店舗が崩壊するまで、兵庫県西宮市において、フランチャイズチェーンであるファミリーマートを経営していた。

丸山は、平成七年七月一五日、愛知県を営業エリアとして本件契約を締結した。

(イ) 原告は、本件契約後、丸山及び丸山と営業を行うことになった西畑彰に対し、三日間の研修を行い、引継ぎ挨拶と新規営業のため、梅田を愛知県へ派遣した。

しかしながら、丸山自身は東京でファミリーマートの経営を続け、愛知オタギの営業は西畑に全面的に任せきっていたため、愛知オタギの営業実績は芳しくなかった。

(ウ) 平成八年一月初め、丸山から原告に対し、契約者を被告畠中に変更してほしい旨の申入れがあり、原告は、それによって愛知エリアの活性化ができるのであればと考えて承諾し、同年二月一日、改めて被告畠中と本件契約を締結した。

(エ) ところが、被告畠中に代わってから原告に対する商品代金の支払が遅れるようになり、平成九年一月末時点での未払金は合計一三八万二六一円(商品代金一一七万四二六一円、ロイヤルティ二〇万六〇〇〇円)、同年二月末時点での未払金は合計一六七万〇六一八円(商品代金一三六万一六一八円、ロイヤルティ三〇万九〇〇〇円)になったため、原告は、同年三月と四月は先払いで商品を受け渡した。

被告畠中は、同年五月以降商品を発注せず、同年八月二七日、予告なしでテーブルクロス一一万五二〇〇円分を返品した。

(オ) 被告畠中は、同年九月になって突然商品を発注し、先払いであることを知らなかった原告社員が商品を発送してしまったため、原告は、被告畠中に対し、延滞分を含めた代金の支払を求め、さらに状況を把握するために杉浦を派遣したところ、他社商品を扱っていることが判明したため、平成九年一〇月二四日到達の内容証明郵便により、未払代金の支払を催告した上で本件契約を解除した。

被告畠中は、本件契約終了後も同種の営業を続けている。

被告ブライダルラーゴビワについて

(ア) 村上は、昭和六一年ころから現在まで、滋賀県でオリジナルのデザインの洋服等の商品を販売している。

(イ) 村上兄弟は、原告のフランチャイズチェーンに興味を持ち、同年五月一日、原告本部を訪れ、原告代表者らから説明を受け、同日、契約者を兄義雄として、滋賀県を営業エリアとして本件契約を締結した。

(ウ) 原告は、契約日から二日間、村上兄弟に対し研修を行い、また、営業研修として、平成七年五月三〇日から三一日まで、原告社員佐藤清人を滋賀県に派遣した。

(エ) 村上兄弟は、平成七年六月七日、被告ブライダルラーゴビワを設立し、これに伴い、本件契約の契約者も被告ブライダルラーゴビワに変更された。

(オ) 村上は、平成七年一〇月八日の会合で、福井県、石川県加盟店の中谷から、同人が村上と同時期に滋賀を希望していたこと、福井を営業エリアとする代わりに加盟料なしで石川県を営業エリアにしたことを聞き、原告に対し、その説明及び滋賀県のロイヤルティが他県と比較して高額であること等について質問状を発送した。

これに対し、原告は、同月二三日、回答書を発送し、同年一一月初め、原告本部において村上と話し合いをした結果、平成七年九月分から平成八年六月分までのロイヤルティを免除した。

(カ) 原告は、平成九年一一月一日到達の内容証明郵便により、被告ブライダルラーゴビワに対し、未払代金の支払を催告した上で本件契約を解除した。

被告ブライダルラーゴビワは、本件契約終了後も同種の営業を続け、かつ、村上は、平成一〇年四月二六日の会合を設営した。

被告河田について

(ア) 被告河田は、昭和五〇年四月から平成二年七月まで特定郵便局に勤務し、同年一一月からは宝石店に勤務していた。

稔彦は、昭和四八年七月運輸省に採用され、東京や神奈川の陸運支局等に勤務していたが、平成八年六月末に退職し、その後は妻と一緒に加盟店事業を行っている。

(イ) 河田夫妻は、平成七年一月三〇日、契約者を被告河田、営業エリアを京都府として本件契約を締結した。

(ウ) 原告は、被告河田に対し、契約後三日間の研修を行い、営業助成として原告の社員佐藤を三日間京都府へ派遣したが、被告河田は、営業にタクシーを使用したり、稔彦の足代(毎週末新幹線で横浜・京都間を往復)がかさむなどしたため、平成七年一〇月以降、商品代金及びロイヤルティを滞納するようになり、平成八年七月一六日、稔彦の退職金により、滞納金二〇六万八四八〇円を支払った。

(エ) 平成七年一〇月か一一月、関西で原告本部に敵対的な集会が開催されたが、被告河田のマンションが集会の場所として使用され、稔彦は、同年一二月一〇日の会合を設営した。また、稔彦は、駒形と後上の裁判において、同人らのために陳述書を作成、提出した。

原告は、平成九年三月ころ、稔彦からの三か月分のロイヤルティ免除の申し出を容れて、四か月分のロイヤルティを免除した。

(オ) 稔彦は、平成九年九月下旬から同年一〇月初めにかけて、原告に対し、前年同期の四倍を超える約二五〇万円もの商品を発注し、同年一一月九日到達の書面により、原告に対し、商品代金及びロイヤルティの支払を停止する旨の通知をした。原告は、支払を催告したが、商品代金は支払ったものの、ロイヤルティを支払わず、さらに同年一二月一一日には、他の被告カネコら七名と連名で、本件契約を詐欺により取り消したとして、既払加盟料及びロイヤルティの返還を求めてきたので、同月一八日到達の内容証明郵便により、未払代金を催告した上で本件契約を解除した。

河田夫妻は、本件契約終了後も同種の営業を続けている。

被告高須について

(ア) 被告高須は、大阪府で会社員をしていたが、子供が小さかったことから独立自営の商売を考えており、平成七年二月、大阪で関西独立フランチャイズフェアを見学した際、原告を知った。

(イ) 被告高須は、平成七年四月二二日、原告との間で、奈良県、和歌山県を営業エリアとして、本来、加盟料は各県毎に三〇〇万円、ロイヤルティは各県毎に六万円のところ、これをそれぞれ半額とし、かつ、支払時期を同年五月一二日までとして本件契約を締結し、同日、加盟料も支払わないのに、原告代表者に対し、ブライダルナプキンの製造方法を教えてほしいと頼んで拒否された。

原告は、同年五月一一日、加盟料が支払われたので、被告高須に対し、三日間の研修を行ったが、営業同行については、被告高須が必要ないと言ったので行わなかった。

(ウ) 被告高須は、平成七年一〇月ころ、原告に対し、一時的に敵対的な態度を取ったが、原告が本件実用新案の現状を《証拠省略》に基づき説明した後は元に戻った。

原告は、高須の生活ができないとの苦情を容れて、平成八年二月分から平成九年九月分までのロイヤルティを免除したが、不審に思った原告が、同年一一月二七日、杉浦を奈良県に派遣したところ、被告高須は、年間四五〇組の奈良ロイヤルホテルの挙式パックを手がけるなどそれまでの言い分が嘘であることが判明した。

原告は、被告高須から、平成九年一二月一一日到達の内容証明郵便により、本件契約を詐欺により取り消したとして、既払加盟料及びロイヤルティの返還を請求されたこと等から、同月一八日到達の内容証明郵便により、未払代金の支払を催告した上で本件契約を解除した。

被告高須は、本件契約終了後も同種の営業を続けている。

被告上稲について

(ア) 被告上稲は、広島県で会社員をしていたが、平成七年二月末で会社を退職し、資金の借入れや事務所の手配等開業の準備をした上で、同年三月八日、広島県、島根県及び鳥取県を営業エリアとして本件契約を締結した。

原告は、契約後、上稲夫妻に対し、原告本部において研修を行ったほか、営業研修として、平成七年四月上旬、原告社員佐藤清人を広島県に派遣した。

(イ) 被告上稲は、平成七年四月から営業を開始したが、同年七月に注文があるまでは一件も注文がなく、ブライダルナプキンから、無地のカラーナプキン、柄のナプキン及びカラーテーブルクロスに商品を絞って販売に力を入れたところ、少しずつ注文が来るようになった。

被告上稲は、平成八年一月一日、島根県、鳥取県の営業エリアを返上し、ロイヤルティの負担額を減少した。

(ウ) 被告上稲は、平成九年一月、名称を「クレエ工房」と変更し、商品の仕入れも、一月から三月は一〇〇万円を超えたが、その後漸減し、同年五月以降は五〇万円台に落ち込んだ。ところが、同年八月には一二六万円余り、同年九月には九三万円と急増し、原告が八月分の商品代金を請求したところ、同年九月三〇日、四万二八三五円のみが振り込まれ、「お金がないから支払えない。」と返答した。

原告は、被告上稲が同年一〇月一日から同月二一日まで音信不通となり、また、同月二二日に派遣した杉浦に対し、敵対的な態度を取ったため、平成九年一一月四日到達の内容証明郵便により、未払代金の支払を催告した上で本件契約を解除した。

被告上稲は、本件契約終了後も同種の営業を続けている。

被告井上について

(ア) 被告井上は、平成六年九月二九日、それまで勤めていた会社を退職し、自宅のある福岡県で仕事を探していたところ、平成七年二月発売のビーイングを見て原告を知り、同月二五日、福岡市で開催されたリクルート主催の「九州独立フェア」の原告のブースを見て、原告のフランチャイズチェーンに興味を持ち、平成七年三月一三日、熊本県を営業エリアとして本件契約を締結した。

(イ) 原告は、契約後引き続き、井上夫妻に対して三日間の研修を行い、営業研修として、平成七年三月二八日から三〇日まで、梅田を派遣した。

被告井上は、梅田の出張費を負担することに不満を述べていたのを始め、原告のフランチャイズチェーンに加盟したことについても不平不満が多く、また、商品の注文についても、休日の土曜日に即刻納品するよう要求するなど無理を通し、商品代金の入金についても、振込手数料を差し引いた。

原告は、被告井上が「生活ができない」と言うので、平成八年二月から八月まで、七か月分のロイヤルティを免除し、また、同年三月三一日発行のブライダル情報誌「くまもとメモリー」に宣伝を掲載した。

(ウ) 被告井上は、平成九年九月初め、原告代表者に対し、電話で、「おまえの家の前で首を吊って死んでやる。一家心中してやる」などと暴言を吐き、同月一八日到達の書面により、原告に対し、ロイヤルティの支払を停止する旨の通知をしたため、原告は、同年一一月二七日到達の内容証明郵便により、未払代金の支払を催告した上で本件契約を解除した。

被告井上は、本件契約終了後も同種の営業を続けている。

被告ヤマメンについて

(ア) 被告ヤマメンは、制服、作業服等衣料品の製造、販売を主たる事業とする株式会社であり、本社は岡山県にある。

(イ) 被告ヤマメンは、平成六年五月三一日、本件実用新案が登録できなかった場合には被告ヤマメンは競業避止義務を負わないなど「オタギチェーン覚書」により契約条件を一部改定した上で、大阪府、兵庫県を営業エリアとして本件契約を締結した。

契約後の営業開始前研修は、被告ヤマメンが必要ないとのことで実施されなかったが、平成六年七月、原告社員北里雅史を大阪に派遣して三日間の営業研修を行い、平成七年にも二、三度営業社員を大阪に派遣した。

(ウ) 被告ヤマメンは、本件怪文書を信じ込み、平成七年一二月二二日、原告が派遣した杉浦に対し、本件契約を見直すか、止めるか、早期に結論を出すと述べ、平成八年三月一八日、山崎健専務が原告本部を訪れて、本件実用新案についての原告の責任を追及する姿勢を示した。

(エ) 被告ヤマメンは、平成九年八月分の商品代金支払期日である同年九月二五日になっても商品代金を支払わず、また、平成九年九月分として、過去三か月分(六月三九万円、七月三七万円、八月四五万円)の四倍以上、前年同期(九二万円)の倍以上の代金合計二〇四万三九二五円の商品を注文した後、同月三〇日到達の書面により、原告に対し、支払を停止する旨の通知をした。原告は、被告ヤマメンの対応を取込詐欺的と非難し、代金の支払を求めたが、支払がないため、同年一一月二八日到達の内容証明郵便により、未払代金の支払を催告した上で本件契約を解除した。

被告ヤマメンは、本件契約終了後も同種の営業を続けている。

被告フレッシュダンについて

(ア) 被告フレッシュダンは、紳士服の製造、販売を主な業務内容として、岡山市で営業している株式会社であるが、平成六年六月一〇日、福岡県を営業エリアとして本件契約を締結した。

(イ) 原告は、契約後、岡崎の希望により一日だけ研修を行ったほか、同行営業及び営業助成として、平成六年六月後半ころ及びその約一か月後ころに、梅田を派遣した。

(ウ) 岡崎は、平成六年八月ころ、原告に対し、プルシアンの存在を指摘し、その対処を求めた。

原告は、プルシアンに対し、前記⑥のとおり、製造販売停止等を求める訴えを提起するとともに、岡崎に対し、原告代表者の署名前の催告書を含む訴訟資料を送付するなどして、逐一その状況を報告し、さらに、プルシアンとの裁判終了後直ちに、和解調書をファックスで送った。

(エ) 原告代表者は、岡崎を信頼できる原告側の加盟店と認識しており、平成七年一二月一〇日、駒形と後上が本件怪文書を原告本部に持参したときには、岡崎に本件怪文書の作成者を尋ね、平成八年九月二〇日には、営業エリアを福岡県全部からその一部(福岡地区と筑後地区)に変更することにより、加盟料及びロイヤルティを減額し、平成九年二月二五日には、営業エリアとして岡山県を追加し(ただし、これに伴い、ロイヤルティは三万円増額された)、原告と被告加盟店らの関係が悪化した平成九年一一月ころには、平成一〇年一月から半年分のロイヤルティを免除するので被告加盟店らの情報を教えてほしいと要請したりした。

(オ) ところが、岡崎は、平成七年一〇月八日岡山県で開催された西日本の加盟店の会合を設営し、同年一二月一〇日滋賀県での会合の席上岡部が本件怪文書を作成配布したことを承知していたのに、知らないふりをし、同月一六日には後上と電話連絡を取り、平成九年九月には、前年同期の四倍に当たる代金二〇〇万円の商品を、一〇月には、前年同期の三倍に当たる代金二七三万円の商品をそれぞれ原告に発注した上、同月一一月一二日、一方的に七七万円相当の商品を返品し、九月分の代金から差し引くよう求めた。

原告代表者は、同年一二月二六日、小俣からの情報提供により、岡崎が原告の情報を被告加盟店らに流すなどのスパイ行為をしていたことを知り、平成一〇年二月一二日到達の内容証明郵便により、被告フレッシュダンに対し、未払代金の支払を催告した上で本件契約を解除した。

被告佐藤について

(ア) 被告佐藤は、平成七年七月二一日、両親の介護のため、それまで勤めていた会社を退職して実家のある岩手県に戻り、介護との両立も可能な、自宅でできる商売を探していたところ、ビーイング平成七年七月号を見て原告のフランチャイズチェーンに興味を持ち、同年八月八日、原告本部を訪れ、岩手県を営業エリアとして本件契約を締結した。

(イ) 原告は、契約締結後、被告佐藤に対し、三日間の研修を行い、さらに、平成七年九月四日から六日まで、杉浦を岩手に派遣し、初期同行研修を行った。

原告は、ホテルメトロポリタン盛岡との契約交渉を前進させるために杉浦を岩手に派遣し、その結果、被告佐藤は、平成八年四月一日から、被告佐藤が納入できないときには原告が責任を持って納入するという条件で、ローズガーデンナプキンの完全組込契約(これにより、同ホテルが全挙式に使用する年間四〇〇組から五〇〇組、枚数にして四万枚から五万枚のナプキンの大量発注が見込まれる。)を締結することができた。

(ウ) 被告佐藤は、駒形と後上の裁判において、同人らのために陳述書を作成、提出した。

また、被告佐藤は、平成九年一二月八日以降、原告に対し、ファックスで執拗に質問状を送付し、また、山形県加盟店高橋、北海道加盟店有限会社チニカ、福島県加盟店佐藤に対し、電話で、「困ったことがあったら被告レゾンに相談したらよい。そうすれば原告で扱っているものと同じ商品が安く手に入る」などと働きかけ、ファックスで、原告に対する質問状全文、被告カネコら七名の通告書、本件怪文書等を送付した。

原告は、同月一一日には、被告佐藤から未払代金の支払を停止する旨の通知が発送されてきたため、同月二四日到達の内容証明郵便により、未払代金の支払を催告した上で本件契約を解除した。

被告佐藤は、本件契約終了後も同種の営業を続けている。

被告レゾンについて

(ア) 岡部は、茨城県において実兄の乾物の商売を手伝っていたが、ビーイング平成六年一一月号を見て原告を知り、同月五日に新宿NSホールで行われたリクルート主催のイベントに参加し、原告社員から勧誘を受け、平成六年一一月中旬ころ、原告本部を訪れ、原告代表者らから説明を受けるなどして原告のフランチャイズチェーンに加盟することにし、平成六年一二月一日、被告レゾンを設立し、同月二日、岡部自身を契約者として、埼玉県及び千葉県の一部を営業エリアとして本件契約を締結し、同時に、契約当事者を被告レゾンに変更した。

(イ) 原告は、契約後、岡部の妻に対し、三日間の研修を行い、両県は原告の直営エリアであったため、原告取引先の引継ぎを行った。

原告は、原告社員片山を派遣して同行営業を行い、その結果、川越東武ホテルでパッケージプランを取ることができた。

岡部は、本件契約締結後三か月しか経過していない平成七年三月中旬ころ、原告本部を訪れ、原告代表者に対し、本件契約の解消と加盟料の返還を求めたが、これを拒否された。

(ウ) 岡部は、徳島県加盟店株式会社マヤから、本件実用新案と競合する阿部一商事の先願があるとの情報を得て、平成七年一二月二日、東日本地域の加盟店に連絡を取り、埼玉県にある井坂宅で会合を開いた。

会合には、駒形、後上、井坂、千葉県(一部)加盟店飯塚、茨城県加盟店海宝ら一〇名弱の加盟店主が参加し、岡部は、席上、自分が作成した本件怪文書を配布して、原告の出願は登録されないおそれがあると吹聴した。

岡部は、同月一〇日滋賀県の会合にも出席し、本件怪文書を一部訂正した丁B9を配布して、同旨を説いた。

他方で、岡部は、そのころ、自社独自の商品を製造、販売した。

(エ) 岡部は、平成七年一二月一二日、原告代表者らから本件怪文書について追及され、当初は自己の関与を否認していたが、結局自己が作成したことを認め、原告代表者に対し、同様のことを再び行った場合は本件契約を解除されても異議がない旨の誓約書と、本件怪文書を配布したことを謝罪し、このような煽動的な行動は二度としない旨の始末書を提出した。

(オ) 被告レゾンは、平成八年春ころから、一部(一五パーセント位)原告以外の者から商品を仕入れるようになり、原告は、杉浦を派遣するなどの調査の結果、同社が他社商品を扱っていることを知り、平成九年一〇月三〇日、同社に対し、他社商品の取扱いの中止と延滞ロイヤルティの支払を通告した。

被告レゾンは、これに対し、同年一一月五日付けのファックスにより、他社商品の取り扱いは同月一〇日をもって中止する旨回答したにもかかわらず、その後も他社商品を扱っていることが判明するなどしたため、原告は、平成一〇年二月一二日到達の内容証明郵便により、即日本件契約を解除した。

被告レゾンは、本件契約終了後も、同種の営業を続けている。

二  前記認定事実によれば、争点1についてはいずれも消極、争点2のうち、共同不法行為については積極であると認められる。若干補足する。

(一)  第一に、被告らは、共謀の事実を否認するが、平成七年一〇月から一二月にかけての加盟店らの会合、駒形と後上の同年一二月一〇日の原告に対する造反行動及び平成八年六月の訴え提起、平成九年九月から一〇月にかけての被告酒井の原告に対する納品拒否とこれに呼応する被告畠中、同河田、同上稲及び同フレッシュダンの商品の大量発注(さらに、被告フレッシュダンは、大量発生しておきながら、同年一一月、一方的に大量返品した。)、被告らは、同年九月から一二月にかけて、原告に対し、加盟料及び既払ロイヤルティの返還を求めたこと、被告酒井は、平成九年九月以降、原告商品を被告カネコに供給し、被告カネコはこれを加盟店らに供給したこと、平成一〇年四月二六日滋賀県で開かれた現・元加盟店の会合では、被告酒井と同カネコが中心となって現・元加盟店に対する商品の売込みが行われ、共同して原告対策を図ることが確認されたことを総合すれば、被告らは、原告本部をつぶすことを共謀し、これを実行したと推認される。

(二)  第二に、原告が被告加盟店らとの本件契約の締結に当たり虚偽の説明をした事実が認められないことは、前記一②認定のとおりである。この点については、被告井上との関係で売上シュミレーション及び被告佐藤との関係でビーイング平成七年七月号が問題となり得るが、両被告ともこれらの資料の内容を鵜呑みにせず、原告代表者らの開業当初六か月間は経営は苦しいなどの説明を聞いた上で本件契約締結に至ったことに照らせば、これらの資料の一部に誤り又は誇大宣伝的なきらいがあることは否定できないものの、原告に虚偽説明があったとはいえない。

同様に、原価支出予算集計表も誤解を招きやすい資料ではあるが、原告代表者らは、自らの苦労話や経験を下にブライダル事業においては地域密着型の営業活動(取引先にまめに顔を出すこと)が一番重要であり、かつ、ブライダル事業は新規性と地域性から売上高を予測し、一定の売上保証は困難であることを説明したことが認められるから、原告に虚偽説明があったとはいえない。

(三)  第三に、被告加盟店らは、本件契約締結後の原告本部の指導を問題にするが、原告は、必要に応じ随時営業社員を派遣し、電話で様子を問い合わせ、被告加盟店らの不平不満を聞き、相談に応じ、被告ブライダルラーゴビワについては一〇か月分の、同河田については四か月分の、同高須については二〇か月分の(同被告については、そもそも、加盟料及びロイヤルティをそれぞれ半額に減額している)及び同井上については七か月分の各ロイヤルティを免除し、かつ、丸山から被告畠中への契約承継を認め、被告上稲については、島根県及び鳥取県の営業エリアの返上を認めることによりロイヤルティの負担額を減少し、被告フレッシュダンについても、営業エリアを福岡県の全部からその一部へ変更することにより、加盟料及びロイヤルティを減額したことが明らかである。

(四)  第四に、本件実用新案に関する事実経過は、前記一②、⑥、⑪記載のとおりであり、原告代表者らは、加盟店希望者に対し、ブライダルナプキンは実用新案出願中であることを説明し、競合他社(プルシアン、阿部一商事)の存在については告知しなかったが、本件実用新案登録出願の見通し及び効力(旧法一三条の三が適用されること)にかんがみれば、原告代表者らの説明に虚偽はないし、競合他社の存在について告知しなかったことが違法であるとか保護義務に違反するとはいえない。

(五)  最後に、被告ヤマメンら二名は、原告の損益計算書を下に、経常利益からフランチャイズ事業の収支を差し引いた後の経常利益が、平成六年一〇月三一日期において四五四二万円の赤字、平成七年一〇月三一日期において四三〇八万円の赤字となることから、原告の直販事業分、すなわち原告のブライダル事業は儲かるどころか、そもそも利益すら出ない事業であり、原告のフランチャイズシステムは、フランチャイザーである原告のみに利益をもたらすものであったと帰結する。

しかしながら、上記の分析は正確なものとはいえない。なぜなら、直販事業分とフランチャイズ事業分とに分けて損益計算書を作成すればともかく、両者込みの経常利益からフランチャイズ事業の収支を差し引いた数値が直ちに直販事業分の収支となり得ないことは自明(販管費の中には両方の分の費用が混入されている)であり、同被告らの主張が正しいとすれば、原告は、遅くともフランチャイズ事業が挫折した平成一二年四月以降大幅な赤字に苦しんでいるはずであるが、現実には、原告は、平成一二年一〇月三一日期にはこれまでで最高の売上額を達成し、一時の倒産の危機から立ち直っているからである。

そして、ブライダル事業がうまみのある事業であることは、被告加盟店らの大半が本件契約終了後も同種の事業を続けていることが雄弁に物語っているといえよう。

三  損害について

(一)  未払商品代金及びロイヤルティ

① 被告佐藤について

(ア) 平成九年一一月分の商品不足分二〇六〇円について納品があったことを認めるに足りる証拠はない。

よって、被告佐藤の未払商品代金額は、一八六万九九二二円(一八七万一九八二円-二〇六〇円)となる。

(イ) 未払ロイヤルティ 一五万七五〇〇円

(ウ) 合計 二〇二万七四二二円

② 被告佐藤を除く被告加盟店ら

別紙1の各被告に対応する①及び②のとおり 合計一六二〇万九四二四円

③ 以上総計 一八二三万六八四六円

(二)  逸失利益

被告らの共同不法行為がなければ、原告は、本件契約期間満了時までは、被告加盟店らから所定のロイヤルティの支払を受け、かつ、被告加盟店らに商品を販売することにより得られる利益(販売額に対する利益率は、弁論の全趣旨により二五パーセントと認める)を挙げられたと推認されるので、これらは損害と認められる。

① ロイヤルティ分 別紙1の③のとおり 合計二一七八万三〇〇〇円

② 商品販売分 別紙4のとおり、過去一年間の売上実績に基づく一か月分の平均売上額に対する利益率(二五パーセント)×残存契約期間 合計三六三九万四七八九円

(三)  フランチャイズシステム構築費

原告は、被告らの共同不法行為により、原告のフランチャイズシステムが破壊されたとして、上記システムの構築に要した費用等合計五〇一二万一七八八円が損害となると主張するが、被告らの共同不法行為がなければ得られたであろう利益は前項に尽きる(つまり、原告は、それだけの費用を投資した結果として、少なくとも本件契約期間満了時までは同項の利益を得ることができたと推認されるが、それ以上の利益が上げられる訳ではない。)から、これと併せて上記費用を請求することはできないというべきである。上記請求は理由がない。

(四)  慰謝料

本件事案の特質(フランチャイジーが、ロイヤルティの支払等を免れるために、結束してフランチャイザーをつぶすことを企図し、これを実行した事案)、被告らの共同不法行為により現実に原告のフランチャイズシステムが崩壊し、原告は、一時的に倒産の危機に直面したこと及び被告らは本訴においても共同不法行為の事実を否認していることその他本件に顕れた一切の事情にかんがみ、一〇〇〇万円が相当と認める。

四  被告らの弁済等の抗弁について

(一)  被告カネコ及び同ブライダルラーゴビワの商品返品の抗弁

《証拠省略》によれば、原告に対し、被告カネコは商品代金二万八五一八円相当の商品を、同ブライダルラーゴビワは同様三万三六七七円相当の商品をそれぞれ返品したことが認められる。

しかしながら、《証拠省略》によれば、上記返品は同被告らにより一方的になされ、原告との間では返品に関して何らの合意がなされていないことが認められるから、返品自体により返品相当の代金額が当然に減額されることにはならない。同被告らの抗弁は、主張自体失当である。

(二)  被告上稲及び同井上の弁済の抗弁

《証拠省略》によれば、原告に対し、被告上稲は平成九年一〇月三一日、商品代金として四万二〇〇〇円を、同井上は同年一二月二日、商品代金として六万四〇五〇円をそれぞれ支払ったことが認められるから、同被告らの弁済の抗弁は理由がある。

(三)  被告カネコら七名、被告ヤマメンら二名及び被告佐藤ら二名の損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁

同被告らの主張(詐欺、債務不履行及び契約締結上の過失)が理由がないことは前記二のとおりであり、同被告らには主張のような損害賠償請求権がないから、相殺の抗弁はその前提を欠いている。

(四)  被告佐藤ら二名の加盟料返還請求権を自働債権とする相殺の抗弁

原告の同被告らに対する本件契約の解除が正当であり、その効力を有することは明らかであり、同被告らには主張のような加盟料返還請求権がないから、相殺の抗弁はその前提を欠いている。

五  本件各手形金債権との相殺(丙事件における原告の相殺の抗弁)

以上によれば、原告は、被告ら各自に対し、不真正連帯債権として合計八六三〇万八五八五円(一八二三万六八四六円+二一七八万三〇〇〇円+三六三九万四七八九円+一〇〇〇万円-四万二〇〇〇円-六万四〇五〇円)の損害賠償債権を有することが明らかであるから、本件各手形金債権二九三万九二九五円との相殺は、その対当額において効力を生ずる。

したがって、相殺後の原告の被告らに対する損害賠償債権は、八三三六万九二九〇円(八六三〇万八五八五円-二九三万九二九五円)となる。

六  弁護士費用

上記金額の約一割相当額である八三〇万円が相当と認める。

七  よって、原告の請求は、以上を合計した九一六六万九二九〇円及びこれに対するもっとも遅い契約終了の日の翌日である平成一〇年二月二三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、その限度で認容する。

(裁判長裁判官 髙柳輝雄 裁判官 平賀俊明 白石篤史)

<以下省略>

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