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横浜地方裁判所 平成13年(ワ)1783号 判決 2002年10月28日

原告

医療法人社団天道会

被告

松田健一

主文

一  被告は原告に対し、金一一九万八四二〇円及び平成一三年三月四日から支払済みまで年五パーセントの割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告は原告に対し、一九一万四九一五円及び内金四六万七八八〇円については平成一二年五月三〇日から、内金三九万七三八〇円については同年六月三〇日から、内金三六万〇二三〇円については同年七月三〇日から、内金四四万二七五〇円については同年八月三〇日から、内金二四万六六五〇円については同年九月三〇日から、いずれも支払済みまで年五パーセントの割合による金員を支払え。

二  被告は原告に対し、一四万四九五〇円に対する平成一二年一月三〇日から同年二月二五日までの年五パーセントの割合による金員を支払え。

三  被告は原告に対し、一七万四六八〇円に対する平成一二年三月三〇日から同年四月一九日までの年五パーセントの割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  前提事実

後掲証拠及び弁論の全趣旨(争いのない事実を含む)によれば、以下の事実が認められる。

(1)  原告は、医療法人であり、菅谷クリニックと横浜菅谷クリニックの二つの病院を開設している(甲七)。

(2)  平成一一年一一月一六日午前一一時三五分ころ、補助参加人が運転する普通乗用自動車が、被告(昭和四八年三月二〇日生)の運転する原動機付自転車に追突するという交通事故が発生し、被告が受傷した(丙一)。

(3)  被告は、平成一一年一一月一六日から平成一二年八月一九日まで、原告の病院(菅谷クリニック)にて通院により受診した。当時、菅谷クリニックの呼称は、菅谷ひふ科形成外科であり(甲一、五)、平成一二年四月一日から菅谷クリニックに名称を変更した(甲二)。

(4)  平成一二年五月に加害者(補助参加人)側の損害保険会社である興亜火災海上保険株式会社(現商号:日本興亜損害保険株式会社、以下「興亜損保」という。)が原告に対し、面談料五〇〇〇円を支払った(原告代表者)。

(5)  原告は、興亜損保に対し、以下の請求日に以下の金額の被告の医療費の請求をした(( )内は、原告の主張する当該医療費の約定支払日)。

<1> 平成一一年一一月三〇日 一二万六七〇〇円

(同年一二月三〇日)

<2> 同年一二月三一日 一四万四九五〇円

(平成一二年一月三〇日)

<3> 平成一二年一月三一日 一四万四八三〇円

(同年三月一日)

<4> 同年二月二九日 一七万四六八〇円

(同年三月三〇日)

<5> 同年三月三一日 二二万一五〇〇円

(同年四月三〇日)

<6> 同年四月三〇日 四六万七八八〇円

(同年五月三〇日)

<7> 同年五月三一日 三九万七三八〇円

(同年六月三〇日)

<8> 同年六月三〇日 三六万〇二三〇円

(同年七月三〇日)

<9> 同年七月三一日 四四万二七七五円

(同年八月三〇日)

<10> 同年八月三一日 二四万六六五〇円

(同年九月三〇日)

<11> 合計 二七二万七五七五円

(6)  興亜損保は原告に対し、被告の医療費として以下のとおりの支払をした。

<1> 平成一一年一二月三〇日 一二万六七〇〇円

<2> 平成一二年二月二五日 一四万四九五〇円

<3> 平成一二年二月二五日 一四万四八三〇円

<4> 平成一二年四月一九日 一七万四六八〇円

<5> 平成一二年四月一九日 二二万一五〇〇円

<6> 合計 八一万二六六〇円

(7)  原告は被告に対し、平成一三年三月二日付けの内容証明郵便(甲三)にて、上記(5)の二七二万七五七五円と上記(6)の八一万二六六〇円との差額一九一万四九一五円の支払を催告した。

(8)  原告は被告に対し、本件訴訟において、以下の請求をしている。

<1> 上記(5)の<2>の医療費(一四万四九五〇円)に対する約定支払日(平成一二年一月三〇日)から入金日(同年二月二五日)までの年五パーセントの割合による遅延損害金

<2> 上記(5)の<4>の医療費(一七万四六八〇円)に対する約定支払日(平成一二年三月三〇日)から入金日(同年四月一九日)までの年五パーセントの割合による遅延損害金

<3> 上記(5)の<6>ないし<10>の医療費(一九一万四九一五円)及び<6>の医療費(四六万七八八〇円)については約定支払日(平成一二年五月三〇日)から、<7>の医療費(三九万七三八〇円)については約定支払日(同年六月三〇日)から、<8>の医療費(三六万〇二三〇円)については約定支払日(同年七月三〇日)から、<9>の医療費(四四万二七五〇円)については約定支払日(同年八月三〇日)から、<10>の医療費(二四万六六五〇円)については約定支払日(同年九月三〇日)から、いずれも支払済みまで年五パーセントの割合による遅延損害金

二  原告の主張

(1)  被告は原告に対し、初診時に書いた誓約書(甲一、以下「本件誓約書」という。)において、被告が受けた医療費を責任をもって支払うことを誓約するとともに、交通事故の医療費は自由診療のため一般診療に比べて二・五倍の請求であることの説明も受け、これに同意している。

なお、二・五倍となっているのは、通常の患者の場合、受診当日に支払いがなされるのに、交通事故の医療費は悪質な保険会社のため医療費の支払が何か月も遅れ、手続も煩瑣であり、事業税・消費税免除の対象にならないためである。また、欧米に比べて九分の一から一三分の一と低い日本の医療費を何とか正常にしようとするためである。神奈川県では二・五倍、兵庫県では二・五五倍、東京都では三倍の請求をする医療機関がほとんどであり、問題なく医療費が支払われている。

(2)  原告は被告に対し、当初、全治二週間を要する見込みと診断したが、あくまでも見込み(目安)であり、当初から確定することはできない。交通事故の治療においては、初診時の警察に提出する診断書は特に重症でない限り、全治二週間と書くのが通例である。

被告は原告に対し、頸部痛、腰痛が持続し、肩が凝るといっては、治療の継続を求めたものであり、その求めに応じて、原告は誠意ある治療をしてきた。

(3)  平成一二年三月一一日、被告は原告に対し、左下腿の痛みを訴えた。それに対し、原告は、全身打撲をした時点(平成一一年一一月一六日)から四か月も経過しているため、打撲の痛みではなく交通事故の後遺症としての末梢神経炎を疑い、被告に対し、「末梢神経炎を疑うので神経の機能を良くするビタミンB一二と痛みを取る薬であるフルカムを内服薬として、及び外用薬としては消炎鎮痛作用のあるエラダームを差し上げますから、お家でも塗っておいて下さい。」と説明のうえ、投薬した。被告に渡した薬の袋(甲一二は再現したもの)にも、その旨の記載がある。

(4)  平成一二年四月一日、被告は原告に対し、腰痛と左下腿の痛みを訴えた。それに対し、原告は、全身打撲をした時点(平成一一年一一月一六日)から五か月近くも経過しているため、打撲の痛みではなく内臓の異常から来る腰痛やリューマチ等を疑い、被告に対し、「内臓の異常から来る腰痛やリューマチ等を疑うので血液検査をします。」と説明のうえ、血液検査をした。その結果、GPTの値が高かったので(甲一三)、平成一二年四月八日の再診日に急性肝炎の病名を付け、被告に対し、「肝臓が悪くなっているので急性肝炎の薬である小柴胡湯とグリチロンを追加して出しますので飲んで下さい。」と説明し、渡した薬の袋(甲一四は再現したもの)にも、その旨の記載がある。

平成一二年四月一五日、肝炎の原因(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎のように感染性のものか、交通事故の肝臓打撲打滅によるものか)について検査を行い、その結果(甲一五)、感染性の肝炎は否定され、交通事故に起因するものが疑われた。同日の検査の結果(甲一六)、GPTの上昇の程度も軽度で、改善がみられたので、その後しばらくして肝炎の薬の投与を中止した。

(5)  被告から原告に対し、頸部痛、背部痛、両腕の痛み、腰痛、左下腿の痛み、その他全身の痛みを訴えたため、整体マッサージにより、骨、関節の歪みを矯正し、ツボを刺激して血行を良くして、自己治癒能力を高めて回復を早める治療を行った。本件誓約書で、自由診療契約に基づく単価が二・五倍であることの説明は被告になされており、被告も、それに同意している。

また、受付やマッサージ室の壁には交通事故患者のマッサージは一回一万円であることが明示されている(甲一九)。

無資格のエステ等のマッサージは二万円から三万五〇〇〇円もするのであり、原告の一万円のマッサージは、決して高いわけではない。

三  被告及び補助参加人の主張

(1)  被告は、あくまでも、本件誓約書において、交通事故による受傷に対する適正な医療費の支払を約束したものである。

なお、原告(事務担当者)は交通事故で受傷した被告に対し、本件誓約書に署名捺印しなければ治療はできないと治療拒否をちらつかせ、本件誓約書の内容を説明することなく、被告に署名捺印させたものであり、一点単価二五円との説明も受けていない。平成一三年五月二五日、原告の事務員(長沢)から、「病院の規定によって、利息と手数料で二・五倍になる。」と言われたのみである。

(2)  医療行為は患者の意思に基づく行為であり、インフォームド・コンセント(説明と同意)に基づく治療行為があって、はじめて患者が受益者の地位に立つものである。

原告は被告に対し、病状とその原因、治療行為の内容、検査目的等を説明することなく、専断的に治療行為(過剰治療)を行ったに等しい。

被告から原告に対し、頸部痛、腰痛が持続し、肩が凝るといって、治療の継続を求めたことはあるが、交通事故による受傷の治療を求めたものである。末梢神経炎、急性肝炎は交通事故による傷病とはいえない。

(3)  被告は、原告(担当医)から、末梢神経炎であると告知を受けたことがない。副院長から「調子が良くなるようにビタミン剤と鎮痛剤を出しますので服用するように。塗り薬も出しますので患部に塗って下さい。」と言われたのみである。

(4)  被告は、原告から、平成一一年一一月と平成一二年四月に、事前に検査目的を説明せずに血液検査をされ、肝臓の数値が高いから薬を出す旨言われたことはあるが、急性肝炎であるとの告知を受けたことがない。被告に自覚症状がなく、初診時の傷病名(頭部・全身打撲、頸椎・腰椎捻挫)からは、外来通院の被告に対して血液検査をする必要性は認められない。

平成一二年四月の血液検査(三回行っている)の理由が診断書(乙三)には「内服薬服用による肝機能障害改善の為」とあり、薬剤服用の指導管理に手落ちがあったとの疑念がある。

(5)  マッサージ料金一二六万円について

被告は、原告(担当医)からチラシ(乙一)を渡され、腰部に注射されたあと、必ずマッサージを受けていた。

チラシ(乙一)には、マッサージ料金四〇〇〇円との記載があるが、実際には原告から二・五倍の一万円を請求された。健康保健の基準(一三一回の施術で一五万七二〇〇円、)あるいは労災保険の基準(一三一回の施術で三二万八八一〇円、特殊マッサージの場合三九万四五七二円)からすると暴利行為である。甲一九のチラシは本件訴訟後に作成されたものである。

第三当裁判所の判断

一  本件誓約書(甲一)の効力について

(1)  証拠(原告代表者、被告、甲一)によれば、平成一一年一一月一六日、被告は、原告での初診時、以下の記載のある本件誓約書(甲一)の誓約者欄に署名押印し、原告に提出していることが認められる。

<1> 交通事故により患者の受けた損害に対する医療費の請求については、医療機関から直接保険会社に請求する。

<2> 医療機関が請求後、三〇日以上経過しても保険会社からの支払がない場合は、誓約者が責任をもって医療費を支払う。

<3> 誓約者は、自由診療契約に基づく医療費の一点単価が二五円であることに同意する。

(2)  また、証拠(被告)によれば、被告は意識が不明瞭な状態で救急車等によって原告の病院に運ばれたわけではなく、被告本人の意思により原告の病院を選択して、通院したことが認められる。

(3)  上記(1)、(2)より、被告は、本件誓約書の内容を理解した上で、原告から診療行為を受けたものと解さざるを得ないものといえる。

もっとも、証拠(原告代表者)によれば、原告は、交通事故による医療費については、保険会社による支払が遅滞したり、医療費請求の手続も煩瑣であり、患者とのトラブルも予測されることから、受診に際して本件誓約書(甲一)を患者に提出させていることが認められる。

とすると、本件誓約書(甲一)は、あくまでも、交通事故による受傷に対する適正な治療についてのみ拘束力を持つものといえる。

(4)  なお、本件誓約書(甲一)には、原告が保険会社に医療費を請求して三〇日経過後、被告の医療費支払日が到来するかのように記載されているが、原告が保険会社にいつ医療費の請求をしたのかを被告が把握できない以上、原告から被告に対し、具体的な医療費の支払請求が来て、初めて、被告の医療費支払日が到来するものと解すべきである。

証拠(甲三)によれば、原告は被告に対し、平成一三年三月二日付けの内容証明郵便(横浜泉郵便局扱い)にて、医療費二七二万七五七五円と興亜損保が支払った八一万二六六〇円との差額一九一万四九一五円の支払を催告したことが認められ、被告の住所地が横浜市港南区であることから同月三日には同郵便が被告に到達したものと推認できることから、被告の医療費支払債務は同月四日から遅滞に陥ったものといえる。

すなわち、原告の請求のうち、平成一三年三月三日以前の遅延損害金請求は理由がないものといえる。

二  原告の行った治療行為について

(1)  頸部痛、腰痛に対する治療について

頸部痛、腰痛自体、交通事故による頸椎捻挫、腰椎捻挫からくるものであり、治療行為自体、不適正な点は見あたらない。マッサージについては、整体の基本であり、かつ、その性格上、被告の同意なくして行えない治療行為である以上、治療自体は、適正なものといえる。もっともマッサージの費用については、以下の理由から、通常費用の二・五倍(二五分一万円、一〇分(クイックマッサージ)三七五〇円)で計算することは相当でないといえる。

<1> 被告が原告から受取った整体に関するチラシ(乙一)には、マッサージの費用が、二五分四〇〇〇円、一〇分(クイックマッサージ)一五〇〇円と明記されている。

<2> 原告は、診療報酬明細書(甲二)において、マッサージの費用については、点数を決めた上で一点単価二五円で計算しているのではなく、一回いくらで何回行われたかで費用の計算をしている。

<3> 原告の病院に貼られているとされる整体料金案内書(甲一九)には、交通事故の患者へのマッサージは一回一万円となる旨明示されているものの、同案内書の作成各義が菅谷ひふ科形成外科ではなく、菅谷クリニックとなっていることから、平成一二年四月一日以降作成されたものと認められる。

(2)  末梢神経炎の治療及び急性肝炎の治療について

<1> 原告代表者本人尋問の結果によれば、平成一二年三月一一日、被告は原告に対し、左下腿の痛みを訴えたので、原告は、全身打撲をした時点(平成一一年一一月一六日)から四か月も経過しているため、打撲の痛みではなく交通事故の後遺症としての末梢神経炎を疑い、被告に対し、神経の機能を良くするビタミンB12と痛みを取る薬であるフルカムを内服薬として、消炎鎮痛作用のあるエラダームを外用薬として、投与したことが認められ、末梢神経炎の治療は交通事故による治療といえる。

<2> 急性肝炎の治療について

原告代表者本人尋問の結果によれば、平成一二年四月一日、被告は原告に対し、腰痛と左下腿の痛みを訴えたので、原告は、全身打撲をした時点(平成一一年一一月一六日)から五か月近くも経過しているため、打撲の痛みではなく内臓の異常から来る腰痛やリューマチ等を疑い、被告に対し、血液検査をしたところ、GPTの値が高かったので(甲一三)、平成一二年四月八日の再診日に急性肝炎の病名を付け、被告に対し、急性肝炎の薬である小柴胡湯とグリチロンを渡したこと、同月一五日、肝炎の原因(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎のように感染性のものか、交通事故の肝臓打撲打滅によるものか)について検査を行い、その結果(甲一五)、感染性の肝炎は否定され、交通事故に起因するものが疑われたこと、同日の検査の結果(甲一六)、GPTの上昇の程度も軽度で、改善がみられたので、その後しばらくして肝炎の薬の投与を中止したことが認められ、急性肝炎の治療は交通事故とは全く無関係の治療とまでは言い切れない。

三  被告が負担すべき医療費について

(1)  平成一二年三月分までの被告の医療費は、興亜損保が、支払済みである。

(2)  上記一、二より、平成一二年四月分以降の医療費のうち、マッサージの費用については、二五分四〇〇〇円、一〇分(クイックマッサージ)一五〇〇円で計算すべきものといえる。

証拠(甲二)によれば、原告が被告に対して行った治療のうちマッサージは以下のとおりである。

平成一二年

四月分

二五分一七回

五月分

二五分一七回

六月分

二五分一九回

七月分

二五分二〇回

八月分

二五分一三回

合計

二五分八六回

(3)  当裁判所は、マッサージ以外の医療費については、平成一二年四月分以降については、以下の理由から一点単価二五円で計算するのは、相当でなく、事案の性格上、健康保険法の診療報酬体系であるところの一点単価一〇円の二倍である一点単価二〇円で計算するのが信義則上、相当と考える。

<1> 末梢神経炎及び急性肝炎の治療が、交通事故に帰因するものであっても、また、平成一二年四月以降も頸椎腰椎捻挫の治療が行われていたとしても、既に、交通事故の日(平成一一年一一月一六日)から四か月以上経過しており、入院を要するほどの重傷でもなく、当初から通院により治療を続けていたのであるから、健康保健による診療に切り替えることも検討すべきであったといえる。

<2> 平成一二年四月以降の治療においては、緊急性を要する事情は窺えず、治療内容が特に高度あるいは困難な事情も窺えず、一点単価を二五円とすべき合理的事情がない。

<3> インフォームド・コンセント(説明と同意)は、医療費の額についてもいえることである。原告は、本件誓約書(甲一)まで作成しているところから、医者としての経験上、交通事故の医療費については、損害保険会社からの支払が不十分なために患者との間でトラブルが起きることは容易に予測できたものといえる。

原告は、遅くとも、治療が長期化した平成一二年四月分以降については、おおまかな医療費の額について被告に十分に説明すべきであったものといえる。

<4> 本件誓約書(甲一)は、あくまでも、交通事故による受傷に対する適正な治療についてのみ拘束力を持つものであって、入院を要するような重傷でもなく、交通事故の日(平成一一年一一月一六日)から四か月以上も経過した治療についてまで、形式的に、その拘束力を認めるのは相当でない。

(4)  結局、診療報酬明細書(甲二)に基づき、平成一二年四月以降の医療費を再計算すると以下のとおり一二〇万三四二〇円となる。

<1> 平成一二年 四月分

診察料

一二八三点

二万五六六〇円

投薬料

二一六三点

四万三二六〇円

処置料

二〇九一点

四万一八二〇円

手術料

三二二四点

六万四四八〇円

検査料

二一〇六点

四万二一二〇円

画像診断料

六二八点

一万二五六〇円

小計

一一四九五点

二二万九九〇〇円

その他(マッサージ料)

六万八〇〇〇円

診断書料

一通

五二五〇円

明細書料

一通

五二五〇円

合計

三〇万八四〇〇円

<2> 平成一二年 五月分

診察料

一二八三点

二万五六六〇円

投薬料

一九〇一点

三万八〇二〇円

処置料

二〇九一点

四万一八二〇円

手術料

三四〇〇点

六万八〇〇〇円

小計

八六七五点

一七万三五〇〇円

マッサージ料

六万八〇〇〇円

その他(面談料)

五〇〇〇円

診断書料

一通

五二五〇円

明細書料

一通

五二五〇円

合計

二五万七〇〇〇円

<3> 平成一二年 六月分

診察料

一四二一点

二万八四二〇円

投薬料

一一八五点

二万三七〇〇円

処置料

二一七一点

四万三四二〇円

手術料

一六一二点

三万二二四〇円

小計

六三八九点

一二万七七八〇円

その他(マッサージ料)

七万六〇〇〇円

診断書料

一通

五二五〇円

明細書料

一通

五二五〇円

合計

二一万四二八〇円

<4> 平成一二年 七月分

診察料

一四九五点

二万九九〇〇円

投薬料

一四七二点

二万九四四〇円

処置料

二二九四点

四万五八八〇円

手術料

四〇三〇点

八万〇六〇〇円

小計

九二九一点

一八万五八二〇円

その他(マッサージ料)

八万〇〇〇〇円

診断書料

一通

五二五〇円

明細書料

一通

五二五〇円

合計

二七万六三二〇円

<5> 平成一二年 八月分

診察料

九七七点

一万九五四〇円

投薬料

八六四点

一万七二八〇円

処置料

一五九九点

三万一九八〇円

手術料

八〇六点

一万六一二〇円

小計

四二四六点

八万四九二〇円

その他(マッサージ料)

五万二〇〇〇円

診断書料

一通

五二五〇円

明細書料

一通

五二五〇円

合計

一四万七四二〇円

<6> <1>ないし<5>の合計

点数合計

四〇〇九六点

八〇万一九二〇円

その他合計

三四万九〇〇〇円

診断書料

二万六二五〇円

明細書料

二万六二五〇円

総合計

一二〇万三四二〇円

四  上記三(4)<2>のその他(面談料)五〇〇〇円については、第二(事案の概要)一(前提事実)(4)で述べたとおり興亜損保から原告に支払済みであるため、未払の医療費は一一九万八四二〇円となる。

なお、平成一一年一一月に被告が原告に支払った診断書料五〇〇〇円については、証拠(原告代表者)によれば警察に提出する診断書の料金であって、本件訴訟で原告が請求している医療費とは重複しないことが認められる。

五  よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 小林元二)

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