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横浜地方裁判所 平成13年(行ウ)32号 判決 2002年12月04日

主文

1  原告の被告横浜地方法務局川崎支局登記官に対する訴えを却下する。

2  原告の被告国に対する請求を棄却する。

3  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

1  請求の趣旨

(1)  被告横浜地方法務局川崎支局登記官が原告に対し平成12年8月10日付けでした登録免許税還付通知拒絶処分を取り消す。

(2)  被告国は,原告に対し,36万6100円を支払え。

2  被告横浜地方法務局川崎支局登記官の答弁

原告の請求を棄却する。

3  被告国の答弁

(1)  本案前の答弁

原告の被告国に対する訴えを却下する。

(2)  本案の答弁

原告の請求を棄却する。

第2事案の概要

原告,別紙選定者目録記載の選定者A及び同B(以下「原告ら」という。)は,土地・建物を購入し,その所有権移転登記に際して登録免許税を納付したところ,その後,建物の固定資産税の課税標準額が修正されたので,上記登録免許税が過誤納になるとして,横浜地方法務局川崎支局登記官(以下「被告登記官」という。)に対して,登録免許税法(以下「法」という。)31条2項に基づいて,所轄税務署長に還付通知すべき旨の請求をしたところ,被告登記官がこれを拒否する旨の通知をした。原告らはこれを不服として,被告登記官に対して上記通知の取消しを,被告国に過誤納金の返還を求めた。これが本件の事案の概要である。

第3基礎となる事実

(証拠の記載のない事実は争いがない。証拠の記載のある事実は主に当該証拠により直接認められる事実である。認定に用いた書証の成立は弁論の全趣旨により認められる。)

1  本件売買

原告らは,平成12年7月19日,訴外中原証券株式会社から,川崎市α7番6の宅地(以下「本件土地」という。)及び同土地上の建物(以下「本件建物」という。)を買った(以下「本件売買」という)。

本件土地及び本件建物は原告らの共有であるが,その持分は原告(後藤経営管理有限会社)が10分の5,選定者Aが10分の3,選定者Bが10分の2である。(甲2から4)

2  本件登録免許税と本件納付

原告らは,平成12年7月31日,本件土地及び本件建物について,本件売買を原因とする所有権移転登記(以下「本件登記」という。)をしたが,その際,以下の算式に従って,登録免許税295万1100円(以下「本件登録免許税」という。)を納付(以下「本件納付」という。)した。

土地  9349万9853円×1/3=3116万6617円

建物  2785万7323円

合計  5902万3940円

課税価格(法15条による端数処理)  5902万3000円

登録免許税額  295万1100円

(本件登記及び本件納付については争いがなく,その余の事実については甲3)

3  還付請求

原告らは,平成12年8月7日,横浜地方法務局川崎支局に対し,本件登録免許税は本来190万2800円であり,本件納付税額との差額104万8300円が還付されるべきであるとの請求(以下「本件還付請求」という。)をした(上記の請求がされたことは争いがなく,内容は甲5)。

4  本件拒絶通知

被告登記官は,本件還付請求を法31条2項に基づき登記官が所轄税務署長へ還付通知(以下「税務署長への還付通知」という。)をすべき旨の請求と理解した上,平成12年8月10日付けで税務署長への還付通知をすべき理由がない旨の通知をした(以下「本件拒絶通知」という。甲6)。

5  不服申立て

原告らは,本件拒絶通知を不服として,平成12年9月14日付けで東京国税不服審判長に対して審査請求をしたが,平成13年4月26日付けで審査請求は棄却された(甲7,8)。

6  本件建物の固定資産税額の修正

川崎市川崎区長は,原告らに対して平成13年5月11日付けで,平成12年7月31日に生じた理由により本件建物について平成13年度の固定資産税の課税標準額を,2785万7323円から2053万5141円に修正する旨(以下「本件修正」という。)通知した(本件修正通知があったことは争いがなく,内容は甲9)。

第4主な争点

1  本件拒絶通知の処分性の有無

2  本件納付における過誤納の有無

第5主な争点に対する当事者の主張

1  本件拒絶通知の処分性の有無

(被告国の主張)

法31条2項は,登記を受けて登録免許税を納付した者(以下「登録免許税納付者」という。)は同条1項の通知(税務署長への還付通知)を登記官に請求ができる旨規定しているにすぎないが,登記機関から税務署長に上記の通知がされた場合には,その通知を受けた税務署長は,国税通則法56条に基づき遅滞なく過誤納金の還付をしなければならない。そうである以上,法31条1項は,還付請求権の行使に関し登記機関に対する税務署長への還付通知の請求という手続きによるべきことを定め,登録免許税納付者に対し,その手続上の権利を認めたものと解すべきであり,また,上記権利が行使された場合,同条2項は,登記機関に対しこれを放置することを容認しているとは解されないから,同項は,登記機関に還付通知請求に対する応答義務があることを併せて規定しているというべきである。

そうとすれば,税務署長への還付通知の請求に対し登記機関がなす還付通知できない旨の通知(以下「拒絶通知」という。)は,単に還付の事務を円滑ならしめるための認識の表示にすぎないものではなく,手続上の権利の行使を否定する行政処分であって,これにより国民は還付通知請求という手続によって還付を受けることができなくなるから,この点において,上記拒絶通知は不利益処分であり,公定力を有する行政処分というべきである。

また登記実務においても,登録免許税納付者による法31条2項に基づく請求に対し,登記官が過誤納付に該当せず,税務署長への還付通知を要しないと認めるときは,その旨を請求者に通知する取扱いがされており,当該拒絶通知に処分性があることが前提とされている。

したがって,本件拒絶通知が取り消されていない段階においては,原告らの還付請求の主張は許されないので,被告国に対する還付請求の訴えは却下されるべきである。

(原告の主張)

争う。

2  本件納付における過誤納の有無

(原告らの主張)

川崎市の固定資産の価格が市の現況調査により修正された(本件修正)ところ,本件修正は,登録免許税法施行令(以下「施行令」という。)附則4項の「特別の事情」に該当する。そして,登録免許税の課税標準は,基本的に市の固定資産課税価格に委ねられるところ,本件では登記官が特別の事情がある場合の認定をしていない以上,本件建物についての登録免許税の課税標準は,本件修正後の2053万5141円とすべきである。そうすると,本件登録免許税における課税標準は土地価格3116万6617円との合計5170万1000円,登録免許税額は258万5000円となる。

したがって,原告らは,本件登録免許税として258万5000円を納付すれば足りたのであり,本件納付との差額36万6100円は支払う必要がなかった。

また,固定資産税の課税価格に依拠して1月1日付けの価格をもって不動産の価格を評価する課税方法は,本件売買によって不動産を取得した原告らが課税額に異議を述べることを不可能とするものであり,不当である。

よって,原告らは,本件拒絶通知の取消しと被告国に対し,36万6100円の支払いを求める。なお,本訴においては,第3「基礎となる事実」3の内容の主張はせずに,専ら,上記36万6100円の過誤納の返還を求める。

(被告らの主張)

(1) 登録免許税の課税標準たる不動産の価額については,当該登記の時における不動産の価額によるとされ(法10条1項),この場合における不動産の価額とは,当分の間,当該登記の申請日の属する年の前年12月31日現在又は当該申請の属する年の1月1日現在において地方税法341条9号に掲げる固定資産課税台帳に登録された当該不動産の価格(以下「台帳登録価格」という。)を基礎として政令で定める価額によることができるとされる(法附則7条)。

そして,施行令附則3項は,法附則7条に規定する政令で定める価額は,台帳登録価格のある不動産については,当該不動産の登記の申請の日の属する日の区分に応じ,施行令附則3項各号に掲げる金額に相当する価額とするとしている。

(2) 本件登記申請にかかる不動産は,いずれも台帳登録価格のある不動産であるから,施行令附則3項の定める価額が不動産の価額ということになる。そして,本件登記申請日は平成12年7月31日であるので,施行令附則3項2号により申請の日が4月1日から12月31日の期間内にあるから,その年の1月1日現在における台帳登録価格に100分の100を乗じて計算した金額が不動産の価額ということになり,原告らの登記申請書に記載された課税価額に誤りはなく,本件登録免許税の算定は適正になされている。

(3)ア 原告らは,本件修正をもって,施行令附則4項の「特別の事情」に該当すると主張するが,同附則は,不動産の登記で不動産の価額を課税標準とするものにつき,当該不動産について増築,改築,損壊,地目の変換その他これらに類する特別の事情があるため同附則3項の価額を課税標準の額とすることを適当でないと認めるときは,同附則3項の規定にかかわらず,その事情を考慮して登記官が認定した価額とする旨定めており,それを受けて,実務上の取扱いは,登記簿上の土地の地目・地積,建物の種類・構造・床面積等の不動産の表示が課税台帳の不動産の表示と異なる場合,その不動産の現況が特に課税台帳の表示と異なっていることが明白に認められない限り,課税台帳の評価額によるものとするとしている(乙1)。

したがって,施行令附則4項の「特別の事情」とは同附則4項に列挙されているような事情により質的又は量的な形の変化が生じたため,例外的な取扱いを認めたものであると解されるから,本件修正が「特別の事情」に当たらないことは明らかである。

イ また,原告らは本件建物の維持管理が通常以下であることをもって「特別の事情」に当たるとも解しているようであるが,このような事情も「特別の事情」に該当しないことは明らかである。

ウ さらに,原告らは,登録免許税の課税標準は,基本的には市の固定資産税課税価格によるべきであるから,川崎市による本件修正後の価格をもって課税標準とすべきである旨主張する。

しかし,本件登録免許税の算定基礎となるべき台帳登録価格は平成12年度の価格であるところ,本件修正の通知は平成13年度以降についての台帳登録価格の修正の通知であることから,原告らの主張は失当である。

第6争点に対する判断

(事実を認定する場合には,認定事実の前後に証拠を記載して,その旨を示す。一度説示した事実は,原則としてその旨を断らない。認定に用いた書証の成立は弁論の全趣旨により認められる。)

1  本件拒絶通知の性格

(1)  登録免許税は,申告や行政庁の処分を要しないで,登記と同時にその納税義務と共に納付すべき税額が確定する国税である(国税通則法15条2項12号,3項5号)から,納税義務がないのに納付された登録免許税は納付の時点で直ちに過誤納金となり,税務署長はこれを返還しなければならず(同法56条1項),登記機関も登録免許税納付者の請求がなくても,その事実を税務署長に通知(税務署長への還付通知)しなければならない(法31条1項)とされており,過誤納金の有無が公権力で確定される構造とはなっていない。

法31条2項は,「登記…を受けた者は,…登録免許税の過誤納があるときは,当該登記…を受けた日…から1年を経過する日までに,政令で定めるところにより,その旨を登記機関に申し出て,前項の通知をすべき旨の請求をすることができる。」と規定されているところ,この請求は,登記機関に対し,税務署長に過誤納の事実を通知すべき旨の請求であって,過誤納金を返還すべき旨の請求ではない。同条の規定ぶりからみて,もとより登記官はこのような請求に対して,少なくとも応答する事実上の責務があると解されるところ,そのことと,応答が行政処分かどうかとは連動する事柄ではない。まず,登記官から承諾の応答があって,税務署長への還付通知がされれば,登録免許税納付者にとっては,望む結果を得たことになり,何ら問題はない。反対に,拒絶通知があった場合には,その拒絶通知の是非自体を必ず訴訟で争わせることとするのも立法政策としては合理性があると思われるが,前段の検討のとおり,現行制度はその拒絶通知に公定力を与えてこれを訴訟で争わせるといった規定を設けていない。現行の規定からすれば,上記の拒絶通知は,税務署長への還付通知を登記官が拒否するとの内容しか持たないのであって,それが,過誤納金返還請求権の不存在を確定する効力を有するとまで解することには無理がある。そうすると,上記の拒絶通知があっても,登録免許税納付者らには被告国を相手に過誤納金返還請求をする手段が残されており,何ら登録免許税納付者らの権利の保護に欠けるところはないと解するのが相当である。ちなみに,応答がされない場合においても,そのことは,事実上の責務を怠るものではあるが,直ちに法的不利益を与えるものではないと解される。

(2)  本件拒絶通知は,登録免許税納付者である原告らがした税務署長への還付通知の請求に対して拒否するというものであり,(1)のことがそのままあてはまる。したがって,本件拒絶通知は行政処分性を有しないといわざるを得ない。なお,原告らが被告登記官に対して税務署長への還付通知の請求をしたかどうか定かではない面があるものの,被告登記官においては,この請求(基礎となる事実3の本件還付請求)を税務署長への還付通知の請求と解した上,その拒絶の通知(本件拒絶通知)をしているところ,この扱いについては原告らは何ら異議を述べていない。したがって,本件拒絶通知は,税務署長への還付通知の請求を被告登記官に求めたところ,それが拒絶されたものとして,判断を進めてよいと解される。

(3)  被告国は,本件拒絶通知(拒否の回答)が,手続上の権利の行使を否定する行政処分であって,これにより国民は還付通知請求という手続によって還付を受けることができなくなるから,この点において,本件拒絶通知は不利益処分であり,公定力を有する行政処分というべきであると主張する。

しかしながら,本件拒絶通知によっても登録免許税の過誤納金返還請求権の不存在を確定する効力が認められず,本件拒絶通知に不服を持つ者が国を相手に過誤納金返還請求することもできると解されるので,本件拒絶通知は排他的な不利益を請求人にもたらすものではない。

(4)  以上のとおりであり,本件拒絶通知は,取消訴訟の対象となる行政処分には当たらないというべきであるから,被告登記官に対する本件拒絶通知の取消しを求める訴えは不適法である。

2  本件登録免許税額と過誤納の有無

(1)  本件建物の課税標準

本件土地の価額については当事者間に争いがないので,以下において,本件建物の価額について検討する。

登録免許税の課税標準及び税率は,法に別段の定めがある場合を除くほか,登記等の区分に応じ,法の別表第1の課税標準欄に掲げる金額又は数量及び同表の税率欄に掲げる割合によるとされている(法9条)。本件登記は,所有権移転の登記であり,別表第1「一(二)ニ」の登記に該当し,課税標準は不動産の価額であり,税率は1000分の50となる。

課税標準たる不動産の価額は,当該登記の時における不動産の価額による(法10条1項)。そして,法の別表第1の「一」号に掲げる不動産の登記の場合における同法10条1項の課税標準たる不動産の価額は,当分の間,当該登記の申請の日の属する年の前年の12月31日現在又は当該申請の日の属する年の1月1日現在の台帳登録価格を基礎として政令で定める価額によることができるとされる(法附則7条)。

この法附則7条に規定する政令で定める価額は,台帳登録価格のある不動産については,施行令附則3項各号に掲げる当該不動産の登記の申請の日の属する日の区分に応じ当該各号に掲げる金額に相当する価額とするとされている(同項)。そして,本件建物は,台帳登録価格のある不動産であり(甲9),本件登記申請は,平成12年7月31日になされており,施行令附則3項2号に該当するので,その年の1月1日現在における台帳登録価格に100分の100を乗じて計算した金額が,本件建物についての課税標準たる不動産の価額になる。

(2)  本件修正

本件建物の台帳登録価格が2785万7323円から2053万5141円に修正されたところ,原告らは,本件納付は専らこの点において過誤納になっている旨主張する。

本件修正は,本件建物の価格を2785万7323円から2053万5141円に修正して固定資産課税台帳に登録するというものであるものの,平成13年5月11日になされ,平成13年度分固定資産税・都市計画税を同年度2期分から修正するというものであり,平成12年度分に遡って修正するというものではない(甲9)。このように価格の修正がされた場合でも,修正がされたことで,初めてその価格が台帳登録価格となるのであり,修正原因発生時に遡って台帳登録価格が修正されるものではない。ちなみに,本件修正の通知書の「理由」の「その他」の欄にチェックが入っており,日付けとして「平成12年7月31日」とされている。これは,同日に新築,増改築,床面積訂正以外のその他の理由によって本件建物の台帳登録価格を修正するということであるが,上記に述べたとおり,同日に遡って台帳登録価格が修正されるわけではなく,現実に修正された日(平成13年5月11日)に初めて同価格が修正されたものであり,不動産の価格は,この事実に従って判断されるべきである。そうすると,本件修正によって,本件登録免許税額が遡って変更されることにはならない。

(3)  「特別の事情」の該当性の有無

また,原告らは,本件修正をもって,施行令附則4項の「特別の事情」に該当すると主張する。

施行令附則4項は,法別表第1の第1号に掲げる登記で不動産の価額を課税標準とするものについて登録免許税を課税する場合において,登記官が当該登記の目的となる不動産について増築,改築,損壊,地目の変換その他これらに類する特別の事情があるため,施行令附則3項の規定により計算した金額に相当する価額を課税標準の額とすることを適当でないと認めるときは,同項の規定にかかわらず,法附則7条に規定する政令で定める価額は,同項の規定により計算した金額を基礎とし当該事情を考慮して当該登記官が認定した価額とする,と規定している。つまり施行令附則4項の「特別の事情」とは,文字通り,増築,改築,損壊,地目の変換やそれらに準じるものがある場合である。したがって,本件修正が特別の事情に該当しないことは明らかである。また,本件建物についてその他に特別の事情に該当する事情は見当たらない。

(4)  不服申立手段との関係

原告らは,固定資産税課税価格に依拠して1月1日時点における価格をもってする課税方法は,本件売買によって不動産を取得した原告らがその評価額に異議を述べることができなくするもので,不当であると主張する。

原告らの主張は必ずしも明確ではないが,本件建物の購入に伴う登録免許税の課税標準は,地方税法359条により当該年度の初日の属する年の1月1日を賦課期日とする固定資産税の台帳登録価格を基に計算されるところ,台帳登録価格については,地方税法432条1項によって不服申立期間が制限されているので(台帳登録価格については,縦覧期間の初日から納税通知書の交付を受けた日後30日まで等),原告らが本件建物を取得した時点では既に不服申立期間が過ぎており,このような不服申立てができない課税評価額をもってする課税方法が不当であると主張するものと解される。

しかしながら,上記の制度は全国に大量に存在する固定資産の課税評価を公平に行う必要等から設けられており,十分な合理性があるので,課税台帳についての不服申立期間が当該不動産単位で定められ,その所有者が替わることによって所有者単位に不服申立期間が設けられていないことをもって,不当であるということはできない。したがって,原告らが本件売買で購入した本件建物の当該年度の台帳登録価格について不服申立てをすることができず,かつその価格で本件登録免許税額が算定されることに格別不当な点はない。

(5)  過誤納の有無

以上のとおり,本件建物の平成12年1月1日現在の台帳登録価格は,2785万7323円であり,これに基づき本件登録免許税額が計算されることになる。

したがって,本件登録免許税額(本件土地の分を含む。)は,295万1100円となり過誤納は生じていない。

前示のとおり,登記時に課される登録免許税は,不動産の価格を課税標準とするが,その価格は当分の間,登記申請日を基準として,前年の12月31日現在又はその年の1月1日現在の台帳登録価格によるとされている。このことから明らかなとおり,不動産登記について課される登録免許税は,登記に際して必要な一定の税額を算出するための手段として,不動産の台帳登録価格を流用する立法技術を用いているのであり,厳密な意味での時価や遡及した修正後の価格をもって課税標準とするものではなくても,そのことは,大量にされる不動産取引における登録免許税を画一的にかつ公平に課するという合理的な制度的要請から生ずるやむを得ない結果である。そうである以上,本件登録免許税額の算定に違法はない。

第7結論

よって,被告登記官に対する本件拒絶通知の取消を求める訴えは却下することとし,原告の被告国に対する過誤納金返還請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡光民雄 裁判官 堤雄二)

裁判官窪木稔は,差し支えのため,署名押印することができない。 裁判長裁判官 岡光民雄

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