横浜地方裁判所 平成13年(行ウ)46号 判決 2002年7月31日
原告
甲野太郎(仮名、X)
被告
小田原市長(Y) 小澤良明
同訴訟代理人弁護士
池田忠正
主文
1 本件訴えを却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第4 争点に対する判断(事実を認定する場合には、認定事実の前後に証拠を記載して、その旨を示す。一度説示した事実は、原則としてその旨を断らない。認定に用いた書証の成立は弁論の全趣旨により認められる。)
1 判断の順序
原告は、本件確認申請が法601条1項の非課税土地の使用確認申請であるとの前提に立ち、被告がこれに応答しないとして、不作為の違法確認を求めている。これに対し、被告は、本件確認申請が法602条の特例譲渡の確認申請であるとの前提に立ち、法601条1項の非課税土地の使用確認申請は存在しないし、法602条の特例譲渡の確認申請については受理して、土地の譲渡の確認を否認して、その旨の平成13年3月6日付けの通知をしたから、不作為はなんら存在しないと主張する。
そこで、本件の主たる争点は、本件確認申請が非課税土地としての使用確認申請であったか、それとも特例譲渡の申請であったかという点にある。以下において、まず争点に関連する法制度の内容を概観した上で、その後に本件確認申請の内容について検討する。
2 特別土地保有税とその非課税・免除等の制度の内容
(1) 特別土地保有税の趣旨
特別土地保有税は、投機的土地取引の防止、土地の有効利用、特に住宅地としての利用の促進を図ることを目的とし、土地の所有者又は取得者に課するものである(法585条。〔証拠略〕)。特別土地保有税については申告納税の方式が採用されており、後記の免除の場合にも申告が必要である(法599条、601条、602条)。
(2) 非課税土地の使用の場合(法601条)
ア 法601条1項は、市町村は、土地の所有者等が、その所有する土地を法586条2項(特別土地保有税の非課税)の規定の適用がある土地(非課税土地)として使用し、又は使用させようとする場合において、市町村長が当該事実を認定したところに基づいて定める日から2年を経過する日までの期間内に当該土地を非課税土地として使用し、又は使用させ、かつ、これらの使用が開始されたことにつき市町村長の確認を受けたときは、当該土地に係る特別土地保有税に係る地方団体の徴収金に係る納税義務を免除するものとすることを規定している。つまり、土地の使用に関する予定につき認定を受け、さらに予定どおりに使用したことの確認を受けることで特別土地保有税の免除が受けられることとされている。
さらに、法601条2項は、市町村長は、災害その他やむを得ない理由により納税義務の免除に係る期間内に当該土地を非課税土地として使用し、又は使用させることができないと認める場合には、土地の所有者等からの申請に基づき市町村長が定める相当の期間に限って、納税義務の免除に係る期間を延長することができることを規定している。すなわち、予定の実現が遅れた場合に延長が認められるとされている。
イ そして、法601条1項に基づいて使用予定の認定申請をする場合には、同条10項、地方税法施行令(以下「施行令」という。)54条の42第1項により、土地の所有者等は、自治省令(当時。以下、同様)で定めるところにより、当該土地の所在及び面積、非課税土地としての用途、非課税土地として使用を開始する予定年月日その他必要な事項を記載した申請書を市町村長に提出しなければならない。その際、地方税法施行規則(以下「施行規則」という。)16条の24により、第34号の6様式を用いるべきものとされている。
また、法601条1項に基づいて使用確認の申請をする場合には、同条10項、施行令54条の42第8項により、土地の所有者等は、自治省令で定めるところにより、当該確認を受けようとする土地の所在、面積及び用途、非課税土地として使用を開始した日、納税義務の免除に係る期間その他当該確認に必要な事項を記載した申請書を市町村長に提出しなければならない。その際、施行規則16条の24により、第34号の7様式を用いるべきものとされている。
さらに、法601条2項の申請をしようとする土地の所有者等は、施行令54条の43第1項により、自治省令で定めるところにより、納税義務の免除に係る期間の延長を必要とする理由その他必要な事項を記載した申請書を市町村長に提出しなければならない。その際、施行規則16条の24により、第34号の8様式を用いるべきものとされている。
(3) 特例譲渡の場合(法602条)
ア 次に、法602条1項は、市町村は、土地の所有者等が、特例譲渡をしようとする場合において、市町村長が当該事実を認定したところに基づいて定める日から2年を経過する日までの期間内に当該土地の譲渡をし、かつ、当該土地の譲渡があったことにつき市町村長の確認を受けたときは、当該土地に係る特別土地保有税に係る地方団体の徴収金に係る納税義務を免除するものとすることを規定している。つまり、土地の譲渡に関する予定につき認定を受け、さらに予定どおりに譲渡したことの確認を受けることで特別土地保有税の免除が受けられることとされている。
さらに、同条2項は法601条2項を準用しているから、納税義務の免除に係る期間の延長については前記非課税土地の場合と同様である。
イ そして、法602条1項に基づいて認定申請をする場合には、同条2項、法601条10項、施行令54条の45第8項により、非課税土地の場合と同様に、土地の所有者等は、自治省令で定めるところにより、当該認定を受けようとする土地の所在及び面積、当該土地の譲渡の目的等の必要な事項を記載した申請書を市町村長に提出しなければならない。また、譲渡の確認を申請する場合には、土地の所在及び面積、法602条1項各号に規定する譲渡をした日、納税義務の免除に係る期間その他当該確認に必要な事項を記載した申請書を市町村長に提出しなければならず、その際、施行規則16条の24により、第34号の6ないし8の各様式を用いるべきものとされる。
(4) 法601条と602条との競合の有無
以上のとおり、非課税土地について法601条1項に基づいて確認申請をする場合においても、特例譲渡について法602条1項に基づいて確認申請をする場合においても、同じく第34号の7様式を用いるべきものとされている。そして、第34号の7様式の記載心得によれば、法「601条第1項に規定する非課税土地として使用が開始されたこと、法602条1項各号に規定する土地の譲渡があったこと又は法603条の2の2第1項に規定する免除土地として使用が開始されたことにつき、市町村長の確認を受ける場合」(〔証拠略〕)とされ、さらに、「申請の内容に応じ、不要の文字をまつ消すること」と記載されている。そうすると、法601条の確認申請と法602条の確認申請とは、別個のものとして位置づけられ、両者が競合することは予定されていないと解するのが相当である。また、定型の申請書は1枚の用紙(第34号の7様式)でいずれの申請にも対応できるようになっているものの、申請者はどちらを申請するかを選択して、その選択に合わせて申請書に必要事項を記載しなければならないとされている。
3 本件確認申請の内容と同申請に至る経緯等
(1) 本件確認申請書(〔証拠略〕)の記載内容
ア まず、本件確認申請書の記載内容を検討する。
上記のとおり、本件確認申請書は定型書式(第34号の7様式)を用いて作成されており、標題の「確認申請書」の前には、「非課税土地」、「特例譲渡」及び「免除土地」の3事項が併記されているが、原告は、このうち「特例譲渡」だけを丸印で囲み、「非課税土地」には丸印その他何らの記載もしていない。
イ 本件確認申請は、定型書式(第34号の7様式)を使用した書面によっているところ、仮に非課税土地に係るものであれば「非課税土地として使用を開始したので、その確認を申請する。」という趣旨の申請となり、特例譲渡に係るものであれば「特例譲渡をしたので、その確認を申請する」という趣旨の申請となるものである(〔証拠略〕)。
そして、2の制度的観点を踏まえると、本件確認申請は、先に必要な認定申請と認定は既に終わったので、認定に係る「非課税土地としての使用」又は「特例譲渡」の確認申請をするという趣旨のものとなるはずである。したがって、時系列的にいえば、仮に本件確認申請が「非課税土地として使用を開始した」ことについてのものであるとすれば、原告が「非課税土地として使用を開始することの認定」申請をし、その認定を受けていることが必要である。
反対に、本件確認申請が「特例譲渡をした」ということについてのものであるとすれば、原告が「特例譲渡をすることの認定」申請をし、その認定を受けていることが必要である。
ウ 以上のように、本件確認申請書においては、その標題の「特例譲渡」だけが丸印で囲まれている上、制度的な観点を踏まえると、本件確認申請が「特例譲渡をしたので、その確認を申請する」という内容であるのか、あるいは、反対に「非課税土地としての使用を開始したので、その確認を申請する。」という内容であるかは、先行する認定が非課税土地として使用することについてされたか、特例譲渡をすることについてされたかによるものというべきである。
そして、同申請書においては、本件土地ともう1筆の土地が申請対象とされているところ、本件土地についての「非課税土地若しくは免除土地として使用開始又は当該土地の譲渡をした年月日」の欄には、「住宅建築予定」と記載されている。
そこで、本件確認申請に至る経緯等について検討することとする。
(2) 本件認定申請・本件認定処分、本件延長申請、延長理由等
ア 本件認定申請
本件確認申請に約8年先立つ平成4年5月14日、原告は、被告に対し、本件土地を含む9筆の土地(計1136.45平方メートル)について、法599条1項に基づいて、特別土地保有税の申告をするとともに(〔証拠略〕)、「非課税土地」又は「特例譲渡」の認定申請書(〔証拠略〕)に所定の記載をして被告に認定申請をした。
同申請書は、定型書式(第34号の6様式)に必要事項が記載されたものであるが、標題部の「非課税土地」、「特例譲渡」のいずれにするかにつき、丸印の囲いその他の特定のための抹消がない。ただし、同申請書の「非課税土地としての用途又は当該土地の譲渡の目的」の欄には、「分譲・宅地」と記載されていた(〔証拠略〕)。
イ 本件認定処分
被告は、原告に対し、平成4年6月17日、「特別土地保有税『非課税土地・特例譲渡』認定通知書」(〔証拠略〕)を送付して、本件認定処分を行い、同年5月31日から平成6年5月30日までを納税義務の免除に係る期間とした。
なお、同通知書は、非課税土地としての使用予定の認定及び特例譲渡の予定の認定のいずれにも対応できる1枚の通知書に記載されたものであるが、同通知がいずれの認定をしたかについては、区別した記載がされていない。
ウ 本件延長申請、延長決定、延長理由等
(ア) 原告は、被告に対し、本件土地及びその他の土地について、平成6年4月21日、同8年1月29日及び同10年5月19日の3回にわたって、納税義務の免除に係る期間の延長の申請(以下「本件延長申請」という。)をした(〔証拠略〕)。
その対象土地は、平成6年4月21日の延長申請は、本件土地を含む5筆の土地であり、同8年1月29日の延長申請は本件土地を含む4筆の土地であり、同10年5月19日の延長申請は本件土地を含む3筆の土地である。
(イ) 被告は原告に対し、いずれも上記各申請について各2年間の延長を認めた(〔証拠略〕)。
(ウ) このうち第1回目の延長申請(〔証拠略〕)において、前記9筆の土地のうち本件土地を含む5筆の土地について期間延長を必要とする理由として、原告は、「経済状況が不良で販売が思わしくなく、現在努力中です。」と記載した。
次に、第2回目の延長申請(〔証拠略〕)において、上記5筆の土地のうち4筆の土地(本件土地を含む。)について期間延長を必要とする理由として、原告は、「鋭意販売に努力しておりますが、不動産関係の低迷に不況が加わり売却が思うように行きません。」と記載した。
最後に、第3回目の延長申請(〔証拠略〕)において、上記4筆の土地のうち3筆の土地(本件土地を含む。)について、原告は、期間延長を必要とする理由について何ら記載していない。
エ 本件延長理由と本件土地の利用目的
(ア) ウの3回にわたる延長申請書には、特例譲渡を前提にする記載はあるものの、非課税土地を前提にした積極的な記載はまったくない。延長申請の対象土地の数が次第に減少してきたのは、上記第1、2回目の延長申請時の記載などからみて、不動産業を営む(〔証拠略〕)原告がその間一部の土地についての売却を実現したからであると推認される。
(イ) それに加えて、上記一連の申請に際しその事実を証するものとして施行令において提出が要求されているもので、現実に添付された書類は、特例譲渡に関係するものだけであり、非課税土地に関係する書類は1つとして存在しなかった(弁論の全趣旨)。
(3) 原告等による本件土地の利用状況
原告等による本件土地の利用状況について、〔証拠略〕により、次の事実が認められる。
ア 原告は、平成12年4月1日、息子の甲野二郎との間において、本件土地の使用貸借契約を締結し、甲野二郎は、同月28日に建築確認申請を行い、同年5月18日、建築主事から建築基準法6条1項の規定による確認済証の交付を受けた。そして、同人は、同年10月28日に本件土地上に建物(家屋番号・71番6、種類・居宅、構造・軽量鉄骨造スレート葺2階建、1階52.37平方メートル、2階56.43平方メートル)を新築した。
イ 甲野二郎によると、同人は平成8年ころから自宅として使用する住宅の建築計画を立て、用地を探していたものの、なかなか良い土地が見当たらなかったが、平成11年12月ころ、原告に対し、本件土地を用地として使用させてもらえないかと申し出たところ、同人の了解が得られ、上記建築実現に至ったということである(〔証拠略〕)。
4 非課税土地の使用確認申請の存否
(1) 事実関係
前記3(1)のとおり、本件確認申請書においては、その標題の「特例譲渡」だけが丸印で囲まれている上、制度上の前提要件である認定を受けているかどうかという観点を踏まえると、本件確認申請は、先行する認定が非課税土地として使用することについてされたか、特例譲渡をすることについてされたかにより、非課税土地としての使用確認申請か特例譲渡の確認申請かが判明する。
そして、3(2)(3)のとおり、本件延長申請の際の申請書の記載内容がすべて譲渡を目的としたものであること、その際提出された添付書類の内容、不動産業を営む原告が前記延長申請を行い、その間一部の土地についての売却を実現したと推認されること、原告の子である甲野二郎が平成11年12月ころ、原告に対し、本件土地を住宅建築用地として使用したい旨を申し出るまでの間、原告が本件土地を非課税土地として使用すること又は使用させることを意図していたと認めるに足りる的確な証拠はまったくないこと等の事情があり、これを総合すると、原告は、特例譲渡を意図して本件土地を含む9筆の土地につき本件認定申請をし、その認定を受け、次いで本件延長申請をして、そのうちの大部分の土地につき認定に係る特例譲渡を実現したものの、本件土地については特例譲渡が実現できず、その実現が困難となったと判断したころに息子の住宅建築のための土地としてこれを使用させることとした(目的の変更をした)ものと認めるのが相当である。
(2) 証拠判断
ア なお、本件認定申請書の「非課税土地としての用途又は当該土地の譲渡の目的」の欄には、原告により、「分譲・宅地」と記載されたが、この「分譲・宅地」のうち「分譲」はまさに譲渡を予定していたことを端的に表し、「宅地」という記載は、非課税土地を宅地として使用し、又は使用させるというよりも、宅地として分譲するという意味で記載されたと解する方が関係証拠に照らし自然である。
イ また、原告は、本件認定申請に対応してなされた本件認定処分は、本件土地を含む申請に係わる土地全体について、非課税土地及び特例譲渡の双方について認定がなされたと見るべきであると主張する。
確かに、本件認定処分の認定通知書(〔証拠略〕)には、「非課税土地として使用すること」並びに「法601条第1項に規定する譲渡をすること」の双方が記載されており、あたかも本件土地等について両方の認定があったかのごとく誤解されるおそれがないではない(その意味において、被告の事務処理のやり方が適切であったとは必ずしもいい難い。)。しかし、特別土地保有税の免除に関し、非課税土地の場合(法601条)と特例譲渡の場合(法602条)とでは、根拠条文が異なり、前者は申請者が当該土地を使用し、又は使用させる場合であるのに対し、後者は申請者が当該土地を譲渡する場合であり、両者はその性格が異なり、同一の土地についてその両者の性格を兼有するということは制度上まったく予定されていないものである。以上から、原告の上記主張は採用できない。
ウ なお、原告は、行政処分の公定力を根拠として、非課税土地としての使用認定がある旨を主張する。しかし、その旨の処分がされたとの事実が認められないし、本件認定処分に係る通知書(〔証拠略〕)の標題に併記されただけでそのような効力が生ずるものではない。したがって、原告の主張は前提を欠き失当である。
エ さらに、原告は信義則違反を主張する。
確かに、本件認定処分の通知書(〔証拠略〕)は、本件土地等について非課税土地及び特例譲渡の双方についての認定があったかのごとく誤解されるおそれがないではなく、もちろん適当なことではないが、それは、原告の本件認定申請が両者を区別していなかったことに主に起因するのであり、被告ばかりが非難されるべきものではない。しかも、その後の本件延長申請書等の記載内容、それらの申請に際して原告が被告に提出した添付書類等を検討すると、原告が本件認定処分の通知書の記載内容(非課税土地という部分)を信頼して以後行動してきたとは認め難い。以上に照らすと、原告の上記主張は採用できない。
(3) まとめ
ア そうすると、原告にとっては、特例譲渡の実現していない本件土地について特例譲渡がされたことの確認申請をしても、譲渡の事実が認められないとしてその確認申請を拒否されることは予想されたことである。さりとて、原告が本件土地につき非課税土地として使用されたことの確認申請をするには、前提となる非課税土地としての使用予定であることの認定を受けておく必要があるところ、原告はそのような認定は受けていない。
他方で、本件確認申請書においては三つの標題のうち、「特例譲渡」の標題が丸印で囲まれているにもかかわらず、本件土地について「住宅建築予定」と記載され、特例譲渡の確認申請なのか、非課税土地の使用の確認申請なのか、その双方の確認申請と考える余地があるのか等、申請内容があいまいで、一見矛盾するような記載となっている。
これらの事情とりわけ、本件確申請書の標題部の「特例譲渡」が丸印で囲まれていること及び本件確認申請前に特例譲渡の認定を受けているものの使用についての認定は受けていないこと並びに使用に係る申請と特例譲渡に係る申請とが競合できない制度となっていることを踏まえると、本件確認申請は、特例譲渡の確認申請とみざるを得ず、非課税土地としての使用の確認申請であるとか、特例譲渡の確認申請と使用確認申請とが併せてされているものであるとは認められない。原告としては、特例譲渡の予定の認定と延長処分を受けた土地につき、最終的に特例譲渡を断念して非課税土地の使用確認をすることが許されるという見解に立った上で、本件確認申請がそのような趣旨のものであると主張したいのかもしれないが、そのような制度は認められていない。また、原告は、平成12年8月21日付けで本件土地について非課税土地に係る申請(平成12年8月申請)をしている(〔証拠略〕。なお、標題部では使用があったことの確認申請であるが、別紙では使用認定の申請である。)が、このことは、本件確認申請が使用に係る申請ではなく、特例譲渡に係る申請であることを原告において自認していることをうかがわせる事情でもある。
イ したがって、非課税土地としての使用の確認申請があることを前提としてそれについての不作為の違法があるとの本件訴えは、そもそも前提となる申請行為がないのであるから、不適法といわざるを得ない。
ウ なお、本件確認申請は特例譲渡のあったことの確認申請の趣旨であると解するのが合理的であるところ、これについては、被告は、平成13年3月6日、特例譲渡を確認できないことを理由にして否認している。したがって、被告にはこの点の不作為はない。そうすると、仮に原告がこのことを問題とするものであると想定しても、その場合には、被告に不作為がないから不作為の違法確認の訴えの利益は失われていると解される。
(4) 本件訂正申立て、本件追完申立てについて
ア 原告は、被告に対し、平成13年3月13日、本件確認申請書の標題には明らかな誤りがあったとして、「非課税土地」の記載欄に丸印があるものとすると本件訂正の申立てをし、さらに同月21日、本件確認申請書の「非課税土地若しくは免除土地として使用開始又は当該土地の譲渡した年月日」の欄に「住宅建築予定」とあるのを「平成12年4月28日住宅建築予定」とするとの本件追完申立てをした(〔証拠略〕)。
イ しかし、被告は、本件確認申請につき、法602条1項に規定する土地の譲渡の確認申請と扱った上のことではあるが、平成13年3月6日に応答をしている(〔証拠略〕)ところ、原告の上記の本件訂正申立て及び本件追完申立ては、上記の被告の応答後にこれを知った上で行ったものである。しかし、このようなことを認めると、被告の対応がいつまでも不安定な状態に置かれるので、適切ではない。本件訂正申立て及び本件追完申立てのような私人の行為は、本件確認申請に対する行政行為(広い意味での応答を含む。)がなされるまでは、原則として、自由にそれを撤回し又は、誤りをただすことができるが、それがされた後には撤回、訂正等は許されないと解するのが相当である(最高裁判所昭和34年6月26日第二小法廷判決・民集13巻6号846頁参照)。
ウ したがって、被告が平成13年3月6日に否認通知をした後になされた本件訂正申立て及び本件追完申立ては効力がない。そうすると、本件確認申請の内容がこれらの申立てによって変更されたものとして、変更後の申請に対する応答がされているかどうかを判断する必要はない。
第5 結論
以上のとおりであり、原告主張の申請行為はなく、それに対する不作為の違法確認を求める本件訴えは不適法であるから、これを却下し、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡光民雄 裁判官 窪木稔 堤雄二)