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横浜地方裁判所 平成14年(行ウ)53号 判決 2004年4月21日

原告 A株式会社

代表者代表取締役 甲

被告 横浜中税務署長

谷山孝博

指定代理人 古川忠雄

同 引地俊二

同 藤井弘之

同 成田兼二

同 中村豊

同 脇孝喜

同 木村政文

同 佐藤智彦

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

(1)  被告が原告に対し平成13年1月31日付けでした原告の

ア 平成8年10月1日から平成9年9月30日までの事業年度の法人税の更正処分及び重加算税賦課決定処分、

イ 平成9年10月1日から平成10年9月30日までの事業年度の法人税の更正処分、

ウ 平成10年10月1日から平成11年9月30日までの事業年度の法人税の更正処分、

をいずれも取り消す。

(2)  訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文と同旨

第2  事案の概要

本件は、原告において、その所有する土地を平成9年9月30日に売り渡したことにより売却損が生じたとして、これを損金の額に算入して計算したところに基づいて平成9年9月期ないし平成11年9月期の法人税の確定申告をしたところ、被告が、上記売買の事実は存在しないとして、上記各期の法人税の更正処分及び平成9年9月期の法人税に係る重加算税賦課決定処分をしたことから、原告が、上記各課税処分の取消しを求めている事案である。

第3  基礎となる事実

(以下の事実は、当事者間に争いのない事実であるか、記載した証拠により容易に認められる事実である。)

1  原告は、ホテル及びカラオケボックス等を経営する株式会社である。

2(1)  原告は、平成9年9月30日、駐車場として利用していた別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を、不動産業を営む有限会社B(以下「B」という。)の代表取締役である乙(以下「乙」という。)に対し代金8700万円で売り渡したとして、本件土地の譲渡価額8700万円とその帳簿価額5億円との差額のうち4億1295万5000円(印紙代4万5000円を差し引いた額)(以下「本件固定資産売却損」という。)を、平成8年10月1日から平成9年9月30日までの事業年度(以下「平成9年9月期」という。)に係る固定資産売却損として、損金の額に算入した〔乙2号証〕。

(2)  原告は、平成9年9月期に横浜市の建物(以下「Cホテル」という。)を売り渡したとして、その売却益2億1648万3686円を以下のとおり経理処理した。

ア 平成9年8月19日、上記売却益2億1648万3686円を、平成9年9月期の固定資産売却益勘定に計上した〔乙1号証〕。

イ 同年9月30日、上記売却益2億1648万3686円を、固定資産売却益勘定から固定資産売却損勘定に振り替えた〔乙2号証〕。

(3)  上記(2)イの振替の結果、原告の平成9年9月期の固定資産売却損勘定の期末残高は、上記(1)の固定資産売却損4億1295万5000円から上記(2)の売却益2億1648万3686円を減算した、1億9647万1314円となった〔乙2号証〕。

3  本件土地の売買に関して、平成9年9月30日付けの「土地売買契約書」と題する書面が3通存在しており、それぞれ以下の内容となっている〔乙3ないし5号証〕。

(1)  買主をB及びD株式会社(以下「D」という。)とし、持分はそれぞれ2分の1ずつ、売買価額を8124万9000円とするもの(以下「本件甲契約書」という。)。

(2)  買主を乙、売買価額を8124万9000円とするもの(以下「本件乙契約書」という。)。

(3)  買主を乙、売買価額を8700万円とするもの(以下、「本件丙契約書」といい、これと本件甲契約書及び本件乙契約書とを併せて「本件各契約書」という。)。

4  本件各契約書には、上記3(1)ないし(3)の部分を除き、いずれも同じ文言の記載がされており、その概要は以下のとおりである〔乙3ないし5号証〕。

(1)  売買の目的物は、本件土地とする(1条)。

(2)  買主は手付金として、本契約の締結と同時に400万円を原告に支払う(2条)。

(3)  売買代金の残金は、平成9年11月10日までに支払う(3条3号)。

(4)  本件土地の所有権は、買主が売買代金全額を支払ったときに、買主又は買主の指定する者に移転する(4条1号)。

原告は、抵当権その他本物件の完全なる所有権の行使を阻害する権利があるときは、原告の責任において3条3号所定の残金支払の時までに除去抹消し、買主に負担のない所有権を移転する(4条2号)。

(5)  原告は、3条3号所定の残金受領と同時に、本件土地を現況により引き渡す(5条)。

(6)  本件土地に対する公租公課は、5条の引渡しの11月10日までの分は原告、それ以降の分は買主の負担とする(6条)。

(7)  契約当事者のいずれかが本契約の各項に違反した場合、相手方に相当の期間を定めて履行の催告をし、相手方がその期間内に履行しないときは、本契約を解除することができる。また、買主が違約した場合、買主は売買価額の5パーセントに相当する違約金を原告に支払う(9条1号、3号)。

5  本件土地について、昭和63年6月1日受付の同年5月31日売買を原因とする原告への所有権移転登記が、また、平成13年9月28日受付の同日売買を原因とするE株式会社(以下「E」という。)への所有権移転登記が、それぞれされている。

また、本件土地について、平成8年7月23日受付の申立人をF信用金庫(以下「F信用金庫」という。)とする同月22日横浜地方裁判所競売開始決定を原因とする差押登記がされたが、同差押登記については、平成9年6月26日受付をもって同月25日取下げを原因とする抹消登記がされた。〔甲5号証〕

6(1)  原告は、平成9年12月1日、平成9年9月期の法人税について、本件固定資産売却損4億1295万5000円を損金の額に算入して計算したところに基づいて、確定申告をした。

また、原告は、平成10年11月30日、平成9年10月1日から平成10年9月30日までの事業年度(以下「平成10年9月期」という。)の法人税について、平成11年11月30日、平成10年10月1日から平成11年9月30日までの事業年度(以下「平成11年9月期」という。)の法人税について、それぞれ、平成9年9月期において本件固定資産売却損の損金算入により繰越欠損金が生じたことを前提として計算したところに基づいて、確定申告をした。さらに、原告は、平成12年7月6日、平成11年9月期の法人税について、所得金額を修正して修正申告をした。

(2)  被告は、平成13年1月31日付けで、原告に対し、本件土地の売買の事実はないから本件固定資産売却損の額を損金の額に算入することはできないとして、平成9年9月期、平成10年9月期及び平成11年9月期(以下「本件各事業年度」という。)の原告の法人税について、それぞれ更正処分(以下、各更正処分をそれぞれ「平成9年9月期更正処分」、「平成10年9月期更正処分」及び「平成11年9月期更正処分」といい、これらを併せて「本件各更正処分」という。)をするとともに、平成9年9月期の原告の法人税に係る重加算税賦課決定処分(以下、「本件重加算税賦課決定処分」といい、本件各更正処分と併せて「本件各課税処分」という。)をした。

(3)  これに対し、原告は、平成13年2月21日、国税不服審判所長に対し、本件各課税処分についての審査請求をしたが、国税不服審判所長は、平成14年5月31日付けで、審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をし、原告は、同年6月4日、同裁決書を受領した。

(4)  そこで、原告は、同年9月3日、本件各課税処分の取消しを求めて本訴を提起した。

(5)  なお、原告の本件各事業年度の法人税に係る各確定申告、本件各課税処分及び不服申立ての経緯は、別紙「課税の経緯」のとおりである。

第4  本件各課税処分の根拠及び適法性についての被告の主張

被告が主張する本件各課税処分の根拠は以下のとおりであるところ、原告は、本件固定資産売却損が損金の額に算入されないとした場合の被告が主張する課税根拠については、争わない。

1  平成9年9月期更正処分の根拠(別紙表1)

(1)  課税所得金額 2億4100万7043円

上記金額は、下記アの金額にイの金額を加算した金額である。

ア 確定申告に係る欠損金額 △1億7194万7957円

(△は欠損金額であることを示す。)

イ 固定資産売却損の否認額 4億1295万5000円

原告は本件固定資産売却損4億1295万5000円を損金の額に算入していたところ、原告が本件土地を譲渡した事実は存在しないから、これを損金の額に算入することはできない。

(2)  所得金額に対する法人税額 8961万7625円

上記金額は、(1)の課税所得金額(ただし、国税通則法(以下「通則法」という。)118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に法人税法66条(平成10年法律24号による改正前のもの。)が規定する税率を乗じて計算した金額である。

(3)  課税留保金額に対する税額(別紙表4) 575万1900円

上記金額は、原告の確定申告書に記載された欠損留保金額1億7214万5612円に、新たに留保金となる(1)イの金額を加算した留保所得金額2億4080万9388円を基に再計算した課税留保金額4834万6000円(ただし、通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に、法人税法67条1項(平成13年法律6号による改正前のもの。)が規定する税率を乗じて算出した金額である。

(4)  法人税額から控除される所得税額 5万8489円

(5)  差引所得に対する法人税額 9531万1000円

上記金額は、(2)の金額に(3)の金額を加算し、(4)の金額を控除した金額である(ただし、通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの。)。

2  平成10年9月期更正処分の根拠(別紙表2)

(1)  欠損金額 △1533万4691円

(△は欠損金額であることを示す。)

上記金額は、下記アの金額にイの金額を加算し、ウの金額を減算した金額である。

ア 確定申告に係る所得金額 0円

イ 繰越欠損金の控除過大額 1327万1109円

上記金額は、当期の損金の額に算入された平成9年9月期の繰越欠損金の金額であるが、平成9年9月期更正処分により、当期の損金の額に算入されるべき繰越欠損金はないため、控除過大となる繰越欠損金の金額である。

ウ 事業税の損金算入額 2860万5800円

上記金額は、平成9年9月期更正処分により、当期の損金の額に算入されるべき事業税の金額である。

(2)  法人税額から控除される所得税額 1152円

(3)  差引所得に対する法人税額 △1152円

(△は還付されるべき税額であることを示す。)

上記金額は、(1)のとおり、原告の平成10年9月期は欠損金額であるため、同期の法人税額から控除できず、還付されるべき所得税の金額である。

(4)  翌期へ繰り越す欠損金額 1533万4691円

上記金額は、平成9年9月期更正処分及び平成10年9月期更正処分により、平成10年9月期末における翌期に繰り越すこととなる欠損金の金額である。

3  平成11年9月期更正処分の根拠(別紙表3)

(1)  確定申告に係る所得金額 0円

(2)  法人税額から控除される所得税額 684円

(3)  差引所得に対する法人税額 △684円

(△は還付されるべき税額であることを示す。)

上記金額は、(1)のとおり、原告の平成11年9月期は欠損金額であるため、同期の法人税額から控除できず、還付されるべき所得税の金額である。

(4)  翌期へ繰り越す欠損金額 1254万3046円

上記金額は、平成9年9月期更正処分及び平成10年9月期更正処分により算出される平成11年9月期末における繰越欠損金の金額である。

4  本件各更正処分の適法性

原告の本件各事業年度の法人税の所得金額、欠損金額及び差引所得に対する法人税額は、上記1ないし3のとおりであるところ、上記各金額は、本件各更正処分における金額といずれも同額であるから、本件各更正処分は適法である。

5  本件重加算税賦課決定処分の根拠及び適法性

上記のとおり、平成9年9月期更正処分は適法であるところ、原告は、本件土地を売却した事実がないにもかかわらず、架空の本件固定資産売却損を計上しており、このことは、通則法68条1項が規定する「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当する。そして、平成9年9月期更正処分において納付すべき税額に対し通則法68条1項を適用して算出される重加算税の額は、本件重加算税賦課決定処分における金額と同額であるから、本件重加算税賦課決定処分は適法である。

第5  争点及び争点に関する当事者の主張

1  争点

本件の主要な争点は、以下のとおりである。

(1)  争点①

原告の平成9年9月期の法人税について、本件固定資産売却損が損金の額に算入されるかどうか。この点は、本件土地が平成9年9月30日までに原告から乙に売り渡されたかどうかにより決せられる。

(2)  争点②

原告が平成9年9月期の法人税の税額等の計算の基礎となるべき事実を「隠ぺいし、又は仮装」(通則法68条1項)したとして、重加算税の賦課要件を満たすかどうか。

2  争点①(本件固定資産売却損の損金の額への算入の可否)について

<被告の主張>

原告は、以下のとおり、乙と通謀して、本件土地が平成9年9月30日に乙に譲渡された事実がないのに、実体のない虚偽の売買契約書を作成するなどしてあたかも本件土地の譲渡があったかのように装い、当事者の真の意思及び法律関係と異なる外観を作出したものである。したがって、本件固定資産売却損は、実際には平成9年9月期に発生していないのであるから、これを原告の当該事業年度の損金の額に算入することは認められない。

(1) 契約に基づく履行が一切行われていないこと

ア 本件土地の利用状況及び権原に変化がないこと

原告は、本件丙契約書により本件土地を乙に譲渡したと主張するところ、その契約日とされる平成9年9月30日以降、本件土地がEに譲渡されるまでの間、乙と本件土地の利用に関する契約を何らしないまま、本件土地を引き続き使用しており、また、本件土地の固定資産税も負担していたものであるから、本件土地の利用状況及びその権原には変化がないというべきである。

イ 土地代金の清算が行われていないこと

本件各契約書に記載されている残代金は、その支払期限とされた平成9年11月10日経過後も、買主から支払われておらず、また、それにもかかわらず、原告は債務不履行による契約の解除や違約金の請求等を何らしていない。

また、原告は、本件土地の代金の一部について、乙から原告に対する貸付金債権をもって相殺された旨を主張するが、原告の貸借対照表上、乙から原告に対する貸付金の計上はされていないから、このような相殺がされたとはいえない。

ウ 所有権の移転登記がされていないこと

本件土地の所有権者は、登記上、平成9年9月30日の時点で原告名義であったところ、その後も乙に移転登記がされることはなく、平成13年9月にEに譲渡された時点で、Eに移転登記がされている。

(2) 本件各契約書が実体のないものであること

本件土地の譲渡に関して、「土地売買契約書」と題する3通の書面(本件各契約書)が存在するが、そのいずれも、以下のとおり、「売買契約」としての実体を伴わないものである。

ア 本件各契約書の作成の経緯

本件各契約書は、平成9年9月30日にまず本件甲契約書が作成され、その後、本件甲契約書の写しの買主欄等を修正液で消すなどして本件乙契約書が作成され、さらに、本件乙契約書の写しの売買価額欄等を修正液で消すなどして本件丙契約書が作成されたものである。

イ 本件甲契約書について

原告は、本件土地に抵当権を有していたF信用金庫から、本件土地を売却して借入金の返済に充てるように求められていたところ、本件甲契約書は、F信用金庫によって再度の競売の申立てがされることを回避する目的で、換言すれば、任意売却の方法による本件土地の処分の可能性を維持するために、原告が乙と通謀して、Dという第三者を取引に含めることによって取引に形式的客観性を持たせ、F信用金庫に本件土地の売買契約の外観を提示する目的で作成されたものであって、売買契約として実体を伴わないものであることは明らかである。

ウ 本件乙契約書について

本件乙契約書は、本件甲契約書の買主として名義を貸与していたDを契約書から外すため、本件甲契約書の買主等を訂正して形式的に作成されたものであり、本件甲契約書と同様、本件土地の売買契約としての実体を伴わないものである。

エ 本件丙契約書について

本件丙契約書は、原告の平成9年9月期の法人税の確定申告書の作成に際し、真実には本件土地の売買の事実がないのに、本件土地の譲渡損を作り出すために作成されたものと認められ、実体のない形式的なものというべきである。

(3) 本件土地の真実の購入者はEであること

E代表取締役である丙(以下「丙」という。)は、原告の取締役の丁(以下「丁」という。)が平成13年9月の時点においても銀行に催促され困っていた旨を証言するが、仮に平成9年9月30日に本件土地が乙に売却されていれば、丁がこの時点で困っているなどと発言するはずはないから、本件土地は、Eが購入するまで原告が所有していたというべきである。

本件土地の購入に関するその他の丙の供述内容も、原告が平成9年9月に本件土地を譲渡したことと矛盾するものである。

(4) 乙は本件土地の買主ではないこと

乙は、本件土地の抵当権がどのように処理されるか知らなかったと証言するが、不動産業を営んでいる乙が、抵当権等の関係について知らないなどというのは、本件土地の取引の当事者でなかったからにほかならない。また、本件土地の購入動機について乙の証言が一貫しないことや、乙の所得税の確定申告書において、乙が本件土地を購入したとすれば添付すべき財産及び債務の明細書の添付がされていなかったり、同明細書上に本件土地の記載がないことからしても、乙には本件土地を購入したとする認識がなかったと認められる。

さらに、本件土地のEへの売却は、実際には、丁において、Eという買主を探し出し、同社との交渉を行い、Eの事務所で単独で契約行為を行ったものであり、原告が主張するように乙が自ら転売の努力をしていたということはない。

(5) F信用金庫の認識

原告は、本件土地の売買代金をF信用金庫からの借入金の返済に充てることとしていたところ、F信用金庫は、本件土地の売買に係る手付金として原告から平成9年9月30日に別段預金として入金された400万円について、平成13年9月28日までの間、貸付金への返済に充てずに据え置いていた。このことは、F信用金庫において、本件土地の売買が平成9年9月30日には行われていないと認識していたことを意味し、F信用金庫は、平成13年9月28日に売買契約が成立したことで、その売却代金を同日付けで原告への貸付金の返済に充当したものと認められる。

(6) まとめ

以上の諸事実からすれば、本件土地は、平成13年9月28日、原告からEに譲渡されたことが実体と認められ、平成9年9月30日に原告から乙に本件土地が譲渡された事実は認められない。

<原告の主張>

(1) 本件土地の譲渡の経緯

ア 原告取締役の丁は、本件土地を差し押さえたF信用金庫がこれを転売する意向であったことから、平成8年10月上旬ころ、かねて昵懇の関係にあった不動産業を営む乙に対し、本件土地を8700万円以上で売却したいと持ちかけた。そして、原告は、このころ、乙との間で、本件土地を8700万円で譲渡する旨の予約を約定し、その際、平成9年9月30日までに新たな買主が見つかれば、その時点で予約を完結し乙から新たな買主に売却して中間省略登記をするか、乙への売買予約を解除して原告からその買主に直接売却すること、買主が見つからない場合には、同日を持って乙との売買契約を完了することが約束された。

イ 乙は、共同して売却先を探していたDから、甘栗屋を営む株式会社G(以下「G」という。)が社員寮用地として本件土地を買う見込みがあるとの話を聞いたため、B及びDが本件土地を2分の1ずつ買い受け、これをGに転売して利益を得ることとした。しかし、Gが本件土地を買わないこととなったことから、原告とB及びDとの売買契約は解除された。

ウ 乙は、平成9年9月30日までに本件土地を売却したいとの丁の要請を受け、また、底値ともいわれた本件土地の値上がりに期待して、いったん乙において本件土地を購入することとした。その売買代金額については、当初、Dと共同購入しようとした際の8124万9000円とする売買契約書が作成されたが、間もなく、原告の要請により8700万円に改められた。

売買代金のうち、400万円についてはDと乙が差し入れていた手付金をもってかえ、その余の8300万円については、乙が転売先から得た代金で支払うか、乙に資金ができたときに支払うこととされた。

エ 原告が本件土地を売り急いだのは、原告において平成9年9月期にしたCホテルの譲渡に係る売却益が多いことから、同一会計年度中に本件土地を譲渡して、その売却損と上記売却益とを損益通算したいと考えていたからであった。

オ 乙は、平成9年10月1日以降、転売先を探したがなかなか見つからず、4年後の平成13年9月になって、丁が話を進めたEへの売却が実現することとなった。

この売買に係る売買契約書には、「中間省略売主」として乙の住所氏名が記載されている。また、登記は、中間省略の形で、原告からEへ直接移された。

その売買代金である6000万円の決済は、F信用金庫において乙、丁及び丙が同席してされたものであり、乙から原告への本件土地の代金未払分として、乙の了解の下で、原告が受け取った。さらに、乙の原告に対する未払代金債務2300万円については、乙の原告に対する貸付金債権の一部と対当額で相殺された。

(2) 乙に譲渡した理由

原告は、本件土地を5億円で取得したものであるが、バブルがはじけて価格が下がり続けたため、買主を探すことは困難であり、原告として、多少でも高額で売却できる先を探す努力を続けてきた。そのため、原告は、リスクヘッジのために乙への売買を予約し、その間に少しでも高額な売却先を探していたが見つからず、当初の予約どおり、乙へ売却することとなったのである。

(3) 被告の主張への反論

ア 原告から乙への所有権移転登記がされなかったのは、平成9年9月30日当時、乙には手持ち資金が不足していたため、本件土地を転売しその売買代金で原告への支払をすることが予定されており、原告としては手付金400万円の支払だけで移転登記に応じるわけにはいかなかったこととともに、原告から転売先への中間省略登記をすれば、無駄な登記手数料を払わずにすむことから、原告、乙の双方にとって、移転登記をしないほうが都合がよかったからである。

イ また、乙が財産及び債務の明細書に本件土地を記載しなかったのは、本件土地の所有権移転登記すなわち引渡しを現実には受けていない上、8300万円の代金支払債務を負担してしまったためであり、現実の所得基準により経理処理したものである。

(4) まとめ

以上のとおり、平成9年9月30日にされた原告から乙への本件土地の譲渡は、同月中に売却したい原告と、将来の転売等を考慮して大幅に値下がりした時期に購入することもよいと考えた乙の思惑が一致して成立した、真実の売買であって、虚偽表示による売買ではない。

したがって、本件固定資産売却損は、原告の平成9年9月期の損金の額に算入されるものである。

3  争点②(仮装、隠ぺいの有無)について

<被告の主張>

原告は、本件土地を譲渡した事実がないにもかかわらず、乙と通謀して虚偽の本件土地の売買契約書を作成し、譲渡の事実があったかのように装い、架空の本件固定資産売却損を計上して、確定申告をしたものであるから、通則法68条1項にいう税額等の計算の基礎となるべき所得の存在の一部を隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づき納税申告書を提出した場合に当たり、重加算税の賦課要件を満たすというべきである。<原告の主張>

前記のとおり、本件土地は、同1年度中の売却損及び売却益を損益通算しようとする経営努力に基づき、原告から乙に譲渡されたものであって、原告がこれに関する事実を仮装又は隠ぺいしたということはない。

第6  当裁判所の判断

1  争点①(本件固定資産売却損の損金の額への算入の可否)について

(1)  本件土地の売買に関する事実関係について

本件土地の売買に関して、第3「基礎となる事実」記載の事実に加え、証拠〔甲4、5、9、10号証、乙3ないし5、7ないし13、15、16、18号証並びに証人乙及び丙の証言〕及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。

ア 原告は、昭和63年5月31日、本件土地を5億円の価格で購入したが、その際、購入資金をF信用金庫から借り入れるとともに、同日、F信用金庫に対し、本件土地を共同担保の一つとした極度額6億円の根抵当権を設定し、その旨の登記がされた。

その後、本件土地には、平成3年11月29日に権利者をF信用金庫とする極度額3600万円の根抵当権が、平成5年7月23日に権利者をH信用組合とする極度額1億5000万円の根抵当権(平成7年7月28日に権利者が社団法人I協会に移転)が、いずれも原告を債務者として設定され、その旨の登記がされた(いずれも本件土地を共同担保の一つとするものである。)。

なお、原告の貸借対照表によれば、平成9年9月30日当時における原告の借入金の残高は、F信用金庫を借入先とするものが合計3億6849万1000円、H信用組合を借入先とするものが3161万7230円などとされている。

イ 本件土地について、平成6年から平成7年にかけて、横浜市中区役所、横浜市緑区役所、横浜中税務署及び横浜市鶴見区役所による差押えないし参加差押えがされ、さらに平成8年7月22日、F信用金庫の申立てに基づき競売開始決定がされた。

ウ 原告は、平成9年9月期中にCホテルを売却したが、その売却益は2億1648万3686円であり、そのまま期末を迎えた場合には益金が計上される見込みであった。

エ 原告の取締役であった丁は、平成8年10月ころ、丁及び原告代表者と付き合いのあった乙に対し、本件土地を平成9年9月期中に8700万円程度で売却したい旨の意向を伝え、協力方を依頼した。この際、丁は、本件土地を売却する理由として、本件土地がF信用金庫から差し押さえられ、競売の対象になりそうであること、また、平成9年9月までに売却すればその損金をCホテルの売却による利益と通算することができ、税金対策上有利である旨を述べていた。

乙は、この依頼を受けて、Dとともに本件土地の買主を探したところ、Gを含めた数者が候補に挙がった。

オ 原告、B及びDは、平成9年9月30日ころ、本件甲契約書を作成した。本件甲契約書は、本件土地をB及びDが共同購入する内容のものであり、その代金額である8124万9000円は、本件土地を第三者へ売却する際の予定代金額(上記エの原告の希望額8700万円から、本件土地の価格の値下がりを考慮して一定程度減額した額。)から、B及びDの取り分を控除して算出された額であった。また、本件甲契約書の作成の際、Bは、原告に対して手付金名目で200万円を交付し、また、Dも同様に200万円の小切手を振り出した。

カ ところが、Dが買主として予定していたGに本件土地の購入の意思がないことが判明したため、乙は、Dを本件土地の共同購入の名義人から外すとともに、Bに代えて乙個人を購入名義人とすることとし、平成9年10月ころ、本件乙契約書を作成した。本件乙契約書は、乙において、本件甲契約書の写しを取った上で、その写しの買主欄、買主の記名押印欄及び印紙の割印部分(買主の印章に係るもの)を修正液で消し、買主を乙と書き換え、乙個人の署名・押印をし、さらに乙個人の印章で印紙の割印をすることによって作成したものであった。

さらに、乙は、平成9年11月の後半に入り、代金額を原告の希望額であった8700万円に改めることとし、再度、本件乙契約書の写しを取った上で、買主欄、売買価額欄及び印紙の割印部分(乙の印章に係るもの)を修正液で消し、買主欄に再度乙と記載し、売買価額を8700万円と書き換え、さらに印紙の割印をし直すことによって、本件丙契約書を作成した(なお、本件乙契約書及び本件丙契約書の作成時期に関して、乙は、いずれも平成9年9月30日に作成した旨を証言するが、本件甲契約書の作成と同じころに、しかも、少なくとも本件乙契約書及び本件丙契約書については同じ日に、次々に契約書を作り直したという経緯ないし事情についての具体的な説明を伴うものではなく、また、それ自体やや不自然な内容のものであって、本件各契約書の作成経緯に関し、より具体的かつ自然な内容のものとなっている被告係官の乙からの「聴取書」〔乙8、9号証〕の記載と対比すれば、上記証言を採用することはできない。)。

また、上記のとおり、本件土地の購入名義人からDを外し、購入名義人を乙に変更したことに伴い、乙は、平成9年12月初めころ、原告に代わって、Dに対し、原告が受領した手付金相当の200万円(上記オ)に5万円を上乗せして支払い、これを返還した。その一方で、原告と乙において、上記オの手付金名目の合計400万円を乙個人の支払に係るものと扱うこととし、これを引き続き原告が保持することとした。

キ 平成9年10月以降、平成13年9月に至るまで、乙から原告に対し本件土地の残代金(8300万円)が支払われることはなく、また、原告がそのまま本件土地の使用を継続したほか、所有権移転登記手続はされず、これらの履行行為に関する具体的な催告等がされた形跡もなく、本件土地の公租公課も原告が負担していた。

ク 平成13年9月中旬ころ、丁は、従前から付き合いがあった、横浜港ではしけの運航業を営んでいるEの代表取締役である丙に対し、本件土地の購入方を依頼した。

この際、丁は、本件土地の売却の理由として、借入金の返済を銀行から催促されており、同月中に売却する必要がある旨を述べていた。

これを受けて、丙は、本件土地を購入することとした。そして、その代金額については、丁が、本件土地に設定されていた根抵当権を処理するための金額として原告とF信用金庫とで合意した4000万円と、J信用金庫からの借入金2000万円とを合わせた6000万円にしてほしい旨を要請し、丙もこれに応じることとした。

ケ 原告及びEは、平成13年9月25日、売主を原告、買主をE、代金額を6000万円とする本件土地の売買契約書を作成した。この売買契約書の冒頭には、「売主A株式会社(中間省略乙)」との記載があり、また、末尾に、「立会人(中間省略売主)」として「乙」との記載があるが、乙の印章による押印はされていない。なお、同売買契約書の作成は、丁及び丙が行ったもので、乙はその作成に立ち会っていない。

同月27日、F信用金庫本店において、丁、乙及び丙が同席の上で、上記売買契約に係る代金の決済が行われた。この場で、丙は、本件土地に係るF信用金庫の各根抵当権設定登記(上記ア)の抹消登記手続をするために必要な書類が整っていることを確認し、丁に対し、3700万円を交付した(なお、上記アの社団法人I協会の根抵当権は既に消滅していた。)。

コ 同月28日、本件土地に係る上記F信用金庫の各根抵当権設定登記について、抹消登記手続がされた。

サ 乙は、所得税の確定申告書に添付すべき財産及び債務の明細書を、平成9年分については提出せず、平成10年分及び平成11年分については提出したが、本件土地に関する記載をしなかった(なお、平成12年分については、提出義務がなかったため、提出しなかった。)。

(2)  本件土地が原告から乙に売り渡されたかどうかについての検討

以下、第3「基礎となる事実」記載の事実及び上記(1)の本件土地の売買に関する事実関係を踏まえ、平成9年9月30日までに、本件土地が原告から乙に売り渡されたかどうか、すなわち、両者の間で、本件土地の所有権を一定の代金額の支払により原告から乙に対し移転することについての確定的な合意が成立したかどうかについて検討する。

ア 上記(1)エのとおり、原告は、平成8年10月ころから、丁から乙に対し、本件土地を平成9年9月期中に8700万円程度で売却したい旨の意向を伝えていたところ、その際の丁の発言内容((1)エ)や、平成8年7月にF信用金庫の申立てに基づき本件土地について競売開始決定がされていたこと((1)ア、イ)、平成9年9月期中にCホテルの売却により多額の売却益が生じることが見込まれたこと((1)ウ)からすれば、原告の本件土地の売却の目的は、①F信用金庫の申立てによる競売の実行を回避し、任意の売却による債務の返済を図るとともに、②平成9年9月期中に本件土地を売却することで、Cホテルに係る売却益と本件土地に係る売却損とを通算し、同期の法人税に係る負担の軽減を図ることにあったものと認めることができる。

そして、F信用金庫による競売開始決定の申立ては平成9年6月25日に取り下げられたものの(第3、5)、なお根抵当権は存続していたこと、同年8月19日にCホテルの売却益2億1648万3686円が原告の固定資産売却益勘定に計上されていたこと(第3、2(2)ア)からすれば、原告は、平成9年9月ころの時点においても同様の目的を有していたものと認めることができ、本件各契約書が、いずれも平成9年9月期の末日である平成9年9月30日付けで作成されていることは、特に②の意図が反映されたものと推認することができる。

イ 次に、本件各契約書の作成の経緯を見ると、Dの代表取締役であるKは、被告の係官による聴取に対し、本件甲契約書を作成したのは、乙の依頼を受けて、F信用金庫が本件土地を競売により処分することをやめさせる目的であったこと、手付金名目の200万円の小切手はF信用金庫に対する見せ金的なものであったこと、Dとしては仲介手数料を取得することが目的であり、同社が本件土地を取得する意思はなかったことを供述しており〔乙10、11号証〕、また、D側の事情に起因して契約の履行に至らなかったのに、Dに手付金相当額が返還されていること((1)オ、カ)などに照らせば、本件甲契約書が作成された平成9年9月30日ころ、その契約書の内容どおりに買主が残代金を支払って本件土地の所有権を取得することが予定されていたものと認めることは困難というべきである。また、原告が代金8700万円による本件土地の売買の根拠として主張する本件丙契約書は、乙において、本件甲契約書や本件乙契約書の写しに修正液等で変更を加えることによって作成したもので、原告が改めて記名押印をしたものではないことや((1)カ)、乙が買主や代金額の変更について改めて原告の了解を得たものではないこと〔乙9号証、乙証言〕に照らせば、本件丙契約書が原告及び乙の意思の合致に基づいて作成されたものということはできないというべきである。

そして、そもそも、本件丙契約書は平成9年11月の後半に入って作成されたものと認められる((1)カ)のであって、既に原告の平成9年9月期が経過した後に作成された書面なのである。

ウ また、乙は、本件各契約書を作成するに当たって、本件土地に設定されていたF信用金庫等による根抵当権が売買によってどのように処理されるかについて、原告側に具体的に確認しておらず、しかも、その各代金額については、本件土地の時価を具体的に調査をすることなく、基本的には原告が平成8年10月時点で希望額として述べた8700万円に従って定めたものであった〔乙証言〕。しかし、不動産業を営む会社の代表取締役である原告において、所有権を取得する土地に設定された根抵当権の処理は、極めて重大な関心事であるはずであるのに、その確認をせず、また、いわゆるバブル経済の崩壊後の不動産価額が下落する傾向が続く中で、速やかに転売することができる具体的な目途もないままに、代金額も自ら具体的な調査をすることなく原告の言い値で決めるということは、乙に本件土地の所有権を真に取得する意思があったこととは相容れない事情というべきである。その上、乙は、乙が個人で本件土地を取得する理由について、当初の丁との約束があり、買わないと原告が困るからなどと証言するにとどまり〔乙証言〕、乙が個人で本件土地を購入する必要性ないし合理性があったものといえるような事情は窺われない。

エ さらに、本件丙契約書の履行状況を見ると、「手付金」の交付を除くほかは、平成13年9月に至るまで、残代金の支払、土地の引渡し及び所有権移転登記手続等の履行あるいはその具体的な催告等はされなかった((1)キ)。また、平成9年10月以降も、原告が、乙と特に利用関係についての取り決めをすることなく本件土地の使用を継続し、公租公課の負担も継続している一方〔乙証言〕、乙の平成9年以降の所得税の確定申告書において、財産及び債務の明細書の添付がされていなかったり、同明細書に本件土地に関する記載がないなど((1)サ)、原告及び乙において、真摯に本件土地の所有権の被告への完全な移転を前提とした、あるいはそれに向けた行為をしていたものとは窺われないのである。

オ 加えて、平成13年9月の本件土地のEへの売却は、原告の取締役である丁が、丙に対して本件土地の購入方を依頼したことによるものであり、その代金額についても、丁と丙との交渉において、専ら原告の事情に基づいて決定されたもので、この売買や代金額の決定に乙が実質的に関与した事実は認められないのである((1)ク)。乙が本件土地の所有者であるとすれば、自身が重大な利害関係を有するはずのその売買及び代金額の決定に関与しないということは想定し難いものというほかなく、上記売買の実体は、原告とEとを契約当事者としてされたものとみることが自然というべきである。

カ 以上のような、本件各契約書の作成経緯、その契約内容についての原告及び乙の関わり合い、契約書作成後の履行状況やEへの本件土地の売却の経緯等を総合すると、平成9年9月期が経過する平成9年9月30日までに、原告と乙との間に、本件土地の所有権を一定の代金の支払により原告から乙に移転することについての確定的な合意は成立しなかったものと認めざるを得ない。原告がその主張の根拠とする本件丙契約書は、原告の平成9年9月期の法人税の負担を軽減するために、当事者の真の意思に基づかずに作成されたものと推認するほかはないというべきである。

(3)  原告の主張等について

原告は、その主張の論拠として、平成13年9月にされた本件土地のEへの売却に関し、売買契約書において乙が「中間省略売主」と記載されていることや、乙の原告に対する未払代金債務2300万円について、乙から原告に対する貸付金債権の一部と対当額で相殺されたことを挙げる(第5、2<原告の主張>(1)オ)。しかし、前者の点については、上記(2)オに説示したとおり、上記契約書に立会人(中間省略売主)として記載された乙は、本件土地の売主として当該売買契約の締結に実質的に関与していたものとは認められないのであって、単に上記の記載をもって乙が売主の地位にあったということはできないのであり、また、後者の点についても、その主張のような貸付金の存在や相殺の事実を裏付ける客観的証拠は何ら存在しないから、これを原告から乙への本件土地の売却の事実を根拠づけるものとすることはできない。

なお、原告と乙は、平成12年9月24日付けで、平成9年9月30日の本件土地の売買に係る代金決済について協議をした旨の「確認書(合意書)」と題する書面を作成しているが〔甲6号証〕、契約日から約3年が経過し、さらに、本件土地の売買の有無に関する乙らへの被告による聴取り調査が開始された後に作成された書面であること〔乙7号証〕に照らせば、この書面が作成されたことをもって、両者間で本件土地の売買がされたことの根拠とすることはできない。

そして、その他、平成9年9月30日の原告と乙との間の本件土地売買契約の成立に関して原告が主張する点を考慮しても、上記(2)カの認定判断を左右することはできない。

(4)  本件各更正処分の適法性

以上のとおり、原告が平成9年9月30日までに本件土地を乙に売り渡した事実はないから、原告の平成9年9月期の法人税について、本件固定資産売却損を損金の額に算入することはできない。

そして、これを前提とした原告の本件各事業年度の法人税の所得金額、欠損金額及び差引所得に対する法人税額は、前記第4、1ないし3の被告の主張のとおりと認められ、これらは本件各更正処分における金額といずれも同額であるから、本件各更正処分は適法である。

2  争点②(仮装、隠ぺいの有無)について

原告は、本件土地を乙に売り渡した事実がないにもかかわらず、事実に反する本件丙契約書に基づき、平成9年9月期に本件固定資産売却損を損金として計上し、これに基づいて納税申告書を提出したのであるから、通則法68条1項が規定する、国税の課税標準又は税額等の計算の基礎となるべき事実の一部を仮装又は隠ぺいし、これに基づき納税申告書を提出していたときに該当するものと認めることができる。

そして、上記1(4)のとおり平成9年9月期更正処分は適法であるところ、これに基づいて原告が納付すべき税額に対し通則法68条1項を適用して算出される重加算税の額は、本件重加算税賦課決定処分における金額と同額であるから、本件重加算税賦課決定処分は適法である。

第7  結論

以上のとおりであって、原告の請求は、いずれも理由がないからこれらを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 川勝隆之 裁判官 菊池絵理 裁判官 貝阿彌亮)

物件目録

所在 横浜市中区

地番

地目 宅地

地積 127.90平方メートル

別紙

課税の経緯

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別紙

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