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横浜地方裁判所 平成15年(わ)376号の2 判決 2004年1月22日

主文

被告人を懲役5年以上10年以下に処する。

未決勾留日数中270日をその刑に算入する。

金属バット1本(平成15年押第24号符号1)を没収する。

理由

(認定犯罪事実)<省略>

(証  拠)<省略>

(事実認定の補足説明)<省略>

(法令の適用)

被告人の第1の行為は刑法60条、240条前段に、第2の行為は同法60条、243条、240条後段にそれぞれ該当するところ、各所定刑中、第1の罪について有期懲役刑を、第2の罪について無期懲役刑をそれぞれ選択し、以上は同法45条前段の併合罪であるが、第2の罪について無期懲役刑を選択したので、同法46条2項本文により他の刑を科さないこととし、なお後記犯情を考慮し、同法66条、71条、68条2号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で、少年法52条1項本文、ただし書、2項により、被告人を懲役5年以上10年以下に処し、刑法21条を適用して未決勾留日数中270日をその刑に算入することとし、押収してある金属バット1本(平成15年押第24号符号1)は、第2の強盗殺人未遂の用に供した物で被告人以外の者に属しないから、同法19条1項2号、2項本文を適用してこれを没収し、訴訟費用は、刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。

(量刑の事情)

前段<省略>Aとほぼ同旨

被告人は、中学時代には野球部に、高校に入ってからはアメリカンフットボール部に所属し、体を鍛え続けてきたスポーツマンでありながら、本件各犯行の実行犯として各被害者に対して金属バットを容赦なく振り下ろすなどして執拗に暴行を加えたというのである。前記本件の罪質の重さ、犯行の動機・態様の悪質さ、結果の重大性、被害感情の厳しさ、社会的影響、近時の少年法改正の趣旨等を考え併せると、その刑事責任は相当重いというほかない。

しかしながら、他方、被告人は、いずれの犯行においても運動部の先輩である共犯者が襲う対象を見定め、その指示に従って実行し、強取した金品の分配も共犯者がしていることなどから従属的であったともいえること、強盗傷人について財物奪取は未遂にとどまり、強盗殺人未遂については被害品の一部が回復していると窺えること、強盗傷人の被害者に対して、被告人の両親が謝罪に赴くとともに、被告人及び共犯者の各両親が治療費及び慰謝料の一部として合計850万円(うち被告人の両親が800万円を負担)を支払っていること、強盗殺人未遂の被害者に対しても、被告人の両親が謝罪に赴くとともに、相当額の一時金を支払う旨申し入れていること、本件により高校を退学していること、被告人には前歴もなく、気が小さく、主体性に乏しい性格等から、知的能力に優る共犯者等の影響を強く受けて短期間で非行性が進んだことが窺えること、そのような性格の形成には父母の養育態度等にも問題が窺えるが、父母なりに本件被害の謝罪・弁償に努め、当公判廷において被告人の監督・更生に努める旨誓約していること、被告人は、自首には該当しないものの(弁護人は自首が成立する旨主張するが、捜査報告書(甲55)等関係証拠によれば、被告人が警察に出頭した時点で既に警察が本件第2の犯行の被疑者として被告人らを把握していたうえ、第1の犯行についても被告人らの犯行である旨の情報提供を受けていたことなどが認められるので採用できない。)、第2の犯行の十数日後、両親に付き添われて警察に出頭して以後、第1の犯行や余罪も含めて詳細に供述するなどして捜査に協力してきたほか、弁護人を通じて各被害者宛の謝罪文を送るなどし、殺意は否定しているものの、審判や公判審理を経て被告人なりに自己の行為の重大さについて認識を深めつつあり、年齢(行為時17歳1ないし2か月、判決時18歳4か月)等に照らし、未だ可塑性があり、改善・更生の可能性も窺えることなどの事情も認められる。

これらの事情に、共犯者との刑の均衡、検察官の求刑をも考え併せると、被告人に対しては、保護処分を相当とする事情があるとは到底認められないものの、酌量減軽を施し、不定期刑の最高刑である主文の刑に処するのが相当と思われる。

(裁判長裁判官・廣瀬健二、裁判官・片山隆夫、裁判官・西山真人)

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