横浜地方裁判所 平成15年(行ウ)19号 判決 2003年9月03日
原告
甲
被告
厚木税務署長 早川正
指定代理人
本田利美
同
磯野宏
同
渡部美和子
同
成田兼二
同
小宮山隆
同
山本雅一
主文
1 原告の本件金銭請求に係る訴えを却下する。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1 原告
(1) 被告が原告に対して平成13年10月31日付けでした平成12年分所得税の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
(2) 被告は、原告に対し、25万8000円を支払え。
(3) 訴訟費用は、被告の負担とする。
2 被告
主文と同旨
第2事案の概要
本件は、原告が居住用の土地の購入資金を勤務先を経由して金融機関から借り入れたところ、原告において、この借入関係が租税特別措置法(平成13年法律第7号による改正前のもの。以下「特措法」という。)41条1項に規定する住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の要件を充足するとして、原告の平成12年分の所得税について更正の請求をしたのに対し、被告がこれを棄却したことから、この被告の処分の取消しを求めた事案である。
第3基礎となる事実
(以下の事実は、争いがない事実であるか、記載した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実である。)
1 原告は、株式会社A(ただし、平成14年10月1日、Aより社名変更。以下「勤務先」という。)の社員である。
2 原告の本件土地の取得等
(1) 原告は、平成11年10月25日、B株式会社から、厚木市温水字に所在する宅地151.32平方メートルの土地(以下「本件土地」という。)を購入した〔甲4号証〕。
(2) 原告は、本件土地の取得に要する資金に充てるため、勤務先を介して、株式会社C銀行(現、株式会社C銀行。以下「C銀行」という。)に対して、2000万円の住宅融資の申込みを行い、平成11年12月27日に同額の融資(以下「本件借入金」という。)の実行を受けた。
(3) 原告は、本件土地上の居住用家屋の新築に要する資金に充てるため、住宅金融公庫に対して1540万円の融資の申込みを行い、平成12年8月2日に、同額の融資の実行を受けた〔甲4号証〕。
(4) 原告は、平成11年11月22日、D厚木店との間で、本件土地上に木造スレート葺2階建95.25平方メートルの居宅(以下「本件家屋」という。)を建築させる旨の工事請負契約を請負金額1440万4045円で締結して、平成12年6月14日、本件土地上に本件家屋を新築し、同月25日、これを居住の用に供した〔甲4号証〕。
(5) なお、本件家屋には、本件借入金についての債務を保証した勤務先の当該保証委託契約の求償債権を担保するため、平成14年12月18日付けで抵当権者を勤務先とする抵当権が設定された〔甲2号証〕。
3 本件確定申告
原告は、平成12年分の所得税について、確定申告書に総所得金額(給与所得の金額をいう。以下同じ。)を334万4800円、住宅借入金等特別税額控除額を15万3200円、還付金の額に相当する税額を12万2500円と記載して、平成13年2月28日、確定申告をした(以下「本件確定申告」という。〔甲4号証〕)。
4 本件更正の請求及び本件処分
(1) 原告は、平成13年8月27日、総所得金額を334万4800円、住宅借入金等特別税額控除額を34万7700円、還付金の額に相当する税額を19万7300円とすべき旨の更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をしたが、被告は、平成13年10月31日付けで更正をすべき理由がない旨の通知(以下「本件処分」という。)をした〔甲4号証〕。
(2) 原告は、本件処分を不服として、平成13年12月31日、被告に対し、異議申立てをしたが、被告は、平成14年3月28日、これを棄却した〔甲4号証〕。
(3) 原告は、平成14年4月25日、国税不服審判所所長に対し、審査請求をしたが、国税不服審判所所長は、平成14年12月9日付けでこれを棄却した。
第4主要な争点と当事者の主張
1 主要な争点
本件借入金が、特措法41条1項4号に規定する「使用者から借り入れた借入金」に該当するかどうか。
2 当事者の主張
(1) 原告の主張
ア 本件借入金が特措法41条1項4号の要件を充足していることについて
(ア) 原告は、勤務先の社員住宅金融規定に基づき、原告の使用者と本件借入金債務についての保証委託契約(以下「本件保証委託契約」という。)を締結しており、同契約は、貸付けより3年以内に住宅を建築することが条件で、C銀行との契約が成立したと同時に成立する契約となっている。
したがって、貸付けより3年以内に住宅を建築する条件と本件借入金は切り離せるものではなく、本件借入金は、住宅の取得が前提の土地の取得のための借入金であるといえる。
(イ) 本件土地上に本件家屋を建築したことは、平成13年8月21日に原告の使用者に確認されており、貸付けより3年以内という債務保証の条件を満たしている。
(ウ) 本件家屋には平成14年12月18日に本件保証委託契約の求償債権を担保するために抵当権が設定されており、本件借入金は、住宅の取得が前提の土地の取得であり、住宅借入金等特別税額控除を適用するに値する借入金であったといえる。
(エ) 平成11年度税制改正にて住宅借入金等特別税額控除の控除対象に「家屋の取得とともにその敷地の用に供される土地等」の取得に要する資金に充てるための借入金が加わったのは、決して投資目的の土地までを容認するものではないとされている。
また、住宅の取得が前提の土地の取得という客観的判断基準が要請されていることにもかんがみれば、控除対象の要件は厳格な文理解釈をすべきものではなく、住宅の取得が前提の土地の取得か否かを客観的に判断すべきである。
(オ) 原告は、使用者の融資制度を用いて資金を調達したものであるが、原告の使用者がどのような融資制度を制定するかは、原告の責ではない。使用者が自らの資金を貸し付けても、債務保証という形で資金提供の手段を作っても、借り入れる者には、住宅取得が前提の土地取得の資金を借り入れるという点で、変わりがない。借り入れる者の責ではないのに、文理解釈を厳格に行うことにより、住宅借入金等特別税額控除の対象としないのは、不公平であるといわざるを得ない。
また、租税特別特措法施行令(以下「特措法施行令」という。)26条17項では、使用者そのものではなく、使用者に代わって貸付けを行っている特定の法人からの借入金も控除対象としている。
したがって、文理解釈を厳格に行って、租税特別措置は好ましくない制度であるというのではなく、住宅の取得が前提の土地の取得か否かを客観的に判断し、公平な制度となるように運用をすべきである。
なお、本件借入金も、原告の使用者に代わってC銀行が貸し付けているものであり、C銀行に住宅取得を確認されている。
(カ) 上記のとおりであるから、本件借入金は、客観的に判断して、住宅の取得が前提の土地の取得であるといえ、特措法41条1項4号の要件を充足するというべきであるから、同条項の適用を認めなかった本件処分は取り消されるべきである。
イ 金銭請求について
(ア) 本件処分は、上記のとおり、違法であるから、本件確定申告における還付金の額と本件更正の請求における還付金の額の差額に相当する7万4800円の返還を求める。
(イ) 平成13年度の借入金は、社内融資分1889万0483円、住宅金融公庫からの融資分1497万7566円であり、その合計を住宅借入金等の平成13年年末残高とした場合の還付額は26万0950円、住宅金融公庫からの融資のみを住宅借入金等の平成13年年末残高とした場合の還付額は15万7750円であるから、この差額10万3200円の返還を求める。
(ウ) 原告は、社内融資に関して、取得した住宅に抵当権を設定し、平成14年12月20日に登記した。この抵当権設定は、本来必要ないが、被告が特措法41条1項4号の適用を不当に否認しているため、その代替処置として特措法41条1項1号(租税特別措置施行令26条7項6号イ)の要件を満たすために設定したものである。
この抵当権設定に要した登録免許税8万円の支払を求める。
(2) 被告の主張
ア 本案前の答弁の理由
原告の本件金銭請求は、還付金の還付を求める当事者訴訟ないし登記費用の賠償を求める民事訴訟としての給付訴訟であると解されるところ、被告は国の機関にすぎず、権利義務の主体とはなり得ないから、上記訴えについての当事者能力を有さず、原告の上記訴えは、不適法である。
イ 本案について
(ア) 特措法41条1項について
特措法41条1項は、居住者が、国内において、居住用家屋の新築若しくは居住用家屋で建築後使用されていないもの若しくは建築後使用されたことのある家屋で所定のものの取得(配偶者等所定の者からの取得及び贈与によるものを除く。)又はその居住の用に供している家屋の増改築等(以下「住宅の取得等」という。)をして、これらの家屋を平成9年1月1日から平成13年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合(これらの家屋をその新築の日若しくはその取得の日又はその増改築等の日から6か月以内にその者の居住の用に供した場合に限る。)において、その者が当該住宅の取得に係る次に掲げる借入金又は債務(以下「住宅借入金等」という。)の金額を有する場合、当該居住の用に供した日の属する年以後6年間(同日の属する年が平成11年若しくは平成12年である場合又は同日が平成13年1月1日から同年6月30日までの期間内の日である場合には、15年間)の各年のうち、その者のその年分の合計所得金額が3000万円以下である年については、その年分の所得税の額から、住宅借入金等特別控除額を控除する旨規定し、住宅借入金等に該当する借入金等の具体的内容については、同項1号ないし4号において定めている。
同項4号は、当該住宅の取得等に要する資金に充てるためにその者に係る使用者(その者が給与所得者等である場合における給与等の支払者をいう。)から借り入れた借入金(当該住宅の取得等とともにする当該住宅の取得等に係る家屋の敷地の用に供される土地等の取得に要する資金に充てるために当該その者に係る使用者から借り入れた借入金として政令で定めるものを含む。)又はその者に係る使用者に対する当該住宅の取得等(当該住宅の取得等とともにする当該住宅の取得等に係る家屋の敷地の用に供される土地等の取得として政令で定めるものを含む。)の対価に係る債務で、契約において償還期間が10年以上の割賦償還又は割賦払の方法により返済し、又は支払うこととされているもの、と規定している。
(イ) 本件借入金と特措法41条1項4号
本件借入金は、原告の勤務先を経由して実行されているものの、原告が勤務先から借り入れたものではなく、原告がC銀行と金銭消費貸借契約を締結し、C銀行から借り入れたものである。
したがって、本件借入金が居住用家屋の敷地の用に供する土地の取得に要する資金に充てるための借入金であったとしても、特措法41条1項4号に規定する「使用者から借り入れた借入金」の要件を満たすものではない。
また、租税法規については、法的安定性の要請が強く働くから、その解釈は原則として文理解釈によるべきであり、みだりに拡張解釈や類推解釈を行うことは、租税法律主義(憲法84条)の見地に照らしても相当ではない。特に租税特別措置は、担税力の点においては同様の状況にあるにもかかわらず、何らかの政策目的の実現のために特定の要件に該当する場合に税負担の軽減又は加重することを内容とする措置であり、公平の観点からみて好ましくない制度であるとされていることにかんがみれば、その要件規定の解釈は厳格に行われるべきである。
したがって、特措法41条1項4号に該当しないことが、文理上明らかである本件借入金について、当該規定の適用が認められないことは明らかである。
(ウ) 本件借入金と特措法41条1項1号ないし3号
本件借入金が、特措法41条1項4号に該当しないことは、上記のとおりであるが、なお念のため、本件借入金が特措法41条1項1号ないし3号にも該当しないことについて付言しておく。
a 特措法41条1項1号
本件借入金は、原告の居住用家屋の敷地の取得資金に充てるため、金融機関から借り入れた借入金であるところ、特措法41条1項1号は、金融機関等から借り入れた借入金のうち、当該住宅の取得等に要する資金に充てるための借入金のほか、当該住宅の取得等とともにする当該住宅の取得等に係る家屋の敷地の用に供される土地等の取得に要する資金に充てるためにこれらの者から借り入れた借入金として政令で定めるものについて規定し、後者の具体的内容については、特措法施行令26条7項1号ないし6号に規定されている。
そして、本件借入金について、特措法施行令26条7項1号ないし5号に該当しないことは、その文言上明らかである。
特措法施行令26条7項6号は、新築した居住用家屋の敷地の用に供される土地等をその新築の日前2年以内に取得した場合における、当該土地等の取得に要する資金に充てるための民間金融機関等からの借入金について規定するが、これが住宅借入金等に該当するためには、当該借入金に係る債権を担保するために当該居住用家屋を目的とする抵当権の設定がされたこと又は当該借入金にかかる債務を保証する者の当該保証に係る求償権を担保するために当該居住用家屋を目的とする抵当権の設定がされたことを要件としているところ、本件処分当時に、本件借入金についての債権を担保するための抵当権ないし本件保証契約による求償権を担保するための抵当権は、いずれも設定されていなかったことから、本件借入金が同号の借入金に該当しないことは明らかである。
b 特措法41条1項2号及び3号
本件借入金は、原告が金融機関であるC銀行から借り入れたものであり、建設業者に対する住宅の取得等の工事の請負代金又は宅地建物取引業者等、居住用家屋の分譲を行う一定の者に対する住宅の取得等の対価についての債務(特措法41条1項2号)、ないし、中古住宅の取得に伴うE公団、F公社又はG協会を当事者とする債務の承継に関する契約に基づく割賦払債務のいずれにも該当するものではない。
第5当裁判所の判断
1 本件借入金が特措法41条1項4号に規定する「使用者から借り入れた借入金」に該当するかどうかについて
(1) 特措法41条1項の規定の内容
特措法41条1項は、その1号ないし4号において、「住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除」を受けるための要件について具体的に規定しており、住宅を取得するための借入金等があるからといって、当然に上記所得税額の特別控除を受けることができるものでないことはいうまでもないのであって、上記1号ないし4号の規定する要件を充足する場合にはじめて、上記特別控除を受けることができるのである。
ところで、特措法41条1項1号は、「金融機関・・・から借り入れた借入金・・・で政令で定めるもののうち、・・・とされているもの」と規定しており、住宅の取得等に要する資金に充てるために金融機関から金銭を借り入れた場合において、政令で定める一定の要件を充足するものに限り、所得税額の特別控除を認めている。
そして、特措法41条1項4号は、「その者に係る使用者(その者が29条1項に規定する給与所得者等である場合における同項に規定する使用者をいう。・・・)から借り入れた借入金・・・で、・・・とされているもの」と規定しており、住宅の取得等に要する資金に充てるために使用者から金銭を借り入れた場合においても、一定の要件を充足するものに限り、所得税額の特別控除を認めている。
(2) 本件借入金が特措法41条1項4号の要件を充足するかどうかについての検討
原告は、本件借入金が特措法41条1項4号の要件を充足するものであると主張する。
しかし、本件借入金は、基礎となる事実2(2)のとおり、勤務先を介するものではあったが、その借入先はC銀行であって、使用者である勤務先から借り入れたものではない。
そして、特措法41条1項4号にいう「使用者から借り入れた借入金」とは、使用者と被用者との間で金銭消費貸借契約が締結され、これに基づいて被用者が使用者から金銭の交付を受ける場合における、そのような借入金を指すものと解されるのである。
そうであるとすると、本件借入金は、特措法41条1項4号に規定する「使用者から借り入れた借入金」に該当しないことは明らかというべきである。
したがって、その余の点についてみるまでもなく、本件借入金について特措法41条1項4号の規定に基づく住宅借入金等特別税額控除額を受ける余地はないというほかはない。
(3) 本件借入金が特措法41条1項1号の要件を充足するかどうかについての検討
本件借入金はC銀行からの借入金であるので、念のため、本件借入金が特措法41条1項1号の要件を充足するものでないかどうか検討する。
特措法41条1項1号の委任を受けた特措法施行令26条7項6号は、住宅借入金等特別税額控除が認められるためには、当該借入金に係る金融機関の債権を担保するため居住用家屋に抵当権の設定がされたこと、又は、当該借入金についての債務の保証に係る求償権を担保するため居住用家屋に抵当権の設定がされたこと、を要件として規定している。
しかし、本件借入金について、債務の保証に係る求償権を担保するため本件家屋に抵当権の設定がされたのは、基礎となる事実2(5)のとおり、平成14年12月18日になってのことであり、本件処分時には未だ抵当権は設定されていなかったところである。
したがって、本件借入金が特措法41条1項1号の要件を充足するものではないことも明らかというべきである。
(4) 原告の主張について
ア 原告は、住宅の取得を前提とする土地の取得のための借入金であることが客観的に明らかな本件借入金について、特措法41条1項4号が適用されないとするのは不公平であるとする。
しかし、上記(1)に説示したところから明らかなように、特措法41条1項の規定は住宅借入金等を有する場合のすべてについて所得税額の特別控除を認める趣旨のものではないのであるから、具体的な条件いかんに応じて上記特別控除が認められる者と認められない者が生じることは不可避である。
そして、特措法及び特措法施行令が上記特別控除の適用要件について具体的に規定している以上、文理解釈を離れて安易に拡張解釈ないし類推解釈をすることは、一定の政策目的実現のために特定の要件に該当する場合にのみ税負担を軽減し又は加重する特措法の趣旨を没却し、本件に即していえば、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の制度の適用要件を不明確なものとし、法的安定性を損ない、より不公平な結果を生じさせかねないものである。
確かに、本件については、原告は、勤務先の住宅資金融資に関する助成制度を利用し、本件借入れをしたものであり、この場合には、借入先は金融機関となり、勤務先は保証人となるという関係を原告において承認せざるを得ないところである。しかし、そうであるからといって、本件借入金はあくまで金融機関からの借入金である以上、本件借入金をもって特措法41条1項4号に規定する「使用者から借り入れた借入金」に該当するとすることはできないというほかはないのである。
イ なお、原告は、特措法施行令26条17項において、使用者そのものではなく、使用者に代わって貸付けを行っている特定の法人からの借入金も控除対象としていることを、本件借入金について特措法41条1項4号の規定する「使用者から借り入れた借入金」と同視すべきであるとする主張の論拠として指摘する。
しかし、特措法施行令26条17項は、使用者に代わって貸付けを行っている特定の法人についても要件を定めており、本件におけるC銀行がそれに該当しないことは明らかであるから、この点をその主張の論拠とすることはできない。
ウ したがって、本件借入金についても、特措法41条1項4号の適用を認めるべきとの原告の主張は採用することができない。
(5) まとめ
上記のとおりであって、本件借入金については特措法41条1項4号の要件を充足しないから、同号の適用を認めなかった本件処分は適法というべきである。
2 本件金銭請求にかかる訴えの適法性について
被告は国の機関であって、権利義務の主体とはなり得ない存在であるから、原告の被告に対する金銭の支払を求める訴えは、当事者能力を有さない者に対する訴えとして、不適法というべきである。なお、上記のとおり、本件処分は適法であるから、原告の金銭請求は理由がないことも明らかである。
第6結論
以上のとおりであるから、原告の金銭請求についての訴えを却下し、原告のその余の請求を棄却し、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
〔口頭弁論の終結の日:平成15年7月7日〕
(裁判長裁判官 川勝隆之 裁判官 菊池絵理 裁判官 堤雄二)