横浜地方裁判所 平成16年(む)302号 決定 2004年5月28日
主文
本件上訴権回復の請求を棄却する。
本件控訴を棄却する。
理由
本件上訴権回復請求の要旨は、「モクヒしてますが罠にはめられた。」ため上訴権回復を請求するというものであり、申立人は、同時に控訴の申立てをしている。
そこで検討するに、一件記録によれば、申立人は、平成16年5月25日当庁において現住建造物等放火、住居侵入未遂、住居侵入、窃盗罪により懲役4年6月の有罪判決を受け、この判決に対して同日自ら上訴放棄の申立てをしたことが認められるところ、一件記録及び当裁判所の事実調べの結果によれば、上訴の放棄について無効を来すような事由は見当たらない。かえって、被告人は、本件判決宣告時、控訴しなければならないなどと裁判長に言い、同日、副看守長との面接で、刑務所に行こうと思うと述べたことについて、同人から、上訴を放棄すると後で控訴を申し立てられなくなるから冷静に判断した方が良い旨説明を受け、その後、その意味を理解しながら刑に服する決意をして自ら上訴放棄の申立てをしたものと認められるから、上訴放棄申立時にその判断能力等が保持されていたことは明らかである。したがって、申立人自らが、有効に上訴の放棄をしている以上、上訴権者又は代人の責めに帰することができない事由によって上訴の提起期間内に上訴をすることができなかった場合(刑訴法362条)に当たらないことは明白であるから、本件上訴権回復の請求は理由がない。
そうすると、本件上訴権回復請求と同日付けでなされた控訴の申立ては、明らかに控訴権の消滅後にされたもの(同法375条)となる。
したがって、本件上訴権回復請求はその理由がなく、また、本件控訴の申立ては明らかに不適法であるから、いずれもこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・廣瀬健二、裁判官・片山隆夫、裁判官・西村真人)