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横浜地方裁判所 平成17年(ワ)1563号 判決 2006年10月12日

原告

甲野太郎

同訴訟代理人弁護士

小賀坂徹

渡辺亨

被告

有限会社キャプテン・レディ

同代表者代表取締役

乙山一枝

同訴訟代理人弁護士

安東宏三

主文

1  原告が,被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

2  被告は,原告に対し,平成16年1月から本判決確定の日まで,毎月末日限り1か月当たり27万7875円の割合による金員を支払え。

3  本件訴えのうち,この判決確定後に支払期日が到来する賃金の支払を求める部分を却下する。

4  原告のその余の請求を棄却する。

5  訴訟費用は被告の負担とする。

6  この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1  請求

1  主文第1項同旨

2  被告は,原告に対し,平成16年1月から毎月末日限り,1か月当たり28万6250円の割合による金員を支払え。

第2  事案の概要

本件は,原告(被用者)が,被告(使用者)のした解雇は相当性を欠き,労働組合を結成しようとしたことを理由とした不当労働行為であるから無効であると主張して,被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,雇用契約に基づき平成16年1月から毎月末日限り1か月当たり28万6250円の割合による賃金の支払を求めた事案である。

1  前提事実(証拠等の記載のない事実は争いがない。)

(1)  被告は,昭和62年4月18日に設立された有限会社であり,キャプテンフーヅ株式会社(以下「キャプテンフーヅ」という。)の商品の会員宅への配送・集金を主な業務としている。被告代表者の夫である乙山一郎(以下「一郎」という。)は,キャプテンフーヅの代表取締役兼被告の監査役であり,被告代表者の長男である乙山二郎(以下「二郎」という。)は,被告及びキャプテンフーヅの取締役である(甲1,乙84)。

(2)  原告は,平成6年7月20日,被告との間で雇用契約(以下「本件雇用契約」という。)を締結し,その後配送員として勤務した(ただし,被告は,本件雇用契約が純然たる雇用というよりも,業務委託契約的な法律関係であると主張とするが,被告代表者の供述中にも,雇用契約であることを認める部分があることからすれば,被告の上記主張は理由がない。)。

(3)  被告は,平成15年12月27日,原告に対して,解雇の意思表示をした(以下「本件解雇」という。)。

(4)  原告は,平成16年1月,全労連・全国一般労働組合神奈川地方本部(以下「本件組合」という。)に個人で加入した。

(5)  原告は,当庁に対し,被告を債務者として雇用契約上の地位を仮に定めるとともに,平成16年1月分以降の賃金の仮払を求める仮処分を申し立てた。当庁は保全の必要性を否定して原告の申立てを却下したが(乙123),原告はこれを不服として東京高等裁判所に抗告し,同裁判所は原決定を変更して,被告に対し,平成17年1月から平成18年6月まで,毎月末日限り,1か月金15万円の割合による金員の仮払を命じる決定をした(甲12)。

2  被告の主張

(1)  被告は,次のとおり,原告が対外的に被告に対する信用を低下させ,被告内部の規律や上司の指示に従わず,同僚や上司に対する暴力的な言動によって被告内部の円滑な業務遂行を妨げたことを理由に,原告を解雇したものであり,本件解雇には,合理的な理由がある。

ア 被告の信用を対外的に低下させた原告の行為は次のとおりである。

(ア) 会員居住マンションの管理人とけんかをし,会員に迷惑をかけた。

(イ) 配送車を乱暴に運転した。

(ウ) 配送時に会員が不在なのに小さな子供から集金した。

(エ) 会員を怖い目でにらんだ。

(オ) ベルを鳴らしてすぐに会員が出てこないとドアを乱暴にたたいた。

(カ) 会員宅の植木鉢の花を散らしても,謝らない。

(キ) 会員が代金と保冷バッグを用意して待っているのに代金の回収に行かない。

(ク) 会員から持ち帰るように要請された商品の持ち帰りを拒否した。

(ケ) 洗車をせず,汚い車両で配送に回った。

(コ) 何度も交通事故を起こした。

被告は,原告の上記行為に対する苦情を会員から何度も受け,その都度,原告を注意した。しかし,原告は,自分の非を認めて反省することをせず,顧客の頭がおかしい等と強弁するのが常であった。そのため,多くの顧客が取引をやめ,被告は,不利益を受けた。

イ 内部規律に従わず,被告の業務を妨げた原告の行為は次のとおりである。

(ア) 会員から代金を二重に徴収しても,事実調査をせず,被告に弁償させた。

(イ) 原告の担当コース内で配達ミスがあっても商品の再配達を拒んだ。

(ウ) 保冷バッグを荷台に放置した。

(エ) 定められた頻度で洗車をしなかった。

(オ) 日報をきちんとつけなかった。

(カ) 過不足金の計算ミスを繰り返した。

ウ 被告内の人間関係を破壊する原告の暴力的な言動は次のとおりである。

(ア) 後輩が入ってくるとすごみのある目つきで「自分の言うことを聞け。」等と言って従わせようとした。

(イ) 他の従業員に対して声を荒げて激しい物言いをした。

(ウ) 連絡事項を伝えても暴言を吐く。

(エ) 上司である丙川二枝マネージャー(以下「丙川」という。)の指示に従わず,「丙川の言うことは一切聞かない。」と公言するようになった。

(2)  原告の以上のような言動・勤務態度に対し,被告代表者は継続的に注意・指導を行っていたが,改善は見られなかった。

そして,原告は,平成15年7月20日ころ,被告の事務主任であった丁田三枝(以下「丁田」という。)から電話で配達ミスのあった商品の回収を指示されたことに対して,「行かないっすよ。遠く離れたから」「誰がミスしたんだ。」等と言って抵抗し,ようやく回収に行き帰社した後は丁田らに怒鳴り声で文句を言った。

また,原告は,同年8月ころ,丙川から電話で配達ミスの商品の回収を指示されたところこれに従おうとせず,「いいんすかそんなこと言って。俺出るとこ出ますよ。」などと丙川を脅し始め,電話を替わった被告代表者がさらに同様の指示をしても「戻ったら,俺,明日会社休むことになる」などと言って,容易には指示に従わなかった。

原告は,そのころから他の従業員に対し,丙川のいうことは聞かないと公言するようになった。

さらに,原告は,同年9月18日,保冷バッグの中に代金が入っていたにもかかわらず,会員の家族からさらに代金を二重に徴収してしまったことがあった。被告は,会員から連絡を受けて直ちに原告に保冷バッグの中を確認するように求めたが,原告は調べもせずに代金はないと言いはり,会員に電話して確認するように指示しても,「俺が電話すれば会員はやめますよ」と言って指示に従わなかった。結局,被告は,やむを得ず代金を会員に弁償することとなった。

被告代表者は,これらの出来事を受けて,原告に対する指導に限界を感じ,同年10月ころに原告を解雇する決意を固めたものである。

(3)  原告は,原告が解雇された理由は労働組合を結成しようとしたためであると主張するが,被告代表者は,本件解雇当時,原告が労働組合を結成しようとしていることを知らなかったのであるから,本件解雇は不当労働行為ではない。

二郎は,本件解雇前に他の配送員から原告が労働組合を作ると言って困っているとの相談を受けていたが,そのことを被告代表者にも一郎にも話さなかった。

3  原告の主張

(1)  被告の主張する解雇事由は,いずれも根拠がなく,本件解雇は合理的理由がない。

ア 原告が留守番をしていた中学生から集金したこと,オートロックのマンションの管理人に中に入れてもらえるように交渉したこと,顧客宅のドアをノックしたことがあったことは認めるが,いずれも本件解雇の数年前の出来事であり,解雇事由となるようなものではない。被告が主張するその余の原告と顧客との間のトラブルは,いずれも否認する。

原告は,被告に入社して以来,配送員としてまじめに勤務しており,顧客とのトラブルやクレームはほとんどなかった。また,原告は,被告から,顧客からのクレームについて注意を受けたことも,処分を受けたこともない。

イ 被告が主張する内部規律違反の事実は,いずれも否認する。原告は,配達ミスの再配達についても手当を支給すべきだと被告に対して主張したことはあったが,再配達を拒んだことはない。原告は,助手席に積みきれない保冷バッグの一部を荷台に置いたことはあったが,これはやむを得ないことである。

ウ 原告は,上司に対して業務の改善に向けて意見を言うことはあったが,上司の言うことを聞かないと公言したり,同僚に対して暴言を吐くなど,職場の人間関係を破壊するような言動をしたことはなかった。

エ 原告は,被告代表者に対して,再配達に対して歩合給を支給するように求めたことはあったが,業務命令に従わなかったり,反抗的な口調でものを言ったりしたことはなく,原告と丙川,丁田,被告代表者らとの間で被告が主張するようなやりとりは一切なかった。

代金の二重徴収については,当事者である会員自身も,そのようなことはなかったと明確に否定しているところであり,事実ではない。

(2)  原告は,平成15年12月24日,被告から「報酬,規律の見直しについて」と題する書面が配布されたのを機に労働組合の結成を計画し,翌25日,他の配送員を集めて同月29日午後2時にデニーズ港南台店において話合いの場を持つことを決めて,各配送員に連絡した。

これに対し,被告は,同月27日,デニーズ港南台店において,原告に対し,本件解雇の意思表示をしたものである。被告の取締役である二郎は,本件解雇以前に原告が労働組合を結成しようとしていることを知っており,その母である被告代表者もこの事実を知っていたことは明らかであるから,本件解雇は,原告の労働組合結成を阻止することを目的とした不当労働行為である。

(3)  原告は,本件解雇までの1年間,1か月当たり平均28万6250円の賃金を支給されていた。被告における賃金の支払は,1か月ごとに支払日がまちまちであったが,少なくとも毎月1回の支給はあった。

第3  当裁判所の判断

1  事実経過

前提事実,証拠(甲1から22,乙1から6,9,14から18,32,35から44,46から69,76から79,84から93,97から100,102,103,107,110,111,120から123(以上につき枝番号を含む。),証人乙山二郎,同戊原三郎,被告代表者及び原告)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

(1)  当事者等

ア 被告は,昭和62年4月18日,キャプテンフーヅの営業部門を別法人として独立させる形で設立された有限会社である。

二郎は,キャプテンフーヅの鶴見工場に主に勤務していたが,平成14年ころから,栗木駐車場において商品の積込み等の作業をするようになった。

被告は,平成15年の会員数が2万7665人,年間売上高が11億5509万3132円であったが,平成17年の会員数は2万5736人,同年11月現在の売上高は9億1732万0862円であり,いずれも減少傾向にある。被告は,会員の居住地域ごとにいくつかのコースに分けて業務を管理しているが,コースの数は,平成15年当時24コースであったが,会員数の減少に伴って,平成16年11月及び平成17年12月にそれぞれ一つずつコースを減らし,同月現在は22コースである。

なお,被告に労働組合はない。また,被告は,本件解雇当時,就業規則及び給与規定を定めていなかった。

イ 原告は,平成6年7月20日,被告と雇用契約を締結し,平成15年12月27日の本件解雇まで,配送員として勤務した。

原告は,被告から,平成11年に合計325万8000円,平成12年に328万6000円,平成13年に311万6000円,平成14年に357万7500円,平成15年に343万5000円の賃金の支給を受けた。原告の本件解雇まで5年間の平均賃金は,月額27万7875円であった。

原告の賃金は,支払日が毎月10日から15日とされており,その間の不定日に支払われていた。

(2)  被告の従業員

被告の従業員は,平成15年当時65名であり,大きく事務員・公募担当・注文係・配送員に分けられる。公募担当・注文係は,いずれも在宅勤務であり,原則として被告の事務所に出勤することはない。事務所には,被告代表者,マネージャー2名及び事務員が勤務し,注文の取りまとめ,配送の管理等を行っていた。丙川は,平成15年4月からマネージャーとして原告の上司となり,原告への連絡,指示は,原則として原告の担当地区を受け持っていた己沢四枝が,己沢が担当しきれない場合には,事務主任である丁田三枝又は丙川が担当していた。マネージャー・公募担当・注文係・事務員は,全員が女性であった。

なお,被告に対する会員からのクレームは,事務所に直接電話があることもあれば,注文係が注文を受ける際に聞くこともあった。被告において,クレームに対するマニュアルはなく,クレームを受けても記録を取ることとはされていなかった。また,注文係は,受けたクレームを被告の事務所に伝えないこともあった。

(3)  配送員の業務

ア 配送員は,各コースにつき1名が配置され,自己の担当するコースの会員宅に注文された商品を配達し,代金を集金することを業務としている。

配送員は,平成15年当時24名であり(コース数と同数),栗木駐車場(11名),鶴見工場(4名),大和・相模原駐車場(5名),狛江駐車場(4名)にそれぞれ所属して,午前8時までに所属する駐車場からそれぞれ配送に出発することとされていた。配送員は,駐車場を出発すると,その日に配達する区域(各コースがさらに10程度に細分化されており,約10日で一巡する。)を回り商品を配達する。配達の際,会員が在宅していれば商品と引換えに代金を集金し,会員が不在の場合には,保冷バッグに商品を入れて玄関前に置いておき,その翌日に集金することとされていた。翌日に集金する場合には,会員から直接集金する場合と,会員が保冷バッグに入れておいた代金を保冷バッグとともに回収する場合があった。なお,翌日に代金の回収ができなかった場合には,配送員が会員と連絡をとり,都合の良い日に訪問して代金を回収することとされていた(多くの場合,次回同一区域を配送する際に回収することとなり,約10日後になった。)。

配送員は,自己の担当するコース内で注文,積込み,配達等にミスがあった場合,ミスの原因にかかわらず,誤った商品の回収や再度の配達(以下「ミス届け」という。)を行っていた。なお,ミス届けは,原告が雇用された当初はその日配達する区域とそれに隣接する区域のみ行えばよいこととされていたが,その後担当コース全域について行わなければならないこととされた。

配送員は,配達・集金業務の終了後,配送車を駐車場に置き,回収した保冷バッグを荷台から助手席に移し,その後,各自の車等で事務所に戻り,その日に集金した合計額を日報に記入して代金を納金し,その日の業務を終了した。日報は,1週間ごとに1通作成され,各日の配送件数,回収件数,集金した額,その週の洗車を行った日付等を記載することとされていた。

イ 配送員の賃金は,1日の配送件数に応じ,10件ごとに1500円(本件解雇後に1件150円に変更),回収手当として1日当たり3000円,交通費として1日当たり1000円,1か月当たり20回出勤した者に精勤賞として1万円がそれぞれ支給されていた。なお,ミス届けは1件にカウントされず,歩合給に含まれなかった。

(4)  原告の勤務実態

原告は,平成6年に入社後,平成8年まで1Gコースを担当していたが,同年から1Fコース(横浜市泉区及び戸塚区の一部)の担当となり,その後平成15年12月まで1Fコースを担当した。1Fコースの会員数は,本件解雇当時約1200人であり,配達件数は,一日あたり60から80件程度であった。また,業務終了は,一日の配達件数にもよるが,午後2時ころが多く,遅くとも午後5時ころであった。

(5)  原告と被告の事務員らとの関係

ア 原告は,ミス届けについて歩合給が支払われないこと,その日配達する区域から離れた区域についても行わなければならないこと等について不満を感じており,被告の事務員あるいは丙川から電話でミス届けの指示があった場合,度々強い口調で,ミスをしたのはだれか,なぜ自分が行かなければならないのか,ミスをした人間に届けさせろ,ミス届けの分の賃金は支払われるのか等と抗議していた。

原告は,多くの場合,ミス届けに対して抗議をした際もその日のうちにミス届けを行っていたが,原告がミス届けに応じず,事務員が今日は伺えないと会員に連絡することもあった。

イ 丁田は,平成15年夏ころの土曜日,1Fコースの会員から,商品が冷凍庫に入らないから引取りに来てほしいとの連絡を受け,原告に対して,商品を回収に行くように指示した。原告は,これに対し,遠く離れてしまったから行けないとして,回収に難色を示した。丁田は,原告に依頼するのをあきらめて電話を切ったが,結局原告はその後に会員宅に赴き,商品を回収して事務所に戻った。原告が事務所に戻った後,原告と丁田は口論になり,被告代表者が仲裁に入った。

ウ 丙川は,平成15年7月ころ,原告に対してミス届けを命じたが,原告がこれに対して難色を示したことから説得は困難と感じ,被告代表者に電話を替わったことがあった。原告は,被告代表者に対し,熱があるから行けない,届けたら明日休むことになるなどと話したが,被告代表者は,原告に対し,近くにいるなら差し替えなさい,明日体調が悪ければ休みなさいなどと話して,説得した。この後,原告は,結局被告代表者の説得に応じ,ミス届けをした。

原告は,その後もミス届けの際に丙川に抗議し,「出る所に出ますよ」などと言ったことがあった。

原告は,ミス届けの件で丙川と対立することが多かったことから,平成15年8月ころから,他の配送員や事務員に対して,丙川の言うことは聞けない,丙川とは話したくないなどと話すようになった。

丙川は,このような原告の勤務態度を受けて,同年11月までに,自分には原告を管理できないと被告代表者に訴えた。

(6)  二郎による配送管理の準備

ア 被告代表者は,平成15年11月の初めころ,二郎に対し,これまで被告代表者と丙川が主に担当してきた配送管理を平成16年以降二郎に任せたいと話した。

二郎は,これを受けて,まず配送員の規律の見直しを図ろうと考え,原告を含めた配送員の勤務状況の現状を調査した。そして,二郎は,原告がミス届けなどの際に事務員の指示に直ちには従わず,そのことが業務の妨げになっていると考えて,原告の勤務態度を念頭に置き,心得及び業務規則(乙93)を作成した。心得及び業務規則には,「何度もインターホンを押さない。」,「家族が預かっていない限り代金の請求はしない。」,「配送中に届違い及び引き取り等がある場合は,事務所の指示に従う。」,「代金の二重取りは絶対にしない。」,「保冷バッグは数を確認し全て助手席に乗せる。」などの規定が設けられた。

イ また,配送員の賃金については,これまで10件ごとに1500円とされていたが,50件と51件とで賃金が大きく変わることは不合理であると考え,歩合給を1件150円とするなどの検討が行われた。二郎は,賃金体系の変更後に現実の支給額がどのように変動するかを実際の配達件数などからシミュレーションをし,その結果,配送員一人当たり1万3000円ないし1万4000円の減額になるとの結論を出した。

二郎は,上記の賃金改正を行うため,新たな宅配配送員契約書(乙92)を作成した。この契約書には,配送員の基本的な勤務内容の他,新たに,業務内容の規律を守った配送員に対し,1万円の特別手当を支給することなどが定められた。

ウ 被告代表者は,二郎と相談の上,平成15年12月23日から同月24日にかけて,原告を含む配送員全員に対し,売上げが年々落ちており,今後も業績の悪化が見込まれるので,平成16年2月から報酬の見直しを実施すること,これとともに業務規約の改訂も行うこととして,「上記規約を了承の上,雇用の再契約を行います。」と記載した書面(以下「再契約通知」という。)を配布した。同書面には,平成16年1月以降,配送管理責任者を二郎とすること,契約の際に個人面談を行うこと,面談の期日は平成16年1月13日から同月23日とすることなどが記載されていた。

なお,配送員には再契約通知とともに,保冷バッグの個数の確認を平成16年1月13日までに報告するようにとの内容の書面が交付され,原告もこれを受領した。

(7)  原告の組合結成に向けた動き

ア 原告は,平成15年12月24日,再契約通知を被告から受領し,翌年からの賃金が減額されるのではないかと不安を覚えた。原告は,同日,栗木駐車場において,配送員であるA,Bらと再契約通知について話し,同人らも翌年の賃金が減額されるかもしれないと考えていたことから,「組合の人を知ってるから作ればいい」と言って,組合結成を誘った。Aは,組合の結成について同意はしなかったが,配送員同士で情報を交換するのは有益だと考え,配送員が集まることに同意した。

イ 原告は,翌25日,労働組合の結成について話し合うため,同月29日の午後2時にデニーズ港南台店で集まることを決め,栗木駐車場の配送員であるC,D,E及びFらにその旨を伝えた。また,Aは配送員であるG及びHに,CはIに対し集会の場所と日時を伝えたが,その際,組合結成の話はしなかった。

二郎は,同月25日午前8時ころ,栗木駐車場を訪れ,D及びEから,原告から労働組合に誘われて困っているという話を聞いた。

ウ 二郎は,翌26日の夜,G及び友人と食事をし,その席で,Gから原告が配送員を集めているという話を聞いた。Gは,当時組合結成については知らなかったが,二郎は,Gに対し,集会の目的は組合結成ではないかと話し,新しい賃金体系について不安を感じていたGに配送員の賃金は大きくは下がらないことを伝えた。

Gは,その日聞いた新しい賃金体系の内容をHに話し,Hは,その話をAやBなどの原告以外の他の配送員に電話で連絡した。

二郎は,翌27日の夜,G,H,D及びIと食事をした。Gらは,その際,翌年の賃金に対する不安はおおむね解消されたので,同月29日に集まる必要はなくなったと話した。

(8)  本件解雇

ア 原告は,平成15年12月27日の配送作業終了後,被告代表者からデニーズ港南台店に来るようにと呼出しを受け,納金終了後,デニーズ港南台店に向かった。

被告代表者は,デニーズ港南台店において,丙川同席の下,原告に対し,被告の売上げが減少し平成15年もコースの減少を行ったが,平成16年もさらに売上げが下がることが見込まれ,もう一つコースを減少させるつもりだと説明した上,口頭で,今年いっぱいで原告を解雇すると通告した(本件解雇)。原告は,被告代表者に対し,辞めるつもりはないと話し,なぜ自分のコースなのか,なぜ自分なのかを繰り返し質問した。被告代表者は,原告を選んだのは原告が扱いづらいからだと答えたが,原告は納得しなかった。原告と被告代表者とのやりとりは,約30分続いたが,この際,原告からも被告代表者からも組合結成についての発言はなかった。

イ 原告は,被告代表者と話しても無駄だと考え,被告の事務所に戻って一郎と話をしようと考えて,事務所に戻った。原告は,事務所の一階で一郎と会い,なぜ自分が解雇されなければならないのかを問いつめたが,一郎は,会社が決めたことには従うべきだなどとして取り合わなかった。その後,被告代表者と丙川がデニーズから事務所に戻り,原告と被告代表者,一郎との間で1時間半以上感情的なやりとりが続き,その中で,一郎は,「会社が成り立たないような反会社的人間であったら,私の会社でその者が組合を作ろうとしたら首にする」などと話す場面があった。

また,原告は,被告代表者及び一郎に対し,解雇の理由を文書にするように求めた。そこで,被告代表者は,事務所でパソコンを使い,「弊社の業績が悪く,コースの縮小の為甲野太郎を平成15年12月27日に解雇します。[理由]配送員として大変扱いにくい為雇用できません。」と記載した同月26日付の「解雇報告書」を作成して,原告に交付した。被告代表者は,原告に対し,同月29日の回収作業は行わなくてよいと話したが,原告は,あくまで年内の回収作業を行うと主張し,被告代表者もこれを了承した。

なお,同年は,同月27日が配達作業の最終日であり,同月29日が回収作業の最終日であった。

ウ 原告は,同日,最後の回収作業を行い,その後事務所において,被告代表者,一郎及び丙川と本件解雇について再度,約2時間に亘って話し合った。原告は,この際,本件解雇の理由は組合を結成しようとしたからではないかと繰り返し尋ねたが,被告代表者は,これを認めなかった。被告代表者は,同日,原告に対し,解雇予告手当として30万円を手渡そうとしたが,原告は,辞めるつもりはないと言って受け取らなかった。被告代表者は,原告に対して配送車の鍵を返還するように求めたが,原告は後で持ってくると言って事務所を出て,同日のうちに,配送車の鍵を被告事務所のポストに戻した。

被告代表者は,翌30日,ポストに鍵が入っているのを確認し,原告が解雇に納得したのだと考えて,同月31日,被告に対し,10年間お疲れさまでしたと原告をねぎらう内容の手紙を送付した。

(9)  原告の組合加入及びその後の経過

ア 原告は,平成16年1月5日,全労連・全国一般労働組合神奈川地方本部(本件組合)に本件解雇について相談し,本件組合に加入した。

イ 原告は,同月12日,本件組合の組合員3名とともに被告の事務所を訪れ,被告に対し,原告が本件組合に加入したことを知らせる通知とともに,本件解雇の撤回及び団体交渉を求める通知を交付した。被告は,業務不振でコースを縮小しなければならないことなどを説明の上,扱いづらい原告を解雇したのだと話し,解雇の撤回には応じられない旨答えた。また,原告は,あらためて解雇理由を文書で交付することを求めた。

本件組合は,同日,本件解雇が整理解雇であると解釈し,本件組合事務所から被告に対し,整理解雇の要件についての記事が載っている雑誌「労働かながわ」をファックスで送付した。

被告は,同日,本件組合に対し,会社の業績及び縮小について平成16年も1から2コースを減らす予定であること及び原告を解雇した理由は,会員のクレーム,業務の指示に対して従わないこと,車両の扱い,管理者に対して抗議したことであると記載した書面をファックスで送付した。また,被告は,同月15日にも,本件組合に対し,原告の勤務態度を非難し,解雇の撤回には応じられない旨記載した文書を送付した。

ウ 本件組合は,同月30日付け書面で,被告に対し,改めて団体交渉を求める旨を伝え,団体交渉は,同年2月17日に行われることとなった。

被告は,同日,原告に対し,解雇理由である「扱いにくい者」の持つ具体的意味として,「車両管理」,「車の運転」,「業務管理」,「対応が困難」,「会社に対しての要求」と5つの項に分けて16点の事実を挙げ,さらに,指導者が注意しても素直に聞き入れない,マネージャーの言うことは一切聞かないなどの理由を挙げて,解雇事由を説明する書面を交付した。同書面をもとに同日の団体交渉は進められたが,双方意見が対立し,合意には至らなかった。

本件組合は,同年3月2日,二郎との話合いをし,その際,二郎は,原告が組合を結成しようとしていたことを知っていたと話した。

エ なお,原告が担当していた1Fコースは,同年1月13日(同年の被告の最初の営業日)から同月17日ころまで二郎が担当していたが,被告は,そのころ新たに1名配送員を雇用し,翌18日ころから,新たな配送員が担当することとなった。また,被告は,同年11月に1Cコースを分割し,その一部を1Fコースとするまで,コースの削減を行わなかった。

2  本件解雇の相当性

(1)  被告の主張する解雇事由について

ア 被告の対外的な信用を低下させる勤務態度

(ア) マンション管理人とけんかをしたこと

証拠(乙14,35の1,乙77,102)によれば,原告は,平成14年ころ,担当している会員の居住するマンションに配送のため入ろうとして当該マンションの管理人に拒まれたため,管理人との間でトラブルとなり,このことについて被告は,会員から苦情を受けたこと,その際,被告は,この会員から今後は商品を近くに住む友人の家に届けるようにと依頼され,原告は,その後,この会員が指定した友人の家に商品を届けるようになったことが認められる。

上記認定からすれば,会員の住むマンションの管理人とトラブルになることは,会員に不信感を与えるもので,配送員として望ましいものではない。もっとも,原告と管理人との間のトラブルについて,原告と管理人との間でいかなる内容のやりとりがあったかは必ずしも明らかではなく,原告に非があったと認めるに足りる的確な証拠はない。また,この会員からの注文がその後具体的にどの程度減少したか不明であり,被告が具体的損害を被ったと認めるに足りる証拠もない。そうすると,この点が解雇を相当とするほどの勤務態度の不良と認めることはできない。

(イ) 乱暴な運転をしたこと

証拠(乙14,16,37,41,43,99)中には,被告に対して,1Fコースの地域内にある団地の住民から,被告の配送車両が乱暴な運転をしているとの苦情があった旨の記載がある。

しかし,この車両を運転していたのが原告であると認めるに足りる的確な証拠はなく,また,原告が具体的に交通法規に反していたことも認めるに足りない。

(ウ) 子供から集金をしたこと

証拠(乙14,原告)によれば,原告は,平成10年ころ,会員宅に集金に行ったところ,会員が留守であったことから,その家に住む中学生位の子供から代金を受け取ったことがあったこと,被告はこのことについて会員から電話を受け,原告にそのようなことがあったか否かを確認したことを認めることができる。

この点,トラブルを未然に防止する意味からも,代金の集金を子供から行うことは必ずしも適切なものとはいえないが,これは,本件解雇から5年ほど前の出来事であるし,集金の方法が強引であったことを認めるに足りる証拠はなく,子供が自主的に支払った可能性もないとはいえないこと,被告からの注意喚起後は原告もこのようなことをしないよう気を付けていたこと(原告本人)からすると,この点についても,解雇を相当とする勤務態度の不良があったと認めることはできない。

(エ) 会員を怖い顔でにらむ

被告は,原告が会員を怖い顔でにらんだとの苦情が会員からあったと主張し,被告代表者の陳述書(乙14)にはこれと合致する部分があるが,誰から,いつ,このような苦情があったかは明らかではなく,他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。

(オ) ドアを乱暴にたたく

証拠(乙14,41,103,原告)によれば,原告は,平成8年ころ,配送の際,会員がチャイムに出ない場合などに,ドアをノックすることがあり,このことについて,被告が苦情を受けたことが認められる。

会員から苦情が入るような方法で会員宅のドアをたたくことは,配送員として良好な行動であるとは言い難いが,この苦情は本件解雇から7,8年前のものであり,1日に数十件の会員宅を訪問する原告の業務において,このような苦情が寄せられたからといって,直ちに原告の会員に対する態度が不良であったと認めることはできない。

(カ) 植木鉢の花を蹴散らす

被告は,原告が会員宅の植木鉢の花を蹴散らしたと主張し,被告代表者の陳述書(乙14)にはこれと合致する部分があるが,誰から,いつ,このような苦情があったかは明らかではなく,他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。なお,Jの陳述書(乙103)には,原告が庭の植木の花を無神経に何本も折って行ったとする部分があるが,これが被告主張の解雇事由と同一の事実について述べたものであるか明らかでなく,被告の上記主張を認定するに足りない。

(キ) 代金の回収に行かない

乙14及び被告代表者の供述中には,被告は,原告の担当する1Fコースの会員から,配送員が代金の回収に来ないとの苦情を受けたことがあった旨の記載ないし供述部分がある。

しかし,前記事実経過及び弁論の全趣旨によれば,被告の配送員は,代金回収の際,会員と毎回顔を合わせる訳ではなく,回収の件数は毎日異なり,必ずしも毎回同じ時間帯に回収を行うことは困難であったと考えられることからすれば,代金回収についての会員と配送員とのすれ違いは避け難いものであり,この点について,原告が他の配送員と比較して,特に多くの苦情を受けていたと認めるに足りる証拠はない。また,被告は,日報の提出及び納金により,未回収金の管理を行っていたところ,原告が他の配送員と比較して,未回収が多かったと認めるに足りる証拠はない。したがって,原告の担当する会員から,代金の回収に来ない旨の苦情が来ていたことがあったとしても,解雇を相当とするほどの勤務態度の不良が原告にあったとは認められない。

(ク) 会員から商品の持ち帰りを依頼されたが,これに応じない

証拠(乙14,35の4,49,77,99,原告,被告代表者)によれば,原告は,平成15年12月20日,会員から商品のエビがホルマリン臭いから持ち帰ってくれと言われ,これを断ったことがあったこと,この会員は,被告に対し,原告が商品の持ち帰りを断ったことについて,苦情を申し入れたことが認められる。

会員から商品の持ち帰りを依頼された場合,配送員としてこれを拒否することは,適切な対応とは言い難い。もっとも,商品がホルマリン臭いという会員の苦情の内容などから考えても,苦情の原因が必ずしも原告の不適切な対応のみにあるとは認め難く,原告の対応により,被告の信用が著しく害されたということはできない。この点についても,解雇を相当とするほどの勤務態度の不良があったということはできない。

(ケ) 洗車をしない

証拠(甲20,乙14,16,46,48,107,111,乙山二郎,原告,被告代表者)によれば,原告は,入社当初1か月につき1回であった洗車の回数が1週間につき1回に増えたことについて被告代表者に抗議したことがあり,原告以外の配送員や度々栗木駐車場に顔を出していた二郎は,原告が洗車をしている回数が少ないと感じていたことが認められる。

もっとも,被告は,洗車の有無について日報を用いて配送員に報告させており,毎月1回配送車の車両点検を行っていたところ,原告の配送車が,他の配送員の配送車よりも車両点検の評価が低かったであるとか,配送車が汚いとの苦情が被告に対して寄せられたと認めるに足りる証拠はない。また,配送終了時刻は配送員ごとに異なるから,原告が洗車を行う時間が他の配送員と同一でなくとも不自然ではなく,他の配送員が原告が洗車をしている回数が少ないと感じていたとしても,それのみで原告が洗車を行っていなかったと認めることはできない。

被告代表者は,原告が全く洗車をしないと供述するが,これについては,原告が車両点検でペナルティを受けたことがあったことは認められず,原告が自動車のドアを拭いているのを見たことがある旨のGの陳述書(乙111)に照らすと,被告代表者の上記供述を採用することは困難であり,他に,原告が洗車をしなかったと認めるに足りる証拠はない。

(コ) 交通事故を起こす

証拠(乙54,55,56,57)によれば,原告は,平成7年に3回,平成8年に3回の交通事故を起こしていることが認められるが,具体的な事故態様が判明しているものはいずれも比較的軽微な物損事故にすぎない上,これらは,本件解雇から7年前の出来事であるし,車両の運転を業務とする以上,ある程度の回数の物損事故はやむを得ないところであり,原告が平成8年10月22日に始末書を提出して,反省の態度を示していること,その後に交通事故を起こしたと認めるに足りる証拠はないこと,他の配送員と比較して事故が特に多いと認めるに足りる証拠もないこと等からすれば,この点について解雇を相当とする勤務態度の不良であると認めることはできない。

イ 内部規律違反について

(ア) 保冷バッグを荷台に放置した

証拠(乙16,17,47)によれば,被告の配送員は,配送が終了して駐車場に戻った際,保冷バッグを荷台から助手席に移動させることとされていたところ,原告は,保冷バッグの一部を助手席には移動させず,荷台に放置したことが度々あったことが認められる。

もっとも,配送員に配布された配送業務マニュアル(乙3)には,保冷バッグは運転席又は荷台の隅に寄せるとの記載があり,荷台に置くことが許されていた時期があったこと,前記事実経過のとおり,原告の管理していた保冷バッグは60個から80個であり,未回収(会員宅に保冷バッグを置いてきているもの)の件数は日によって大きくばらつきがあったところ,原告が荷台に置いていた保冷バッグの数は10個から20個と認められ(原告本人),原告がすべての保冷バッグを荷台に放置していたものではないこと,40個を超える保冷バッグは相当に高く積み上げなければ助手席に積みきれないと考えられることからすれば,保冷バッグの個数が多数に及ぶ場合に,保冷バッグの一部を荷台に置くことは,必ずしも不適切な行動とはいえず,解雇を相当とする勤務態度の不良があるとは認められない。

(イ) 日報をきちんとつけなかった

証拠(乙32)によれば,原告は,日報の走行距離欄を10キロメートル単位で記載しているものと認められるところ,そもそも走行距離欄は,配送車の私的利用の防止,ガソリン代の管理等の点で意味のあるものと考えられるが,当日の終了後走行距離と翌日の出発前走行距離とが一致している原告につき,数値の記載が概数であったことにより被告に損害が生じることは考え難く,また,1キロメートル単位で記載することが義務付けられていたと認めるに足りる証拠もないのであるから,この点について,原告に内部規律違反があったものとは認められない。

(ウ) 過不足金の計算ミスを繰り返した

証拠(乙50)によれば,原告は,平成15年に58回の過不足計算ミスをし,その回数は他の配送員と比較して最も多いものと認められる。

もっとも,この過不足計算ミスは,原告が日報に記載した額と入金した額との差額であると認められるところ,この点の差額はあくまで書面上の違いであり,実際の納金額と集金した額が異なるとか,未回収金の額が他の配送員と比較して多いなど,被告に損害を与える態様のミスであるとは認めることはできず,この点についても解雇を相当とする勤務態度の不良があったとまで認めることは困難である。

ウ 他の従業員との関係について

(ア) 後輩を従わせようした

被告は,原告が,後輩の従業員が入ると自分の言うことを聞けなどと言って後輩を従わせようとし,被告の配送員であるKを子分扱いしたと主張し,被告代表者の陳述書(乙14)にはこれに沿う部分があるが,その内容は具体性を欠き,いつの出来事であるか,これにより,他の従業員との関係がどのように悪化したか明らかでなく,採用することはできない。この点につき,他に被告主張の事実を認めるに足りる証拠はない。

(イ) 他の従業員に対して声を荒げて激しい物言いをした

証拠(乙37,44,48)によれば,原告は,配送員のHが事務所に配送車で戻った際,配送車で事務所に戻ることは禁止されていたことから,これを注意したことがあったこと,Hは,原告も度々配送車で事務所に戻っていたことから,原告に対し,「あなたに言われる筋合いはない」などと言い,激しい口論となったことがあったことが認められる。

もっとも,被告においては,原則として配送員同士が顔を合わせるのは配送開始前及び終了後の駐車場又は事務所における短時間であって,協同で作業をすることもないのであるから,その人間関係の不良が直ちに被告の業務に支障を来すものとは認められず,これが解雇を相当とする理由となるとは認められない。

エ 各解雇事由の評価

(ア) 被告が原告の解雇事由として挙げた,被告の対外的な信用を低下させる勤務態度については,前記ア(ア),(ウ),(オ),(キ),(ク)及び(コ)認定の事実については,解雇を相当とするほどの勤務態度不良と認めることはできず,前記ア(イ),(エ),(カ)及び(ケ)の事実については,これを認めるに足りる証拠がない。

これらの事実を総合して考えても,原告に遅刻,無断欠勤などが認められず,会員ごとに配送する時刻が一定になるように心懸けていた(原告本人)などの酌むべき事情を考えれば,被告と会員との間の信頼関係を破壊したといえるような解雇を相当とする勤務態度の不良があるとは認められない。

(イ) また,前記イで認定判断したとおり,内部規律違反の点については,いずれも比較的軽微な違反であり,これを総合して判断しても,解雇を相当とする行為があったとは認められない。

(ウ) 原告と事務員との関係については後述するとおりであるが,その他の従業員との関係については,前記ウで説示したとおり,解雇を相当とする勤務態度の不良は認められない。

(2)  被告代表者が解雇を決意するに至ったと主張する解雇事由について

ア(ア) 前記1(5)認定からすれば,原告は,ミス届けが賃金に反映されないこと及びミス届けの際に会員宅を訪問しなければならない範囲が拡大されたことに強い不満を抱き,マネージャー,事務員らからミス届けを行うように指示があると,これに対して,「誰がミスしたんだ」,「ミスしたやつに行かせろ」などと強い口調で抗議し,その指示に従わなかったことが度々あったこと,そして,原告は,平成15年7月ころ,丙川の指示を聞かずに,丙川から電話を替わった被告代表者に対しても熱があるから行けないと言ってその指示に直ちに従わなかったこと,抗議の際,「出る所に出ますよ」などと言ったこと,同年夏ころ,丁田に対し,ミス届けの指示を直ちに聞かずに事務所において口論となったこと,他の従業員に対し,丙川の言うことは聞けないといったことがあったものである。

これに対し,原告は,上司に対して反抗的な口調でものを言ったことはないと主張し,原告本人の供述及び陳述書(甲20)にはこれに沿う部分がある。

しかし,被告において事務を担当していた従業員であるL(乙37),M(乙40),N(乙46),己沢(乙42),丁田(乙38,98),丙川(乙36,49,76,122)らは,原告にミス届けを指示する際,原告から非常に強い抗議を受けたこと又は抗議しているところを見たことを一致してその陳述書に記載しているところであり,被告を既に退社したO(乙41)の陳述書にも同様の記載がある。そして,原告もミス届けについて不満をもっていたことについては認めるところであるし,被告代表者が,当初原告がミス届けについて報酬を要求することを解雇事由に挙げたこと(甲9)などからも,原告がミス届けの指示の際に相当強く抗議していたことが明らかであることからすれば,これに反する原告の供述は信用できず,上記認定を覆すに足りない。

(イ) このような原告の言動は,被告の規律を乱し,被告における事務を混乱させ,丙川,丁田その他の事務員を困惑させて,被告の業務に少なからず支障を来すものであったと評価しうる。

そして,原告が,平成15年7月ころに丙川及び被告代表者から指示を受けた際や,同年夏ころに丁田から指示を受けた際にも,最終的には指示に従ってミス届けを行っていること,被告の配送員の賃金は,回収手当及び交通費の合計1日当たり4000円を除いては,全額が配送件数に応じた歩合となっており,配送と同等の労力がかかるミス届けについて,歩合給に含めるべきであるとする原告の要求があながち不合理ではないことを考慮しても,原告の上記言動は,過度に威圧的であり,他の従業員に対する配慮に欠け,勤務態度の不良であるとの評価を免れない。

イ 被告は,平成15年9月18日,原告が代金が入った保冷バッグを回収するとともに,会員(P)からも代金を受け取って二重に集金し,その後会員から苦情が入って被告が確認を求めても,原告がバッグの中に代金が入っているか否か確認をせずにないと言い切って,被告に代金を弁償させたと主張し,証拠(乙14,35の2,122)にはこれに沿う部分がある。

しかし,Pの妻であるQの陳述書(甲22)には,被告に苦情の電話をしたことはなく,被告から事実確認の電話があった際もそのようなことはないと答えた旨の記載があり,人件クレーム(乙35の2)は,本件解雇後,本件訴訟のために作成されたものであることをも考慮すると,この事実を認めることはできない。

上記以外の会員との関係でも,原告と会員との間で代金についてトラブルになったことがあったことは窺える(乙14,被告代表者)が,原告が,回収した保冷バッグの中を確認していなかったと認めるに足りる証拠はなく,また,実際に二重取りをしたと認められる証拠もない。そして,会員との代金トラブルにつき,原則として配送員の自己負担とする被告の方針は,必ずしも合理的なものとはいえず,十分な証拠のない二重払いについて,原告ではなく被告が賠償したことがあったとしても,そのことをもって直ちに解雇を相当とする勤務態度の不良であると認めることはできない。

(3)  以上のとおり,原告には,被告の外部的評価を低下させたとされる点,内部規律違反の点,他の配送員との関係の点については,解雇を相当とするほど勤務態度の不良があるとは認められない。

ただし,前記(2)アで説示したとおり,原告の丙川,丁田その他の事務員に対する言動は,被告の円滑な業務進行を妨げ,職制に反する行為であり,前記のとおり丙川が「もう管理できません。」と被告代表者に訴えたことなどからすると,その勤務態度には不適切な点があり,被告がこれを放置することは困難で,何らかの対処を必要とするものではあったというべきである。

しかし,被告は,本件解雇に至るまで,原告に対して何ら処分を行ったことがなく,勤務態度の改善を書面等で警告するなどの措置をとったことがなかったことからすれば,被告が原告に対して,勤務態度改善のための機会を与えてきたとは言い難い。

そもそも,被告においては,配送員の業務を説明するマニュアルは存在したものの,就業規則はなく,従業員の服務を定めた明文の規定が存在しなかったところ,服務規則を定めることは,一般に従業員に対して,何が服務に反する行為であるか,これに違反するとどのような制裁を受けるかを知らしめることにより,従業員の勤務態度改善に一定の効果が期待できるものである。そして,被告は,現実に平成16年1月から,原告の勤務態度を念頭におき,配送員の服務を定めた「心得及び業務規則」を置く方針を固めていたのであるから,被告としては,このような服務規則のもと,原告が二郎の管理に従い,勤務態度を改めるか否かの判断をすべきであった。また,原告が要求していたミス届けに対する賃金についても,被告の賃金体系等を考慮すれば,検討の余地があるものであった。本件の事実経過及び原告の被告代表者に対する態度などに鑑みれば,このような被告の措置により,原告の勤務態度が改善される可能性は十分あったものと認められる。

被告が上記のような措置を準備し,かつ,原告がその措置により勤務態度を改善させる可能性のある中で本件解雇が行われたものであることからすれば,上記(1)及び(2)認定の各事実があったことを考慮しても,本件解雇は,原告を解雇するための合理的な理由がなく,社会通念上相当であるとは認められず,無効というべきである。

3  不当労働行為について

前記1の認定事実によれば,原告は,平成15年12月25日,他の配送員に組合結成のための会合を同月29日に開くので集まるように伝え,被告は,同月27日,本件解雇をしたものであるところ,原告は,本件解雇が原告の労働組合結成を理由とする不当労働行為であると主張する。

そして,本件解雇には,以下の事情が認められる。

(1)ア  前記1(5)の認定事実によれば,原告は,平成15年7月ころ以降,丙川及び丁田ら被告の事務員とミス届けのことで口論をし,丙川の言うことは聞けないなどと話すようになり,丙川も,原告のことを嫌悪して,被告代表者に対し,原告のことを管理できないなどと話すようになったところ,このように,原告と被告の配送管理を行っていた事務員との関係が相当悪化した中で,二郎は,平成15年11月ころに被告代表者から指示を受けて平成16年1月からの配送管理を任されたものである。そうすると,当時,被告における配送管理は,原告と事務員との関係が最大の問題であったと考えられるのであり,被告代表者がこの問題を考慮せず,二郎に配送管理を任せたとは考え難い。

かえって,二郎は配送管理に当たってまず配送員用の業務規則を作成したこと,その内容は原告の勤務態度を念頭に置いたものであって,その後に本件組合に対して示される原告の解雇事由と多くの共通点があること,再契約通知が原告に対しても交付されたことなどからすれば,被告代表者は,少なからず問題のあった原告の指導を二郎に任せて原告の勤務態度改善を促し,さらに原告との関係が悪化した事務員の負担を軽減させることを目的として,平成16年1月から二郎に配送管理を任せたと推認できる。

イ 二郎の陳述書(乙16)には,配送の管理を任された理由について,被告代表者及びマネージャーが営業に力をいれるためであったとする部分があるが,被告は,本件解雇後,公募担当の従業員を10名から15名に増員しているものの,事務員(マネージャーを含む)を4名から1名に減員しており(乙79),営業の充実のために事務員の業務を軽減させる方針をとっていたとは認められず,このために配送管理を二郎に依頼する理由は乏しい。また,被告代表者は,二郎に配送管理を依頼したとする一方で,平成16年1月及び2月は二郎に1Fコースを配送させる予定であったとして,これが原告の解雇を前提とした措置である旨供述しているが,一部コースの配送を担当する中で,同時に配送の管理をすることが可能なのか不明であるし,現実には,二郎に1週間1Fコースの配送を行わせたのみで,1Fコースに配送員を新たに採用していることは前示のとおりである。

そうすると,上記認定に反する二郎の陳述書及び被告代表者の供述は採用できず,上記アの認定を覆すに足りない。

(2)ア  そして,前記認定からすれば,被告代表者が,平成15年11月,原告の勤務態度改善のため配送管理を二郎に任せることを決めたこと,同年12月24日,原告に対して,再契約通知を交付したこと,二郎が配送管理を任されてから同日までの間に,被告代表者が解雇を決意するような原告の言動は見受けられないこと,解雇の理由を記載した書面が,同月27日,本件解雇を通知した後に作成されており,本件解雇が十分な準備をせずにされていることを勘案すれば,被告代表者が原告の解雇を決定したのは,同月24日以降であると認めるのが相当である。

イ この点,被告は,被告代表者が本件解雇を決意したのが平成15年10月ころであると主張し,被告代表者の陳述書(乙14),被告代表者の供述中にはこれに沿う部分がある。また,丙川(乙49,97)及び二郎(乙16,乙山二郎)は,それぞれ同年12月24日以前に被告代表者から解雇の意思を聞いたとしている。

しかし,この点の丙川の陳述書は,同月20日に人件クレーム警告書を書いて原告に渡す許可を被告代表者に求めたところ,その際,初めて解雇の意思を聞いた(乙49)とするが,被告においてクレームの警告書は作成されておらず,他方で,これを聞いたのは同年11月であるとする部分(乙97)もあり,一貫性を欠く。また,二郎は,同年12月に被告代表者から原告を解雇する旨聞いたとするが,上記のとおり,被告代表者は原告の問題を配送管理において重視しており,二郎が「心得及び業務規則」を作成するに当たって原告の勤務態度を調査していることからも,既に原告の解雇を決めていた被告代表者が同年12月までその旨を二郎に伝えなかったとするのは,合理性を欠く。

被告代表者は,同年夏に丁田と原告との間で口論があったこと,同年8月に原告が丙川の指示に従わず,「出る所に出ますよ」等と言って丙川を脅したので,被告代表者が電話を替わったところ,「熱があるから行けない」などと言ってミス届けを拒んだこと,同年9月18日に会員から二重に代金を集金したことなどから原告の解雇を決意したと供述する。しかし,被告代表者が,本件解雇の際,まず原告に業務の縮小について説明していること,本件組合から平成16年1月12日に解雇理由の説明を求められた際も,「会社の業績及び縮小」を最初の理由とする書面を交付していること(甲14),その後に被告が本件組合に本件解雇事由を説明した書面(甲9,乙9)にも被告代表者が解雇を決意するに至ったとする上記各具体的事実の記載がないことからすれば,被告代表者が,当初から上記各事実について,解雇の決定的事実として認識していたとは考え難い。被告代表者は,本人尋問において初めて,上記各事実によって解雇を決意したと供述したのであり,この点について,陳述書等にその旨の記載をしなかった点からも,被告代表者の供述は採用できず,上記認定を覆すに足りない。

さらに,被告代表者は,原告に対しても再契約通知を配布したことについて,解雇までは他の配送員と同様に扱う趣旨であったと供述する。確かに,原告のみに再契約通知を交付しなければ,原告がそのことを不審に思うことは十分に考えられるところであるが,そのような事情を考慮したのであれば,本件解雇の後に他の配送員に対して再契約通知を配布すれば足りよう。また,被告代表者は,原告を直ちに解雇せず,同年12月27日に解雇したのは,原告が会員宅に出向き,現場が混乱するのを防ぐためであり,同月29日の回収は二郎が行く予定になっていたと供述するが,原告を10月ないし11月に解雇しても,翌日から二郎に配送させることは可能であったと考えられるし,同年12月29日に原告が回収に行くことも,被告代表者はそれほど強く拒否しているものとは認められないから,この点の供述も採用できない。

また,被告は,平成15年11月27日,1FコースのDC別会員人数リスト及び地区コース別会員マスタ一覧表をパソコンから出力している(乙5,62)。しかし,これは,パンフレットの配布時に被告が必ず出力する資料であるし,当時,二郎が平成16年から配送管理を行う準備をしていたのであれば,これらの資料が被告の日常業務において出力された可能性は否定できず,被告が原告の解雇の準備をしていたと認める理由とはならない。

以上によれば,被告が平成15年10月ころに解雇を決意したとする証拠は,いずれも採用することができず,上記認定を覆すに足りない。

(3)  他方,平成15年12月25日に原告の組合結成の動きを知った二郎は,その後同月26日の夜に配送員のGと会って新しい賃金体系について説明し,その日の夜のうちに新しい賃金体系について原告を除く配送員全員に電話で連絡され,二郎は,翌27日の夜にも配送員4名と打合せをしていることは前示のとおりである。

これらの二郎の対応は,再契約が円滑に進むよう配慮し,配送員の不安を解消させようとするものであることが明らかである。そして,仮に原告が労働組合を結成すれば,原告が再契約について何らかの要求をすることは二郎においても容易に想像できたはずであり,再契約の円滑な実施を図っていた二郎が,この点について,原告の行動に関心をもっていたものと認められる。

さらに,二郎が被告代表者から配送管理を任されその延長として再契約通知が交付されていること,二郎が被告代表者の長男であり,かつ,被告の取締役であり,被告代表者に連絡をとりやすい地位にいたことからすれば,二郎は,このような再契約の進行状況についての重要な事情を被告代表者に報告していたと考えるのが自然である。特に,原告の行動については,被告代表者が原告の勤務態度改善のために二郎に配送管理を任せたこと,原告が被告代表者に対して度々意見を言っていたことなどからすれば,被告代表者も強い関心をもっていたと認められるところであり,この点について,二郎が被告代表者と連絡しなかったとは考え難い。

以上のような事実経過からすれば,二郎が被告代表者に対し,原告が労働組合を結成しようとしていることを伝えたことは,強く推認されるところである。

(4)  また,原告は,労働組合結成の話合いを平成15年12月29日に予定していたところ,本件解雇は配送員の同年の最後の勤務日である同年12月29日ではなく,同月27日にされたものであるが,これについても,既に説示したように,あえて同日に解雇する理由は認められない以上,原告の労働組合結成よりも早く本件解雇を行おうとしたと推認させる事情といえる。

(5) 本件解雇は,前記2説示のとおり,解雇のための合理的な理由がないものであるところ,これに加え,以上のとおり,被告が二郎に対して平成16年1月から原告の勤務態度改善のために配送管理を任せたこと,被告代表者は平成15年12月24日まで原告を解雇する意思があったとは認められないこと,被告代表者は本件解雇前に二郎から原告が労働組合を結成しようとしていることを知らされていたと推認されること及び本件の事実経過に鑑みれば,本件解雇は,原告が労働組合を結成しようとしたことを決定的動機とするものであると優に認めることができる。

したがって,本件解雇は,原告が組合を結成しようとしたことの故をもって行われた不当労働行為(労働組合法7条1号)であるから,無効である。

4 以上のとおり,本件解雇は合理性を欠き社会通念上相当とは認められないから解雇権の濫用であり,かつ,不当労働行為であるから無効である。したがって,原告は,被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあるものと認められる。

そうすると,被告は,本件解雇後原告の就労を拒絶しているのであるから,本件雇用契約に基づき本件解雇後の賃金を支払うべき義務がある。

そして,前記1(1)の認定事実によれば,原告の毎月の賃金は,10日から15日までの不定日に支払われていたものであるから,遅くとも毎月末日までにはその弁済期が到来するものと認められる。また,原告の本件解雇後の賃金は,原告の賃金が担当コースの会員数に依存して増減するものであったこと,被告の会員数が平成13年ないし平成14年を境に減少傾向にあることなどを考慮すると,本件解雇前5年間の平均賃金(1か月当たり27万7875円)と認めるのが相当である。

したがって,原告は,被告に対し,本件雇用契約に基づき,平成16年1月以降,毎月末日限り1か月当たり27万7875円の賃金請求権を有するものと認められる。

5  なお,原告は,本件解雇の後の平成16年1月から終期を定めずに将来の賃金の支払も求めているところ,原告が被告に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する本判決が確定した後に弁済期が到来する賃金については,被告が賃金の支払を拒むことが予想されるなどの特段の事情がない限り,あらかじめその請求をする必要があるとはいえない。そして,本件においては,判決確定後の将来請求を必要とすべき特段の事情があることを認めるに足りる証拠はないから,原告の本件訴えのうち,判決確定後に支払期日が到来する賃金の支払を請求する部分は,訴えの利益を欠き,却下を免れないものである。

6  結論

以上のとおり,原告の請求は,原告が被告に対し雇用契約上の権利を有する地位の確認を求め,本件解雇後の賃金として本判決確定の日まで毎月末日限り1か月当たり27万7875円の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,本判決確定後に弁済期が到来する賃金の支払を求める部分は訴えの利益を欠き却下すべきであり,その余の請求は理由がないから,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 吉田健司 裁判官 貝原信之 裁判官 伏見英)

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