横浜地方裁判所 平成17年(行ウ)27号 判決 2006年6月14日
原告
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同訴訟代理人弁護士
山田義雄
同
古川健太郎
被告
横浜市
代表者市長
中田宏
同訴訟代理人弁護士
阿部泰典
同
原田雅紀
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第5 当裁判所の判断
1 争点1(生産緑地地区としての効力発生要件)について
本件では、主位的請求・予備的請求のいずれについても、本件各土地ないし本件土地2及び3が生産緑地地区指定の要件を満たしていた場合に、生産緑地地区と評価されるかどうかという点が争点となっている。そこで、まずこの点について検討することとする。
法3条1項は、生産緑地地区について、「都市計画に生産緑地地区を定めることができる」と規定し、都市計画決定権者たる市町村(都市計画法19条1項)の指定を前提としている。また、生産緑地地区を定める要件には、専門的見地からの判断が必要なものがある(法3条1項1号、3号、3項等)。そうすると、ある地域が生産緑地地区に当たるかどうかは一義的に明確なものではなく、市街化区域内の一定範囲の土地が生産緑地地区内の土地といえるためには、その指定の要件を充足しているだけでなく、市町村が同地区としての要件を満たしているとして当該土地について具体的な地区指定を行うことが必要と解される。したがって、ある土地が、仮に法が定める要件を満たしていたとしても、そのことによって直ちに生産緑地地区として評価されるものではない。
これを本件についてみると、本件各土地ないし本件土地2及び3はいずれも生産緑地地区指定を受けていないというのであるから、これらの土地が生産緑地地区として評価されることはないというべきである。
そうである以上、生産緑地地区の指定がない場合であっても、生産緑地地区として評価されることがあるという前提でされている原告の主張は、その前提を欠くことになるから、その余の点を判断するまでもなく、理由がない。
2 争点3(固定資産価格決定の無効原因の有無)について
原告は、本件各土地ないし本件土地2及び3は生産緑地地区と評価されるべきであるから、これらが生産緑地地区に指定されていないという前提で評価された本件各価格決定には重大な瑕疵があり無効であると主張する。
しかしながら、前記1のとおり、本件各土地ないし本件土地2及び3はいずれも生産緑地地区と評価される土地ではなく、原告の上記主張は前提を欠くものである。
なお、原告は、生産緑地地区の指定について、共有者の同意を要するとする法3条2項の規定は憲法(25条、22条1項)に違反する旨を主張するが、生産緑地地区に指定されることによって、その土地利用等につき重大な制約を受けることになるのであるから(法8ないし10条)、当該指定について共有者の同意を要するとすることには十分な合理性がある。原告は、この場合に、共有者が反対すれば生産緑地地区の指定を受けられないのは不合理であるとか、遺産分割の効果が遡及し、これら共有者の同意が不要となる場合の手当てがされていないことの不合理をいうが、いずれも独自の見解であって採用できない。上記のとおり、現実に市町村により生産緑地地区の指定が行われない限り、指定が行われたと同様に取り扱う余地はないものといわなければならない。
したがって、上記原告の主張には理由がない。
第6 結論
以上のとおりであって、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 河村吉晃 裁判官 植村京子 毛利友哉)